Vol.726

FOOD

30 JAN 2026

余韻や香りを愉しみながら。進化する芋焼酎×料理で楽しみ方をアップデート

今、焼酎がどんどんと進化しているのをご存じだろうか。クラフトビール、クラフトジンなど、ほかのアルコールと同様、作り手や土地の個性を表現した焼酎が登場しており、原料や蒸留・熟成方法、そして飲み方の進化が著しいのだ。今回は、そんな進化している焼酎と出会うため、今の焼酎シーンをよく知る焼酎専門店を訪ねてみることに。そこで出会ったのが芋焼酎シーンの進化を牽引している「松露酒造」の焼酎。おすすめの飲み方と料理を楽しんでみたら、食中酒としての実力をあらためて実感することができた。

焼酎との出会いを求めて路地裏の酒場へ

2024年に麹菌を使った日本の酒造りの技術と知識が、「伝統的酒造り」として、ユネスコ無形文化遺産に登録された。なかでも日本・九州で発展した米や麦、サツマイモを原料にした蒸留酒、焼酎の製造技術とその伝統は、世界的にも注目を集め、蒸留酒のコンテストでウイスキーやラムなどと共に焼酎が選ばれるまでになっている。

そんな海外での人気に相反し、ここ日本にいる自分は、焼酎を飲む機会が減っていた。実のところ飲む機会があっても、どれを選んでよいかわからず、いつも同じ銘柄を飲んでいて、一歩踏み出せない現状があった。その間、焼酎が、今どんどん進化・多様化していて、海外はもちろん、次世代に向けた焼酎造りをしているという。

名古屋の繁華街から一本入った路地にある「セイハロー」
そんな進化を体験するために訪れたのが、焼酎専門の立ち飲み店「セイハロー」。外観は昔ながらの場末の酒場風情の店だが、扉を開けると、アンティークなスピーカーから上質な音楽が流れ、50銘柄以上の焼酎がずらりと並ぶ。料理も王道和食から洋食、スイーツまで幅広いラインナップで、焼酎との相性を考えてアレンジされた野菜料理が中心。

焼酎のエントリー世代である若い世代から焼酎好きまでを満足させられる、上質で楽しい焼酎体験をと、作り上げたという店だ。焼酎というと九州料理の店など九州ゆかりの店でしか充実していないイメージがあったが、最近は料理と酒を追求した焼酎専門店も増えてきているのだ。

「セイハロー」に並ぶ新酒。11月をすぎると各蔵で新酒がリリースされる
その理由に焼酎のフレーバーが多様化していることがいえる。店にはお茶と一緒に蒸留したものや、スパイスを漬け込んだもの、炭酸割り専用の焼酎などさまざまな焼酎が並んでいて、ラベルのデザインからこだわったものも。飲み方も水割り、お湯割りだけでなく、ハイボールのようにごくごく飲める炭酸割りのスタイルも主流になりつつあるという。店ではカルピス割りや牛乳割りなども提案。料理も和洋中とさまざまな料理を合わせて、そのペアリングを楽しむことができるようになっているのだ。

そんな焼酎を「セイハロー」でいくつか飲み、その飲みやすさとふくよかさに驚かされたのが「松露酒造」の焼酎。セイハローのオーナーである渡邉さんも、松露酒造について、クラシックながらその味わいの繊細さ、奥深さに魅了され、蔵元まで足を運んだという。

「松露酒造との出会いは、蔵元の矢野さんがお店に興味を持ってもらって、来店していただいたのがきっかけでした。矢野さんの話を聞くと、ソーダ割りなど飲み方のアレンジを発信していて、こんなに自由に割って楽しんでいいんだと気づかされた。お店でも新商品のお披露目イベントを開催して、矢野さん自ら楽しみ方を紹介してもらったことも。松露酒造はほぼすべてのラインナップを置いています」という。

今回飲んでみた松露酒造の焼酎
松露酒造の焼酎をいただくと、芋焼酎であるのはもちろんなのだが、その口の中でのふくらみや、後味がよく、今までの焼酎のイメージをくつがえす飲み心地のよさを感じた。さらに飲み方、料理との合わせ方で、さらに焼酎が楽しく、美味しくなっていく…。その組み合わせをもっと楽しんでみたいと思い、セイハローの渡邉さんにご提案いただいた松露酒造の焼酎の4銘柄の飲み方と、料理との組み合わせを体験してみることにした。

焼酎と料理のペアリング①「松露colorful」ソーダ割×酒盗ポテサラ

「松露colorful」は、国際的な蒸留酒のコンペティションでも金賞を受賞したという一本。炭酸割りにも適した軽やかな香りと味わいを目指し、従来の焼酎が苦手な方々にも受け入れられるようにと2017年からスタートさせた銘柄だ。芋焼酎というと、どっしりとした酒というイメージがあるかもしれないが、いい意味でそれをくつがえしてくれる一杯だった。

「松露colorful」は3:7でソーダ割りがおすすめ
“宮崎県産の芋「玉茜」を使い、穏やかな発酵から生まれたまろやかな酒質に、甘く華やかな香りの紅芋古酒を絶妙にブレンド。熟したマンゴーのような立ち香に、紅茶葉を思わせる落ち着きが重なり、口当たりはなめらか。蒸し芋の甘みが余韻に広がります”

という蔵元コメント。白麹仕込みと黒麹仕込みの3年熟成焼酎をブレンドするという、独自のブレンドの妙が生み出すなめらかな風味は、尖ったところがなく飲みやすいけれど、芋焼酎ならではのボディも大切にしていて、ふくよか。

酒盗ポテサラ。ソーダ割りの爽やかな飲み口で、口の中がリセットされて楽しく飲める
そこに合わせるのは酒盗を添えたポテトサラダ。蒸した芋の風味が相似するのはもちろん、塩辛独特の塩味や旨味と、フライドオニオンの食感や香りも加わった重層的な味わいの料理にふくよかな焼酎とバランスが重なる。ソーダ割にすることで、炭酸の酸味や爽快感が加わりすっきりと喉ごしよく、するすると飲めてしまう。そのバランスの良さに、ほかにもこんな料理を合わせてみたい…と想像が膨らんできた。

焼酎と料理のペアリング②「黒麹仕込み 松露」ライムトニック割×鶏タタキ

トニック6:焼酎4の割合で割り、ライムを搾って
“黒蜜のようなコクのある甘い香りとさつまいもの爽やかな香り、ほうじ茶を思わせる香ばしさがあります。十分な甘みがある一方、スムーズで切れが良く、満足度の高い酒質で、お湯割りでは香ばしさ、冷やすと甘みと渋みを伴った旨味を感じられます。赤身の牛肉やジビエなど、旨味が強く噛みしめる料理と、また苺などのベリー系のデザートとの相性も抜群です”

という蔵元コメント。こちらをライムやトニックのほろ苦さや甘味と芋焼酎の風味が驚くほど調和した、焼酎版ジントニックに。レモンではなく酸味がキリッとしたライムにするのがポイントで、蔵元の矢野さんもおすすめの飲み方だという。料理は鹿児島の甘くとろりとした醤油を添えた鶏刺し。甘い香りや心地よい苦味、酸味が鶏の脂をすっきりとさせてくれ、料理も杯もすすめてくれる組み合わせだ。九州の醤油を使うことで、焼酎との相性がぐんとよくなっていると感じた。

皮目を炙った香りがアクセントになった鶏のタタキを甘口醤油で。甘口醤油は九州ではお馴染みの醤油
ほかの焼酎でもこのライム&トニック割りをしてみたが、少し苦味が立ってしまうことが多く、この組み合わせが一番おいしいと感じた、と店の人も太鼓判。割ることで完成するように計算しつくされた味わいに、きっと魅了されるはずだ。

焼酎と料理のペアリング③「松露 襲(かさね)」水割り×牛肉のタリアータ

ワイングラスに注ぐと、より香りが広がる。店の割水は鹿児島の温泉水
次に紹介する「松露 襲(かさね)」は酸をテーマにした、独自製法の焼酎。

“焼酎では珍しく「酸」に着目し、乳酸菌の力を借りて酢酸を生成させ、香りと味に奥行きを持たせた数量限定の芋焼酎です。単体だけでなく、複数回蒸留酒や樽貯蔵品をブレンドし、ブドウやオレンジのような果実香、蒸し芋の甘み、樽香が調和し、5:5の水割り(トワイスアップ)でワイングラスでゆっくり楽しむのがおすすめ”

という蔵元コメント。まずはワイングラスに注いで、その香りを楽しみながら、複雑でふくよかな味わいを堪能してみる。

ローストした赤身肉を、バルサミコ酢を煮詰めた甘酸っぱいソースと共にいただくイタリアの肉料理、タリアータ
合わせる料理は、牛肉のタリアータ。酸味があるというよりは味わいを立体的にしてくれているという印象。ウイスキーでお馴染みの割り方、トワイスアップにし、ワインのようにスワリングしながら傾けると、その香りとボディが喉の奥や鼻孔、その奥にある脳までもじんわり包み込むような感覚に。濃厚な味わいのソースや肉の旨みに負けない、長く飲み続けられる一杯となった。

焼酎と料理のペアリング④「松露 あらた 2025 白麹」湯割り×南瓜のきんつば

焼酎にも新酒があり、秋口がリリースのシーズン。「松露あらた」も松露酒造で毎年リリースしている新酒だ。新酒の持ち味は、風味の力強さ。ともすると荒々しく感じるかもしれないが、そこが新酒でしか味わえない面白さ。ひと月、ふた月と時間が経つにつれ、角が取れていくのを感じながら飲んでいくことができ、変化を楽しめる焼酎ともいえる。

湯割りは焼酎と湯が4:6がおすすめの割合
“完熟したサツマイモ「みちしずく」と白麹、蔵付き酵母を用い、やわらかな口当たりと上品な甘みが特徴の一本です。白麹由来の穏やかな香りと、澄んだ味わいの中に力強さを感じる仕上がり。食中酒としても飲み疲れせず、水割りやお湯割り、ロックなど幅広く楽しめます”

という蔵元コメント。そんな新酒を湯割りにして、その香りを存分に引き出してもらうと、ふわっと立ち上る甘く香ばしい香りが原料を思い起こさせる。原料の「みちしずく」は2022年に開発された新しいサツマイモの品種。完熟させ甘味を引き出すことで芳醇な香りを表現した。合わせるのは、ほっくりとした南瓜にシナモンを加えて作った自然な甘味を主役にしたきんつば。滑らかで口どけのよいスイーツに寄り添う、ほっこり幸せな気分にさせてくれるペアリングだった。

割り方とペアリングでその魅力がさらに花開く

いろいろな料理と合わせてみて感じた松露酒造の魅力は、コースのように、前菜からメイン、デザートまで、幅広く合わせることができる食中酒だということ。割り方次第で驚くほど変化し、自分好みにカスタマイズできる酒だと感じた。そして適当に割ってしまうと、本来の香りやボディが損なわれてしまうことも分かった。トワイスアップにした「松露 襲」に氷を入れて、オンザロックにするなど、飲み進めながらアルコール度を調整して、異なる料理とも合わせていく…なんて楽しみ方をしてみてもいい。

「松露 襲」を味噌のソースを添えた無花果のタルトと一緒に。味噌のコクととろける無花果の甘味、タルトのザクザク。まさに酒に合うスイーツ
そして今回紹介した蔵元コメントを読みながら杯を傾けると、素材や製法に思いを馳せながら飲むことができ、味や香りへの感覚が研ぎ澄まされていくようで面白かった。ワインや日本酒のように蔵元が香りやフレーバーをわかりやすく表現している「松露酒造」。焼酎のエントリー世代や日本ならではのクリエイティブなカクテルを作りたいバーテンダーなど、新しい楽しみ方をしたい人々の心を掴み、もっと焼酎が自由に楽しまれていくのではないかと思った。以前本サイトで取材にうかがった蜂蜜酒ミードを作るメーカー「ANTELOPE」とコラボした焼酎を醸すなど、挑戦をし続ける「松露酒造」の焼酎にぜひ注目をしてみてほしい。

もっと自由に、その可能性を拡げたいと醸し、飲み方・料理を追求する。そんな作り手や酒場との出会いにより、焼酎という飲み物の楽しみ方をアップデートさせることができた今回。割り方はもちろん割の比率だけでもがらりと表情を変える芋焼酎。割ってもその香りや複雑さなどの個性を感じられる松露酒造の焼酎のような商品が、食事のシーンをきっとワンランクアップさせてくれるだろう。自分で選ぶのは少しハードルが高いので、ぜひ焼酎を揃える酒場で体験し、自分の食にマッチした一本を見つけてみてはいかがだろうか。

松露酒造

セイハロー