Vol.508

MONO

29 DEC 2023

自分で色を選んで組み立てる、光と花のための花器

光と花のための花器/オブジェクトとして生まれた「Light in Your Colors 299792458 m/s(ライトインユアカラーズ)」。3Dプリントで作られたジョイントパーツと4枚のアクリル板で構成され、一輪挿しとして花を生けたり、飾ることで室内に美しく反射される花器を紹介したい。

Light in Your Colorsができるまで

オーロラタイプのLight in Your Colors
Light in Your Colorsは、Clear / Light Blue / Yellow / Orange / Purple / Blackの6色の中から好きな色を4枚選び、好きな⾊を組み合わせて使うことができるスタンダードタイプと、見る角度や光の入る角度によって全く異なるイメージへと変化するオーロラタイプがある。よく見かけるガラスや陶器などと違い、全く新しい種類の花器はどのようにして誕生したのだろうか。Light in Your Colorsを手がけたデザイナーの三上嘉啓氏にお話を伺った。

三上氏は、植物、自然、人、社会との関係性を主題とし、プロダクトデザインを中心にアートディレクション、コンセプトメイキング、アートワーク制作など領域を越えたクリエイティブを行う。

三上氏は自然に触れる機会が多い幼少期を過ごし、自然物の構造美や原風景に惹かれ、根底に自然への敬意が根付いていった。独立する前はプロダクトデザイン事務所に勤め、家電製品、日用品、産業機械など様々なプロダクトのデザインを担当していたが、「人工物や樹脂が全て悪というわけではないが、当時は環境に負荷をかけてまで造るに値する取り組みなのか、造る事以外の解決策もあるのではないか」と時に葛藤が生じる事があったと話す。

通常タイプのLight in Your Colors*
そこで気持ちを切り替えるため、仕事の合間に個人の作品を製作し、商業的な領域以外でも創作の可能性を模索していくなかで、独立後にコンセプトモデルであるLight in Your Colorsが誕生した。友人のプロダクトデザイナーから3Dプリントをテーマにした制作の機会があり、Light in Your Colorsの初期モデルを製作。制作が開始された当時の2018年頃は3Dプリンタの精度が向上し一般に普及しつつあった頃である。

「物をデザインし、造ることが民主化しつつある流れや、当時僕自身が資本主義に偏り過ぎた表現や体制に違和感を感じていたこともあり、様々なイメージの重なりから、手に取ったユーザーが自身のカラーで構成できる頂点のないピラミッドの花器をつくる事にしました」と話している。

そこから2年後の2020年に大阪中之島美術館のdot to dot todayというミュージアムショップ事業を行うプロデューサーと出会い、構造を改良し製品化することになったという。

フォルムは同じでも色によって全く違う雰囲気を醸し出す*
「当初は5パーツの3Dプリントパーツと4枚のアクリルから成る9パーツの構造だったのですが、構造的にも組み立て手順としても、ジョイント1パーツでの組み立てられる簡潔な構造が良いなと、1パーツで4枚のアクリルをバインドする5パーツの構造に改良し、必要な数量だけつくれる3Dプリントの特性を活かしたプロダクトになりました」と教えてくれた。

個性を映す頂点のないピラミッドの花器

作り方はシンプルで、2・3分ほどで完成*
パーツは全部で6つ。3Dプリントで作られたジョイントパーツ、4枚のアクリル板、試験管が入っている。ジョイントパーツにアクリルプレートをセットしたら、試験管を差し込むだけだ。

真空パックされた袋に入っていて、開ける前から好奇心をそそられる

開けると6つのパーツが出てくる

底がなく、下から見ても楽しめる四角錐のフォルム

ジョイントパーツは、見えない裏面のディテールもデザインされている
好きな4色のアクリルプレートを選ぶことができ、Clear2枚、Orange2枚のように、2枚ずつ色を選んだり、それぞれ違う色を選んだり、4枚同じ色を選ぶことも可能だ。

色の組み合わせも楽しめるLight in Your Colors*
色に関しては植物が活きる色を選んだといい、蛍光色の色板なども候補に上がって試作はしたが、植物を活かす色彩でなかったため見送ったのだという。そうして試行錯誤して誕生した6色であるが、今後も色は増えるかもしれないという。そうなるともっと組み合わせの種類も増え、さらに楽しみも広がるだろう。

インテリアや活ける花に沿って色を選ぶのも楽しい*
オーロラはオーロラ1色のみであるが、見る角度や光の入り方によって色が変わるので、飽きることなく楽しめる。明るい窓辺などでは花器を構成する⾊彩が混じり合い、光に映し出された色と影を楽しむことができる。オーロラは見る角度によってピンクや水色、透明、黄色、紫、青、白などさまざまな色味に変化する。

タイトルに入っている「299 792 458 m/s」は光の速度を表し、光は今という瞬間を時間や場所を越えて人に知覚させる現象であることからサブタイトルにしたという。

Light in Your Colorsの使い方

色の組み合わせは100通り以上*
Light in Your Colorsには、お気に入りの一本を活けて楽しみたい。季節お花や、ふらっと立ち寄った花屋でピンと来た花、散歩中に出会った草花、お気に入りのドライフラワーなど、ぜひ自分の好きな一本を。通常タイプのLight in Your Colorsであれば活ける花との相性でアクリルパーツを組み直したりするのも良いだろう。

オーロラタイプであれば花びらの大きさや色によって置く場所を変えて光の入り方を調整し、インテリアを少し変えて、置き方を工夫して楽しみたい。気分によってさまざまなアレンジを楽しめる。見る角度によって異なる表情を見せるため、その場に新鮮な風が通るような生き生きとしたオーラが漂う。

角度、光量によって様々な色味を見せる

白になったり、黄色になったり、ピンクになったりと見ていて飽きない
三上氏はおすすめの使い方についてこう話している。「窓辺や光の入る場所に置くと見る角度によって色彩と影の落ち方が変化しきれいです。吊るしてモビールとして使っても面白いです。グラフィックデザイナーの方にLight in Your Colorsへのグラフィックを施して頂いた事があるのですが、自身でアクリルに何かを描くのも良いかもしれません。僕は自宅では床の間に置いています」

吊るしてモビールとして飾る使い方も**

花器を通した自然との共生

光にあたって落とす影も美しい
最新の技術である3Dプリンターで作られたジョイントパーツに、日常生活を生きる上で不可欠なアクリルやガラス、そして、自然物である花というさまざまなマテリアルで構成されているが、三上氏はLight in Your Colorsの制作にあたり、こう話している。

アクリルが反射して壁にも煌めきを落とす
「自然との共生を試みる中で矛盾が生じることもありますが、どちらかに偏り過ぎない自然と人の関係性の間に生じる新しい可能性に僕は興味があります。テクノロジーが進むと同時に人は対極にある自然を求めることになると思います。人は自然と共生しようと考えますが、自然にはそのような共生の意思はおそらくなく、時に人智を越える美しくも強い存在です」

また、三上氏は「形が国境や時空を越える可能性もあり、多くの人々の日常に介在できるプロダクトという存在は魅力的」とも話している。個性を映す頂点のないピラミッドの花器であるLight in Your Colorsは、さまざまなボーダーを超え、気の赴くままに好きなようにパーツをはめて、花を活けることで今この時代をより楽しむことを教えてくれた。

花も器も主役として飾る

どのようにLight in Your Colorsを魅せるかはあなた次第
花を活けることだけをメインにせず、花器もメインとし、生活空間に生きたオブジェとして新たな生活の一部になったLight in Your Colors。一輪挿しの文化は平安時代にはすでに始まっていたとされるが、その文化が時代を超えて、現代の技術とデザイナーの思想、美しいデザインによって昇華された。2024年、新しい一年をLight in Your Colorsとお気に入りの花で迎えてみてはいかがだろうか。
*Photo by Katsumi Kawashima / **Photo by Atsushi Matoyama

Light in Your Colors [ Vase ] 299 792 458 m/s

https://yoshihiromikami.com/light-in-your-colors-vase-299-792-458-m-s/

オリジナルカラー:dot to dot today [大阪中之島美術館ミュージアムショップ]
オーロラカラー:Aurora MATOYA Limited
ともに ¥16,500税込