季節の変わり目や環境の変化があると、なんとなく不調を感じる…。そんな病気未満の体調不良がある時は、休息はもちろんのこと、プラスアルファで「自分と向き合う視点」も欠かせないものだ。2022年に登場した注目の新ブランド「SAKURA WADA」は、薬膳の思想に基づくお茶を暮らしに取り入れることで、自分の体質や不調に向き合う機会を与えてくれる。そんな気になる薬膳とお茶の世界を知るべく、6月末に渋谷モディで開かれたポップアップショップへ。アーティスティック・ディレクターであり、国際中医薬膳管理師のSakura Wadaさんに、薬膳茶のおすすめの飲み方や選び方、中医学的な考え方の暮らしへの取り入れ方などを教えてもらった。
ちょっとした不調にトータルで向き合う。中医学的セルフケアのすすめ
「病気というほどではないけれど、調子が悪くなりやすくて健康だとは言えない…」
季節の変わり目や生活習慣の乱れなどによって、そんな状態になることを東洋医学用語で「未病」という。数年前までは聞き慣れなかったこの言葉も、超高齢社会に突入し健康寿命を延ばすことが求められる近年の日本において、「未病のうちにケアをして体調を整えよう」などと、あらゆる場面で言われるようになった。
しかし未病の状態から抜け出すためには、どのようなアプローチをすればいいのだろうか。普段から科学的根拠に基づいた西洋医学に慣れ親しんでいる私たちにとって、東洋医学的なヘルスケアはなんだか具体的なイメージが湧かず、なかなか踏み込めない。
そもそも東洋医学の起源は、およそ4000年前の古代中国にまで遡る。この古代中国ではじまった伝統医学は、朝鮮半島や日本に伝わり、西洋医学の波に揉まれながらも、現代の中国では「中医学」、韓国では「韓医学」、そして日本では「漢方医学」として、それぞれ独自に発展。それらがまとめて「東洋医学」と呼ばれている。つまり私たちがよく聞く「漢方」という言葉は、日本特有の医学やその薬を指しているということだ。ちなみに漢方医学では、表れている症状に対してそれを治療するのに適した漢方薬(生薬の種類、分量、組み合わせなどが決められているもの)が処方される。その合理的なスタイルは西洋医学的でもあり、中国や韓国の伝統医学とは似て非なるものである。
そして今回注目したいのが、「中医学」の考え方だ。中医学で特にユニークなのが、その診断の仕方である。「弁証論治(べんしょうろんち)」と呼ばれる方法で、一般的に行われる問診だけでなく、全身の状態やバランスを目で見て観察、脈やお腹の張りを触って確認し、声やにおいも判断材料としている。そのように体の状態をトータルで診ることで、不調の状態や不調を引き起こしている原因、五臓のどこに問題があるかといったことを複合的に捉え、オーダーメイドで治療法や薬を組み立てているのだ。
その人の心と体の状態を総合的に捉える中医学は、不調を薬で治すだけでなく、その不調の根本を見つめ、心身のバランスが崩れた「未病」を予防し、バランスの良い状態にするための適切なケアの方法を探ろうとするものだ。特に、食事から病気を予防し治そうとする「薬食同源」の考え方から生まれた「薬膳」は、体調や季節に合わせて食事や飲み物を組み立てるというもので、東洋医学に詳しくない人でも手軽に取り入れることができる。
季節の変わり目に体調を崩しやすい筆者も、中医学の考え方を取り入れてバランスが崩れやすい体質を改善していきたいひとり。そこで辿り着いたのが、日頃から手軽にセルフケアできる健康茶ブランド、「SAKURA WADA」だった。
薬膳の力を日常に。「SAKURA WADA」のポップアップへ
2022年2月に誕生した、オリジナルのブレンド茶を取り扱うブランド「SAKURA WADA」。6月末には初のポップアップショップがオープンし、薬膳の思想を取り入れたお茶の魅力を体験できるということで訪れた。
「ただ薬膳茶を飲むのではなく、日頃から自分自身と向き合い、バランスの取り方を考える。そんな中医学的なセルフケアの方法を手軽に知ってほしいという思いで、ブランドを立ち上げました」
そう語るのは、ブランドを立ち上げたSakura Wadaさん。会社員時代は広告代理店や大手IT系企業で働いていたが、20代半ばで体を壊したことをきっかけに、中医薬膳の先生である母の「なにごともバランス」という教えが身に沁みてわかったという。そして自分の体と心は自分で大切にしないといけないと感じたことから、薬膳茶ブランドの構想を練っていった。
「心と体の状態が一番わかるのは、その人自身です。だからこそ、なにかをきっかけに自分の弱みに気づいたら、無理に押さえつけたり、変えようとしたりするのではなく、弱みを認めた上でちょうどいいバランスを探っていく。そのためにも、まずは自分のために心と体の健康に向き合う時間を増やしてもらえるように、商品やサービスを考えていきました。また、『自分を見つめ直す』というメッセージを伝えるために、ブランドのキービジュアルやパッケージには鏡の要素を入れています」
ポップアップショップでは、いくつかのお茶が試飲できた。薬膳食材を使ったお茶なだけあって苦いのだろうかと恐る恐る飲んでみると、意外にも飲みやすい。むしろコクや甘み、酸味などが感じられ、味わい豊かだ。
「ハーブティーを飲むときのように、毎日の体調に合わせて気軽に飲んでいただきたくて。きちんと効果が発揮されるように、薬膳食材の組み合わせを考えながらも、シンプルに『おいしい』と思えるかを重視して最適な味のバランスになるように試行錯誤しました」
薬膳独特の風味を感じるお茶もあるが、他の原材料とうまくバランスが取れているので個性のあるおいしさとして受け止められる。薬膳のお茶がこんなにおいしいのであれば、ぜひ自分に合うものを手に入れたいものだ。
自分に合った薬膳茶の選び方
「SAKURA WADA」の薬膳食材を使ったお茶は、人それぞれの悩みになるべく細かく対応するため、スタート当初から26種類の豊富なラインアップとなっており、体質別に8種類、目的別に13種類、季節別に5種類と分けられている。しかし、気になるものが多くて絞りきれない…。どのように選ぶといいのだろうか?
「基本的に中医学では、8つの体質に分けて改善方法を組み立てます。公式ウェブサイトで診断ができるので、最初はそこでご自身の体質を知り、おすすめされたものを“普段使いのお茶”として飲んでいただくのがいいと思います」
筆者の場合は、エネルギーチャージを目的にブレンドされた「01-ENERGY BLOOM」(1,944円)と血を補うことを目的にブレンドされた「03-NOURISHMENT」(1,944円)が合うようだ。体質は変化するものなので、「いつもと体質が違うかも?」と感じたら診断し直してみるといいだろう。
また、五行学説を軸として体系的に考える中医学では、季節も春、梅雨、夏、秋、冬の「五季」に分けられている。「雨の日が続くと、心身ともに調子が悪い」「夏バテが毎年つらい」など、季節によって体調がブレやすい人は、“季節の日常ケア”として季節別の5種類から選ぶといいだろう。
たとえば蒸し暑い夏は、熱による影響を受けやすく、中医学では五臓の心(しん)の不調が出やすい時期とされている。そんな夏でもバテずに快適に過ごしたい方は、大麦、蓮の葉、どくだみ、金銀花、ハイビスカスを配合した「SWEETER SUMMER」がおすすめ。夏にぴったりのさっぱりとした麦茶のような味わいだ。
それ以外にも「ストレスが溜まっている」「肌の調子が悪い」と、気になる悩みにアプローチしたい場合は、目的別の13種類のお茶から選ぼう。公式ウェブサイトの「気になるテーマを選ぶ」というページから気になる悩みを選ぶことで、改善方法やおすすめ商品が簡単にチェックできる。「飲み会が多い」「出産を控えている」などといった観点からも選べるため、健康を気遣いたい相手へのプレゼントとしても選びやすい。
ティータイムを、自分の健康と向き合う時間に
特に梅雨から夏の終わりにかけて不調が出やすい筆者。夏場でも体が冷えやすい「陽虚」の体質が出やすく、雨の日にはだるさやむくみが出やすいため、Sakuraさんに相談しながら「07-WARM SUN」と「RAINY MONDAYS」を選んだ。
薬膳食材がたっぷり使われているブレンド茶。「薬のように用法・用量を守って飲んだ方がいいの?」と気になるところだが、Sakuraさんいわく、「飲む量は、そもそもの水分摂取量として1日1.2〜1.5Lくらいまでをおすすめしますが、基本的にお茶なので、『こう飲まなければいけない』というルールは特にありません。ただ、食べ合わせや生活習慣は重要で、冷えやすい体質で体を温めるためのお茶を選んだのに、体を冷やす食材ばかり食べてしまったり、体を冷やす服装をしたりしていると意味がなくなってしまいます」とのこと。ぜひ公式ウェブサイトで、体質改善におすすめの食材や生活アドバイスをチェックしよう。
日々、バランスをとっていく
暮らしの中に薬膳茶を取り入れてみると、「体調に合わせてこのお茶を飲もう」「今日は何が飲みたい気分かな」と、自分の心身の健康と向き合うことが当たり前になってくる。自分の体のことが一番わかるのは、やっぱり自分。中医学的な観点から自分の健康を見つめてみると、誰かに任せきりにしてしまいがちだった自分の健康を、自分の手の内に取り戻す大切さに気づく。セルフケアのために中医学の考え方を少しずつ学び、暮らしに取り入れることで、ゆらぎがあってもすぐに立ち直れるバランス感覚が培われるはずだ。
SAKURA WADA
CURATION BY
フリーライター・エディター。専門はコミュニケーションデザインとサウンドアート。ものづくりとその周辺で起こる出来事に興味あり。ピンときたらまずは体験。そのための旅が好き。