Vol.565

FOOD

16 JUL 2024

ウィークエンドシトロンで爽やかな梅雨の週末を

ウィークエンドシトロンという名前のレモンケーキをご存じだろうか。聞き慣れなくとも、おそらくほとんどの人が一度は食べたことがあるくらい、馴染みのあるレモンケーキだ。手軽で安価に手に入れられるレモンを使ったお菓子や料理などは、幼い頃母親がよく作ってくれたもの。雨の日も多くなるこれからの季節。ジメジメとした梅雨が明けても、暑すぎて外に出られない夏もすぐそこまで来ている。そんな時に家の中でもできるアクティビティの1つが、お菓子作り。ウィークエンドシトロンは、シンプルな材料、少ない器具でできるので、狭いキッチンで試行錯誤しながら作ってほしいお菓子の一つだ。

ウィークエンドシトロンの発祥とその由来

キュンとしたレモンの香りとグラスアローの美しさが良い
ウィークエンドシトロンは、フランス生まれの伝統的な焼き菓子で、その名前には「週末」という意味が込められている。このケーキは、フランス語で「ケーク・オ・シトロン」や「ウィークエンド」とも呼ばれ、家族や友人との週末のひとときを彩るデザートとして親しまれているのだ。

発祥は19世紀後半のフランスまで遡る。週末に訪れる家族や友人とのティータイムのために考案されたこのケーキは、シンプルながらも贅沢な味わいで、シトロン(レモン)の爽やかな香りと酸味が特徴。レモンの果汁とレモンの皮がふんだんに使われ、しっとりとした食感とさっぱりとした風味の両方を楽しめる。

そして、もう一つの特徴はその美しいアイシング。ケーキの表面を覆うレモンアイシングは、甘さと酸味のバランスがなんとも絶妙。まるですりガラスのような美しさのこのアイシングが、ケーキの保湿性を高める役割も果たしているため、週末を通じて新鮮なまま楽しむことができるのだ。

このケーキの名前には、「週末を楽しむために作られるケーキ」という意味と、作り手の気持ちが込められている。

様々なレモンの品種とその個性

見た目も味も様々なレモンの世界
ウィークエンドシトロンはレモンが主役になるバターケーキだ。レモンは味の主役になることはあまりないフルーツだが、ドレッシングに使われたりジャムやジュースに入っていたりと、実は毎日口にしていると言っても過言ではないほど、たくさん食べられているフルーツでもある。一口にレモンといっても、実は様々な品種と特徴があるのをご存知だろうか。日本のスーパーでよく見るレモンは4種類。

一番メジャーな「リスボン」。果肉は緑色寄りの黄色で、ポルトガルが発祥。日本ではもっともメジャーな、「レモンといえばこれ」というレモンだ。非常にジューシーで酸味が強いのが特徴。

次に瀬戸内レモンで有名な「ビラフランカ」。瀬戸内レモンはこのビラフランカの系統になる。 酸味が穏やかで、ジューシーな果肉をもつ。

同じくポピュラーなアメリカ産の「ユーレカ」。さっぱりとした酸味と豊かな香りでバランスが良い。特に変わっているのが「マイヤー」というレモンだ。こちらのレモンはレモンとオレンジを交雑させた品種で、他のレモンと比較してかなり甘めであることが特徴だ。果皮は薄め、かつ見た目もふっくらとしている。

スーパーに立ち寄って手に取った時には、しっかりと重たみのあるものを選ぶと良いだろう。ドレッシング、デザート、カクテルなどに向いている品種であるので、食べたことがない人には一度食べてみてほしい。

ソーダに入れるだけで湿度と暑さを吹き飛ばせそう

とっておきのウィークエンドをとっておきのレシピで焼いて

ウィークエンドシトロンが大好きな私は、様々な本や店のレシピでウィークエンドシトロンを焼いては食べてきたのだが、「なにか違うな」「もっとこうしたいな」と思いながら試行錯誤して少しずつ配合を変えて作ったレシピを今回ご紹介しようと思う。

今回紹介するレシピは、お菓子作りが初めてでもできるような作り方。材料をどんどん合わせて行けば出来上がりだ。丁寧にブランシール(卵を白っぽくなるまで泡立てること)して作るジェノワーズ法でももちろん美味しいし、バターと砂糖を白っぽくなるまで混ぜるシュガーバッター法で作っても美味しい。

バターと砂糖を白っぽくなるまで泡立てるのがシュガーバッター法
他にも、サワークリームやヨーグルトを入れたり、発酵バターや強力粉・中力粉を使ったりするレシピもあり、可能性は無限大。スーパーで買える買いやすい材料ばかりで作れるのも魅力。

ただ、お菓子や料理を作る時には、ぜひその素材の質にもこだわってみてほしい。高い素材を使う必要はなく、自分が好きだと思った物を選べばいいのだ。そうすることによって、自分に合った、自分の本当に好きなものを作り上げることができる。それを記録しておくだけで自分だけのとっておきのレシピのできあがりだ。

既にあるレシピや配合を少しずつ変えて自分好みにするのが、お菓子作りの醍醐味

ウィークエンド・シトロンの材料と作り方

スーパーで買えるものばかり。粉糖はたっぷり使うのでたくさん買っておこう

ウィークエンドシトロン 1本分(高さ8cm×長さ20cmのパウンド型)

レモン1個から30〜50mlの果汁が取れる。大きさにもよるので、多めに買っておくと安心。焼成温度、焼き時間はオーブンによって左右されるので、我が家の家庭用電気オーブンで焼く時のものを記載しておく。

ケーキ生地

120 g 無塩バター
150 g 粉砂糖
1 個 レモンの皮
70 g レモン汁
3 個 卵(溶いておく)
120 g 薄力粉
アーモンドプードル 30g
6g ベーキングパウダー

レモンシロップ

75 g 水
30 g グラニュー糖
10 g レモン汁

レモンアイシング

200 g 粉砂糖
40 g レモン汁
※オーブンは180℃に予熱しておき、薄力粉とベーキングパウダーはあわせてふるっておく。卵とバターは常温に戻しておくこと

レモンもしっかり絞っておこう。余ったジュースは冷凍しておけばいつでも使える
①バターに粉砂糖を加えて泡だて器で混ぜる。レモンの皮とレモン汁も加える。
②溶き卵を3回に分けて入れ、その都度混ぜ合わせる。
③ふるった薄力粉とベーキングパウダー、アーモンドプードルを加える。ゴムベラに変えて、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。
④170度のオーブンで50分程焼く。中心に竹串をさしてみて、何もついてこなければ焼き上がり。
⑤焼きあがったケーキを熱いうちに型から出す。粗熱が取れたら、上部の膨らんだ部分を切り落として平らにし、上下を返してケーキクーラーの上に置く。

ケーキが冷める前に仕上げをする

オーブンで焼いている間にレモンシロップやレモンアイシングの材料を準備しておくと効率UP。

シロップを打つことを「アンビベ」という
①砂糖と水を合わせて沸騰させ、レモン汁を加える。
②シロップを刷毛ですくい取るようにして生地にまんべんなく染み込ませ、終わったら蒸発を防ぐためにすぐにラップで包み完全に冷ます
 ※シロップは全部使う。トップだけでなくサイドにもたっぷり塗り込んで。
③レモンアイシングを作る。
ふるった粉砂糖にレモン汁を加えて混ぜる。トロトロと流れる状態にしたいので、緩いようなら粉砂糖を、固いようなら水を少しずつ加えて調節する
④ケーキが冷めたらケーキクーラーの上に置いて、クーラーの下には汚れないようバットかラップを敷いておく。
⑥ケーキの上からアイシングを一気にかける。側面が覆われにくいようなら刷毛やヘラを使って塗る。
⑦お皿に乗せて、アイシングが乾いたら完成

グラスアローは生地が透けて見えるくらいにするのが好み
当日食べるより、1日置いてから食べた方がしっとりと美味しくなる。すぐに食べたい気持ちをぐっと我慢して、涼しい場所で一晩置いてから、お好みの大きさにカットして、お供に紅茶を淹れて食べよう。

お気に入りの紅茶、爽やかなレモンの香りに紫陽花を添えて梅雨らしく

ウィークエンドシトロンで週末に爽やかさを

ウィークエンドシトロンは、シンプルでありながらも洗練された味わいと美しさを持つケーキとして、世界中で愛されている。忙しい日常の中で、週末だけは特別な時間を過ごしたいという思いが、このケーキには詰まっているのだ。

ケーキを囲むひとときは、日常から少し離れて大切な人たちと心温まる時間を共有できる絶好の機会となる。その名前の由来の通り、週末にはぜひ友達や家族でこのケーキを囲ってほしい。あなたの作るウィークエンドシトロンが、その豊かな風味と共に、週末のひとときをより一層輝かせてくれるケーキとなりますように。

CATEGORY