ここ数年で「ビザールプランツ」と呼ばれる珍奇植物を中心に植物人気が急上昇しているが、今に至るための礎を築いてきたのは、昔から愛好家の多い多肉植物だろう。このブームでいろんな植物が台頭する中でも多肉植物は人気の渦中にあり、アガベやユーフォルビアはブームを牽引する植物となっている。今回はそんなユーフォルビアから、頭一つ抜けて人気を集めてる「オベサ」をピックアップし、その魅力をお届けしていこう。
そもそもユーフォルビアとは?
ユーフォルビアと聞いてすぐにピンと来る人は、植物が好きな人以外でそうはいないだろう。ユーフォルビアはトウダイグサ属の植物で、姿かたちのバリエーションが非常に幅広いからだ。多肉植物といえばサボテンのような肉厚な形状を想像できるが、クリスマスでおなじみのポインセチアもユーフォルビアだったりする。
また、ホームセンターなどでユーフォルビアを「サボテンみたいな植物」というポップとともに販売している場合もあるので、見たことはあってもそれがユーフォルビアと認識していない場合も多い。実際にサボテンのように鋭いトゲを持っているものもあるので、植物に造詣の深い人でない限り、ひと目で見分けられることはほぼないだろう。
シンプルだからこそ個性が際立つ、さまざまな表現のオベサが人気
ユーフォルビア・オベサは、ユーフォルビアの中でも極めてシンプルなフォルムを持つ種類。まんまるでかわいらしく、サボテンのようなトゲもないので、男性だけでなく女性からの人気も高い。
以前はシンプルなフォルムを崩さずに大きくすることや、そうやって大きくなっている個体に価値がついてたが、今はまったくの逆で、かつて"失敗作”とされてきた形の崩れたオベサから、いかに面白いものを見つけるかが焦点に。シンプルがゆえに些細な変化すらも強い個性となって魅力へと昇華される。そういったまだ見ぬ個性的なオベサを集めるファンが急増している。
個性派オベサのバリエーションを紹介
個性的なオベサに決まった形や固有名詞が存在するわけでもない。基本、自らの感性を持って良いと思うものを見出すのだが、オベサを専門で扱っているウェブショップ「LIGHTHOUSE.PLANTS」では、オリジナルのカテゴリー分けを行って、興味を持ち始めたビギナーな人でも理想のオールドオベサを探しやすくしている。
今回はそれをもとに個性派オベサのバリエーションの一部を紹介していくので、ぜひ参考にしてみてほしい。
ウェブショップ「LIGHTHOUSE.PLANTS」について
海外の実生株(種から栽培したもの)から1点モノともいえる個性的なオベサを輸入・管理・販売しているウェブショップ。ウェブショップで販売されている輸入株の多くは、鉢に入っていない根だけの抜き苗状態(ベアルート)で販売されていることがほとんど。生命力の高いオベサは抜き苗状態でも充分耐えられるが、LIGHTHOUSE.PLANTSは、消毒と発根管理も行って状態が安定した生育しやすい状態にしたものを販売している。
そのほか、オリジナルでカテゴライズしたものから、好みの株をフィッティング、購入後の育成の相談にも対応。ウェブでの販売が主だが、イベント出店やパートナーシップ契約のお店も増えているので、実物を見て購入する機会も増えている
木質化
生長の過程で表面が木のように固くなることを木質化といい、観賞価値を追求するサボテンでは観賞価値を下げる要素として扱われているが、個性派オベサを求める人にとってはとても重要な要素の一つとなる。
木質化の具合もさまざまで、もはや石質化では?と思えるほど白っぽくなったり、表面がザラついてスウェードを思わせる質感になるものもあったりして、好みの表現を探し出すのもおもしろい。また木質化によって描き出される個性的な模様も見どころだ。
綴化(てっか)、モンスト
綴化(てっか)とは、突然変異によって生長点が一直線に繋がってしまい、生長とともに形が大きく変形すること。植物ではおなじみの現象で、綴化した状態を固定した品種もあったりする。モンストも現象としては同じだが、主に生長点があちこちに出る状態のことを指す。
多頭、群生
一つの株から分頭して2つに分かれているものや、仔を吹いたものを取らず自然に任せてそのまま生長させたものなどさまざま。生長の過程で木質化したり仔のいずれかがモンスト状態にしたりするなどするとさらに個性が際立つ株となる。
アウレア
植物には、部分的に黄色くなったり白くなったりする斑(ふ)入りというものがあって、通常のものよりも個性的な姿に惹かれる人も多いが、オベサにはそれとは別の色合いを纏う個体が稀に登場する。その色はイエロー、レッド、オレンジ、紫などさまざま。明確な名称は付けられていないため、LIGHT HOUSE PLANTSがオリジナルでアウレア(黄金)とカテゴライズしている。
ユーフォルビア・オベサの管理の仕方について
通常のオベサとは大きく異なる姿のオベサであっても管理の仕方に違いはない。日光をしっかり当てて、暖かい時期にはたっぷり水を与える。用土がいつまでも濡れていないように風通しの良さも重要だ。同じような環境を整えられるのであれば室内管理も大丈夫。比較的寒さに強い方だが、寒くなると生長は緩慢になるので、水やりは最小限にして用土が乾くようにしておく。最低気温が10度を切るようになってきたら室内に入れておいたほうがいいだろう。
よく「サボテンは水やりをほとんど必要としないので管理が簡単」「枯らすのが難しい植物」なんてことを耳にし、誰かから駄目にしたエピソードを聞いては事さらに卑下した経験はないだろうか。正直、サボテンやオベサなどの多肉植物の管理が簡単というのは全くのデタラメ。
たしかに水を蓄える植物なので水切れには強いが、水を与えなすぎれば当然枯れてしまうので、気まぐれで水を与えていてはすでに手遅れということもある。かといって、水やりの頻度を高めてしまうとそれはそれで根腐れを起こして枯れてしまう。多肉植物こそ手厚く管理しないとあっという間に枯れてしまう植物なのだ。
枯らさない方法はただ一つ、毎日観察すること。毎日気にかけることで水やりのタイミングが把握でき、些細な変化に気づけて大事に至らないように対処することもできる。「植物に話しかけると良い」みたいなことを冗談で言われることがあるが、意外と馬鹿にできない管理方法といえる。
個性的なオベサを育てて、さらなる魅力に出会う
懸念するところがあるとしたら、どんな形のオベサも、生長すれば生長点を中心に新しい正常な細胞が出来上がって大きくなるということ。ただし、それであらかじめ持ち合わせている木化、綴化、多頭といった個性は生長とともに消えることはないので安心してほしい。むしろ、個性の狭間から生長した部分が覗き出ることが新たな魅力へと昇華されるし、さらなる木化や綴化という表現に出会える可能性も大いにある。
他にはない個性的な姿と、成長とともに新たな魅力と出会える楽しみもあるユーフォルビア・オベサ。一度、植物イベントなどに足を運んでみて、実物を目にしてほしい。
LIGHTHOUSE.PLANTS
CURATION BY
編集者、ライター。まだ見ぬおもしろいモノを探して日々活動中。