女の子たちの“けだるい日常”と“Big booty(大きなおしり)”。これらを主なモチーフとし、カラフルなコピック画を生み出す女性イラストレーターがいる。それがlittle funny face(リトルファニーフェイス)だ。
異国情緒漂う作品に描かれているのは、ありのまま自由に振る舞う女の子たち。ひどく酔っぱらっていたり、やる気なくタバコをふかしていたりする彼女らの体型は、どちらかといえばふくよかで肉感的。下着姿や素っ裸のイラストも多いが、人目を気にせず生き生きとしているように見える。
今回は、そんなユニークな作品を発表するlittle funny faceに、これまでの経歴や影響を受けたアーティスト、作品のモチーフなどについて話を聞いた。
little funny faceは、2014年末より活動をスタートした。Instagramを中心にコピックマーカーで描いた作品を発表し、2015年より下北沢や渋谷、南青山などで個展を開催するように。さらには、ニューヨーク州マンハッタンに旗艦店を構え、日本では渋谷などで店舗を展開する、ストリート系ブランドのセレクトショップ「Lafayette(ラファイエット)」とのコラボレーションも発表。最近では銀座松屋での催事出展に参加し、アートワークを使ったグッズと原画、版画の販売も行った。
2018年には、異文化に身を置くことで描きたいモチーフの変化があるか確かめるために、アメリカへ留学。過去に2回訪問し、多くの友人が住むオレゴン州・ポートランドに3か月間滞在した。フレンドリーな住人が多い土地柄もあってか、ギャラリーとのつながりが生まれ、現地でも個展を開催したという。国内外を問わず、アクティブに活動する彼女の姿勢が伺えるエピソードだ。
さまざまな人種の女の子たちが登場し、外国の日常風景を切り取っているようにも見えるlittle funny faceのイラスト。そうした作風について尋ねると、「実は、日本で見た光景もたくさん絵にしています。例えば、友人が酔い潰れた姿を見て、それをモチーフにしたことも(笑)。人物をさまざまな国籍に置き換えて描くので、日本での出来事に見えないのかもしれませんね。」と答えてくれた。
アジア系/アフリカ系/ヨーロッパ系など、分け隔てなくさまざまな人種が登場する理由は、「どんな国籍の人にも、心地良く作品を楽しんでもらいたい」という気持ちや、「国籍関係なく、さまざまな人たちが平等な世の中であってほしい」という願いの表れだという。
彼女が影響を受けたイラストレーターとアーティストは、ミヒャエル・ゾーヴァ/ジャン・ジュリアン/山口晃/五木田智央など。
「羅列すると関連がないようですが、世間に対する皮肉が含まれているところが、彼らの作品に共通していると思います。でも、決して人を嫌な気持ちにさせることはなく、クスッと笑えるユーモアが垣間見えるんです。そうした感覚を、自分の作品にも取り入れたいと考えています」
彼女にとって、映画は創作意欲を掻き立てるインスピレーションの1つ。その証拠に、Instagramアカウントをチェックすれば、お気に入りの映画を題材にしたイラストが数多く目に留まる。フェイバリットに挙げる監督は、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」を手掛けたガス・ヴァン・サントや、「Mommy/マミー」「わたしはロランス」で知られるグザヴィエ・ドランなど。
「このシーンを切り取ったら素敵だな」という観点から、構図や色彩に着目して映画を鑑賞することも多いという。海外の生活風景に思いを馳せられるところも映画の良さだと話す。
little funny faceはなぜ、“女の子たちのけだるい日常”と“Big booty(大きなおしり)”をモチーフにするのだろう? それは、この2つが彼女にとって“普遍の美”だからだという。
「日本では特に、女の子の理想像みたいなものが確立していると感じます。アイドルやアニメの文化が浸透しているからかもしれませんが、かわいらしさやおしとやかさが評価されがち。人間の生々しい部分が見えない方が、良しとされるというか。でも、実際はどんな人にだって手を抜いてしまう瞬間や、他人に見せられない一面があるはず(笑)。私はそんなところに、人間らしさや魅力を感じるんです」
人によってはコンプレックスにもなり得る、“Big booty(大きなおしり)”についても、持論を聞いてみた。
「健康的にワークアウトしている女性はもちろん素敵。でも、無理をせず“ありのまま”で良いとも思います。そう考えるようになったのは、7年前にアメリカを訪れたのがきっかけ。体型が太めでもタイトな服を着る女性をたくさん見かけて、それがとても素敵だと感じたんです。私自身もたくさんコンプレックスはありますが、それを少し許せるようになりました(笑)」
けだるい日常と、コンプレックスにもなり得る大きなお尻。これらを魅力や個性として捉えるlittle funny faceのイラストは、“ありのままの姿”を肯定するメッセージを力強く放っている。
ポートランドに滞在したことで、彼女はこう変わったと話す。
「留学を経験して、描くペースが少しのんびりになりました。今は新しい作品を毎日見てもらうより、1枚1枚に対して思い入れを持ってもらいたい気持ちが強いです。ポートランドでは、フォトグラファーやウェブデザイナー、シェフ、ミュージシャンなど、クリエイティブな仕事をしている人たちとの時間を共有できました。彼らの生活リズムや遊び方を間近で見たからこそ、いい意味でマイペースになれたのかもしれませんね」
と、アメリカ・ポートランドへの留学を経たことで、作品制作への取り組み方に変化が生まれたという。
最近では、男性や動物を描く機会も増えはじめた。オーダーを受け、結婚式のウエルカムボード用のイラストを描くこともある。
「基盤となるものがあれば、作風はブレないと思うので、今後もジャンルを問わず挑戦していきたいです」と意気込みを語る。
2019年5月6日より原宿の「Kit gallery」で開催される個展や、香港のストリートブランド「Made in Paradise」とのコラボレーションなど、活躍の場を広げるlittle funny face。彼女の作品は、現在もInstagram上で日々発表されている。ご覧になりたい方は、下記リンク先よりアカウントをチェックしてもらいたい。