物事に凝ると、身体も凝る。心地いい暮らしの環境を整えたとしても、そこで過ごす自身の調子が悪ければ、決して快適な生活を過ごせているとは言えない。身体の凝りからくる痛みや不調を感じた時、整体やマッサージ、鍼灸に通う人もいるだろう。しかしそれ以前に、なぜ身体が凝ってしまうのか、普段の行動を見直す必要があるはずだ。そこで今回フォーカスを当てるのが、デザイン性の高い医療機器を発案する、&MEDICAL(アンドメディカル)の「soft stone back」。このシンプルなアイテム、実はマッサージ機なのである。
集中する時、身体は想像以上に酷使されている
仕事に没頭していると、つい疲労を忘れて身体を酷使してしまい、気づいたら背中や肩がガチガチになっている…。そんな日々を繰り返していたら、いつの間にか背骨の中心が曲がり、慢性的につらい痛みを感じるようになってしまった。鏡で自分の立ち姿を見ても、肩が内側に入り首も前に出て、ひどい有様である。
マッサージにも通っていたし、運動やストレッチも定期的にしている。しかしそれで痛みが取れても、凝りが治るわけではなく、時間が経つとすぐに痛みが元に戻ってしまうのだ。
背中の凝りを根本から改善するためには、普段の姿勢や日常の生活スタイルを見直す必要がある。考えてみると、痛みが和らぐのは、筋肉が温まり血流が良くなった時、肩甲骨がよく動くようになった時、そしていい姿勢をキープできている時だった。
日常的に姿勢の改善を促し、筋肉を温めながらほぐしたい。そこで出会ったのが「soft stone back」というアイテムである。
小石のようなフォルム。マッサージ機「soft stone back」
上質な暮らしと健康なライフスタイルの融合を追求する医療機器ブランド、&MEDICALが提案する「soft stone back」は、驚くほどシンプルな形と場に馴染む絶妙な色あいが魅力のマッサージ機である。
その姿は、下流の河原で見るような、角が取れた丸みのある石のよう。手に取った時に馴染みの良い、ぬくもりのある形状だ。
石は我々日本人にとって古来より馴染み深いもので、庭園の石組みや室内で眺める水石(すいせき)など、鑑賞対象としても好まれてきた。石を見つめることで、自然の風景を感じ取り、侘び・寂びの情緒が引き起こされるのだ。
「soft stone back」のデザインを担当したのは、スウェーデンのストックホルムを拠点に活動するClaesson Koivisto Rune(クラーソン・コイヴィスト・ルーネ)。その名の通り、モーテン・クラーソン、エーロ・コイヴィスト、ウーラ・ルーネの3人組からなるデザインチームである。彼らのミニマルスタイルなデザインは家具、インテリア雑貨、建築と多岐に渡り、世界的にも高い評価を受けている。
Claesson Koivisto Runeは「石のようなマッサージ機」というテーマからデザインを描き起こし、度重なる試作を経て「soft stone back」を生み出した。その姿はモダンでありながら、その形状や質感に自然や侘び・寂びを感じる。医療機器としての機能性を持ちながら、機械であることを感じさせず、部屋の景色になじむ絶妙な佇まい。彼らのデザイン思想に、日本文化への深い理解が含まれていると感じさせてくれる。
身体にフィットさせて使うアイテムは、質感の良し悪しも見逃せないポイントだ。自然の石を感じさせる絶妙なグレーの色合いのファブリックは、ホールガーメント機という編み機を使い、日本独自の技術によって立体的に編み上げられたものを使用。
肌触りが良く、縫い目もシワも目立たないニット素材が採用されている。
ミニマルなデザインに秘められた医療機器としての実力
それでは「soft stone back」を使ってみよう。
まず驚くのは、マッサージや整体を施術してもらう時のように、「寝て使う」という点だ。今までの背中を中心にほぐすマッサージ機は、椅子で装着して使用するものが多かった。しかし「soft stone back」の場合は床に置く。本体の上に仰向けに寝転がると、胸が開き、前に出ていた肩が後ろに下がる。緊張状態にあった筋肉が脱力し、機械を動かす前からリラックスモードにしてくれる。これだけで随分身体が楽になり、気持ちがいいのだ。
動作ボタンはこの2つだけ。電源ボタンを長押しするとスイッチが入り、もみ玉が動き出す。一度スイッチを入れると15分ほど稼働し、自動でスイッチが切れるようになっている。
スイッチを入れた後、さらにもう一度電源ボタンを押すことでヒートモードに切り替わる。背中全体が温かくなり、冷えた身体をぽかぽかと温めながら、もみほぐしてくれる。
もう一つの回転マークのボタンは、もみ玉の回転方向を内回り・外回りに切り替えることができるというもの。もみ玉の力は強すぎず、程よい力加減でほぐしてくれる。シンプルだが、求めていた「姿勢の改善を促し、筋肉を温めながらほぐす」という機能は十分備わったアイテムだ。もちろん医療機器としての効果も、医学的に実証済みである。
健康に暮らすために、日常をデザインする
「soft stone back」を使い始めて3ヶ月近く経つが、慢性的だった背中の痛みはだいぶ軽減した。マッサージだけでなく、体幹トレーニングや、働く環境の見直し、食事改善などを並行して行うのも効果的だそうだ。
機能性が優れたマッサージ機は世の中に数多くあるが、インテリアの景観が損なわれるようなデザインでは、部屋の見える場所に常に置いておくことはできない。しかし、「soft stone back」は使わない時もオブジェのように、部屋の風景の一部として存在してくれる。しまう必要がないので、気になったらすぐに使うことができるのも嬉しい。
気が向いたら、石の上に寝転がり、ぼんやりと天井を眺めながらマッサージを受ける。心静かに過ごせる時間は格別なものだ。
日頃から身体をほぐせる環境を考え、整えることも、ライフスタイルのデザインにつながる。部屋の景観と共存できるミニマルなアイテムが、日々の生活を健康的にしてくれるだろう。
&MEDICAL「soft stone back」
Color Type / Gray
Size / (約)74×34×14cm コード長:(約)185cm
Material / 本体:ウレタンフォーム 本体表地:ポリエステル
¥ 39,000(+tax)
公式HP:
https://and-medical.com/
CURATION BY
フリーライター・エディター。専門はコミュニケーションデザインとサウンドアート。ものづくりとその周辺で起こる出来事に興味あり。ピンときたらまずは体験。そのための旅が好き。