アートは日常を豊かにするもの。アートをたしなむことは、日々の暮らしに彩りを与え、好きな作家の絵が家にあるだけで、生きる活力が生まれることもあるかもしれない。欧米では、日常生活のなかにアートが根付いていて身近にある。自分の好きな作品を選び美しく飾るという習慣は、無意識に芸術の教養を高める行為だ。しかし日本では、アートを日常に取り入れる習慣は少ないのではないだろうか?家で絵を飾る人は多くはなく、美術館や画廊などはふらっと立ち寄るような場所にはなっていない。暮らしにアートをもっと気軽に取り入れることは、人生の彩りに大事なことではないだろうか。
アートとゆったり向き合える空間
東京・清澄白河にある、ギャラリー「ondo STAY&EXHIBITION」(以下、ondo)。東京・大阪のデザイン会社 G_GRAPHICS INC.が、「日常に、自然体で。」「いいものをいい。と言えるシンプルな価値観を大切に」という想いのもと展開している。一軒家を改装して作られたギャラリーは、ふらっと立ち寄ってもらえるように、間口を広くとっており、2階の窓からは、中が伺えるようになっている。内に入ると、木の温もりと、陽の光が全体に暖かさを生んでおり、柔らかい時間が流れている。ある晴れた土曜日、ondoのスタッフ東海林英衣子さんにお話を伺った。
展示のこだわりは無機質なイメージをつけないこと。「暮らしにアートを取り入れてもらいたいという思いがあるので、できるだけ温度を感じられる展示になるように気をつけています。自分の暮らしに、展示されている作品があるとどんなイメージになるか、想像してもらいやすくするためです」。
作家と二人三脚で作り上げる展示
ギャラリーには基本2種類の展示方法があり、レンタルか企画展である。レンタルは、作家に場所を提供する展示方法。一方、企画展は作家と一緒に企画の骨子から話し合って作りあげて行く展示方法。ondoの展示は企画展のみで運営している。そこには、作家を理解してらしさを生かした作品をお客さんに届けたいという想いがあり、一つひとつ作家と共同して作り上げている。1回の展示の期間は約2週間。月2回のペースで運営している。
ondoで展示する作家は比較的若手の作家が多い。「若手の作家は、作品に対する熱量やバイタリティは強く持っているが、世の中に対してのアプローチにジレンマを抱えている人たちが多くいます。そんな作家さんと世の中をつなげていくことが私たちの役目だと思っています」。また、ベテランやある程度経歴のある作家でも、方向性や表現に悩むこともある。ondoは、そういった一人ひとりの今の課題を見つめて、表現していくスタンスを大事にしている。
STORYを感じてもらう
展示中は、できる限り作家にも在廊してもらい、作品のこだわりを作家自身に話してもらうようにしている。展示にきたお客さんが作家の想いに触れることで、作品の裏にある物語を知り、作品を見るのがより楽しくなる。より自分に投影しやすく、共感性や思い入れが生まれるコミュニケーションがondoの特徴である。
今回の取材で在廊されていたのは、楓真知子さん。展示タイトルは「灯すのはひとひらの記憶」。ろうそくを灯すように、自身の記憶や体験を巡り作品を表現していた。ondoの展示を通して自身の心境の変化があったという。「今回の展示を通して自分の漠然としていた、できることと、できないことが分かってスッキリしました。しっかりと向き合ったからこそできた展示です」。
地方や海外の作家たちが、 気軽に東京で発表できる場所に
ondoでは、地方の作家でも気軽に東京で発表できるように、簡易の宿泊施設もある。地方の若手作家が東京で展示をしようとすると、ハードルが高くなる。少しでも出費を抑えられるようにという想いから設置された。これにより、今まで展示が難しかった地方のアーティストの展示も可能になっている。ondoは、暮らしながら展示できるギャラリーでもある。
アートと暮らしの距離を縮めたい
ondoで展示している作品は多種多様。それぞれの作家が感じた「今」を表現していおり、臨場感を感じることができる。「好き嫌いぐらいの感覚でいいからアートをもっと身近に感じてほしい。ちょっと近くに寄ったのでふらっと立ち寄り、絵を見て帰る。そんな普通の暮らしの中に溶け込む場所になりたいですね」。
アートは日常を豊かにするもの。友達の家に遊びに行くような感覚で「アート」を⾒に⾏ってみてはいかがだろうか?
ondo STAY&EXHIBITION
住所:東京都 江東区清澄2-6-12
電話:03-6240-3673
営業時間:12:00 ‒ 19:00 CLOSE ⽉・⽕(展示により変更もあり)
最寄駅:東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄大江戸線「清澄白河駅」A3番出口から徒歩5分
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デザイナー・ライター。ものづくりが好きで、飲むことはもっと好き。クリエイターとして働きながら日々面白いことを探しています。