Vol.327

FOOD

05 APR 2022

オートミールを手軽に毎日の食事に。英国のローカルフード「スタッフォードシャーオートケーキ」

オートミールは食物繊維やビタミンなどが豊富なことから、最近注目を集めているヘルシーフード。小量で満腹感が得られ、便秘解消にも役立つことからダイエットにと食べる人が多くなり、日本でもスーパーなどで販売されるほど身近になってきた。グラノーラに加えたり、お粥のようにして食べたりするイメージがあるオートミールだが、美味しい食べ方が分からない…という人も多いのではないだろうか。そこで今回は、日本ではまだ知られていない、オートミールを使ったイギリスの郷土料理を案内していこうと思う。この味を日本でも楽しんで欲しいと、現地出身の方が作ったプロダクトも紹介。ローカルフードがルーツの古くて新しい楽しみ方を知って、ヘルシーなライフスタイルの一助としてほしい。

オートミール。注目されるその栄養価

オートミールは、オーツ麦(カラスムギ)を脱穀し食べやすく加工したものの総称。日本でも健康志向の高まりにより、オートミールのほか、オーツ麦の形をそのまま残したロールドオーツなど、さまざまなオーツ麦の加工商品をみかけるようになった。もともと欧米で主食として食べられていた穀物、オーツ麦。ドライフルーツやナッツ、蜜と合わせ焼き上げたグラノーラやオーツ麦とドライフルーツのシリアル、ミューズリーなどもオーツ麦を使った食品だ。

蒸してから乾燥させた柔らかく戻せるものや押麦のようなものなど、さまざまなタイプがある。水や、牛乳で煮込んだり、ひと晩浸して作るポリッジは、北欧やイギリスでは朝食の定番
最近日本でもダイエットや糖質を気にする人々の間で注目のフードになっているオートミールだが、その理由は少ない量でも満足感があり、カロリーを抑えられるダイエット食材として注目されたことから。外皮もまるごと加工しているので食物繊維が豊富。そして代謝を促すビタミンB群や筋肉を作る必須アミノ酸などもご飯やパンに比べると豊富に含まれているので、主食の代りに食べる人も多くなってきている。

食物繊維が多いということは消化に時間がかかるので、胃腸が弱い人は少しずつ食べたほうがいいだろう。カロリーとしてはご飯やパンよりも少し低いだけなので、どんなヘルシーなものでも食べすぎは注意だ。それさえ気を付ければ、不溶性と水溶性の食物繊維をバランスよく含んでいるので腸内環境も良くしてくれる、素晴らしいパワーフードといえるだろう。

「スタッフォードシャーオートケーキ」とは。そのルーツについて

しかし、食べ方がわからない…美味しくたべるのが難しいというイメージもあるオートミール。毎日続けられそうな食べ方はないかと探していたときに見つけたのが、「スタッフォードシャーオートケーキ」という英国の郷土料理。スタッフォードシャー州北部で親しまれているローカルフードで、オーツ麦で作った生地にイーストを入れ、発酵させてから焼きあげ、チーズやハムなどの具材を包んだり、挟んだりして食べるものだという。イギリスではケーキといっても甘くないものが多いのだ。

英国ではこのような薄焼きの生地のことをパンケーキという。オーツを使ったパンケーキなので、オートケーキと呼ばれている
そして日本ではまだ知られていないこのスタッフォードシャーオートケーキを製造販売している店があることを知り、その店主Steveさん夫妻に話をうかがってみた。

Steveさんの出身地であるイングランド中西部・スタフォードシャー州は製陶業が盛んな地域。なかでもストーク・オン・トレントという地域に陶器メーカーが集まる。ここで働く陶器工場の人々の軽食として食べられるようになり広まったのがスタッフォードシャーオートケーキなのだそう。200年ほど前から作られている、地元人が誇るローカルフードで、今もストーキー(ストーク・オン・トレントの人、子どもから年配まで)の胃袋を満たすパワーフード的な存在だという。

ぷつぷつとした穴がたくさんあるスタッフォードシャーオートケーキ
元々スタッフォードシャーとその周辺地域は小麦の栽培の導入が19世紀ごろと遅かったこともあり、寒い土地でも栽培可能だったオーツ麦を主食として食べる文化が古くからあった。例えばスコットランドでオートケーキといえば、ビスケットのようにザクザクとした食感のセイボリー(塩味)ビスケット。ダービシャーでは同じような生地だがもっと大きく焼いたもの。

ほかにもかつてはいろいろなオーツケーキが各地にあったという。そしてスタッフォードシャーオートケーキの一番の特徴は、イーストで生地を発酵させることでできるプツプツとした気泡のある生地。薄くクレープのように焼き上げた生地は、この気泡によりソースや卵などが馴染みやすいという効果もあり、見た目と味の特徴となっている。

現地出身の方にうかがう、本場の味わい方楽しみ方

現地では朝食はもちろん、パンのようにメイン料理に添えたり、スープと一緒に食べたりとあらゆるシーンで食べられているスタッフォードシャーオートケーキ。Steveさんに聞くと、チーズやベーコンと一緒に巻いて食べたり、酸味のあるブラウンソースをかけて食べるのが定番なのだとか。

焼き立てを販売するベーカリーのような店がいくつかあり、イギリス人は皆地元愛が強いので、地元の店の味をお気に入りにしている。店によっても味や食感がいろいろあり、200年もの歴史がある食べ物なので、お店独自の秘伝のレシピがあり、店ごとに味わいが少しずつ異なるのだそう。

現地では週末の特別な朝食、フルイングリッシュブレックファーストにオートケーキを添えることもあるとか。ストーク・オン・トレントの器に盛り付けて
ちなみにイギリス人の食事に欠かせないチーズとベーコンだが、スタッフォードシャーではチーズはイギリス最古のチーズともいわれているコクのある「チェシャー」、ベーコンは背中部分の肉を使った脂身が少ない「バックベーコン」が定番とか。日本のベーコンとは異なり、しっかりと肉の旨味が感じられるもので、オーツの香ばしい風味ともよく合いそうだ。

ほかにも焼き立てにバターをのせ、粉砂糖やゴールデンシロップをかけたり、レモンやオレンジを絞ってから粉砂糖をかけるといったシンプルな食べ方でも親しまれている。

「Oatisans」のスタッフォードシャーオートケーキについて

Steveさんは英会話スクールを運営し15年になるが、当初から子供達に異文化や食の大切さを伝えるために食育を取り入れていた。そこでの子供たち、ご家族の皆様の反応が嬉しく、自分が日本で感じる食文化から学ぶ発見と同じように新鮮だったとか。そんな経験から、食を通しての学びの機会を常に大事にしてきたのだそう。

故郷の味を懐かしみ時々日本でも作っていた、スタッフォードシャーオートケーキ。日本で暮らし、その文化に触れるなかで、日本人も食文化への誇りや愛情を持っていることを知る。そんな人々ならば、きっと自分たちが愛するローカルフードも受け入れられるのではないか、そして自分たちが心に抱いてきた異文化理解の奥深さ、楽しさを知ってもらうきっかけになるのではと思ったのがスタッフォードシャーオートケーキを販売する店「Oatisans(オーティザン)」を立ち上げるきっかけだった。オーツ麦を使った便利で健康的な食べ物を知ってもらい、忙しい日々に役立てて欲しい…商品にはそんな想いも込めた。

現地ではグリドルという鉄板で生地を焼き上げるのだが、店を開くにあたって特注のグリドルを用意した
もともと甘くない生地だが、商品化にあたり、食事にもデザートにも、どちらでも健康的に安心して食べられるよう厳選された材料、塩分や風味などを試行錯誤したSteveさん。オーツの香りを活かしたオリジナルの生地を何年もかけて完成させた。素材はオーガニックのオーツ麦や天然酵母を取り入れるなど、体に優しい素材が風味豊かな味わいの特徴となっている。

Oatisansのスタッフォードシャーオートケーキミックス(1180円)と冷凍のスタッフォードシャーオートケーキ(8枚1500円)
そんなOatisansのスタッフォードシャーオートケーキは、店頭はもちろんオンラインショップでも購入可能。生地を瞬間冷凍させた商品は、薄い生地なので解凍なしで、そのまま温めるだけで食べることができる。自分で作ることもできるよう、水や牛乳を加えるだけでオートケーキの生地ができるミックス粉も商品化した。

実際にOatisansのミックス粉を取り寄せ、自分でも焼いてみたが、焼き立てはもちもちとした生地が楽しめた。翌日はしっかり焼き直してカリッと香ばしく。また違った味わいになって面白い。作り方は、ミックス粉をすべて水で解き、30分ほど常温で発酵させる。そうするとぷつぷつと気泡が出てくるのだ。薄く焼くと香ばしく食べやすい。厚めに焼くともっちりとした食感もあり食べ応えも出る。焼き加減を調節すればさまざまなアレンジも可能になりそうだ。

スタッフォードシャーオートケーキのアレンジ

コテージパイ風にミートソースとマッシュポテト、チーズを重ねて
Oatisansでは来店できる方向けに、オートケーキを使ったサンドイッチも販売していて、人気は牛肉と野菜のソースにマッシュポテトをたっぷりのせたコテージパイ風オートケーキサンドだとか。真似をして英国グルメ気分を楽しんでみるのもいいだろう。簡単なのはフライパンに解凍しないでそのままオートケーキを置き、卵とチーズ、ハムをのせて蓋をして焼き上げるガレット風の食べ方。朝食にもブランチにもよい一皿がすぐ出来上がる。

Oatisansではこのようなオートケーキサンドの要望が多いことから、オンラインショップでも販売しようと準備しているとのことなので、こちらも注目だ。

スキレットで焼くと、パリッと香ばしい生地が出来上がるのでおすすめだ
ほかにもスープにちぎって添えたり、たっぷりのサラダやチーズを乗せて、低糖質を追求したプレートにするものいいだろう。広げた生地にトマトソースやチーズをのせて焼き上げればピザにも。ラップサンドのようにサラダやハムなどの具材を包めば、ワンハンドで食べられ、お弁当にもできる。キャラメルソースや生クリーム、フルーツを添えリッチなデザートにすれば、少しだけ罪悪感が薄れそうだ。OatisansのSNSでも食べ方の紹介をしているので、参考にしてみて欲しい。

有塩バターと甘さ控えめの小倉あん、粉糖を添えて。珈琲によく合うおやつにもなった
毎日少しずつ食べるのが健康のためにはベストなので、冷凍になった生地はとても便利で簡単。オートミールを食事に取り入れたいけれど、食べやすく調理したり、食べ飽きないようアレンジするのが大変そう…という人にはOatisansのスタッフォードシャーオートケーキはベストな商品になるはず。

200年以上前から親しまれている郷土料理だが、クレープやガレット、パンケーキのような感覚で楽しめるので、現代人にもフィットするヘルシー&パワーフードとなってくれるだろう。スタッフォードシャーオートケーキでオーツ麦の栄養を気軽に楽しく取り入れてみてはいかがだろうか。

「Oatisans」オンラインショップ