Vol.72

MONO

11 OCT 2019

足を解放して野生を取り戻す。「iGUANEYE|イグアナアイ」

浜辺に行くと、どうしたわけか靴を脱ぎ、素足になって砂浜を歩きたくなる。足が外気に触れ、地面の質感や温度を感じることは、楽しく心地良い。素足になる開放感は日常でも感じたいものだが、コンクリートや砂利道など、地面が粗くて硬いところがほとんどだ。
そこで今回フォーカスを当てるのが、iGUANEYE (イグアナアイ)のアイテム。極限までパーツをそぎ落とし、素足に近いシンプルさで自由な履き心地を与えてくれる、注目のフットウェアをご紹介しよう。

我々はなぜ素足になりたがるのか?

日本に住む多くの人が、帰宅するなり玄関でその日に履いていた靴を脱ぐ。そのまま靴下も脱ぐという人もいるだろう。毎度の事ながら、この時に感じる開放感は格別なものだ。肩の力が抜け、一気にリラックスモードになり、個人の時間を楽しみ始めることができる。私たちが素足を心地よく感じる場所は他にもある。冒頭に挙げた砂浜や芝生の上など、靴を脱ぎ素足になることで、自分自身を解放して心から落ち着くことができるのだ。

素足のメリットはただリラックスできるだけではない。2016年にノースフロリダ大学が発表した研究によると、ベアフィット(裸足)ランニングをすることで、「ワーキングメモリ」という情報を思い出して処理する能力を向上させるという。つまり、素足で走る方が、靴を履いて走るよりも脳の認知能力を向上させるということだ。

また、現代の日本人は70%が扁平足だと言われている。土踏まず周辺の骨を使わないことで土踏まずのアーチが崩れる扁平足になると、体の歪みが生じやすくなり、腰痛や肩こりなどの不調につながっているという。こうした健康問題の解決策の1つとしても、素足で歩いたり走ったりすることが注目されている。

アマゾンの先住民の知恵を現代に。iGUANEYE「JUNGLE」

iGUANEYE 「JUNGLE」
日々感じるストレスや時々感じる認知能力の衰え、健康問題などの解決の糸口は、素足で生活することにあるのかもしれない。なによりも、単純に素足が好きだ。だからと言って、素足のままで直接アスファルトの上を歩くことはなかなか難しい。せめて足の裏だけでも保護したいものだ。だからと言って、通常のサンダルのようにストラップで足を雁字搦めにしたい訳でもない足の安全を守りながらも限りなく素足の状態で歩けることが理想だ。

そんな素足生活への好奇心に応えてくれるフットウェアこそが、iGUANEYEの「JUNGLE」である。

iGUANEYEはフランスのプロダクトデザイナー、オリヴィエ氏によって2013年に誕生したブランド。「アマゾンの先住民はゴムの木から採った樹液に足を浸し、火で燻して固め、ゴム底にしていた」という探検家の記述からヒントを得て開発されたという。

この「JUNGLE」 は、2013年に発売された「FS」モデルからさらに進化し、固定する面積が少なくなったモデルである。従来のサンダルとは全く異なる、要素が削ぎ落とされた構造で、安定感と自由度を両立させている。

親指とかかとのみを固定する、シンプル構造

それでは「JUNGLE」をじっくり見てみよう。裏面は足袋のような形で、足裏を保護するインソールに、親指とかかとのみを固定するボディパーツが装着されている。通常のサンダルやゴム草履にあるようなストラップが無く、最小限の構成要素となっている。
ボディには肌当たりがソフトなエラストマーが使われ、インソールにはEVAフォームという軽くて程よくしっかりした素材が使われている。靴底は土踏まずの部分が隆起していて、波状の凹凸は足裏でも感じられる。

もちろん水洗いもOK。細かい部分の汚れが気になったら、このようにパーツを分解して洗うといいだろう。

限りなく素足の状態で、どこへでも行ける

ボディは2色展開、インソールは4色展開。色の組み合わせも楽しめる。サイズは男女問わず履けるユニセックスな展開。歩行のしやすさに影響するので、ジャストサイズを選ぼう。
iGUANEYEの「JUNGLE」は、一見アウトドア向けのアイテムという印象を受けるが、街歩きにも室内履きにも適したフットウェアだ。履くと、インソールの隆起部分が土踏まずのアーチにぴったりはまり、親指とかかとがやさしくホールドされる。フィット感と開放感の両方を味わえる履き心地だ。靴下を履く煩わしさからも解放してくれる。

さっそく「JUNGLE」を履いて、街を1時間ほど歩いてみた。

コンクリートや石畳で舗装された道も、快適に歩くことができる。これだけ固定箇所が少ないのに、思いっきり爪先立ちをしたりしない限り、ほとんど脱げることはなかった。さらにコツはいるものの走ることもでき、癖になる軽やかさだった。

親指とかかと以外固定されていないので蒸れにくく、長時間歩いても不快感がない。なによりも想像以上に疲れにくいのが嬉しい。
「JUNGLE」を履いて歩いていると、いつもよりも足の動きに意識が集中していくのを感じた。それはいつの頃だったか、大自然の中を素足で探検した時の感覚に似ていた。景色を楽しみながらも、一歩一歩、足の裏や指先の感覚に集中し、バランスを保ちながら歩く感覚だ。

普段からウォーキングはよくするが、「JUNGLE」を履いて歩いた次の日は、驚いたことにお尻と足の付け根あたりに筋肉痛をほんのりと感じ、いつもと違う筋力を使えたことを実感した。

人間の本質に立ち返るための、第一歩を踏み出そう

地面に着地する足、反対に地面から離れる足、バランスを保つために微妙に重心を動かす爪先やかかと、足を前後に動かす太ももの運動……。「JUNGLE」を履いたことで、まるで歩行瞑想をするかのように歩くことができ、自然の中を素足で歩いた時のように思考がクリアになる。


靴はハイヒールや革靴に代表されるように、性を象徴する記号でもある。しかし近年は「#KuToo」という、女性が職場で足に負担のかかるヒール・パンプスの着用を義務付けられることに苦痛を訴え、抗議する社会運動も日本で起こった。靴がもたらす窮屈さから、物質的にも精神的にも解放される時代が来つつあるのではないだろうか。人間としての自分が本来持っていたバランス感覚を、今こそ取り戻せるはずだ。

今回紹介したアイテム

iGUANEYE「JUNGLE」

Type / Light Gray ボディ (Light White インソール)
Size / 36(23.0cm)〜45(29.0cm)
Material / ボディ:エラストマー 
インソール:EVAフォーム(エチレン酢酸ビニルコポリマー)
¥ 9,000(+tax)

https://iguaneye.jp/