Vol.487

17 OCT 2023

〔ZOOM in 目黒かむろ坂〕好奇心で楽しむアンティーク家具「ARTICLE Antique & Curiosity」

目黒には通称「家具通り」「インテリアストリート」と呼ばれるエリアがある。数キロにわたりインテリア関連ショップ60〜70店舗が集結しており、ウインドウショッピングするだけでも楽しい場所だ。その中から今回は英国を中心としたアンティーク家具や雑貨を扱う「ARTICLE Antique & Curiosity」をご紹介する。アンティーク初心者でも安心して楽しめるポイントもお伝えしたい。

ほどよくノスタルジック「目黒通り」

桜シーズンは人でいっぱいになる目黒川周辺
目黒と言えば『お洒落感度が高い街』というイメージがある。実際に街を歩いてみれば確かに洒落た店も多いが、目黒駅周辺はどちらかと言えば庶民的な雰囲気があり、お洒落や洗練というよりは、昭和レトロといったイメージの方がしっくりくる。

昭和の雰囲気を残す商店街

映画のワンシーンのような風情のある階段
目黒通りを歩いていくと、ぽつん、ぽつんと味わい深い風景に出くわす。アーケードのある商店街、急勾配の坂道、美しい石橋。これはこれで風情があり、散策が楽しい道である。

目黒区最古の神社「大鳥神社」
大鳥神社と、謎めいた彫刻作品があるその先が「インテリアストリート」と呼ばれるエリア。ここから先は、店の数はぐっと少なくなるが、個性的で洗練された店が多い印象だ。目黒エリアをお洒落な街として位置付けるのは、家具や雑貨の店が多いインテリアストリートの存在が大きいように思う。

「わからないことがあっても恥ずかしがらずに聞くことよ」(と言われたような気がする)

アンティークショップ「ARTICLE Antique & Curiosity」

ARTICLE Antique & Curiosity
「ARTICLE Antique & Curiosity」は、英国を中心に仕入れたさまざまな国のアンティークアイテムが揃う店で、異なる時代と国を旅してきた品物(Article)を再編集するというのが店のコンセプトだ。国もテイストも異なるアイテムが揃い、サイズが小ぶりで日本の住居にも取り入れやすいアイテムが豊富なことも特徴だ。

ディスプレイは月替り。取材時の9月はポータブルレコードプレイヤーだった
ある時は英国トラディショナル、またある時はインダストリアル、ときどきフランスアンティーク。いつ訪れても「これはいつの時代のものだろうか」「あれはいったい何に使う道具……?」と好奇心をそそられる商品が並ぶ。

オーナー兼バイヤーの井上貴之氏
オーナーの井上貴之氏は、新卒でアンティーク販売会社に入社し、その後は別のアンティークショップに転職しバイヤーを勤め、2018年に独立。自身が買付け販売を行う「ARTICLE Antique & Curiosity」をオープン。まさにアンティーク一筋の人生だ。

国もジャンルもさまざま。たくさんの品物が並ぶ店内
国もジャンルもバラバラのモノたちが不思議と調和する店内。井上氏はどのような観点で品物を選んでいるのだろうか。

「アンティークと言っても一部のマニアの方向けに販売しているわけではなく、幅広い方達の生活に取り入れやすく、皆さんの毎日が豊かになるようなものを選んでいます。家具店としては小さいため大型家具は置けませんが、その代わりにお客様の手に取ってもらいやすい小ぶりな商品が多いです。個性的なデザインやサイズ感、私自身が見ても新鮮に感じられるような物を置くようにしています」(井上氏)

モノにまつわるストーリーを次のオーナーへ渡す

パブテーブルの傷も味わい
アンティークは高価なものが多く「よくわからなくて手が出せない」と思い込んでしまう人は少なくない。たしかに、プロダクトから時代性を読み解こうとすれば少々の知識は必要だが、そのモノ自体のストーリーに着目してみると必ずしも知識が手がかりになるとは限らない。たとえば、時代を代表するような製品であっても、使う人や場所が違えば、今に残る姿も違うのだ。壊れて交換した部分があるかもしれないし、好みの色に塗装して使っていた人もいるはずだ。

そういった過去の痕跡をたどりながら、琴線に触れるものがあったら詳しく質問してみよう。

一見、コーヒーテーブルのように見える脚がついた木箱

開いてみると、裁縫箱!
こちらの小ぶりなボックスは手芸道具一式を納めるために英国で作られていたソーイングボックス。何を入れようか、文房具かアクセサリーか。あれこれ用途を考えてみるのが楽しい。

豪華な装飾が施されたテーブルの脚部分
たとえば、上の写真のテーブルは英国のパブで長年使われていたモノなのだそうで、天板の傷は何が掘られてあるのかわからないが、じっくり見てみるとなかなか味わい深い。

パブで酔った人のいたずら書きや、幾重にも重ねられた塗装のペンキ、修理の跡など、知らない誰かの痕跡が、モノの物語を伝えてくれる。こういった一期一会の出逢いがアンティークの魅力のひとつかもしれない。

「テーブルの脚の部分もよく見てみてください。鋳物脚と言うもので、ものすごく重いんです。脚が内側に配置されているので、安定させるために重量が必要なのです。椅子が入れやすいので作業用デスクとしてもおすすめですよ。塗装が剥がれている部分など、気になるところはお客様の好みに合わせて修復できます」(井上氏)

傷んでいる部分はメンテナンスをしてもらうことができる
古い製品だからこそ、傷みがあるときにはメンテナンスが重要だが、その点「ARTICLE Antique & Curiosity」なら安心だ。好みに合わせてリペアしてから納品してもらえるサービスが付帯しているのだ。ダメージ感はそのままで機能的な補強だけをしたいという要望もあれば、色をまったく別の色にするということも可能だ。

手頃なアンティーク雑貨から入るのも◎

イギリス王室の記念食器は人気商品のひとつでコレクターも多い
家具などは価格もそれなりなので、店に行って即決できないことがあるが、ファッションや生活雑貨など、小さな商品のセレクトアイテムもあるので、そういった小さなモノを生活に取り入れることから始めてみても良いかもしれない。

中でも、イギリス王室の記念食器は人気商品のひとつ。価格も手頃なので、日常使いしても良さそうだ。

キーホルダーは大人気で、すぐに売り切れてしまうそうだ

虹色にディスプレイされた本もすべて商品
小物で慣れてきたら、次は家具も取り入れてみたい。難しいことは考えずに、気になったら質問してみよう。きっと、オーナーの井上氏が、モノの背景と次の使い手である貴方の生活との間で架け橋になるようなストーリーを語ってくれるに違いない。

アンティークは一期一会

1980年代フランスのエレガントなデザインの香水瓶
井上氏は、アンティークの面白さをこう語る。

「昔のプロダクトは、現代とは違って、用途が限定的に作られるという特徴があります。例えば、葉書専用の引き出しがあったり、さきほど紹介したソーイングボックスも裁縫道具専用の特徴がある作りです。限定的な用途だからこそ、プロダクトデザインの個性が強くなる。それらを現代の生活でどのように活用するかは、引き継いだ方次第。こう使わなければいけないなんてことはなく、持ち主が変わることで、また新しい用途が生まれていくのが面白いところなのです」

違う時代に生まれ、はるばる海を渡って日本にやってきたモノたちに、自分ならではの新しい役割を見つけてみてはいかがだろうか。

Article Antique & Curiosity

東京都目黒区目黒4-11-4 山本ビル1F
Tel/Fax ::03-5724-3478
定休日:水曜日

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