ミニマル、ミニマリズム、ミニマルライフ、ミニマリスト...。我々がライフスタイルと向き合う上で「ミニマル」に関連する言葉は身近なものになっている。しかし、いったいどのようにミニマルを捉え、どのように生活に取り込めばいいのだろうか? 今回は、ミニマリズムの実践方法や、ミニマリズムがもたらすさまざまなメリットを記した、5冊のおすすめ書籍を紹介する。
元々は美術用語だったミニマリズム
どうにもあいまいで、本質的な意味を掴もうとすればするほど混乱する、ミニマリズムという言葉。芸術の表現スタイルなのか、ライフスタイルの潮流なのか、はたまたものを減らすための方法なのか...。ミニマリズムは様々な角度から語られ、実践するためのアイデアばかりが注目されていることで、その本質は見えなくなりがちだ。
ミニマリズムという言葉は、本来美学的な思想を説明する言葉であった。1960年代に、物質がもつ本質を極限までつきつめようとした美術家のドナルド・ジャッドを中心にはじまり、美術だけでなく、音楽や建築、デザイン、ファッションにも大きな影響を及ぼした。
美術的な観点から始まったミニマリズムは、やがてライフスタイルや人生観を説明するための言葉としても使われるようになっていった。そこで語られるミニマリズムは、「無駄を削ぎ落とし、自分にとって一番大切なことに全力を注ぐ」という生き方への姿勢が本質とされている。この姿勢は現代を生きる多くの人びとに支持され、ミニマリスト(ミニマリズムを実践する人)も増えている。日本でも2015年の流行語大賞に「ミニマリスト」がノミネートされ、多くの人に知られるようになったのだ。
ミニマリストたちが実践するミニマリズムとは?
ここで、みなさんの毎日の生活を振り返ってみていただきたい。物が多すぎて、欲しいものがなかなか見つからない。服を選ぶのに時間がかかって毎朝バタバタしてしまう。四六時中SNSやビジネスチャットの通知が鳴り続けている…。そんな心が急かされるような時間が、ゆとりのある時間に変わったら、もっと自分がやりたいことに集中できるような気がしないだろうか?
ミニマリズムを実践するミニマリストたちの手法は多種多様。彼らは身の回りのあらゆる物や生活のシステム、考え方や人間関係のあり方などを徹底的に見直し、さまざまな手段を試しながら、自分にとって一番大切なこととは何かを見出している。
情報が溢れ、選択肢の多い時代だからこそ、余計なものは何かを見直す。そうして“自分らしい生き方”を発見したミニマリストたちの考え方や方法、ミニマリズムから得られることを、書籍を読んで知っていこう。
「minimalism 〜30歳からはじめるミニマル・ライフ」
2014年に発売された「minimalism 〜30歳からはじめるミニマル・ライフ」は、ライフスタイルにおけるミニマリズムを提唱して注目された本だ。
社会で成功し、高い収入を得ながら、都市部の広々とした家で暮らしていたジョシュア・フィールズ・ミルバーンとライアン・ニコデマス。彼らは一見幸せな暮らしをしているように見えたが、常に時間や人間関係に追われる生活に行き詰まりを感じていた。
そんな彼らがザ・ミニマリスツというユニットを結成し、自分らしく幸福に生きようとした時、どのように考え方を変え、どのように行動に移し、どのように人生を選択していったのか。単にものを捨てることだけではなく、「どう生きるか」について凝縮して語られた一冊である。
「ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ」
ミニマリストの生き方を実践してみたいけれど、どこから始めたらいいのかわからないという方におすすめなのが、こちらの本。著者の佐々木典士は、物を減らすという「手段」を取ったことで、ネガティブな感情から解き放たれ、毎日の幸せを感じられるようになったという。
彼が定義するミニマリストの定義は、「本当に自分に必要なモノがわかっている人」「大事なもののために減らす人」。モノも情報も複雑化した現代で、いつの間にかノイズに囲まれて本当の自分を見失っている方こそ、その苦しみを経験した著者の話に共感できることだろう。
「より少ない生き方 - ものを手放して豊かになる」
私たちはなぜ物を欲しがり、なぜ物を手放せないのだろうか? たくさんの物に縛られて身動きがとれなくなっている時、それらを手放すことでどのような物質的・精神的な変化が起こるのだろうか?
ミニマリズムとは全てを手放すことではなく、自分の人生に大切なことを手に入れること。本書ではミニマリズムの考え方をわかりやすく説明しながら、人がなぜ物をたくさん所有しようとしてしまうのかについても丁寧に解説している。
この本を通して、自分なりに豊かに暮らすための哲学を見つけることができるだろう。
「必要十分生活~少ないモノで気分爽快に生きるコツ~」
一気に物を手放すのはなかなか難しいことだ。しかし、少しずつ日常にあるものを見直していけば、着実に物は減らしていける。それでは一体どのような物から取りかかればいいのだろうか?
本書は机の引き出し、バスタオル、プリンター、収納用品など、部屋にある物や仕事に関する物ひとつひとつを「必要十分であるか」検討。どのくらいが適量でどのように快適になったかを示してくれる。
「シンプルに生きる – 変哲のないものに喜びをみつけ、味わう」
ミニマルな暮らしと、シンプルな暮らしは、厳密に言えば異なるものだ。フランスで2005年に発売され40万部のベストセラーになり、日本でも2010年に発売され話題となった本書は、ライフスタイルにおけるミニマリズムの考え方を取り込んだ、ミニマリズム書の先駆けとも言える存在である。
著者であるドミニック・ローホーは、女性ならではの視点から、物や住まい以外にもファッションや美容、そして人間関係も含めて、心豊かに過ごすための方法を示してくれる。
まとめ
ZOOM LIFEにとっての“ミニマル”は、暮らしをミニマム(最小限)にすることではなく、生きるうえで大切にすることはなにかを見極め、暮らしをより豊かにするための“考え方の切り口”である。ミニマルな視点からものごとを鋭く見つめることで、多くの新しい発見や可能性が見いだせるだろう。
書籍を参考に、ミニマリズムをどう実践するかはあなた次第。大切なことに意識を向け、自分らしい幸せを手に入れよう。
CURATION BY
フリーライター・エディター。専門はコミュニケーションデザインとサウンドアート。ものづくりとその周辺で起こる出来事に興味あり。ピンときたらまずは体験。そのための旅が好き。