Vol.227

KOTO

20 APR 2021

正しい断捨離のやり方を考える。ミニマルな暮らしをはじめるヒント

近年、ミニマルな暮らしに憧れる人が増えている。しかし現状、部屋にモノが多いことに悩んでいる人もいるだろう。そんな人には、ミニマルな暮らしへの第一歩として「断捨離」をおすすめしたい。 断捨離の本来の意味は、単にモノを捨てることではない。 ヨガの断行や捨行、離行という言葉を知っているだろうか。断は「不要なものを断つ」こと、捨は「不要なものを捨てる」こと、離は「ものへの執着から離れる」ことを意味している。この3つの言葉を合わせた造語が「断捨離」なのだ。 断捨離とは、執着心を持つことをやめて取捨選択を行い、本当に必要なものだけを選ぶことだといえる。断捨離のやり方を正しく見極めることが、ミニマルライフのきっかけにつながるに違いない。

断捨離のやり方:使わないモノをもったいないと思うのはなぜ?

気づくと増える「モノ」たち

なぜ部屋の中にモノが増えてしまうのか

部屋の中にモノが増えてしまう現状を改善したいと考えて、断捨離を決意する人もいるだろう。生活をしていると、モノが増えるのはある意味当たり前のことかもしれない。しかし自分にとって必要ではないのに、つい使わないものまで増やしてしまうのにはさまざまな理由が考えられる。

たとえば、人からすすめられた便利グッズや話題になっている商品などは、たいして必要ではないのに突発的な購買意欲で買ってしまう人が多い。このように自分の意思で選択するのではなく、人からの意見でモノを購入したり、日常で使うシーンをよくイメージしないでモノを増やしたりすることは多々あるだろう。

愛着のないモノは暮らしに必要か

たくさんのモノに囲まれて生活をしていると、自分にとって不要なものを目にする機会が増えてしまう。気に入っているものならともかく、隠しておきたいようなものまで雑然と置かれた様子が視界に入ってくるのは、あまりよい状態とはいえない。

なぜなら、脳は視覚から入る情報をすべてインプットするようにできており、過度な視覚情報による脳への刺激は心にストレスを与えるからだ。ふと部屋を見渡してみたときに、愛着のないモノが視界に入らないだろうか。もしたくさんのモノが視界に入るなら、それらが暮らしに必要かどうか今一度考えてみるとよいだろう。

「いつか使う」「また使う」日はいつ来るのか

趣味のために買い集めた道具たち。次はいつ使うだろうか
断捨離が思うようにすすまない理由として多く挙げられるのが、「いつか使うかもしれない」という発想だ。使うシーンを想像しにくいモノは断捨離しやすいが、使うシーンをイメージできるモノほど手放すのがむずかしい。

「シーンをイメージできるモノ」には、たとえばちょっとしたパーティーや冠婚葬祭のための装い、アウトドア用品やスポーツ用品などがある。しかし、それらを次に使う機会は一体いつ訪れるのかを考えてみてほしい。そうして思いを巡らせたときに使う機会が想像できないモノが、長い間部屋を圧迫しているのかもしれない。

断捨離とは自分を見つめ直すこと

断捨離とは、自分に必要なものと不要なものを見極めることだ。それはつまり、自分が使っていないモノとも向き合わなければならないということ。

「過去」の自分はどうして買ったのか、なぜ「今」持っているのか、「未来」の自分がそれを再び使うことはあるのか。そのようにして自分と、自分を取り巻く道具たちの関係性を時系列で洗い出していけば、自然と自分自身の価値観が浮き彫りになってくるだろう。

日々の暮らしや心の中を見つめ直すことができれば、自身の求める暮らし方を整理できるに違いない。断捨離は、これからの自分自身の「モノ」とのつき合い方を考えるきっかけになるはずだ。

断捨離のやり方:「ミニマル」という観点で本当に必要なモノを選ぶ

「最小限」がもたらす快適で豊かな生活を始めるヒント集

自分自身に似合うものを知ることが大切

断捨離の手がかりは「自分自身のライフスタイル」

断捨離のやり方や基準は、人に委ねるものではない。なぜなら、モノが必要か不要かを決めるのは自分自身だからだ。世間の話題や流行を抜きにして、暮らしを支えるガジェットは自分基準で選びたい。
今住んでいるところから引っ越す想像をしてみることが、断捨離の基準を決めるヒントになる。

現在よりも部屋が少ない住まいに引っ越すとしても、必ず持っていきたいものはあるだろうか。
引っ越しのためにやむなく捨ててしまっても、また欲しくなりそうなものは何だろうか。

そのような想像をすることで、自分にとって必要なモノや、大切にしたいモノがわかる。そうして選んだものとはじめる新生活こそが、自分のライフスタイルなのだと実感するに違いない。

「審美眼」と「機能性」をたよりに、手になじむ愛用品を見つける

愛用品となるモノを見つけるときに大切なのは、「審美眼」を持つことと、道具の「機能性」を熟知することだ。審美眼とは美しいもの、価値のあるものを見分ける能力。愛用するにふさわしい品を見抜く「眼」のことだといえるだろう。

視界に入ってもすっきりとしていて、飽きのこない模様やかたちのモノを手元に置きたい。自分が愛おしいと感じるデザインでありながら、たしかな品質と機能性の高さを持っているモノであることも重要だ。本当に必要なものならば、長年にわたり生活のお供として愛用したくなる。

本当に使うかどうか。その問いに答えるのは「今の自分」

いつか使うかもしれない未来まで考慮していては、モノを減らすのはむずかしい。なぜなら、未来のことは自分自身にだってわからないからだ。不確かな未来のために手元にモノを残したところで、使う日がこなければ意味がない。「今の自分」だけを見つめてシンプルな視点で考えれば、必要か不要かを選ぶことはたやすいはずだ。

断捨離を終えて身軽になった自分を想像してみる

断捨離で得られる効果を考えてみよう。モノを探す時間が短縮されたり、モノの管理にかかるコストが抑えられたりすれば、その分生活に余白が生じ、時間的にも精神的にもゆとりが生まれるだろう。モノが少ない分、部屋をきれいに保つ方法が明確になり、掃除や片づけの習慣が身につくこともある。

また、本当に必要なものには、大切に扱おうという心理がはたらく。限られたモノを大切にして、暮らしの仕方がていねいになれば、今よりずっとミニマルな生き方ができるのではないだろうか。

このように、自分らしい基準で選んだモノとの暮らしを手に入れたら、今後の暮らしをどうしていきたいか見渡す余裕が生まれるかもしれない。

やってはいけない断捨離の仕方

むやみやたらにモノを捨てたあとには、生活感のない殺風景な部屋が待っている

ライフスタイルを考慮せずにモノを捨てる

「断捨離=とにかくモノを捨てること」というイメージを持っている人もいるかもしれない。たしかに断捨離では、結果としては多くのモノを手放すことになる。思い切りよく捨てることが重要だという発想になってしまうのも無理はない。

しかし、ただ「捨てること」だと勘違いをしたまま断捨離をすすめると、自分に必要なものまで捨ててしまい、モノの量がライフスタイルに合わなくなってしまう。たとえば、来客が多いのに食器を自分が使う1セットだけ残して捨ててしまったり、週に1回しか洗濯しないのに洋服を5着に減らしてしまったり。こうした失敗は「やってはいけない断捨離」の典型例といえるだろう。

必要なものを捨ててしまった状態では快適な生活が送れなくなり、いずれ新たにモノを買い直さなければならなくなる。深く考えずに思いつきでモノを捨てるのではなく、自分の暮らしを鑑みて、それぞれの道具の最低限必要な数を把握することからはじめたい。
ライフスタイルに合わせたモノの量の考え方はシンプリストの生き方が参考になる

収納用品を増やすことからはじめる

視界に入らないだけで、収納の中には使わないモノがたくさん
断捨離を決意すると、手始めに収納用品を購入してしまいがちだ。しかし、「断捨離」と「片づけ」は、似ているようで違っている。収納用品の中にモノを入れるのは、要するに「目の前から隠すこと」であり、本質的にモノを減らすことにはつながっていない。

また、収納用品の購入を、「部屋にモノを1つ増やすこと」だと考えるとどうだろうか。断捨離のために部屋にモノが増えるのでは本末転倒だ。収納用品は断捨離が済んでから、必要な道具をぴったり収められるものを選びたい。

断捨離した部屋ではじめるミニマルライフ

収納する位置を決めることで、モノが増えにくくなる

モノを買うときは、1つ増やす前に1つ減らす

モノを減らして視界がすっきりしたら、その後も断捨離した部屋を保ちたい。そのためには、断捨離後に再びモノを購入して増やさないように、部屋にあるモノの量を一定に保つことが大切だ。まずはモノの定位置を決め、そこに収まる量から増やさないようにするとよいだろう。

また、モノを購入する前には、本当に必要かどうかをよく見極めることが重要になる。まずは、すでに持っているもので代用できる場合はそれを使用することを考えたい。あるいは持っているものを手放して、新しいものを手に入れるという選択肢もあるだろう。「1つ買うなら1つ捨てる」というルールを課すのは、断捨離した部屋を保っていくためにぜひ実践してほしい方法だ。

いつか必要なものは「レンタル」で

近年は服や家具・家電をはじめ、さまざまな道具がレンタルで一時利用できるようになった。レンタルサービスを利用すれば、使わないものを部屋に置かなくて済む。それに、レンタルで使ってみて便利だ、欲しいと感じたものなら、それから購入するという方法も考えられる。
今や、毎日使うものや思い出深いモノ以外、使うそのときまで手元に置いておく必要はないのだ。

断捨離のやり方は、必要・不要を「今の自分に問う」ところから

正しいやり方の断捨離で得られるのは、軽やかで豊かな人生
断捨離は、モノをとにかく捨てることや、物持ちが悪いということではない。
断捨離の正しいやり方は、今の自分には何が大切なのか、ライフスタイルを考慮した必要・不要を見極めることだといえる。

なつかしい品を見て思い出にひたったり、将来使う予定のものを手にとって、未来へと思いを巡らせたりするのは楽しい時間だ。それを十分に踏まえたうえで、今の自分に本当に必要なモノを見極めたい。「現在」を身軽に生きることには、人生を豊かにする可能性が秘められている。

断捨離をすることで生まれる生活の余白で、あなたはどんなことをはじめたいだろうか。