Vol.413

FOOD

31 JAN 2023

グルテンフリーのスーパーフード、ワイルドライスで美味しく食の改善を

英語の「You are what you eat」という諺を、どこかで耳にしたことはないだろうか。これは「人は何を食べるかによって形成されている」という意味になる。自分自身が選び、口にしてきた食材が身体や精神をつくる。そう考えると、健康的な食生活を送るべきだと思うものの、実際に実行するのは難しい。ハードルが高く感じられる食生活の改善を試みる際、おすすめしたい食材がワイルドライスだ。栄養抜群、低カロリーでグルテンフリー、調理は簡単でレシピも豊富。食生活を見直すきっかけと、栄養価の高い食材への好奇心の扉を開いてくれるだろう。

無理せず、美味しく食生活を変えていく

早いもので新しい年となって既に1か月が経過した。新年を迎える度に新たな目標を立てるものの、小さな挫折感を感じるのがこの季節なのかもしれない。その代表が年末年始の暴飲暴食を省みて決意した、今年こそ始めたかった健康的な食生活。

ジャンクなものやインスタントな食品は極力カットし、塩分や糖分、油やカロリーは控えめに。更にビタミン豊富で栄養たっぷりの食事をと決意して、心がけてはみた1月。だが忙しい日々の中ではつい手軽に調理できるもの、簡単に食せるものに傾きがちで、結果、毎年2月ごろになるといつもの食生活に逆戻りしてしまう。

手軽に食べられるテイクアウトや温めるだけのメニューは味も美味しく、その誘惑は断ち切りがたい
ご存知の通り、毎年のように新たなダイエット法やスーパーフードが紹介されているが、それは食をコントロールするのは難しいという表れなのかもしれない。「控えめにすべき」と呼ばれる嗜好食品への欲求は抑え難く、「体に良い」と推奨される食材を日常的に取り入れるのは難しい。

ビタミン、ミネラル、繊維質等が豊富で、健康的な食生活に欠かせないと言われる食材は数多い。だが調理が面倒であったり、レシピが少なかったり、空腹感が満たされない、味に慣れないなどの理由で、結局食べやすい馴染みの料理に戻ってしまう。

ならば主食となる食材に、食べやすくて料理も簡単、レシピも豊富なものを選んでみてはどうだろう。おすすめなものがワイルドライス。栄養価が高く、低カロリーで、噛むほどに香ばしい香りが堪能できるのが特徴だ。

ワイルドライスをヘルシーな食生活の第一歩として活用したい

ワイルドライスの歴史

ワイルドライスはその名に反し実は米ではなく、湖や川床に生成するマコモ属(Zizania palustris)の水生植物であり、約12,000年前の地層から発見されたほど長い歴史を持っている。

主に北米大陸の五大湖(スペリオル湖、ミシガン湖、ヒューロン湖、エリー湖、オンタリオ湖)の湿地帯やその付近の川床が原産地とされている。ネイティブアメリカンのチペワ族やスー族は、タンパク質が豊富で保存も容易、無期限に貯蔵できるワイルドライスを「良いベリー」を意味する「マミノン」という名称で呼んでいたと言う。

湖の浅瀬や川岸などに群生しているワイルドライス。厳しい冬を乗り越えるために欠かせない食材であり、ネイティブアメリカンの部族間では収穫、土地の管理を巡り激しい争いが起こったと言われている
ワイルドライスの伝統的な収穫法は、損傷を防ぐためにボートやカヌーに乗り前方で先端の割れた棒で熟した種子の茎を叩き、中身をボード内部に落として行う。この時種子の4/5は水に落ち、野生動物の餌、もしくは翌年のための種子となる。

17世紀初頭から航海者や毛皮職人などによって持ち運ばれたワイルドライスはやがてその栄養価の高さに注目が集まることとなる。タンパク質やアミノ酸、植物繊維が豊富であり、白米に比べカロリー、炭水化物含有量が低く、脂肪分も少なくてグルテンフリー。現代のスーパーフードと呼ばれているのもうなずける。

右側が調理前の半合分(75g)のワイルドライス。炊くと左側のように約3倍になる
プチプチとした食感が特徴で、噛めば噛むほど香ばしいナッツのような風味が味わえる。ワイルドライスは単品で食すよりも、他の食材と一緒に混ぜて食べるのが向いているためレシピが豊富だ。白米に混ぜたりサラダに入れたりと、自分好みの食べ方を見つけてみたい。

ワイルドライスの炊き方

では早速ワイルドライスを炊いてみよう。ワイルドライスは炊く前にさっと水で洗っておき、炊く分量の3倍以上の水を沸かし、お湯とワイルドライスを一緒に鍋に入れる。なお、お湯は炊きあがった後に捨てるので正確な分量を量る必要はなく、3倍以上あれば大丈夫だ。炊いている間に時々水分量をチェックして、少なくなったらお湯を足していこう。

鍋にお湯とワイルドライスを入れ、蓋をして(蓋に蒸気穴がない場合は少し開ける)弱火から中火で炊いていく

炊いて30分経ったら少量取って味見をし、好みの固さで火を止める

ザルにあけてお湯を捨て、鍋に戻し蓋をして10分ほど蒸らせば完成。炊く時間は30分は固め、40分以上だと柔らかな食感となる。色々試してみて好みの時間を見つけてみたい
なお、調理済みのワイルドライスは1週間ほど冷蔵庫で保存が可能と言われているが、風味が落ちるので2〜3日で食べきることをお勧めする。未調理のものは密閉できる容器に入れ、涼しく乾燥している場所に保存しておこう。

ワイルドライスで試してみたいレシピ。サラダからメインまで

まずは軽めの食事としてサラダに入れたレシピをご紹介しよう。身体に良いものを取り入れたい、でも野菜だけでは物足りないという人に、腹持ちの良いワイルドライス入りのサラダはぴったりと言えるだろう。高い栄養価を持つワイルドライスと同じく、近来スーパーフードとして注目されているザクロを入れたサラダはいかがだろうか。

材料に小さくカットしたキュウリ、スライスしたネギ、ルッコラなどのサラダ菜とカイワレを冷水で洗い、水気を切っておく。炊いた後に冷やしたワイルドライスとザクロを入れ、好みのドレッシングを合わせれば完成。ザクロの代わりにブルーベリーを入れるのもおすすめだ。

疲労回復効果やむくみ改善が期待できるザクロと合わせ、健康を意識したサラダに
まだまだ寒いこの季節、体を温めてくれるスープは食卓に欠かせないメニュー。ダイエット食としても人気の高いスープだが、単品だけではお腹が空いて、つい他のものを食べてしまうという人におすすめしたいのが、ワイルドライスを加えたスープだ。

相性が良いのはバターでソテーしたマッシュルームを添えたクリームスープ。玉ねぎをあめ色になるまで炒め、人参やセロリ、その他好みの野菜と牛乳を加えて煮込み、チキンストック、塩・胡椒で味付けをする。バターでこんがり炒めたマッシュルーム、あるいは他のキノコ類を足して、炊いたワイルドライスを加えて少々煮込めば一品でメインとなるスープが完成だ。

キノコの香ばしさと相性抜群のワイルドライス。腹持ちが良く、一品でメインとなる
ワイルドライスを詰め物にしたものもおすすめのメニューだ。パプリカやジャンボマッシュルーム、ズッキーニに、それらの中身をくりぬいたものと、みじん切りにした玉ねぎとひき肉、キノコ類を炒め、柔らかめに炊いたワイルドライスとカットしたトマトを一緒に詰める。好みでパルメザンチーズを振り、アルミホイルを上に被せてグリルで焼いてみよう。ワインに合うので、ゲストをもてなす際に出すものとしても楽しめる。

前菜として、あるいはサイドディッシュに。ワイルドライスとグリルした野菜を堪能できる
もちろんワイルドライスは他の米と混ぜても美味しい。予め炊いておいたワイルドライスを白米に混ぜたり、インディカ米と合わせてカレーと一緒に食したり。白米の量を減らしたい人や、異なる食感を愉しみたいという人にぜひトライして欲しい。

つい白米を食べ過ぎてしまうという人に。じっくり噛んで味わうワイルドライスを加えてみよう

ワイルドライスを食生活改善のきっかけに

油を使った揚げ物や、塩分高めの味付け、とろけるほど甘いスイーツは食べればやはり美味しくて、分かっていても控えるのは難しい。だが欲求の赴くままに野放図に食べ続けると身体は重く感じるし、動きだって鈍くなる。鏡に映る自身の顔もどこか紐がほどけたような表情で、制御出来ない精神はタガが緩んでいるようだ。

栄養のバランスを無視した食生活を続けていると、健康を損なってしまうこともある。だが身体に良いものを多く採ろうと分かっていても、実際に体調に変化を感じなければ実行することは難しい。

「身体に良い食材を食べている」という意識が、これまでの食習慣を変えるきっかけに
ならば美味しく食べることが出来、飽きることのないものから始めてみよう。少しずつでも暮らしの中に取り入れれば、他の栄養価の高い食材にも興味が湧いてくるに違いない。自分の身体、そして気持ちを整えるのは自分次第。まもなくやって来る春に向けて、ワイルドライスとともに健康的な食生活を始めてみたい。