Vol.368

MONO

26 AUG 2022

パスタマシンで手打ちパスタに挑戦。自宅で打ちたての美味しさを

パスタ料理は、忙しい日々の中での頼もしい存在だ。麺を茹でてソースを和える、それは料理が苦手という人でも気軽に取り掛かれる調理法。最初は出来合いのものからスタートしても、パスタのメーカーにこだわり始め、やがてソースは手作りに。そこから更なる高みに誘ってくれるのが、自家製の手打ちパスタかもしれない。少量の材料のみを使用する作業工程にパスタマシンが加われば、より飛躍を遂げることができ、これまでのパスタの世界が大きく広がるに違いない。

パスタマシンを相棒に。料理と意識をバージョンアップ

パスタマシンがあると、自宅で作るパスタ料理の世界が大きく広がっていく
パスタが好きでも「手打ち」と聞くと、大変な作業を想像する方もいるだろう。だがパスタは小麦粉と卵が基本材料となるとてもシンプルな作り方。既存のレシピに違いはあるものの、その工程に難しさは感じられない。

しかし生地をこねるのはさておき、難易度が高いのが生地を薄く伸ばすこと、そして均等にカットすること。そんな時にパスタマシンがあると、作業は一気に楽になる。

手動式から電動式まで多くの種類があるパスタマシン。パスタを作る分量や頻度を考慮し、自分にぴったりなものを選んでみたい
パスタマシンを相棒にすれば、具材を詰め込み、正方形や帽子型にしたラヴィオリやカッペレッティといったパスタや、見た目も鮮やかなカラフルなパスタも楽しめる。パスタにこだわればソースもそれに合うものを。ペアリングのワインやオリーブオイルも吟味して選びたい…と、茹でるだけ、和えるだけの簡単な料理、という意識から、パスタ料理は特別なひと時を過ごすための一品へと変化を遂げていくだろう。

パスタマシンがあれば、これまで作ったことのないパスタにもトライできる

手打ちだからこそこだわりたい、粉の種類

手打ちパスタは選んだ小麦粉の種類によって、「うどん」のような味になってしまうことがある。小麦の風味がダイレクトに伝わる手打ちにこそ、使用する粉はこだわりをもって選びたい。厳選した粉を使うことで、味はぐっと本格的になるはずだ。

タンパク質の含有率によって小麦粉を分類している日本と異なり、パスタの本場、イタリアでは粉の挽き方に基づいている。その中でパスタ作りに適しているのが「パスタ用00(ゼロゼロ)粉」だ。一番細かく挽いた小麦粉で、滑らかで繊細なパスタが出来上がる。なお、00粉はピッツァ用やパン用など多くの種類があるので、「パスタ用」の00粉を使用しよう。

続いてデュラムセモリナ粉。こちらは硬いデュラム小麦を使用しており、粉砕した際にデュラム種子から分離した栄養素の胚乳から作られている。ただし00粉に比べセモリナ粉は粗挽きなので、慣れないうちは扱いにくく感じることも。2度挽きしている「リマチナータ」は粒子が細かくおすすめだ。

左の黄色いセモリナ粉はコシのあるパスタに、右の白くきめ細やかな00粉は滑らかなパスタに仕上がる

手打ちパスタの基本レシピ

ではここで、基本のパスタのレシピをご紹介しよう。

材料

・パスタ用00粉100g
・卵1個
・オリーブオイル5g
・塩ひとつまみ

1. ボウルに粉を入れ中央をくぼませて、そこへ卵、オリーブオイルを入れる。塩を振ったら、フォークで粉全体に水分が行き渡るよう、よく混ぜる。

2. 粉全体が充分に混ざったらひとつにまとめ、約10分間こねる。丸めてラップでくるみ、冷蔵庫で生地を休ませる。
重要なポイントは、生地を休ませる時間を充分に取ること。出来れば1日、そうでなければ半日。時間がない時でも、最低1時間は生地を休ませよう。しっかりと休ませることで、弾力性とコシのある生地になる。

3. 半分にカットした生地(残りは使うまでラップしておく)を長方形になるように、綿棒である程度薄く伸ばしたらパスタマシンにセットする。

4. 伸ばした生地がくっつかないように、生地全体に少量の小麦粉をまぶす「打ち粉」をしながら、ダイアルを徐々に低くし、好きな薄さまで伸ばしていく。

5. 生地が好みの薄さになったら好きな長さで切っておく。

生地をパスタマシンのローラーに通して、麺状にカットしていく。完成したパスタに打ち粉を振って、お互いがくっつかないようにしておく。
手打ちパスタは生地の加水率や細さ、厚さによって茹で時間が大きく異なる。一番薄く伸ばしたものは1分もかからぬことがあり、厚みのあるものは8分以上かかる場合も。茹でる際は小まめにチェックし、合わせるソースも考慮して丁度良い状態に仕上げたい。

カラフルパスタに挑戦

次はカラフルパスタに挑戦してみよう。野菜やペーストを加えるが、加水率50%(オリーブオイル分を除く)を意識すれば上手くいくはず。水分が多すぎた場合はパスタ用00粉を打ち粉にして、バランスを整えよう。

ほうれん草のパスタ 材料

・ほうれん草180g
・パスタ用00粉240g
・全卵1個、卵黄1個分
・オリーブオイル8g
・塩をひとつまみ

1. ほうれん草をたっぷりのお湯でさっと茹で、冷水にさらしてぎゅっと水分を絞る。

2. ほうれん草を全卵・卵黄と一緒にブレンダーで液状にする。

3. 粉を入れたボウル中央をくぼませ、そこへ2.と塩、オリーブオイルを入れ、粉全体に行き渡るようフォークで良く混ぜる。
ここから先の工程は、基本のパスタと同じ通りに行う。なお、カラフルパスタは基本のパスタより生地の量が多いので、1/4ずつ(残りの生地は使用するまでラップしておく)カットして伸ばしていこう。

イカ墨入りパスタ 材料

・イカ墨ペースト20g
・パスタ用00粉160g
・全卵1個、卵黄1個
・オリーブオイル8g
・塩ひとつまみ

1. イカ墨ペーストと卵を混ぜ合わせ、ペーストが完全に溶けるよう液状にする。

2. 中央をくぼませた粉が入ったボウルに1.と塩、オリーブオイルを入れ、粉全体に行き渡るようフォークで良く混ぜる。
後の工程を基本のパスタと同様に行う。

コシのある手打ちパスタが、食のひと時を特別なものにしてくれる

手打ちパスタの保存方法

最後に手打ちパスタの冷凍保存方法をご紹介しよう。まず冷凍するパスタに打ち粉をして、くっつかない程度に乾燥させる。

次に1食分(100gほど)にまとめ、ステンレス製のトレイやキッチンシートを敷いた皿に入れ、1時間ほど冷凍庫に入れる。

パスタが固まったら、フリーザーバッグに入れて冷凍保存。
次に使用する際は解凍せずに、沸騰したお湯にそのまま入れて茹でる。生パスタの保存期間は1か月ほどだが、長く保存するとそれだけ風味が損なわれるため、出来るだけ2週間以内に食べきるのがおすすめだ。

自分のために、大切な人に作りたい一皿を

手打ちパスタの楽しみとは何だろう。粉を吟味し、生地の厚みや細さを決めて、かたちを選ぶ、それらは全て自分自身の選択だ。パスタという調理する前の段階の食材を自分好みにコントロールしていくことは、料理とはまた少し異なる、自分だけの作品を作り上げる喜びを与えてくれる。

難しく感じる手打ちパスタも、パスタマシンで得意料理のひとつとなるはず
次の週末は大切な人を招き、手打ちパスタで自慢の一品を披露しよう。前夜に生地をこねて冷蔵庫で休ませて、ソースを事前に準備しておく。当日はゲストが来る前に、パスタマシンでフレッシュなパスタを用意しておきたい。

大切な人のために、お店に負けないひと皿を作りたい
特別な一品を大切な人と囲むひと時、それは会話や料理を中心に奏でられる一度きりのアンサンブルのようなもの。そしてパスタを手打ちで作る時間、パスタマシンに生地を通し、厚さを調節しながら、それを食すゲストが喜ぶ顔を想像するひと時。それは作り手だけに聴こえる幸福なプレリュードなのかもしれない。