春といえば、新たなことが始まるシーズン。入学式や入社式、引っ越しなどで環境ががらりと変わる人も多いだろう。春一番が吹き荒れて桜が満開となり、日に日に日差しは明るくなって心地良い風が頬を撫でる。そんな胸弾む春は何か新しいことに挑戦してみたくなる。例えば日々のティータイム。眺めるだけで心が躍る、大人に似合う軽やかな色彩のドリンクで今の季節を思う存分楽しみたい。
春の季節が似合うドリンクを探したい
日々の暮らしの安らぎの時間とも言えるティータイムや夜のドリンクアワー。その時の飲み物を選ぶ重要なポイントとなるのはまず味で、自分の好みを見つけることは楽しみのひとつでもあるはずだ。だが大人になって嗜好が明確になってくると、新しい味覚にチャレンジすることは徐々に少なくなっていく。
例えば日中に飲むものはコーヒー、時に紅茶と限られており、夜のドリンクタイムはビールかワイン。外食をする時は別として、日常を送る中では既に確固としたルーティンが決まっている。
しかしこうして春が訪れ、爽やかな風の中に身を置いて、色鮮やかな花が咲き出す様を眺めていると、もっと心を弾ますドリンクを欲している自分に気付く。
思えば冬は衣類も多くがモノトーンで、地味な色合いに包まれていた方が落ち着いたものだが、春は違う。心がぐっと軽やかになり、自然と美しい色彩を求めているようだ。ならばこの季節に手に取るドリンクも、色鮮やかなものにトライしてみたい。
ドリンクのレシピ作りはカラーを意識して
カラフルな食べ物や飲み物と聞くと、どうも不自然な色合いのものや毒々しいまでに派手なものが思い浮かび、それらに使われる合成着色料の存在が気になってしまう。だが一度、ビーツを使って食材の色に着目し出してから、天然素材で色を楽しむことが出来るということが分かった。
身体に良い効能を持つナチュラルな素材であれば、安心して日常の暮らしに取り入れることができるはず。そして世界には料理や飲み物に用いられる美しい色彩を持つ天然素材がたくさん存在しているのだ。
飲み物の色のために食材を探すという点にフォーカスを当てると、これまでと違った意識で材料を選ぶことができる。自分が美しいと感じる色彩を持つものはどれなのか、何と組み合わせたら美味しいドリンクが完成するのか、カラーが映える食器はどんなものか。
そう考えだすと普段は何気なく飲んでいるドリンクが、レシピ作りから飲むことに至るまで、どれもが楽しい工程となってくるに違いない。
ラテの種類は無限大。大人のカラーをイメージして
カラフルなドリンクのレシピをと考えて、真っ先に思い浮かんだのが先に述べたビーツだが、料理には使用したことはあるものの、ドリンクとなるとどうだろう?そんな疑問を抱いた際に思い出したのがスパイスのひとつ、ターメリックを使った飲み物のことだ。
ゴールデンミルクとも呼ばれるターメリック・ラテは、ターメリックとミルクを使った、鮮やかなイエローカラーが映えるドリンクだ。
ラテとはご存じのようにイタリア語のlatte=ミルクの意味で、牛乳を使用するため鮮やかな色彩にホワイトカラーが足され、淡いトーンの色合いとなる。大人のためのパステルカラーをイメージして、好みの色と味を探してみよう。更にきめ細かな泡を作るミルクフォーマーを用いれば、お店のようなヴィジュアルと味を楽しめるだろう。
ターメリック・ラテのレシピをベースとすれば、様々な素材を使ったレシピに挑戦することが出来るはず。まずはビーツを使ったレシピからご紹介したい。茹でたビーツを30g、ブルーベリーを5粒ほど、牛乳150ml、はちみつ小さじ2杯、絞ったレモンを適量、すべて一緒にブレンダーで撹拌する。茶こしで濾したものを鍋に入れて温めれば、ビーツ・ラテが完成だ。
ビーツ・ラテのレシピが出来れば、他の色合いのドリンクにも応用が利くはず。そう考えて、抹茶パウダーと牛乳、はちみつを使って抹茶ラテにも挑戦してみた。こちらも淡いグリーンの色合いが美しく、飲めばほっと心を穏やかにしてくれる。
カラフルな飲み物で試してみたかったものが、バタフライピー。日本名で「蝶豆」と呼ばれるマメ科の植物で東南アジアが原産だ。ハーブティーとして親しまれているバタフライピーはその鮮やかなブルーの色彩が特徴で、ドリンクでは他にあまり見られないこの色をぜひ使ってみたいと思っていたのだ。
バタフライピーそのものは味に特徴がないため、他の飲み物に合わせやすいのも嬉しい。濃いめに淹れたバタフライピーにミルクを合わせて温めたり、あるいは熱いバタフライピーにミルクフォーマーで作った泡を上から注ぎ、2種のカラーを楽しんだり。今までにない色合いに心も弾むに違いない。
カラフルな冷たいドリンクでリフレッシュ
初夏はもう目前の春先には、汗ばむこともあるくらい天気の良い日が続くことも。太陽が眩しい休日には、カラフルな冷たいドリンクで喉を潤しリフレッシュしてみたい。春先にぴったりなカラーをと、選んでみたのがルバーブだ。
タデ科ダイオウ属の多年草のルバーブは独特の酸味を持つ香りと味が特徴で、加熱すると溶けてしまうのでジャムに使われることが多い。春が旬の季節であるルバーブを使ったシロップのレシピをご紹介しよう。最初にルバーブを400g、3㎝ほどの幅にカットする。
ルバーブのシロップをドリンクとして飲む時は、水や炭酸水を好みの分量足してみよう。レモンやライムを加えても美味しく、スッキリとした飲み心地のドリンクに。ジンやウォッカを足し、炭酸水を加えれば春にぴったりのカクテルとなるだろう。
次に見た目も爽やか、飲んでスッキリのドリンクとして、きゅうりを使ったものを。料理に使うものというイメージが強いきゅうりだが、ドリンクにすると喉越しが良く、その美味しさに驚くはずだ。材料にきゅうり300g、水180ml、ミントの葉5枚、絞ったレモン適量、砂糖小さじ3杯を用意する。砂糖は少量のお湯で溶いておこう。
皮を剥いたきゅうりをカットし、ミントの葉、水、溶かした砂糖を一緒にブレンダーで撹拌する。ザルや茶こしなどで漉し、絞ったレモンを加えながら味を整えれば完成だ。
今年の春は、カラフルなドリンクで季節を楽しむ
思い出せば幼い頃はカラフルな飲み物にときめいて、無理を言って親にせがんだものだった。喫茶店で頼んだきらきらと黄緑色に輝くメロンソーダ、お祭りで味わった色鮮やかなイチゴジュース。
舌を染めるほどに鮮明な色合いの飲み物は、大人になるにつれて徐々に選択肢の中から消えていった。だが木々の葉が濃いグリーンへと変化して、固く閉じた花のつぼみが開き出すこの季節は、あの頃を思い出して華やかなドリンクを楽しみたい。
窓を開ければふわりと穏やかな風が舞い込むこの季節。天然素材が持つ優しく美しい色彩を活かしたレシピを新たに作り、眺めることも味わうことも、すべてが心弾むドリンクで春を満喫してみよう。
CURATION BY
1992年渡英、2011年よりスコットランドで田舎暮らし中。小さな「好き」に囲まれた生活を求めていたら、夏が短く冬が長い、寒い国にたどり着きました。