Vol.542

FOOD

26 APR 2024

ロックバンドが奏でる黄金の旋律「EIGHT CROWNS」

ある日、結婚祝いのお礼として友人から一つの小包が届いた。開けてみると、目に入ってきたのはキラキラと輝く「EIGHT CROWNS(エイトクラウンズ)」のはちみつ。洗練されたパッケージに、つい時を忘れて見入ってしまった。「EIGHT CROWNS」は、ロックバンドMONKEY MAJIK(モンキーマジック)の菊池さんとメイナードさんが始めた養蜂のプロジェクト。現在は宮城県富谷市の歴史ある蔵をリノベーションした「とみやど」にて、生はちみつや、はちみつのお酒「ミード」を販売している。

かつて賑わいのあった宿場町を生かした観光拠点にオープン

富谷宿観光交流ステーション「とみやど」
「とみやど」は宮城県富谷市の閑静な住宅街の中にある。この地域は宿場町として栄えていた地域であり、昔ながらの街並みも多く残る。「とみやど」もかつて醤油の醸造所だった場所を、観光交流拠点として活用している。

富谷市は、「住み続けたい街ランキング」(大東建託株式会社「いい部屋ネット 街の幸福度&住み続けたい街ランキング2023」)では3年連続東北第1位を獲得するなど、注目を集めている。

2021年に「EIGHT CROWNS」の旗艦店がオープン
「とみやど」の門をくぐり、奥に進むと「EIGHT CROWNS」の店舗が見えてくる。特に貴重な品々が保管されていたという蔵を改装しており、1階は販売店、2階はオフィスとなっている。他にもギャラリーや飲食店があり、観光にもぴったりの場所だ。

床や柱などは蔵で使われていた建材をそのまま活用している。中央にはカウンター

商品が並べられた棚はまるでアートコレクションを眺めているような気分になる

店内では試食が可能で、お気に入りのはちみつを見つけることができる
事業を始めた当初はお店を構えるつもりではなかったというが、今となっては店舗を訪れる方が増えているという。実際に試食して、お気に入りの商品を購入できるのは嬉しい。

音楽活動も養蜂も自分たちの納得いくものをゼロから生み出す

左から、菊池 拓哉さん、小平 紘輝さん、メイナード・プラントさん
今回、モンキーマジックの菊池さん、メイナードさんとともに、マネージャーの小平さんにもお話を伺うことができた。

養蜂プロジェクトの始まりは、ライブ終わりに菊池さんがメイナードさんへしたある話がきっかけだったという。音楽活動で高まった熱量は、ライブ後には燃え尽きて虚無感が残ってしまうこともあるそうだ。そのため、音楽以外でも情熱を持って取り組めるものが必要だと菊池さんが話したところ、メイナードさんがふと養蜂の話をした。

メイナードさんのおじさんはかつて養蜂を行っていたそう。「自然の中で、生き物と触れ合い、汗をかき、人間らしい生活ができる。それに、ゼロから何か生み出すことは音楽とも似ている部分がある」と感じた菊池さんは、メイナードさんとともに養蜂を始めることに。

音楽活動にも養蜂での活動が活きているという
まずは、菊池さんのおじいさまのご自宅に8つの巣箱を設置して養蜂を開始。これが「EIGHT CROWNS」の名前の由来となった。初めてのはちみつ作りは、手探りなことも多かったが、実際に食べた人からは「おいしい」と好評だった。その後、農家さんの土地を借りて、本格的なプロジェクトがスタートした。

「音楽活動も元々プロになりたいと思っていたわけではなくて、『自分たちが楽しめる音楽を作りたい』と思って取り組んでいたら、結果的にプロになれたんです。そういう感覚で、はちみつも自分たちが納得できるものを作れたらいいと思っています」と菊池さん。

蜂蜜採取の繁忙期は花が多く咲く春から夏だという
野菜や果物には蜂の存在が欠かせない。花々の受粉を助ける役割を果たすからだ。
メイナードさんは「蜂が自然環境を整えてくれるおかげで、周りの農家や私たちの生活を豊かにしてくれます。現在は、宮城県栗原市のりんご農家さんのもとへも蜂を運んで、受粉を手伝っています」と、教えてくれた。

日本ではミツバチの数が過去30年間で大幅に減少し、農作物の受粉への影響や、輸入はちみつへの依存などが問題視されている。「EIGHT CROWNS」は、最高品質のはちみつを届けたいという想いはもとより、地域のミツバチと日本の養蜂産業の窮状の一助になりたいという志をもって活動している。

ちょっとした贅沢が食卓と生活を華やかに彩る

生はちみつは雑味がなく、深い味わいを楽しめる
一般的なはちみつは、加熱処理することによってろ過を容易にし、結晶化(白く固まってしまうこと)を防止している。「EIGHT CROWNS」では、採れたての状態を保ちながらはちみつ本来の風味を残すために、非加熱処理の生はちみつを製造している。

「EIGHT CROWNS」のコンセプトである「Raw・Hive to Table・Ecology 」の「Raw・Hive to Table」は「巣箱から食卓へ」という意味。「Ecology 」は、環境への配慮を意味している。自然の恵みをそのままの状態で食卓へ届けたい、という想いが生はちみつ作りにも込められている。

ギフトパッケージも箔押しが輝く美しいデザイン
パッケージにも目を惹かれる。はちみつの黄金色が引き立つ瓶と箱は、そのまま飾っておきたいほど、洗練されたデザインだ。制作したのはMONKEY MAJIKのアートワークも手掛けるアートディレクターの川上シュンさん。

「食卓に置いてあると気持ちが良いものをつくりたかったんです。ちょっとした贅沢が重なって、人生がより豊かになってほしいです。また、プレゼントした時、相手に喜んでもらえたら嬉しいですね。」とメイナードさんは言う。

東北から生まれた、はちみつのお酒「ミード酒」

左は富谷市の特産品ブルーベリーを使ったミード酒、右は金賞を受賞したワイルドフラワーのはちみつを使ったミード酒
はちみつとお水と酵母だけでつくるミード酒。その歴史はワインやビールよりも古く、「最古の酒」と呼ばれている。「EIGHT CROWNS」のはちみつを使ったミード酒は、福島県喜多方市にある峰の雪酒造で、日本酒の酵母を使い、醸造されている。世界最大の酒類品評会である「BTI・ワールド・ミード・チャレンジ 2023」において金賞を受賞した。

メイナードさんはこれまで世界各地のミード酒を飲んできたが、甘すぎたり、酵母の癖があったりと、「おいしい」と思うものに出会ったことがなかったと言う。「EIGHT CROWNS」のミード酒は酸味と甘味のバランスも絶妙で、日本酒のようなクリアな味わいも感じることができる。

「あまりなじみのないジャンルのお酒ですが、様々な料理と相性抜群です。パーティーの特別な一杯としてはもちろん、普段の食卓でもミード酒とのペアリングを楽しんでいただきたいです」と話してくれた。

小平さんはアパレル商品の開発にも取り組んでいる
また、アパレル商品にも力を入れており、主に小平さんが商品開発などに取り組んでいる。

小平さんは元々、音楽活動をしており、モンキーマジックのスタッフとしても働いているそうだ。「二人からはちみつのプロジェクトを聞いたとき、道の駅で販売しているような手づくり品を想像していたのですが、製品を拝見したら素敵で驚きました」と惹かれるものを感じ、参加することに決めたそうだ。


ロゴを使ったトレーナーやTシャツのほか、生活雑貨も販売している。人気のニット帽は完売した色もあり、現在、新商品を開発中だ。

EIGHT CROWNSを初めて買うなら、この「はちみつ」がおすすめ!

まだ「EIGHT CROWNS」の商品を購入したことが無い方に、私が特におすすめしたいはちみつを2つご紹介したい。

VANILLA BEAN & HONEY
一つ目は「VANILLA BEAN & HONEY」だ。最高品質のバニラビーンズが入っているはちみつで、甘い香りが食欲をそそり、幸せな気持ちにさせてくれる。香りが豊かなので、トーストやヨーグルトにはもちろん、スパイシーな料理のアクセントとしてもおすすめだ。

チーズやスイーツなど、幅広く楽しめる。「VANILLA BEAN & HONEY」をかけたスコーンは絶品

HABANERO & HONEY
2つ目は「HABANERO & HONEY」。こちらは、激辛のハバネロの風味を風味をとじこめたはちみつだ。はちみつとハバネロと聞くと、対極の存在のようにも感じるが、実際は生はちみつの風味と甘さを残したまま、ハバネロの辛さがガツンと来る。チーズとの相性も抜群でタバスコのようにピザにかけて食べるとクセになる。

ピザや肉料理などにそのままかけるのがおすすめ

地域の活動と、世界への挑戦と

日本ではまだ認知度が低いミード酒だが、たくさんの方に味わってほしい
最後に、今後の「EIGHT CROWNS」の活動について菊池さんとメイナードさんに伺った。

今後は、新たな取り組みとして、野菜を育て収穫したものを販売する予定とのこと。近隣のスーパーが閉店したこともあり、新鮮な野菜を地域の方が散歩のついでに気軽に購入できるようにしたいと考えているそうだ。

また、飲食店やレストランとも積極的にコラボレーションして、ミード酒の魅力を広く伝えていきたいとのこと。将来的には世界市場も視野に販路を開拓していくそうだ。

認知度向上の取り組みの背景には、はちみつの収穫量を増やしたいという思いがある。前述のとおり、ミツバチの数の減少は農作物に影響を与えることから、養蜂を通じて、農業や環境といった課題解決への貢献につながる。

お二人は、養蜂活動での苦しみが音楽づくりに反映されていると言う。

「悩みや苦しみを、少しでも和らげてくれる言葉は、体験した中から生まれるもの。器用さよりも不器用さの中から生まれてくる言葉の重みを大切にしたいと考えています。本心だからこそ、共感してもらえる音楽ができるのだと思います」

「EIGHT CROWNS」の取り組みは、MONKEY MAJIKの音楽のように私たちの背中を押してくれる。日々の中に少しの贅沢と喜びを。ぜひ、生はちみつを生活に取り入れてみてはいかがだろうか。

EIGHT CROWNS