Vol.399

13 DEC 2022

〔ZOOM in 錦糸町〕地元とつながるコーヒーショップと、ローカルな店巡り

東京スカイツリーのお膝元、墨田区。町工場なども残る、下町のイメージがあるエリアだが、今回紹介するのは、錦糸町駅から北側に広がるエリア。駅南側は飲食店や商業施設などが立ち並ぶ繁華街となっているが、北側はそのイメージとは全く異なる閑静な住宅街で、タワービュー通りなど近年になって整備された通りや親水公園などもあり、人の暮らしが感じられるエリアだ。錦糸町駅から徒歩圏内にはZOOMブランドの物件も2つあるということで、下町の良さと利便性を兼ね備えたこのエリアの魅力をこの地に根ざした小さなコーヒーロースターをきっかけに紹介していこうと思う。美味しいコーヒーで、街と人がつながる。コーヒーを飲みながら店の人に話をうかがっていたら、地域の美味しいもの、心地よい場所を発見できた。

錦糸町駅から押上駅へ向かって歩いてみると…

錦糸町駅南口の風景。商業施設も立ち並び、バスターミナルもある
東京駅へのアクセスもよく、千葉方面から都内への乗換駅にもなっている錦糸町。駅南側は夜の店が軒を連ねる東東京随一の歓楽街だが今回紹介するのは、北側。南側とは打って変わって、マンションなどが立ち並び、それでいて昔ながらの下町風情も残る住宅街だ。

また、このエリアには隅田川の支流、大横川も流れている。川沿いは親水公園となっているので、リバーサイドの環境を活かしたテラスカフェなどもあり、公園内ではフリーマーケットが毎月開催されているという。昔ながらの飲食店や銭湯なども多く、人と人との距離を近く感じることができるエリアだ。

東京スカイツリーが美しく見える通りということで「タワービュー通り」と名付けられた
錦糸町駅北口を出ると、タワービュー通りという押上方面へとまっすぐ続く通りがある。平成28年に完成した通りで、電線類の地中化がされているので、北斎通りから浅草通りまでの約1200mは視界よく見通すことができ、東京スカイツリーが足元付近からてっぺんまできれいに見える。今回訪ねるのは、この通りを歩いて10分ほどの場所にある店だ。

通りには電柱がなく、まっすぐ奥に東京スカイツリーがそびえる

地域に根ざしたロースター「BERTH COFFEE ROASTERY Haru」

タワービュー通りに面したロースタリー
「BERTH COFFEE ROASTERY Haru」は、タワービュー通り沿いにある、ロースタリー&コーヒースタンド。以前本記事でも紹介した、両国にある「Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE」の系列店で、 各店のコーヒーはすべてここで焙煎されているという。この店のロースターを務める西村さんは、 もともと「Nui.」で働いており、コーヒー好きが高じて、ロースタリーの立ち上げをまかされることになった。

「BERTH COFFEE ROASTERY Haru」のロースター(焙煎士)西村さんと佐久間さん
「Nui.がある蔵前に近い場所でロースタリーを作りたいと物件探しをし、街を散策していたときに見つけたのがこの物件でした。大家さんもコーヒー好きだったことから、スムーズにお店を借りることができました」

インポーターから取り寄せた、世界中のスペシャルティコーヒーが並ぶ
「BERTH COFFEE」で提供しているコーヒーはすべてスペシャルティコーヒー。スペシャルティコーヒーとは、農園や産地名を冠した、その土地の個性や作り手のこだわりが詰まったコーヒー豆のことで、ワインでいうテロワールを感じることができるもの。西村さんは、浅煎りから深煎りまでさまざまな焙煎方法を豆に合わせて選び、豆が持つ本来の風味や味わいを感じられるコーヒーを目指す。基本的には浅煎りで、深煎りでもシティローストと呼ばれる中深煎りぐらいまでの深さで。あまり深く焙煎せず、豆の味わいを引き出すことに重きを置く。

2021年オープンして以来、街にゆっくりと溶け込んできた「BERTH COFFEE ROASTERY Haru 」。店には、コーヒー好きはもちろん、近所のおじいちゃんおばあちゃん、旅行者、外国人などさまざまな人が訪れていく。パティシエが作り上げたコーヒーに合うお菓子もあり、日々のルーティーンに、休息のひとときに、人々がコーヒーを楽しんでいく。

コーヒーの美味しさに寄り添うようにと創作した「あんこカヌレ」は「BERTH COFFEE」定番の焼菓子

さまざまなイベントやコラボで地域の魅力を発信

店の開業をきっかけに、同じ墨田区に住むようになったという西村さん。日々自転車で店まで通勤しながら、このエリアの魅力を実感しているという。「道も比較的平坦なので走りやすいですよ。小さな焙煎所が多く、コーヒー巡りをして楽しむ人も多いようです」。

西村さん自身もコーヒーが好きなので焙煎所をチェックしているのはもちろん、街で暮らす中で見つけた気になる店に立ち寄るようにしている。一緒に何かできそうと思った店には声をかけて、コーヒーを通したコラボレーションを積極的に提案しているという。

「バナナファクトリー」に作ってもらった「コーヒーバナナシュークリーム」。クロッカン入りのシューにたっぷりのキャラメルクリームとコーヒーカスタードクリームを詰めた
そんなふうにして自身が見つけて声をかけた店のひとつが、向島にある「バナナファクトリー」。バナナを使ったスイーツとドリンクが楽しめるバナナ専門店で、西村さんが店に声をかけ、コーヒーを使ったシュークリームやケーキを特別に作ってもらい、期間限定で販売した。バナナは香りや味わいのニュアンスがコーヒーと似ているところがあり、よく合う食材。きっと楽しいコラボができると思い声を掛けたとか。

バナナファクトリー

住所:東京都墨田区向島3-34-17
営業時間:11:00-19:00
店休日:火・水曜日
https://www.instagram.com/bananafactory877/

「オフコーヒー」の手焼きのたい焼きと「BERTH COFFEE」のコーヒー。パリパリの皮が手焼きならでは
「ほかにも京島にある古い長屋で同じ自家焙煎のコーヒーショップを開いている『オフコーヒー』さんは、お店のたい焼きを食べたら美味しくて。一匹ずつ焼いてくれるいわゆる天然もののたい焼きをコーヒーと共に楽しめます」。西村さんがぜひ自分の店でもたい焼きを焼いてほしいとお願いしたところ、快く引き受けてくれたそう。特別な餡も創作してくれ、「BERTH COFFEE」とたい焼きとの楽しいコラボが実現することに。

off COFFEE.|オフコーヒー

住所:東京都墨田区文花3-2-1 踏切長屋内
営業時間:火-金 10:30-19:00 / 土・祝 9:00-18:00
店休日 : 月曜日&日曜日
https://www.instagram.com/off__coffee/
西村さんは銭湯が好きで、よく行くそう。地元の銭湯「押上温泉 大黒湯」の名物にもなっている日替わり湯で、「コーヒー湯」を作ってもらったこともあるという。「バナナファクトリー」のバナナの皮を使った「バナナの湯」を見かけ、バナナでできるのならばコーヒーでもできるのでは? と思い声を掛けた。使用しているのは廃棄してしまうテストローストの豆だ。またロースターとしても、いろいろな店からオリジナルコーヒーのオーダーを受けていて、大横川沿いのホテル「KAIKA Hotel」のレストランカフェ「safn°(サフン)」もそのひとつ。safn°の朝食でコーヒーを飲み、美味しかったから…と立ち寄ってくれる人もいるという。

枠にとらわれすぎず、美味しいものを紹介したいという思いでコラボに取り組んでいる西村さん。その素直な思いを原動力に、点と点だった地域の魅力が、「 BERTH COFFEE ROASTERY Haru」という場所を通してつながっていく…。これから先、どんな広がりをみせてくれるのか、とても楽しみに感じた。

さらにディープにエリアの魅力を発掘

「美味しいもの好きのお客様が多く、お客様から美味しいものの情報を教えてもらうことも多いです」という西村さん
「ここに来れば美味しいものと出会える」と期待されている方も多く、それに応えようと、通勤時はもちろん、旅先などでもコラボができないかと常にアンテナを張っている西村さん。そんな西村さんに、近隣でよく通っている店を聞いてみると、個性的で、地元に根ざしてがんばっている店をいくつか教えてもらえた。

打ちたて、茹でたての透き通った麺が美しい「きわだち」のひやむぎ
すぐ近所にあり、そのつるつるもちもちの麺に驚かされたと西村さんがおすすめしてくれたのが「特選ひやむぎ きわだち」。ひやむぎ専門店自体がとても珍しいのはもちろん、店主はもともと蕎麦職人で、全粒粉を配合した打ちたて茹でたてのひやむぎを提供している店。ここでしか 食べられない味を求め多くの人が訪れているという。

店主の永井さんがすべて一人で作っているというコシのある麺は小麦の香り豊か。茹でたてを冷水で締めたざるのほか、さまざまなアレンジを施したスープや出汁で楽しむ温かいメニューもある。ひやむぎというと夏のイメージがあるが、季節限定のメニューも豊富で、いつ訪れても飽きさせない店となっている。

特選ひやむぎ きわだち

住所:東京都墨田区太平1-22-1 ソラナ錦糸町 102
営業時間:12:00-15:00 18:30-21:00 (L.O.30分前 / 木・金はランチのみ)
店休日:火・水曜日
https://kiwadachi.com/

タイ料理店が多く、リトルタイランドとも呼ばれている錦糸町駅周辺
また、錦糸町駅周辺はタイ料理やインド料理などエスニック料理店が多いエリア。西村さんもカレーなどのエスニック料理が好きということで、教えてくれたのが「タイランドショップ」だ。この地で40 年以上前からタイの雑貨や食材を販売するグローサリーショップで、現在はショップの一角に食事を楽しめるスペースもあり、ローカルな料理が現地のスタッフにより提供されている。

人気は米麺が入ったヘルシーな汁麺。鶏ガラをベースとしたスープなので現地では朝から食べることも多い人気のメニューだ。「タイランドショップ」で扱うタイの野菜は日本で栽培しており、パクチーやパパイヤなど、新鮮な品が料理に使われているのも美味しさの理由。タイ人にも日本人にも長年親しまれている。

甘くて酸っぱいソースがタイらしい、パパイヤのサラダ。汁麺などに砂糖や酢、チリソースなどを自由にかけて好みの味にするのがタイ流の楽しみ方

タイランドショップ

住所:東京都墨田区錦糸3-7-5
営業時間:ショップ12:00-21:00、レストラン13:00-20:30 *早めに閉店する場合あり
店休日:月曜日
大横川親水公園のすぐ近くに店を構え、「BERTH COFFEE ROASTERY Haru」と同じくコーヒーを提供し、憩いのスペースとなっているのが「PERK SHOP」。ボタニカルショップとカフェが一緒になった、建築デザイン会社が営む店だ。

西村さんはここで植物を購入したことをきっかけに店長の八田さんと仲良くなり、交流しているそう。「店を開いた時期がちょうど同じ頃で、仲間のような意識があります。タウンマップを作って街の魅力を一緒に発信していこうと、相談しているんです」

グリーンを選びながら、コーヒーを楽しむことができる「PERK SHOP」
PERK SHOPではアーティストの個展を開催したり、アーティストとコラボしたオリジナルの商品を販売したりしており、日々の暮らしを彩るアートな品々と出会うことができるはず。PERK SHOPからすぐの場所にある大横川親水公園は散策道も整備されていて、晴れた日にコーヒーを持って散策しても気持ちがいい。今回紹介した店を訪ねながら街歩きを楽しんでみてはいかがだろうか。

PERK SHOP|パークショップ

住所:東京都墨田区太平1-1-6
営業時間:第1・3日曜 9:00-17:00 / 水-土 12:00-19:00
店休日:月火、第2・4日曜
https://www.instagram.com/perkshop_jp/

自転車も通ることができる、大横川親水公園

美味しいコーヒーとお菓子で人と店がつながっていく

街やコーヒーとつながることができる、コミュニティスペースへ
「Haru」という店の名前には「帆を張る」「根を張る」という2つの思いが込められている。小さいながらも、どんな風も受け止めようと帆を張り上げた船で旅をするように、さまざまな人を乗せながら、わくわくする出会いがある店に。また、大地に根を張るように、コーヒーカルチャーを深く追求できる専門性を持つ店であるように。
そんな思いを胸に、日常にスペシャルティコーヒーを、そしてロースターをもっと地域の身近にとさまざまな取り組みをしている西村さん。焙煎機を貸出しするシェアロースターというサービスもしており、BERTH COFFEEで使用しているのが日本でも数少ない焙煎機ということもあって、プロをはじめ、コーヒー好きが多く利用してくれているという。 街の魅力を知るきっかけに、美味しいものとの出会いが広がるコーヒーショップへ。そして、下町スピリッツが若い世代にも受け継がれているこのエリアの魅力に触れてみてはいかがだろうか。

BERTH COFFEE ROASTERY Haru

住所:東京都墨田区横川2丁目7-2
営業時間:平日 11:30-18:30 土日祝 8:00-18:30
店休日:木曜日

https://backpackersjapan.co.jp/berthcoffee/haru
https://www.instagram.com/berth_haru/