Vol.348

KOTO

17 JUN 2022

ミニマリストとは。「最小限」がもたらす快適で豊かな生活を始めるヒント集

「ミニマリスト」が2015年の流行語大賞にノミネートされて以来、モノを持たない最小限の生活、あるいはそれを実践する人々の考え方は、世の中に広く知れ渡った。 多くのメディアが「ミニマリスト」の哲学や実践方法を紹介するなかで、ZOOM LIFEが発信するミニマリズムとは?今回はその定義を、言葉本来の意味や変遷、そしてZOOM LIFEが掲げる想いをもとにひも解いていく。ミニマルライフに共感する、興味があるという人は、ぜひ最後まで読んでほしい。

ミニマリストとは|その歴史から本質をひも解く

ほとんどモノを持たずに生活するミニマリストは、そうではない人に「質素倹約」「修行?」「理解できない」……などといわれることもある。それも無理はないかもしれない。現代社会の大半は、モノの消費によって成り立っているからだ。

それでは、ミニマリストという言葉はなぜ生まれ、どのような変化を経て一定数の支持を集めるに至ったのだろう。まず、ミニマリストという言葉の定義を明確にしたい。

「ミニマリスト」という言葉の意味

ライフスタイルにおける「ミニマリスト」の基礎となった概念は古くから存在する。
「ミニマリスト」は「ミニマリズム」から派生した言葉である。ミニマリズムは英語の「minimal(最小限)」と「ism(主義)」の組み合わせで成り立ち、「装飾すること」ではなく最小限に「省略すること」に物事の完成形を見いだすスタイルのことだ。

ミニマリズムは1960年代には芸術や政治の様式・手法を指す言葉として存在していた。たとえば近代建築の巨匠のひとりといわれるルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886-1969)は「Less is more.(レス・イズ・モア)」、つまり「少ないほうが豊かである」という標語で知られる。オフィスビル建築を多く手掛けたミースは、各フロアの柱や壁を少なく見せる手法を用いて開放的でミニマルな空間づくりを行った。

また、ミニマル・アートを語るうえでは、彫刻家のドナルド・ジャッド(1928-1994)の存在が欠かせない。ジャッドは木や鉄などの産業素材で作られた直方体を空間に並べることで、環境や物語に影響を受けない純粋な芸術を追求した。彼自身は作品に「ミニマル・アート」のレッテルを貼られることを拒んでいたが、当時のミニマリズムの中心的人物であったといえる。

現代において知られるような「個人のライフスタイル」としてミニマリズム・ミニマリストという言葉が使われるようになったのは、彼らのような芸術家がその概念を打ち立てた後のことなのだ。

最小限の暮らしを実践するミニマリストが生まれた背景

ライフスタイルとして「ミニマリスト」という言葉が使われるようになったのは、2009年頃。アメリカの富裕層の間で起こったブームがきっかけといわれている。その後、元祖ミニマリストとも呼ばれるアメリカ・オハイオ州のジョシュア・フィールズ・ミルバーンとライアン・ニコデマスの2人組が「The Minimalists(ザ・ミニマリスツ)」というブログを立ち上げたことで、ミニマルな暮らしがさらに人々の関心を集めた。

2人は2014年と2016年の2回にわたり、世界的なオンライン講演会「TEDxカンファレンス」に登壇し、それぞれがミニマリストになった経緯を語っている。ジョシュアは健康や人間関係、熱中したいことのためにより多くの時間を使い、自分の能力を有意義に活用できるのがミニマリズムの利点だと伝えた。

また、講演のなかで2人は「モノを所有することや、フルタイムで働くことが悪いわけではない。しかしそれらを第一に考えてしまうと、本当の優先順位がわからなくなってしまう」「思い出はモノのなかにあるのではなく、思い出す人々の内面にある」と、モノに執着しない理由を大勢の人に打ち明けている。

モノを持たない暮らしが人生を豊かにするのか

たくさんのモノを手放しても、快適に暮らすことはできるだろうか。
働いて得たお金でモノを買い、さらなるモノを手にするために働くことは、現代社会を生きる人々には普通の営みである。さらに、「モノを手に入れること」はモチベーションの維持や、ストレス解消の助けにもなり得るだろう。

しかし、あわただしい生活のなか、ふと立ち止まって考えたときに、モノを求めるあまり「大切なことがおろそかになっている」と感じたことはないだろうか。自身にとって本当に豊かな生き方を叶えてくれるモノは、働いてたくさんのモノを手繰り寄せた手元に、どれだけあるだろう。

人生を豊かにするのは「モノ」だけではない。経験や成長、人との関わりなど、「コト」が人生にもたらす作用もまた大きいのだ。映画を観たり旅行をしたり、大切な人とディナーを共にしたり。また、くつろげる場所で、ゆったりとカラダや心を休めることも必要だろう。

賃貸マンション経営で生活の場を提供するZOOM LIFEは、そうした思いに共感する人のために、モノに執着せず生きる「ミニマリスト」に関するコンテンツをさまざまな切り口で発信している。

ZOOM LIFEが発信するミニマリストの生活

モノを持たず心地よい暮らしを実現するにはどうすればよいだろう。
ミニマリストという言葉が日本で注目されて以来、ミニマリストについての情報はWebにも書店にもあふれている。さまざまな考え方があるなかで、ZOOM LIFE読者にはここに挙げるような暮らし方を提案したい。

「消費」ではなく「愛用」を軸にミニマリストとしての暮らしを整える

ミニマリストについて理解を深めようとするとき、ついて回るのが「使い捨て」や「短期間での買い替え」という言葉。モノを持たないという観点では、短いスパンでモノを買い、捨てることで成り立つ「消費」を軸とした暮らしが近道といえるかもしれない。

しかし、消費のサイクルのなかで手元をすり抜け、やがて廃棄される大量のモノたちは、個人の暮らしを一時的によくしても、長い目で見ると地球環境をむしばむ。ミニマリストがそのような生活を当たり前のことにしてしまうと、結果として未来の豊かな生活が失われてしまうかもしれない。

ZOOM LIFEが発信するのは、ミニマルとエシカルを両立するライフスタイル。エシカルは直訳すると「倫理的な」という意味になるが、「良識ある」と言い換えてもよいだろう。ミニマリストの考えを取り入れつつ、地球環境や社会にも配慮した暮らしを提案したい。

もちろん、すでにモノが多い人に向けて「断捨離」の方法も取り上げている。大切なのは、モノを捨てたあとは不要なモノを増やさないこと、それから長く愛用することを前提に手元に置くモノを選ぶこと。消費に頼らないミニマルライフの実践のため、ZOOM LIFEでは具体的な方法を発信している。
モノの手放し方がわからない人は、この記事を読んでみてほしい。

モノを減らすことに留まらない、豊かな生活の追求

キャンバスを真っ白にすることが目的ではない。
単にモノを減して、ミニマリストを名乗る人もいる。しかし、「ミニマリストになるためにモノを減らさなければ」と考えている状態は、モノにとらわれない暮らしが実現できているといえるだろうか。

まず考えるべきことは、モノを減らして生じた余白でなにを始めたいか。「素材や味付けにこだわって本格的な料理をしたい」「美術館を訪れる機会を持ちたい」「あこがれの楽器の練習を始めたい」……。いずれもあと少し、生活にゆとりがあれば手が届きそうだ。

しかし、モノを中心に生活しているなら、今よりずっとモノを減らして身軽にならなければ達成できないこともある。たとえば「初めての一人暮らし」「海外ボランティアへの参加」など。身の回りにモノが多いと選択肢が限られてしまうことも、ミニマリストならバックパック1つに必要なモノだけ詰め込んで準備を始められる。経験のためのフットワークを軽くできるのだ。

ZOOM LIFEが発信する情報の多くは、「モノのために」「モノを中心に」生きることから少し離れるための提案。掃除や整理整頓、モノの手入れなどにかけるコストを上手に削減し、本当にやりたい「コト」に注力できる時間やお金を捻出できるようなヒントを紹介したい。

ミニマルな暮らしを始めるためのヒント集

ここでは、ZOOM LIFEが過去に発信した「ミニマリスト」関連コンテンツをまとめて紹介する。情報は随時更新するため、ミニマルライフの実践を目指す人はぜひ参考にしてほしい。

暮らしを軽やかにしてくれるミニマリストの考え方

ミニマルな生活を実現するためのヒントは至るところに。
ミニマルな暮らしを始めたり、継続したりするためには、視点や発想を切り替えて工夫することが大切だ。ここでは最小限のモノで生活するための基礎的な考え方や、その関連情報を紹介している。
ミニマリストの概要はこちら
これからミニマリストになりたいという人は、メリット・デメリットを理解して暮らしをデザインする必要がある。この記事では、ミニマリストになろうとするときのよくある失敗例も紹介した。ミニマルな暮らしをどのように取り入れればよいかわからない人は、ぜひ読んでみてほしい。
シンプリストが選ぶ持ち物の基準についてはこちら
ミニマルな生活を実践するには、「シンプリスト」の生き方も参考になる。この記事ではシンプリストとミニマリストの違いや、持ち物の量の調節方法などを解説した。「最小限」の生活がピンと来ない人にもおすすめしたい内容だ。
新生活に向けたシンプル&ミニマルな暮らしの概要はこちら
「ミニマル」と「シンプル」、さらに「整理収納」には、似通う点も多い。この記事ではシンプルな暮らしのプロに、片付けやモノの整理、収納の方法を伺った。新生活に向けた部屋づくりにも触れているので、引っ越しを予定している人は必見だ。
ミニマルに生きると暮らしについてはこちら
ミニマリストには、自身の考え方を書籍にして出版している人も多くいる。共感できる書籍に出会えれば、ミニマリズムをどのように実践したいかがより明確に見えてくるだろう。この記事では入門編ともいえる有名な5冊を紹介している。

ミニマリストが本当に必要とする「モノ」の選び方

ミニマリストにも、生活に必要なモノは存在する。では、どう選ぶか。
ミニマリストを目指す人に対し、モノを紹介するコンテンツを発信するのは矛盾しているという意見もあるだろう。しかし、現代社会を生きるうえで、完全にモノを持たずに暮らすことは困難だ。ZOOM LIFEは、本当に必要なモノを携えて生活することを「豊か」だと考える。そのため、ここではミニマリストにとっての必要最低限を考慮したモノの選び方や、厳選したおすすめアイテムを紹介したい。
ミニマリストの愛用品についてはこちら
暮らしのなかで長く愛用できるモノを選ぶことは、ZOOM LIFEが掲げる「ミニマリストの生き方」において基本的な発想のひとつだ。この記事ではモノの選び方に加え、生活を豊かにしてくれるアイテムを4つ紹介している。紹介したアイテムを持つこと自体にこだわるのではなく、新しいモノを買うときの手掛かりにしてほしい。
生活感のない部屋づくりのコツはこちら
ミニマルな生活のための部屋づくりをするにあたって、モデルハウスのような居室をイメージする人もいるだろう。整然とした住まいは、「生活感」を抑えることで叶えられる。この記事では生活する人の「習慣」に焦点を当てて、スタイリッシュな空間をつくり、維持する方法を解説した。
「PAPER POCKET HOLDER」の概要はこちら
ミニマルとエシカルを両立する生活の実践方法として、ユニークなアイテムを紹介している。この記事で紹介した「PAPER POCKET HOLDER」は、卓上に簡易的なゴミ箱を「ゴミ」によって作り出せるアイテムだ。

ミニマリストの本質を理解してゆとりある快適な生活を

生活にゆとりを持てば、限られた時間を本当に大切なコトに充てられる。
ミニマリストとは、「モノ」を手放すことで暮らしに生じる無駄を省き、そのゆとりで本当にやりたい「コト」を追求する人のことだ。これを、ZOOM LIFEは生活におけるミニマリズムの本質ととらえている。

ミニマリストを目指すからといって、モノを捨てること、あるいは持たないことに固執する必要はない。身の回りにモノがないこと自体が、豊かな暮らしをもたらしてくれるわけではないからだ。モノを中心とした暮らしから少しずつ離れて、浮いた時間やお金を「経験」に充ててみること。それが自身にとって最適なミニマリズムを実践するための糸口となるだろう。

ミニマルな暮らしを実践するなかで迷ったときや、なにか新しい発想のヒントが欲しいときは、ぜひこのページで紹介したミニマリストの本質や関連コンテンツを参考にしてみてほしい。