浜松町からほど近く、都心の喧騒を忘れるような非日常体験が叶う「メズム東京、オートグラフ コレクション(以下、メズム東京)」。このモダンラグジュアリーホテルが提供するのは、絵画をモチーフとした五感を魅了する大人のためのアフタヌーンティーだ。歴史と芸術に裏打ちされたメニューと、洗練された空間で過ごす時間を堪能してみてほしい。
クリエイティブな体験ができるモダンラグジュアリーホテル
JR浜松町駅から歩くこと6分ほどにある「メズム東京」は、これまでのホテルのイメージを一新するような新しい体験ができる施設だ。エントランスに足を踏み入れた瞬間から五感を刺激する魅力的な構成になっている。ヨウジヤマモト社の旗艦ブランドである「ワイズ(Y's)」のユニセックスライン「ワイズバングオン(Y's BANG ON!)」のユニフォームに身を包んだスタッフは「タレント」と呼ばれ、ひとりひとりの自分らしさが輝く働き方をしている。エントランスに立つスタッフが胸に手を当てるのは “心から……”という意味。メズム東京のタレントは皆、このような形で挨拶してくれる。
こちらは1F エントランスアプローチへのインスタレーション。箔貼りされたスクリーンは、俯瞰で見た東京を抽象化した構図になっているのだそう。スクリーンの裏を覗くと無数のリンゴが見える幻想的な作品だ。
ロビー階に上がると、眼下には美しい浜離宮恩賜庭園と水辺の絶景が広がり、心地よい香りと音楽がさりげなくもてなしてくれる。
全265の客室は、旅行者のみならず東京在住の方にもファンが多い。快適なホテルステイが叶う上質な調度品はもちろん、本格的な音楽体験を提供する高性能デジタルピアノも全室に置かれている。腕に覚えのある人は、ぜひ。
名画をモチーフにしたアフタヌーンティー
さて、今回ご紹介するのは今シーズンいただける「アフタヌーン・エキシビション チャプター12『砂糖壺、梨とテーブルクロス』」。近代絵画の父とも呼ばれるポール・セザンヌの静物画「砂糖壺、梨とテーブルクロス」が題材となっている。
数々の名画をテーマに展開するアフタヌーン・エキシビションは、今回で12回目を迎える。
セザンヌは19世紀の印象派と20世紀に誕生したキュビズムの橋渡しになった画家で、小説家エミール・ゾラらとともに、文化、芸術の分野に新しい潮流を生み出した。「りんごひとつでパリを驚かせたい」という名言と共に独自の技法を確立し、当時の美術に革新をもたらした人物だ。
本アフタヌーンティーは、セザンヌの静物画「砂糖壺、梨とテーブルクロス」の世界観をそのまま表現したメインプレートと、セザンヌの生涯とフランスの歴史を遡るセイボリー&スイーツという構成になっている。
とくに目を惹くのが、こちらの梨と青リンゴのメインプレート。リンゴを象った氷菓「ヌガー・グラッセ」と洋梨を使用した「ポワール・ベル・エレーヌ」といったフランス伝統スイーツによって絵画の世界を再現したもの。奥には、「モエ・エ・シャンドン」を使用したグラニテで砂糖壺の砂糖が再現されている。
梨の方は、生クリームとメレンゲの中にチョコレートと洋梨のコンポートが入っている。青リンゴの方は、中にリンゴやキャラメリゼしたアーモンドなどが入り、食感も楽しく、口の中に広がるリンゴの風味が心地いい。
梨とリンゴはチョコレートやカカオバターに色を溶いたものを吹きかけて着色しているそうで、絵画の色彩に合わせて微細な調整を加えた。砂糖壺に見立てる容器探しには少し苦戦したそうで、ホテル中を探し回ってようやく見つけたものなのだそう。
さらに、全体のバランスにもこだわっており、メインプレートが重たいと、セイボリーまで楽しんでもらえないということから、メインプレートの2品はメレンゲをベースに軽い食感を目指したという。
歴史背景を味わう。セイボリーにも注目
こちらのかわいらしい8品にもご注目。これらは作家の軌跡を反映するように並べられた長いセイボリー&スイーツのプレートで、セザンヌの生涯を表現した構成だ。それぞれの料理に込められた物語が、知的好奇心と感性を刺激してくれる。写真左から順に紹介していこう。
Fougasse|フーガス
南仏発祥のシンプルなパン。オリーブオイルと塩が引き立つ素朴な味わいが特徴。セザンヌはプロヴァンス地方出身で、このフーガスもプロヴァンス発祥と言われている。
Quatre-Quarts|カトルカール
18世紀から続くフランスの伝統的焼き菓子で、名前は日本語で「4同割」という意味。小麦粉、バター、砂糖、卵の4つの材料を同量ずつ使用して作る。
Vacherin|バシュラン
メレンゲとアイスクリームで構成される冷たいデザート。フランスの星付きレストランでも定番デザートとして提供される、パリの人気デザート。
Mille-Feuille|ミルフィーユ
パイ生地とクリームを何層にも重ねたフランスの定番菓子。17世紀に誕生し、19世紀にパリの人気パティシエ、アドルフ・セニョのスペシャリテとして人気を博した。
Ratatouille|ラタトゥイユ
ナスやトマトなどの野菜を煮込んだプロヴァンス地方の伝統的な郷土料理。
Paris-Brest|パリブレスト
1891年から開催されているパリ・ブレスト・パリという世界最古の自転車レースを記念して作られた、シュー生地を自転車の車輪に見立てたお菓子。
Croque-Monsieur|クロックムッシュ
パリ、オペラ座近くのカフェで人気となり、マルセル・プルーストの小説にも登場する、ハムとチーズを挟んで焼き上げたホットサンドウィッチ。パリのカフェ文化を象徴するメニュー。
Calisson|カリソン
エクス=サン=プロヴァンスの伝統菓子で、9月の第一日曜日に、カリソンに感謝する祭りが教会で行われる。アーモンドペーストと砂糖の繊細な甘さが特徴。本場のものはもっと大きいが、今回のメニューに合わせて全体的に小ぶりに作られている。
ペアリングモクテル&ティー
ドリンクは2種類あり、スイーツとセイボリーとのペアリングを楽しむことができる。
ラベンダー香るオレンジスカッシュ
自家製コーディアルシロップを使用したラベンダーの香りをきかせたオレンジベースのスカッシュ。ラベンダーはプロヴァンス地方の名産。オレンジを丸ごと使用したコーディアルシロップを炭酸で割ったもの。
りんご風味のスパイスチャイティー
ノンアルコールのサングリアシロップを入れたチャイティーにシナモンスティックを添えて。3つのメインスイーツが冷たいものなので、チャイティーで温まれるようにとの気遣いも感じられる。
芸術家のアトリエをイメージした「Whisk」
ご紹介したアフタヌーンティーが提供される「Whisk」は、芸術家のアトリエをイメージした独創的な空間。日中は東京の水辺を一望する心地よいカフェとして、夜間は夜景と音楽、アートのライブパフォーマンスが楽しめるバーラウンジとしての顔を持つ。アフタヌーンティー以外の利用も、ぜひおすすめしたい。
こちらで人気なのは、絵画をモチーフとしたコンセプチュアルなミクソロジーカクテルだ。ミクソロジーカクテルとは、これまでのカクテルを構成してきたリキュールやフレーバーシロップを使わずに、新鮮なフルーツや野菜、ハーブやスパイスをスピリッツと呼ばれる蒸留酒と組み合わせてつくるカクテルのこと。混ぜ合わせるだけではなく、さまざまな技法でクリエイトしていくドリンクであり、Whiskのミクソロジストによって生み出されるカクテルやモクテルは芸術性が非常に高く、訪れる人々の感性を刺激してくれる。
五感で味わうアートを存分に楽しんで
「りんごひとつでパリを驚かせたい」と言ったセザンヌ。まさか130年後の日本でこのように楽しまれているとは想像していなかったはず。
アートと美食が交差するひとときを提供するメズム東京のアフタヌーンティー。五感をフルに使ってアートの世界観に浸れる時間は、単なるティータイムを超え、心を刺激する小さな旅へと誘ってくれる。
都会の喧騒を忘れさせるこの非日常の空間で、自分だけの贅沢な時間を過ごしながら、心と感性を解き放つ、特別な体験を楽しんでみてはいかがだろうか。
アフタヌーン・エキシビション チャプター12|『砂糖壺、梨とテーブルクロス』
https://www.mesm.jp/news/AE12.html■提供期間
2024年9月1日(日)~2025年1月10日(金)
■提供時間
平日:14:00~/ 14:30~ / 15:00~ / 18:00~
土日・祝日:14:00~/ 14:30~/ 15:00~
■提供場所
メズム東京、 オートグラフ コレクション16階 バー&ラウンジ「Whisk」
■料金
平日:7,000 円~ (消費税・15%のサービス料込み)
土日 / 祝日:8,000 円~ (消費税・15%のサービス料込み)
CURATION BY
料理とアートが好きなコラムニスト&写真家。
毎日、都内をぐるぐる歩き回っていますが、本当はインドア派。
映画を観ながら、作品に合わせた外国の料理を楽しむことにハマっています。