パスタ料理は、忙しい日々の中での頼もしい存在だ。麺を茹でてソースを和える、それは料理が苦手という人でも気軽に取り掛かれる調理法。最初は出来合いのものからスタートしても、パスタのメーカーにこだわり始め、やがてソースは手作りに。そこから更なる高みに誘ってくれるのが、自家製の手打ちパスタかもしれない。少量の材料のみを使用する作業工程にパスタマシンが加われば、より飛躍を遂げることができ、これまでのパスタの世界が大きく広がるに違いない。
パスタマシンを相棒に。料理と意識をバージョンアップ
パスタが好きでも「手打ち」と聞くと、大変な作業を想像する方もいるだろう。だがパスタは小麦粉と卵が基本材料となるとてもシンプルな作り方。既存のレシピに違いはあるものの、その工程に難しさは感じられない。
しかし生地をこねるのはさておき、難易度が高いのが生地を薄く伸ばすこと、そして均等にカットすること。そんな時にパスタマシンがあると、作業は一気に楽になる。
パスタマシンを相棒にすれば、具材を詰め込み、正方形や帽子型にしたラヴィオリやカッペレッティといったパスタや、見た目も鮮やかなカラフルなパスタも楽しめる。パスタにこだわればソースもそれに合うものを。ペアリングのワインやオリーブオイルも吟味して選びたい…と、茹でるだけ、和えるだけの簡単な料理、という意識から、パスタ料理は特別なひと時を過ごすための一品へと変化を遂げていくだろう。
手打ちだからこそこだわりたい、粉の種類
手打ちパスタは選んだ小麦粉の種類によって、「うどん」のような味になってしまうことがある。小麦の風味がダイレクトに伝わる手打ちにこそ、使用する粉はこだわりをもって選びたい。厳選した粉を使うことで、味はぐっと本格的になるはずだ。
タンパク質の含有率によって小麦粉を分類している日本と異なり、パスタの本場、イタリアでは粉の挽き方に基づいている。その中でパスタ作りに適しているのが「パスタ用00(ゼロゼロ)粉」だ。一番細かく挽いた小麦粉で、滑らかで繊細なパスタが出来上がる。なお、00粉はピッツァ用やパン用など多くの種類があるので、「パスタ用」の00粉を使用しよう。
続いてデュラムセモリナ粉。こちらは硬いデュラム小麦を使用しており、粉砕した際にデュラム種子から分離した栄養素の胚乳から作られている。ただし00粉に比べセモリナ粉は粗挽きなので、慣れないうちは扱いにくく感じることも。2度挽きしている「リマチナータ」は粒子が細かくおすすめだ。
手打ちパスタの基本レシピ
材料
・パスタ用00粉100g
・卵1個
・オリーブオイル5g
・塩ひとつまみ
重要なポイントは、生地を休ませる時間を充分に取ること。出来れば1日、そうでなければ半日。時間がない時でも、最低1時間は生地を休ませよう。しっかりと休ませることで、弾力性とコシのある生地になる。
手打ちパスタは生地の加水率や細さ、厚さによって茹で時間が大きく異なる。一番薄く伸ばしたものは1分もかからぬことがあり、厚みのあるものは8分以上かかる場合も。茹でる際は小まめにチェックし、合わせるソースも考慮して丁度良い状態に仕上げたい。
カラフルパスタに挑戦
次はカラフルパスタに挑戦してみよう。野菜やペーストを加えるが、加水率50%(オリーブオイル分を除く)を意識すれば上手くいくはず。水分が多すぎた場合はパスタ用00粉を打ち粉にして、バランスを整えよう。
ほうれん草のパスタ 材料
・ほうれん草180g
・パスタ用00粉240g
・全卵1個、卵黄1個分
・オリーブオイル8g
・塩をひとつまみ
ここから先の工程は、基本のパスタと同じ通りに行う。なお、カラフルパスタは基本のパスタより生地の量が多いので、1/4ずつ(残りの生地は使用するまでラップしておく)カットして伸ばしていこう。
イカ墨入りパスタ 材料
・イカ墨ペースト20g
・パスタ用00粉160g
・全卵1個、卵黄1個
・オリーブオイル8g
・塩ひとつまみ
手打ちパスタの保存方法
最後に手打ちパスタの冷凍保存方法をご紹介しよう。まず冷凍するパスタに打ち粉をして、くっつかない程度に乾燥させる。
次に使用する際は解凍せずに、沸騰したお湯にそのまま入れて茹でる。生パスタの保存期間は1か月ほどだが、長く保存するとそれだけ風味が損なわれるため、出来るだけ2週間以内に食べきるのがおすすめだ。
自分のために、大切な人に作りたい一皿を
手打ちパスタの楽しみとは何だろう。粉を吟味し、生地の厚みや細さを決めて、かたちを選ぶ、それらは全て自分自身の選択だ。パスタという調理する前の段階の食材を自分好みにコントロールしていくことは、料理とはまた少し異なる、自分だけの作品を作り上げる喜びを与えてくれる。
次の週末は大切な人を招き、手打ちパスタで自慢の一品を披露しよう。前夜に生地をこねて冷蔵庫で休ませて、ソースを事前に準備しておく。当日はゲストが来る前に、パスタマシンでフレッシュなパスタを用意しておきたい。
特別な一品を大切な人と囲むひと時、それは会話や料理を中心に奏でられる一度きりのアンサンブルのようなもの。そしてパスタを手打ちで作る時間、パスタマシンに生地を通し、厚さを調節しながら、それを食すゲストが喜ぶ顔を想像するひと時。それは作り手だけに聴こえる幸福なプレリュードなのかもしれない。
CURATION BY
1992年渡英、2011年よりスコットランドで田舎暮らし中。小さな「好き」に囲まれた生活を求めていたら、夏が短く冬が長い、寒い国にたどり着きました。