Vol.324

FOOD

25 MAR 2022

もっと自由に。メキシコ生まれのビールカクテル「ミチェラーダ」で常識を打ち破れ!

アルコールに果実やジュース、他の酒や氷等を加えて作るカクテルは、国や年代によって様々なレシピが誕生し続けて来た。ビールとトマトジュースをミックスし、ライムとチリパウダー、塩とホットソースを加えたミチェラーダはメキシコを代表するカクテルだ。トッピングの自由さで他を凌駕するドリンクで、友と一緒に陽気な夜を過ごしてみたい。

これからの季節に合うカクテルを探して

長かった冬もようやく終わりを告げて、待望の太陽が眩しい季節がやって来た。コートやセーターを片付けて衣類を衣替えするように、食事やドリンクも気候に合わせたものへと変化させたい。煮込み料理やホットカクテルの代わりに、これからの季節に似合う涼やかでさっぱりとしたものへ。

だが気候に合わせて飲食のメニューを変えてみても、その内容は毎年代わり映えしてないことに気付く。食事は新たなレシピに挑戦することはあっても、ドリンクに関しては初夏はビールやスパークリングワイン等、いつも同じ選択肢で飽きが来ているのも事実。そんな折、常に刺激を与えてくれる知人から教えてもらったドリンクがミチェラーダ。これでもかと盛り付けたトッピングが特徴的な、クレイジー感を存分に楽しめるメキシカン・カクテルだ。

度肝を抜くビジュアルで自由度の高いカクテル、ミチェラーダ

すっきりと飲みやすい。ビールをベースにしたカクテル

ミチェラーダはメキシコのアイコンとも言われるカクテルだが、恥ずかしながらこれまで耳にしたことはなかった。ビールとトマトジュース、絞ったライムをミックスし、そこに塩やチリパウダー、ホットソースを加えるミチェラーダ。ピリッと辛めのスパイスが効いており、ビールの苦味がちょっと…という人にもおすすめの、これから到来する季節にぴったりの飲み物だ。

ビールとトマトジュースの組み合わせは飲みやすく、暑い季節にぴったりのドリンク
ビールをトマトジュースで割ると聞くと、思い浮かぶカクテルがレッドアイだ。二日酔いの人の目を表した名前が由来というように、トマトにはアルコール分解酵素を活発化させる働きを持つクエン酸が多く含まれている。飲酒時に一緒に摂ることによって血中アルコール濃度を下げる役割をも持っている。

このレッドアイにチリやライムを加えたものがミチェラーダだが、このカクテルはレッドアイよりも遊び心をふんだんに感じられる、インパクトのある飲み物なのだ。

ミチェラーダのトッピングにルールはなく、「どう楽しむか」がキーワードに

ミチェラーダ、その始まりと名前の由来

ミチェラーダの始まりには諸説ある。まず、1910年代にメキシコ人将軍アウグスト・ミシェルにちなんで名づけられたという説。彼はメキシコ中央北東部にあるサン・ルイス・ポトシのバーにて、戦いに疲れた兵士たちにライム入りのビールをオーダーし、そこへホットソースを加えたという。彼の名前「ミシェルMichel 」に「ビール=chela」「冷たい=helada」を足したものが由来になったというもの。

もうひとつは同じくサン・ルイス・ポトシのスポーツクラブにて、1960年代にミシェル・エスパーという男性がテニスの試合後にビールに氷、ライム、塩を入れchabelaと呼ばれるグラスで飲むのを好んだという説。クラブの他の顧客もこのドリンクを好み、「ミシェルのビール・レモネード」という名が縮まって「ミチェラーダ」になったという。

そして「mi=私の」「chela=ビール」「helada=冷たい」という3つの言葉を組み合わせ、ミチェラーダ=私の冷たいビール、という造語が完成したという、3つの説だ。

ミチェラーダはメキシコの気候に合わせ、ビールを更に飲みやすく発展させたカクテル
どれが本当の由来かは明確になってはいないものの、ミチェラーダというカクテルはメキシコ全土に広がり、そこへ作り手の独創性が加わって目を見張るようなビジュアルへと変化していく。

自分らしく楽しむ。ミチェラーダのレシピ

ミチェラーダを最初に見た時はまず呆然、あっけにとられたというのが正直な感想だ。何しろグラスの上部に我が目を疑うようなものがトッピングされているのだ。グラスにエビを始めとした魚介類を盛り合わせたり、あるいはビーフジャーキーやチキンなどの肉を串に刺したり、果てはグミが山盛りに載っていたり、ビールのボトルが逆さになってグラスに刺さっていたり。

日本でも肴とともにアルコールを嗜む「食べながら呑む」習慣があるが、もちろん肴は別の皿に盛られている。ミチェラーダはその肴がグラスに盛られているのだから想像通り食べにくいし飲みづらい。だがそこにはそんな常識を吹き飛ばしてしまうような潔さがそこにあり、思わず自分でも人を驚かせるような奇抜なものを載せたくなってしまうのだ。

ここでミチェラーダのベーシックなレシピをご紹介しよう。材料にメキシコ産の軽いテイストのラガービール、トマトジュース、ライム、塩、チリパウダー、ホットソースを用意する。好みで氷を入れても良いだろう。まずグラスのふちをライムの果汁で濡らし、そこへチリパウダーと塩を付ける。

チリパウダーと塩を混ぜて皿に盛り、ライムで濡らしたグラスの縁をこすりつける
グラスにトマトジュースを1/3ほど、絞ったライム、ホットソースを数滴加えてビールを注ぐ。そしてミチェラーダの特徴と言えるトッピングだが、ここは思い切り独創的に攻めてみよう。メキシコで良く見られるグミのトッピングは甘味が強いため、ウォッカを数滴加えると味が引き締まる。ライムの酸味には魚介類が良く似合うので、新鮮なエビを焼いたり炒めたりして串に刺してトッピング。

おすすめのひとつがフライ系だ。喉越しの良いミチェラーダの味を引き立てる、カリッと香ばしく揚げたオニオンリングやフィッシュフライを。隠し味として醤油が使われることも多いため、唐揚げや焼き鳥も意外にマッチする。

ミチェラーダのトッピングは自由自在で無限大、お祭り気分で楽しみたい。どんなものが合うだろうか、度肝を抜くビジュアルにするためには何が良いかと、作るのも味わうのもテンションが上がるカクテルなのだ。

ミチェラーダは常識に囚われず、アイデアを活かして奇抜なビジュアルに挑戦してみたい

皆が喜ぶ顔を思い浮かべて、冒険心と遊び心をトッピング

メキシコではあらゆるバリエーションが展開しているミチェラーダは、作る人、飲む人によって無限のレシピとトッピングが生み出されている。その自由さを鑑みると、お酒は楽しく飲むものだという心意気が色濃く反映されているように感じられる。

ミチェラーダは進化し続け、飲む人を喜ばせ、新たな味覚に挑戦し続けている。冒険心にあふれたこのカクテルは一人で飲むより、皆で一緒に楽しむためのドリンクと言えるだろう。

一緒に飲む友人の驚く顔を想像しながら、自由気ままにトッピングしてみよう
この数年会えずにいた友人の顔を思い浮かべ、今年の夏こそ再会できると願って、それまでに自分バージョンのミチェラーダのレシピを探してみたい。スパイスを効かせて味に変化をつけるのもよし、これまでにないトッピングを考えてみるのも面白い。清涼感と刺激を与えてくれるミチェラーダに、遊び心と冒険心というスパイスを加えて楽しんでみようか。¡Salud!