こたつでぬくぬく暖まりながらミカンを食べる。この時期の楽しみの一つだ。美味しく味わった後、残るのは中身を失った皮。綺麗に剥けるとちょっぴり嬉しくなる一方、ただ捨ててしまうのは何となくもったいない気がしていた。ふと調べてみると、自宅でも柑橘類の皮でピール菓子を作れるという。それを知った筆者は、好奇心が赴くままにピール菓子作りに挑戦してみた。
ミカンの皮をピール菓子に
冬に旬を迎えるミカン。近年は一年中スーパーで並べられるようになった。夏のミカンは暑い時期に合ったさっぱりとした味わいのものが多い印象で、冬のミカンは甘く味が濃いと感じることが多い。
ミカンと一口で言っても、こたつで食べる印象が強い温州みかんや、デコポンが有名な不知火、ポンカンや伊予柑など、冬だけでも様々な品種が売っている。「紅まどんな」「あいか」など、まるでゼリーのような果肉の新食感柑橘も登場し、冬の柑橘売り場は迷って選べないほどの充実ぶりだ。
どの品種のミカンも魅力的であるが、筆者は昔からのイメージか、「ミカンは手でむいて食べるもの」と思っている節がある。単に包丁で切り分ける動作が面倒に思うだけかもしれないが、小さい頃から繰り返してきた手で剥くという作業に行事的なワクワク感を覚えるとでも言うのだろうか。特に分厚い皮を綺麗に剥けた時に湧き上がる感情は快感と言っていいだろう。
テーブルにティッシュを一枚乗せてその上に剥いた皮を置き、果肉を取り分け口に入れる…この動作を無心に繰り返し、気づいたら剥いた皮が山になっている。その山を見ると「ミカンを食べた」という一種の達成感があるのだ。大人になった今でも、この作業に冬の風物詩的な期待を抱いてしまっているため、スーパーで手に取るミカンはおのずと手で剥く品種になる。だがこの癖が、残った皮でピール菓子を作るという発想のきっかけになったのだ。
ミカンピールを作ってみよう
柑橘類のピール菓子はどんな品種でも作れるようだ。今回は伊予柑を使用した。作り方は色々あるが、基本は皮と砂糖をじっくり煮詰めて乾かす、という至ってシンプルなもの。道具も鍋とザルがあれば作れるため、ぜひチャレンジしてほしい。
皮の4箇所に切り込みを入れ、破けないように慎重に剥き、7〜8mmくらいの太めに切る。
鍋にたっぷりのお湯を沸かし、皮を入れて3分ほど煮てザルにあけ冷水に取る。この作業を3回ほど繰り返し、好みの柔らかさになるまで続ける。
よく水気を切って皮の重さを計る。鍋に、皮の重さの5〜7割の砂糖と皮に被るくらいの水を入れ中火にかける。沸騰したら弱火にし、20〜30分ほど煮詰める。
ザルにあけて汁気をよく切る。天板にオーブンシートを敷き、重ならないように並べていく。100度に予熱したオーブンで少し湿り気が残るセミドライの状態になるまで乾かす。
オーブンから取り出し冷めたら好みでグラニュー糖をまぶして完成だ。オーブンを使わずに、皮についたシロップを適度に拭き取り網の上で乾かす方法もある。短時間で仕上げたい場合はオーブンを使おう。
自分だけのアレンジを楽しもう
伊予柑を使ったピールは甘酸っぱさがダイレクトに感じられる濃厚な味わい。皮のわた部分のほろ苦さがアクセントになってくどくなく、市販のドライフルーツが苦手な筆者でも、一つ、また一つとついつい手に取ってしまう危険な美味しさだ。
伊予柑の他にデコポンでもピール菓子を作ってみた。比べると、伊予柑の皮は肉厚だが、デコポンはそれよりも薄めでわたの部分も少ない。甘酸っぱい伊予柑よりも、デコポンはほどよい甘さでほろ苦さが際立つ大人な味わいに仕上がった。素材ごとの風味の違いを作り比べる楽しさを発見した。
出来上がったピールはそのまま食べるのはもちろん、チョコレートをかけてオランジェットにするのもおすすめだ。その場合は好みだが仕上げのグラニュー糖をまぶさない方が甘さのバランスが取れる。箱に入れてラッピングすればちょっとしたプレゼントにもなる。
他にも、ケーキやパンに混ぜ込んだり、ヨーグルトに混ぜたり、使い道は幅広い。用途に応じて使い分けられるよう細切りにせず大きめにしたり、ドライ状態を加減したりというような工夫もできる。
今はミカンが旬を迎えているが、春先になれば国産レモンが出回る。個人的にはレモン酒を仕込むのがお決まりだが、余った皮でレモンピールを作るのも良さそうだ。夏頃には甘夏や日向夏、夏みかんなど、季節ごとの旬の柑橘で作るのが楽しみだ。
視点を変える、楽しいにつながる
「ミカンの皮がもったいない」という、日常のささいな場面から始まったピール菓子作りだったが、想像以上に奥が深く、探究心がくすぐられるコンテンツだった。手作りの良さを楽しみながら、ゴミを減らすエコな活動もできるのも魅力の一つ。普段当たり前にしている行動でも、少し視点を変えて見てみる意識を持っていたい。
立春を迎え暦の上での季節は、春。まだまだ厳しい寒さの中にも少しずつ春の兆しを感じられる季節。
寒さに負けずに実る冬の果実たちと手仕事をしながら、冬から春へゆっくり移ろう様を眺めるのも、また乙なものだ。
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北国で暮らすフリーのWebライター。お酒と猫に目がない。