Vol.656

KOTO

30 MAY 2025

渋谷スクランブルスクエアや丸ビルにも。植物とのワクワクした暮らしを提案する新しい園芸店・garage

渋谷駅直結の「渋谷スクランブルスクエア」や、東京駅直結の「丸ビル」の中に突然“オシャレなジャングル”が出現!?植物初心者からマニアまで、あらゆるニーズに応える新しい園芸店「garage」が今、注目を集めている。お店のコンセプトや最新の園芸事情について、「garage SHIBUYA」店長の永田怜さんに話を聞いた。

駅直結のビルに、植物に包まれた異空間が

若者や観光客がごった返す渋谷スクランブルスクエア。その9階まで上ってみると、ビルの中なのにまるでジャングルの様相を呈した植物店が現れる。それが「garage SHIBUYA」。オープンして1年、今、人気の園芸店だ。

渋谷駅直結だけあって客層はさまざま。渋谷近辺にお店を構える人が自分の店用に植物を買いに来たり、外国人観光客が盆栽を見て楽しんだりする姿もあるが、一番多い客層は夕方以降、仕事帰りに立ち寄る30~40代の人だという。

本店は愛知県豊橋市にある、文字通りガレージを改装して始まったという「garage TOYOHASHI」。「garage」は現在、愛知県に2店、横浜に1店、そして東京では渋谷と丸ビルに店舗を構えるほか、「garage」とはコンセプトの異なる姉妹店「Rust」「noni」も運営している。

ちなみに「garage」は園芸用品の色合いを植物が引き立つようにシックにまとめ、職人気質の無骨な園芸店をイメージしているという。一方、立川のショッピングモール・GREEN SPRINGSなどにある姉妹店「Rust」は大人の園芸店がコンセプト。特に横浜店と名古屋にある栄店は「大人可愛い」がテーマで、より日常使いのできる手に取りやすいアイテムが揃っている。

キッチンスペース
「garage SHIBUYA」に入店する前から目立つのは、「キッチンスペース」と呼ばれるカウンター。植物の植え替えサービスを行ったり、苔テラリウムのワークショップを行ったりする場所なのだが、文字通りレストランのオープンキッチンのように、作業風景を他のお客さんにも見てもらい、ライブ感を楽しめるのが面白い。

「植物の植え替え作業は、植物が順調に育つと必ず行う時期がやってきます。お客様からも、どうやって植え替えをしたらいいか分からないといったお声を聞くこともあり、いろいろと会話をしながら目の前で実際に見ていただくことで、ご自身の手によって植え替えをする不安が少しでも解消されたらと思っています。ご自分で植え替えを行うとより一層、植物に愛着が湧きますので、土に触れることの楽しさが見ている方に伝わると嬉しいです」(店長・永田さん)

キッチン内の引き出しには植え替え用の土や石が

石や砂利の量り売りも行っている

入口付近
キッチンスペースを越えて奥に入って行くと、植物や園芸用品がズラリ。お店に置いてある植物は卓上サイズの千円程度で買えるものから、20万円する巨大な観葉植物まで本当にさまざま。ただ、植物はどれもマニアに向けた品種ということはなく、初心者でも育成しやすい種類も多く揃っている。

「例えばこの個性的なタコノキは、関東ではなかなかお目にかかれないと思います。garageでは九州や沖縄の生産者さんとのお付き合いが多いため、こういった珍しい植物も入荷することができます。また、土がなくても空気中の水分で育つエアプランツもかなりの品種を取り揃えていて自信があります。もうひとつ心がけているのは、いつご来店いただいても、新しい発見と出会いがあるようなワクワクできる植物を仕入れることですね」(永田さん)

根がタコ足のように出るタコノキ。ここまで大きなものは珍しいという

土がなくても育つエアプランツ

グリーンの品揃え以外にも様々な工夫が

「garage SHIBUYA」はディスプレイにも工夫が。さまざまな植物や園芸用品が一見雑多に置いてあるように見えるが、実はかなり計算されたオシャレな空間づくりがなされている。

「お客様が植物をお部屋に置いた時にイメージしやすいように配置するということを常に考えています。ですので植物も園芸用品もただ並べるのではなく、植物の魅力が引き立つようなディスプレイを心掛けています」(永田さん)

インパクトのある植物の組み合わせ
ちなみに園芸用品の取り揃えもかなりのもの。特に驚きなのは、店の奥に並べられた鉢の種類の多さだ。

「このエリアは『鉢のギャラリー』をテーマにしていまして、渋谷店は系列店の中でも特に鉢の取り扱い数が多い店舗です。こだわっているのは作家さんによって手作業で1つずつ作られた鉢で、全国各地の作家さんからgarageのコンセプトに合う鉢を仕入れています。植物がより美しく、かっこよく見えるような鉢をたくさん取り揃えています」(永田さん)

「鉢のギャラリー」。色、形、大きさ、素材、価格、本当にさまざまな種類が揃っている
鉢の他にも、フランス語で骨董市やガラクタを意味する「ブロカント」と呼ばれる古道具や、「garage」のオリジナルウェアブランド“garage green works”、新潟県三条市の老舗・外山刃物による剪定ばさみなど、ありとあらゆる園芸用品が揃っていて、飾られているものはすべて購入可能。意外な使われ方をされているグッズも多くて、植物の置き方・飾り方も工夫をしてみたくなるようなアイディアが満載だ。

味のあるブロカントのガラス瓶。定期的にヨーロッパで買い付けを行っているという

外国人観光客にも人気が高い外山刃物のはさみ

インテリアアイテムも植物に似合う統一されたトーンで揃っている

植物がブームって本当?

それにしても、「最近植物ブームが来ている」などという話を耳にすることがあるが、いつごろからブームが来ていて、今も本当に続いているのだろうか。実情を永田さんに聞いてみた。

「一番大きなきっかけはコロナ禍でした。おうち時間が増えて、外食や旅行にお金をかけるよりも、家の中で楽しめるものにお金をかけるようになって大きな園芸ブームが起こりました。コロナ禍における植物の需要の高まり方は大変なもので、生産者さんの生産が追いつかないほどでした。弊社は以前より生産者さんとの繋がりを大事にしてきたこともあり、そんな需要過多な中でも何とか植物を出荷していただけていました。

そんなコロナ禍に高まった園芸ブームが、コロナ収束後も一過性のものにならず、趣味として定着した印象があります。特に花屋や園芸店、ホームセンター以外にも、インテリアショップやアパレルショップでもグリーンを扱う店が増えましたよね。さらに花や観葉植物だけでなく、多肉植物や珍奇植物の流行もあり、同じ種類の植物でも様々な品種やバリエーションがあったりするので、購買意欲やコレクター精神に火が付きやすいんだと思います」(永田さん)

大人気の塊根植物や多肉植物。個体差もあるので、同じ種類を集める人も多いのだとか
ちなみに、これから植物を育て始めたい人にもオススメの植物は何だろう?

「最近はアロイド系と呼ばれるサトイモ科の植物が人気でオススメです。たくさんの品種があるフィロデンドロンやアンスリウムは結構レアなものも仕入れていますし、存在感のあるモンステラや、かわいらしくて丈夫に育つポトスは初心者にも育てやすいです」(永田さん)

作家鉢と組み合わせたモンステラやマドカズラ

「garage」の今後

店からは渋谷のスクランブル交差点を眺めることができる。大都会のど真ん中にいながら大自然を感じられるのも面白いポイント
ここまで紹介してきた「garage」について、今後の展望を永田さんに聞いてみた。

「ゆくゆくは海外にも進出したいと思っています。また、豊橋には畑やビニールハウスもあって、弱った植物を廃棄してしまうのではなく、そこで再生させる取り組みも行っています。ただ植物を仕入れて販売する店という役割だけでなく、弊社がテーマにしている『植物と暮らす』が農業の事業も通してもっと循環できればいいなと考えています。

渋谷店では、珍しい品種やかっこいい植物ももちろん大事にしていますが、元気がよく状態がいい植物を自信を持って販売していきたいと思います。これは当たり前のことですが、お客様に買っていただいた後に植物の元気が無くなってしまうのが一番悲しいことなので、とても重要なことだと考えています。『garage』は生産者さんとの繋がりも大事にしているので、生産者さんの苦労や生産の背景、どうやったらよく育つか、そういったストーリーもお客様に直接お伝えできますしね」

何でもネットで買える世の中だが、植物は実物を見て、スタッフさんから育て方を聞いて買いたいもの。さらに「garage」なら、その植物に合う鉢や必要な園芸用品も、インテリアを参考にしながら選ぶことができる。ぜひ「garage」「Rust」各店に足を運んでみてはいかがだろうか。

garage SHIBUYA

東京都渋谷区渋谷2丁目24−12スクランブルスクエア9F
03-6451-1487
10:00~21:00
定休日なし(年末年始休有)
https://garage-garden.com/