Vol.112

UNIQUE

13 MAR 2020

やさしい音色を奏でる「ハンドパン」とは? 奏者 峯モトタカオさんに訊く、その魅力

ハンドパンという打楽器をご存知だろうか。鉄製で楕円の端を潰したような形、大きさは両手で抱えるほど。どこか力強さを感じる外形とは反対に、その音色は至極繊細で美しい。空間に、そして、身体中にやさしく響き渡る音は聞く者の心を揺さぶることだろう。

A ray of light / 峯モトタカオ(ハンドパン奏者) MV

今回お話を伺ったのは、日本ではまだ数少ないハンドパン奏者 峯モトタカオ氏(以下、峯モト氏)。そもそも、この不思議なハンドパンとはどのような楽器なのか? そして、その魅力や可能性について伺うべく、神奈川県にある峯モト氏のスタジオを訪ねた。

誕生から約20年! スイス生まれのハンドパンとは

ハンドパン奏者 峯モト氏
原型となる楽器「ハング」がスイスで誕生したのは、1999年(現在は生産終了)。その後ハングという名前が商標登録されていたことから、現在のハンドパンという名前でヨーロッパとアメリカを中心に世界中で製造され、メーカーの数は今や300を超えるまでになったといわれている。国内で唯一ハンドパンを製造しているメーカーは、東京都大田区にある『SONOBE』。峯モト氏自身も、このSONOBEの作るハンドパンの音色に魅了されたひとりだという。

体から遠い場所に、いちばん小さいくぼみが来るように抱える。中央真上の一番低い音から順にくぼみのサイズが小さくなるほど高音になる
基本は座った状態での演奏がメイン。肘・手首・指の根元の関節をやわらかく使い、指の第一関節のおなかの部分をハンドパンのくぼみの外側に当てる。跳ね返すイメージで、なるべく指とハンドパン自体があたる時間を少なくするのがコツ。うまく奏でられれば、「トーーーン」とのびやかな音が空間に、身体に心地よく広がる。

スタンドを使い、立って演奏する場合もある。曲などに合わせ、ハンドパンの台数は変わる
楽器としての特徴は、音楽の3大要素であるリズム・メロディー・ハーモニーを1台で表現できること。また、個々のハンドパンによってスケール(音階)が固定されている。表面にあるくぼみは9個のものや14個のものがあり、「くぼみの数=音域」だ。そのため、楽曲によっては、4、5台のハンドパンを同時に使いこなさなければならないのだ。

他にもユニークに感じたのは、奏者に委ねられた自由な奏法だ。基本の奏で方はあるものの、楽曲に合わせ叩く場所や出す音色に決まりはないそう。また奏者によって、出てくる音色や音楽性も異なるという。現在、国内でのハンドパン所有者は300人以上、約15人の奏者がいて、メディア露出やSNSの影響もあり、ここ1年で知名度の向上を実感していると峯モト氏は語る。そんな峯モト氏自身が、ハンドパンに出会い奏者となるまでの経緯を伺った。

人々を癒し、世界を旅するハンドパン奏者

2018年、ギリシャのサントリー二島にて演奏を行った
もともとは、パーカッショニストとして活動していた峯モト氏。はじめてハンドパンと出会ったのは約7年前でハンドパンの動画をYouTubeで見かけたことがきっかけだった。その音色に魅了された峯モト氏は現物を探し求め、2015年にSONOBEのハンドパンを入手。当時は教えてくれる人もいなかったため、独学で学びを深めていったという。

訪れた国の異なる文化や環境に刺激を受け、楽曲制作のインスピレーションになることも
「その後仕事を辞め、『世界を旅するハンドパン奏者』として、ハンドパン1台を持ち海外を回っていたんです。はじめはアジア圏を中心に周り、路上で演奏して入ったチップをその日の食費や宿代にしていました。旅をしていてわかったのは、個性的な楽器は好き嫌いが分かれることも多いけれど、ハンドパンは『この音色は嫌い』という方が少ないということ。子どもからご年配の方まで幅広い層に聞いてもらえました」。

「ハンドパンはまだ新しい楽器。しばられずに奏法なども自分で編み出していけます」
峯モト氏の活動の根本にあるのは『音楽で人の心を癒すことができれば』という思いだという。それは、これまでメンタル不調のある方が周囲に多かったことやご友人が自ら命を絶ってしまったという原体験から。その思いが繋がるように、峯モト氏の音楽活動はハンドパンの楽曲制作やライブに留まらず、ヨガやダンス、マインドフルネスのイベントとのコラボレーションと多岐にわたる。

1,300人ほど入る神宮球場でのヨガイベントでの一幕。
筆者の周りでも、マインドフルネスを生活に取り入れるなど「癒し」の体験を求める人は確実に増えてきた。さまざまな情報に溢れた今だからこそ、それぞれに合う心身の緊張を緩める方法を身につけておくことは豊かなことだと感じる。

「僕がはじめてハンドパンの音色を聞いた時、その音色にすごく癒しを感じて。それに、ゆっくり音を奏でるだけでも奏者が一番きれいな音を浴びることができる」と峯モト氏も語るように、ハンドパンの音色は、人々を癒す可能性を十分に備えているのだろう。

よりハンドパンを身近に楽しんでほしい ハンドパンレンタル・レッスンのototo

スタジオを借りた複数人でのワークショップの様子
では、実際にハンドパンを体験したいと思ったら……?

実は、峯モト氏は奏者以外にも、『Rental Handpan ototo(レンタルハンドパン オトト)』としてハンドパンのレンタルやワークショップ、個人レッスンを行っている。「日本でもっとハンドパンに触れる機会を作るために、だれもやってないことをやろうと思って。それに購入しようとすれば、ハンドパン1台あたり20万円台から40万円以上のものもあります。どちらにしても高価な楽器なので、買うには勇気が必要です。だから、現物に触れてもらい、それ以上に自分でやってみたいなという人にはレンタルしてもらう。そこまできてはじめて欲しいと思う人もいるので。そういう段階を作っているんです」。

個人レッスンは、自身の自宅兼スタジオで行う
レッスンやワークショップを訪ねる方は、30代の社会人も多いのだという。「何か新しいことをはじめたい」、「会社でサークルをやっている」など、身近な趣味として取り入れる方の他、自分のための癒しみたいなものを必要として求める方。それに演奏が難しそうに見えるハンドパンだが、今まで楽器に触れてきたことのない方からの問合せも多いのだとか。「ハンドパンの魅力のひとつは、今までさわったことがない人が『やりたい!』という好奇心ではじめることができること」だと峯モト氏は語る。

「レッスンに来る人は、まずは体験してみて、自分が続けられるかどうか明確にしたい人が多いですね」
購入したいと思った時、初心者が選ぶには何を基準にしたら良いのかを尋ねると、「実際に見て、触れて、ビビっときたものを選ぶといいと思います。また、好きな奏者の好きな曲で使われているスケールを基準に購入する方もいます」と答えてくれた。

峯モト氏は日本製、海外製合わせ現在は10台のハンドパンを所有している
また、現在は海外から通販などで購入できるものも増えたが、チューニングなどメンテナンスに出せる工房がないという。その都度、海外に送らなければいけないため費用も時間もかかることは、あらかじめおさえておきたいところだ。

長野県の戸隠神社にてライブを開催。なによりも大自然にハンドパンはマッチする
最後に、インタビュー中、何度も感じたのが峯モト氏のハンドパンへの敬意のようなもの。「例えば、ギターでロック音楽をやるみたいな縛りは持っていないんです。ハンドパンに関わっている方は、同じスタンスの人が多いかもしれないですね。ハンドパン自体に惹かれている。僕もそうですけど、ジャンルは別に何でもいいと思う」。

確かに一度聞くと惹かれ続ける魅力がハンドパンにはある。まずはこの音色を感じてみてほしい。

峯モト タカオ(みねもと たかお)

世界を旅するハンドパン奏者。1985年生まれ。広島県出身。パーカッショニストとして活動する中、2015年5月、日本唯一のハンドパンメーカー『SONOBE』の音に魅了され購入。「ヒーリングを主として音楽で人の心を癒やすことが出来れば」と、ハンドパン奏者として活動開始。現在東京を拠点とし、バスキングやライブイベント、ワークショップ、楽曲提供、ダンスやヨガ、様々な楽器とのコラボなど、日本だけでなく海外でも幅広い演奏スタイルで活動している。

ototo公式サイト:https://www.minehandpan.com/
youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCzTUSwZVG4QVoE3qJ6hkPow
spotify:https://open.spotify.com/artist/4GDGw0rFXAuE8IQizIVbZQ?si=z40zqkscSua4RBWLp9WSnA