ZOOMLIFEを運営するトーシンパートナーズが展開するマンションブランド「ZOOM」シリーズは、2014年度から11年連続・計18棟で「グッドデザイン賞」を受賞している。グッドデザイン賞は、日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組みで、「Gマーク」とともに広く親しまれてきた制度だ。今回はそれに関連して、2024年にグッドデザイン賞を受賞したヘルスケア飲料「ササチャ」を手がけた、株式会社イザナ代表取締役の川原悟さんにお話を伺った。北海道岩見沢市で板金業を営むイザナが、なぜお茶の開発に取り組んだのか。その挑戦の背景を探ってみた。
クマイザサの恵みを、丸ごと一杯に
北海道の山奥に自生する「クマイザサ」のことを聞いたことがあるだろうか。本州でよく見かける「クマザサ」とは異なり、葉が大きく、背も高い。腸内環境を整えると言われているアラビノースやキシロースなどの多糖類を豊富に含んでいる。
そんなクマイザサを使い、新たなヘルスケア飲料として誕生したのが「ササチャ」だ。北海道産のクマイザサを原料に、独自の製法で成分を余すことなく抽出している点が大きな特徴である。
クマイザサは、地元では古くから解熱や整腸などを目的に、民間療法として利用されてきたと伝えられる。しかし、葉を煎じて飲む習慣はあったものの、アラビノースやキシロースが豊富に含まれる茎の部分は、これまで活用されることがほとんどなかった。
「ササチャ」では、この茎に着目し、加圧によって茎の細胞を破壊することで、これらの成分をしっかりと抽出している。笹茶として販売される製品はほかにもあるが、茎由来の成分まで含んでいるものは、非常に珍しいのだという。
パッケージに記されたキャッチコピー「命に喝つ。己に勝つ。」には、「ただ美味しいという理由だけで手に取らず、自分の命や健康のことを考えて食品を選んで欲しい」という願いが込められている。「ササチャ」の原材料は、クマイザサの若葉から抽出したエキスと大葉よもぎエキス、キシロオリゴ糖のみ。添加物を一切使用せず、自然の恵みだけで作られたお茶である。
笹茶自体が、まだ広く知られていない中で、「ササチャ」にはすでに多くのリピーターがいるという。発売からわずか1年足らずで累計5万本を販売した。実際に飲んだ人からは、「お通じが良くなった」「肌が綺麗になった」「体が軽くなった」と喜びの声が届いているそうだ(注1)。
(注1)個人の感想であり、効果を保証するものではありません。
体調不良をきっかけに、クマイザサに出会う
「ササチャ」開発のきっかけは、川原さん自身の体調不良だった。建築職人として屋根の上で作業する仕事柄、朝が早く忙しいため、つい手軽に済ませられるカップ麺で朝食を済ますことが多かった。
そんな生活がたたったのか、胸や頭の痛みを頻繁に感じるようになり、病院に行っても原因不明と言われ、不安な日々を送ることになる。右手がしびれることも増え、ついには救急車で運ばれた結果、首のヘルニアと診断され、入院を余儀なくされたこともあった。ところが、手術するかしないか迷っていた時、親しい社長仲間から「よく寝るように」と言われ、試しにしっかり休養を取り、食生活も改善したところ、不思議と症状が軽くなっていったのだという。
症状が改善したことをきっかけに、川原さんは生活習慣の大切さを痛感し、「もしかしたら日々の食べ物が原因だったのではないか」と考えるようになった。そしてさまざまな健康食品を試す中で巡り合ったのが、クマイザサの原液である。それを飲み続けるうちに、体調が整ってきたように感じていた頃、偶然にも顧問税理士の紹介で、その原液を製造する会社と出会うことになる。
クマイザサの原液はとても苦く、そのままでは飲みづらい。川原さんも水で薄めて飲んでいたが、「誰でも飲みやすいドリンクをつくりたい」と思い立ち、「ササチャ」の開発がスタートした。「ササチャ」はほんのり黒糖のような甘みがあり、これはクマイザサから抽出したオリゴ多糖類による自然の甘さである。
無添加へのこだわり。心から納得できるものをつくる
「既存事業とシナジー効果を持ち、自分の興味のある分野には積極的にチャレンジする」という川原さんの姿勢のもと、イザナグループは板金業以外にも多様な事業を展開してきた。その中で飲食店の経験もあり、お土産を開発したことはあったが、食品事業に本格的に取り組むのは初めてで、想像以上の苦労があったという。
添加物を一切使わないことと、自然で美味しい味を両立させるために、何度も試作と調整を重ねた。容器の選定も大きな課題だった。ペットボトルやアルミ缶も試してみたが、高圧で殺菌処理を行うと”いかにもレトルト”のような風味になったり、食品添加物が必要になったりした。さらに、味以外にもロットや納期の課題も発生した。「人の手にちゃんと届けられるだろうか」と不安になることもあったそうだ。
最終的に採用したのは、中身の劣化を防ぎ、常温で長期保存が可能な特殊フィルムと紙を組み合わせたカートカンだった。間伐材を積極的に活用するため、森林の健全な育成にもつながるとされている。また、手に取りやすい価格にするため、販売価格の調整にも時間をかけた。
自分が心から納得できるものを目指してつくったお茶には、「『ササチャ』を通じて、いのちの大切さに気づいてほしい」という川原さんの強い思いが込められている。日頃何を飲んでいるのかを自問して、身体に不要なものを摂らないようにしていけば、自然と「ササチャ」に辿り着いてもらえるのではないかという期待もしている。
“言いたいことを全部言う”デザインが面白い!
鮮やかな緑にクマの絵が描かれた「ササチャ」のパッケージは、遠目にも強い存在感がある。手に取ってみると、コピーや商品説明が隙間を埋めるように記載されており、情報量が多いという印象を受ける。
シンプルなデザインが主流の時代に、こうした“言いたいことを全部言う”スタンスは珍しいが、その過剰ともいえる表現が面白いと評価され、グッドデザイン賞の受賞につながった。パッケージは川原社長と社内デザイナーによる内製で、「狙ったわけではない」と笑う川原さんだが、自信を持って詰め込んだこだわりが予想以上の評価を得ることになった。
パッケージの緑は北海道の大地を表し、アイコンは、冬眠前にクマイザサを食べるというヒグマをモデルにしている。そこには、北海道から美味しさと、より良いものを届けたいというメッセージが込められている。
グッドデザイン賞は「外部からの評価がもらえたら」と考えて応募したが、地元の岩見沢市にとっては、岩見沢複合駅舎(北海道旅客鉄道株式会社・岩見沢市)に次ぐ2つ目の受賞となり、町の人々も喜んでくれたそうだ。
「ササチャ」を岩見沢市のランドマークにしたい
岩見沢市では、年々人口が減少し、過疎化が進んでいる。川原さんは、「ササチャ」が北海道発であることを打ち出し、町のランドマークに育てたいと考えている。原料となるクマイザサは、実は地元のハンターたちが採取しており、こうした地域の人々との連携があって生まれたものだ。今後はもっと地域を巻き込んでいきたいとも考えている。
そんな思いから、全面を緑に塗ったキッチンカーや工場をつくったり、最近では古いビルの外壁に「ササチャ」の絵を描く取り組みも進めている。また、クマイザサを使った新たな商品開発も構想中だ。現在開発が進んでいるのは、熱中症対策の塩飴で、「笹活」シリーズとして販売する予定だという。
「ササチャ」は公式オンラインショップのほか、東京を中心とする自然食品のセレクトショップ「F&F」をはじめとする、自然派食品のお店で取り扱われている。北海道では、道の駅やセブン‐イレブン、新千歳空港でも販売されているそうだ。
川原さんが「自分に合う」と感じ、理想の形に仕上げた「ササチャ」。一口飲むとほんのりとした甘さが広がり、飲み干したとき、そのこだわりをお裾分けしてもらったような気持ちになった。ぜひ一度飲んで、「自分の命や健康を見直してほしい」という川原さんの思いに触れ、日々の生活を振り返るきっかけにしてほしい。
イザナ|ササチャ
「ZOOM」シリーズのご紹介
トーシンパートナーズの「ZOOM」シリーズは、「SAFETY(安全で、安心する)」「SENSE(センスが刺激される)」「PRACTICAL(実用的で使いやすい)」という3つの価値をコンセプトに、都心での上質な暮らしを提案している。
2024年度は、「ZOOM麻布十番」「ZOOM広尾」の2棟がグッドデザイン賞を受賞している。それぞれ、都心部という制約の多い立地の中で、暮らしやすさと美しさを兼ね備えた設計上の工夫が評価された。麻布十番は構造の工夫によって開放的で自由度の高い空間を生み出した点が、広尾は高層ビルと住宅地の間に自然に溶け込む設計が、特に高く評価されている。
トーシンパートナーズ|ZOOM麻布十番
トーシンパートナーズ|ZOOM広尾
CURATION BY
料理とお菓子作り、キャンプが趣味。都会に住みながらも、時々自然の中で過ごす時間を持ち、できるだけ手作りで身体に優しい食事を取り入れている。日々の暮らしを大切に、丁寧に過ごすことがモットー。