クリエイティブ・カンパニー「NEWPEACE Inc.」が運営を手掛ける「6curry(シックスカレー)」は、UberEATS専門店として2017年12月にスタートした。彩り豊かな野菜などの具材が“ぎゅっ”と詰め込まれた、ユニークなルックスの「カップカレー」を販売している。その魅力は、サラダ感覚で食べられるヘルシーさと手持ちしやすいカップスタイル。高カロリーで男性に好まれる料理というカレーの一般的な認識を覆し、健康志向なカレー好きの支持を集めている商品だ。
そんな「6curry」が2018年9月に立ち上げたのが、「6curryKITCHEN」である。こちらは、知人や友人からの招待が必要な完全会員制。月額費用を支払うことでカレーを毎日1杯食べられるセントラルキッチン、いわゆるサブスクリプションだ。“みんなを混ぜる、みんなが混ざる”をコンセプトに掲げ、流行感度の高いカレーラバーズが集うコミュニティとしての役割も果たしている。4月の某日、飛び入り参加できる公開イベントが開催されるという情報を聞きつけ、筆者は店舗へ足を運んだ。
カレーを通じて生まれるセレンディピティ
店舗の目印は、「6curry」の看板。入り口のドアに書かれた“EXPERIENCE THE MIX(混ざり合う体験)”は、人々が集まり“カレー”と“カルチャー”とが融け合う、この場所にピッタリのフレーズだ。
キッチンを囲むU字型カウンターは、ゲストとスタッフの境界線を感じさせない憩いの場として機能している。店内では、幅広い年齢層の会員たちが自由に食事と会話を楽しんでいた。
「6curry」という名前は、「六次の隔たり」が由来だという。これは、5人の仲介者を経ると6人目で世界中の人々と繋がれるというユニークな仮説だ。確かにこの場所には、人と人との距離が自然と近くなる魅力がある。足を運ぶごとに共通の知り合いが増えていき、世間は良い意味でスモールになっていくのだろう。
過去には、偶然にも隣の席になったお客さん同士が、お互いにボストン大学に通っていたことから意気投合するという、奇跡的な出会いがあったなんて話も。カレーという共通言語を通じてセレンディピティ(※)を生み出す、「6curryKITCHEN」の在り方が伝わるエピソードだ。
※偶然の出会いや出来事をきっかけに、予想外の発見をすることや、そのための能力。
月額制で楽しめるカレーの味は??
レギュラーで提供しているカレーのラインナップは、「ポークビンダルーカレー」「The チキンカレー」「グリーンカレー」の3種類。会員と同伴なら、非会員でもオーダーできるのは嬉しいところ。知り合いに会員がいない場合でも、今回のような公開イベントなら誰でも参加できるのだ。
カレー各種はあいがけや大盛りにできるので、「がっつり食べたい!」というニーズにも、ばっちり応えてくれるのが嬉しい。今回注文した「ポークビンダル―カレー」と「THE チキンカレー」のあいがけは、対照的な味わいが魅力的な組み合わせだ。前者は酸味と甘みのバランスが絶妙で、後者はブラックペッパーが利いたピリッとスパイシーな仕上がり。味のコントラストを楽しみながら、交互に食べ進めることを是非ともオススメしたい。
クラフトビールやハイボール、梅酒などのアルコール類に加え、さまざまな日替わりおかずを取りそろえている点も見逃せない。お酒を飲みつつおかずを食べて、最後はカレーで締める…というのも粋な楽しみ方だろう。
会員が主役の1日店長企画
この日は、キューバやプエルトリコをルーツとするペアダンス“サルサ”と“カレー”をミックスするコラボレーションイベントが開催されていた。 ゲストに踊り方をレクチャーしたのは、会員の林 勝明(はやし・かつあき)さんだ。
林さんは実演を交えつつ、“サルサの基本リズム=クラーベ”をていねいに解説してくれた。ダンサーが本職ではないというが、教え方の上手さと腕前はプロのダンス講師顔負けである。おいしいカレーでお腹を満たしてサルサを踊れば、気持ちも大満足。イベント参加者の顔には、自然と笑みが浮かんでいた。
このように、「6curryKITCHEN」では、会員による1日店長企画を定期的に実施している。加えて、企業とのコラボレーションイベントの開催にも精力的だ。
2019年3月には、“日本のお茶で優しい革命を起こそう。”をミッションに掲げる「TeaRoom Inc.」や、菜食だし事業を展開する「椎茸祭(しいたけまつり)」とのコラボレーションを実施。あらゆる具材とアイディアを受け止めるカレーのポテンシャルをフルに活かし、「ごろごろ野菜のほうじ茶ラテカレー」「椎茸だしカレー」などを提供した。今後も人と文化、さまざまな具材などが混ざり合うことで、ユニークなイベントとカレーが誕生していくに違いない。
「6curryKITCHEN」の今後は?
コミュニティづくりの成功例として、日ごとに存在感を増している「6curryKITCHEN」。今後の目標は、コミュニティをさらに拡大していくことだという。
より手軽に「6curryKITCHEN」の魅力を体験してもらうために、コミュニティ参加の入り口としての役割を果たす商品開発にも取り組んでいくそうだ。それがレトルトカレーになるか、はたまたカレー調理キットになるのかは現時点では未定とのこと。しかし、「カップカレー」という前例のように、カレー業界に革新をもたらす新商品をきっと生み出してくれるはず。「6curryKITCHEN」の発展に、期待が高まるばかりだ。
なお、飛び入り参加可能な公開イベントの情報は、TwitterやInstagramなどの各種SNSアカウントからチェックできる。月額制の絶品カレーを堪能されたい方はもちろん、気の合う仲間を探したいという方も、ぜひアクセスしてみてもらいたい。
6curryKITCHEN
CURATION BY
犬とカレーと音楽が好きな三十路のライター。創作系スパイスカレーにハマってから、試作したカレーを冷凍庫内に余らせがち。音楽イベント「SHAKE HANDS(シェイクハンズ)」の運営メンバーとしても活動中。