Vol.534

29 MAR 2024

〔ZOOM in 吉祥寺EAST〕吉祥寺で出逢う、いいもの・暮らしの器たち

何気ない日常をちょっといい景色にしてくれるのが、気の利いた暮らしの道具たち。その中でもとくに食器が好きという方たちにおすすめしたいのが吉祥寺の雑貨店めぐりだ。観光スポットとしてよく知られ、昼夜問わず賑わうこの街にも、小さいながらもこだわりのある店が点在している。作家の手によって生み出された器や、時代もお国も違うところからはるばるやってきたアンティークの器たちは、日常に豊かさをもたらしてくれるはず。

遊びも暮らしも。ほどよい吉祥寺

吉祥寺のマスコット的存在だった、ゾウのはな子の像
吉祥寺は年齢性別関係なく多様な人たちが一日中楽しく過ごせる場所だと思う。

吉祥寺は年齢性別関係なく多様な人たちが一日中楽しく過ごせる場所だと思う。近隣住民に自然豊かな散歩スポットとして親しまれている「井の頭恩賜公園」を筆頭に、ほどよい規模感で気軽な動物園「井の頭文化園」、地元の昼飲みおじさん達も観光のお嬢さんたちも一緒くたに並んで昼も夜もワイワイ賑やかな「ハモニカ横丁」などがあり「住みたい街ランキング」で度々上位になる人気の街だ。

春の井の頭公園
観光スポットが豊富なエリアという印象もあるが、実は住む場所としても利便性が高い。商業・文化施設の充実度に加え、豊かな自然もある。平日も休日も、吉祥寺から外へ出ずとも退屈することはない。交通の便も良好で、通勤、通学もしやすいはず。

高層ビルが林立する都心エリアとは違い、低層の路面店が多く、都会すぎず田舎すぎもしない。ふらっと散歩してみると、飲食店や服飾店、雑貨店など、洒落た店も点在している。

吉祥寺で筆者がついつい入ってしまうのが生活雑貨の店だ。その日の買い物スイッチがオンになってしまえば最後、日没まで雑貨店のハシゴをすることも少なくない。お目当ては、その時々でラインナップが変わる一期一会の食器たち。

ミニマリストがもてはやされるこのご時世に、私は皿の上に盛られた食材よりも皿の方にお金をかけており、買っても買っても、まだ買いたいものがある。そんな器好きの筆者が本気で推す、吉祥寺の生活雑貨の店を紹介させてほしい。

日々を豊かにする道具たち「CINQ」

国内外のアイテムが揃う店
器に限らず、さまざまなアイテムが揃う「CINQ(サンク)」。ヨーロッパや国内から選りすぐりの生活雑貨がそろうセレクトショップだ。

季節に合わせた上質なアイテムや、海外から買い付けた珍しいキッチンツールも多く、日々のなにげない一コマが豊かになるような、暮らしの道具たちが並ぶ。

シンプルな中に個性も感じられるキッチンツール

広々とした明るい店内
「CINQ」がある大正通りは、ハイセンスな店が多く、器好き・雑貨好きにはたまらない道だと思う。雑貨店のハシゴをするならこの通りは非常におすすめ。

CINQ|サンク

東京都武蔵野市吉祥寺本町2-28-3 グリーニィ吉祥寺1階
電話番号 0422-26-8735
営業時間 11:00~19:00
定休日 なし
http://cinq.tokyo.jp/

ハモニカ横丁の中にひっそりと「octobre」

ハモニカ横丁の中にひっそりと佇む
吉祥寺名所のひとつ「ハモニカ横丁」の中にも雑貨店があることをご存知だろうか。「ハモニカ横丁」は観光スポットとしても知名度が高く、酒を出す店が多いことも相まって、昼夜問わず大変賑やかな場所なのだが、横丁の奥に、ひっそりと佇むシックな店。

中へ入ると、暮らしになじむ落ち着いたトーンの商品が並んでおり、ナチュラルで心地良い空間だ。さらに嬉しいのは、手頃な価格帯のモノが多いこと。他では手に入りにくい国内作家の器も扱っており、コレクターも多いという。

食器のほか、カゴバッグやアクセサリーなども置かれている

生活に馴染む優しい色合いの器が並ぶ

外国の雑貨も多く、楽しい買い物ができるはず

octobre|オクトーブル

東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-9
電話番号 0422-22-6569
営業時間 11:00〜18:00
定休日 不定休
https://www.instagram.com/octobre_zakkashop/

和の古道具の魅力再発見「吉祥寺pukupuku」

華やかな色絵の小皿は価格も手頃で人気
「吉祥寺pukupuku」は、2023年に吉祥寺に2つあった店舗を1つに統合した新店舗。日本のアンティーク食器や暮らしの道具が並ぶ店で、江戸時代の古伊万里や、明治前期の色絵皿、印判の小皿が人気だという。価格もリーズナブルで手に取りやすい。

骨董と聞くと難しいイメージがあるかもしれないが、店内には商品の年代や特徴を記した手描きポップもあり、初心者も気楽に選ぶことができる。

日本のアンティーク食器が所狭しと並ぶ店内

普段使いにぴったりな印判の小皿
「印判」というのは、主に明治以降に行われる様になった絵付け方法で、手描きの絵付けとは違い、転写シートなどを用いて磁器に焼きつけている。当時、絵付け皿は高級品だったが、この技術のおかげで大量生産が可能になり、庶民にも気軽に使える暮らしの器となった。

和食器に盛り付けるのは和食が基本といった固着観念は捨てて、自由に楽しんでみてはいかがだろうか。和食器は、意外とカレーやパスタなどの洋食にも映える。

古道具も充実。何に使うか妄想が膨らむ

吉祥寺pukupuku|プクプク

東京都武蔵野市吉祥寺本町2-18-8 YKビル1階
電話番号 0422-27-1636
営業時間 11:00~19:00
定休日 なし
https://onlinepukupuku.com/

モノのストーリーを聞く「Tsubame Märkt」

パリにある高校のエントランスが描かれた絵皿
幸せを運んでくると言われるツバメを店名にした「Tsubame Märkt(ツバメ・マルクト)」はヨーロッパ・アンティークの店だ。

小さな店内には、古くてチャーミングなアイテムが心地よく置かれている。旅と歴史が好きなオーナーから、それぞれのアイテムが持つストーリーを聞いてみて。

味わいのあるヴィンテージのボタン

”Théâtre Guignol” の人形劇を題材にした19世紀の古い絵皿
上の写真は19世紀初めにフランスの絹織物の行商人によって作られた人形劇を題材にした絵皿で「ギニョール」と名付けられた主人公の指人形が描かれている。このシリーズは世界的にも人気があり、コレクターもたくさんいるのだという。

興味を惹くモノを見つけたら、店主に話を聞いてみよう。きっとそのモノにまつわる素敵なストーリーが聞けるはずだから。

さまざまな国、時代のモノたちが並ぶ店内

Tsubame Märkt|ツバメ・マルクト

東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-26
電話番号 0422-27-2709
営業時間 11:30〜19:00
定休日 水曜日
https://tsubamemarkt.com/

手仕事のゆらぎが魅力の器たち「kahahori」

味わい深い器が並ぶ
吉祥寺駅から向かって東側、静かで落ち着いたエリアにあるのが「kahahori(カハホリ)」だ。

手仕事のゆらぎが感じられる国内作家のアイテムを扱い、1,000円台から少し高価なモノまで幅広いラインナップが揃う。上品な佇まいの中に、個性が感じられる逸品揃い。

作家モノの食器となると、さぞお高いのかと気構えてしまうが、実はかなり手頃な作品が多い。店のコンセプトは「手に届く身近な贅沢」。まさにそのコンセプトそのままの買い物体験ができる店なのだ。

なお、店の所在地近くの末広通りも散歩道としておすすめ。ギャラリーや喫茶店など、落ち着いた店が点在しているのでぜひ。

店名にもなっているコウモリの絵付け(水垣千悦氏のうつわ)
店名の「kahahor(カハホリ)」はコウモリを意味する日本の古語で、中国では福を招く吉祥文様なのだそう。

上品な佇まいの器たち

石川県で作陶するマイケル・ケリー氏のうつわ(上、左)

kahahori|カハホリ

武蔵野市吉祥寺南町2-6-5 クロケットハウス1F
電話番号 0422-90-7081
営業時間 12:00~19:00
定休日 不定休
https://www.instagram.com/kahahori/

好奇心を刺激する暮らしの道具たち

今日の収穫。マッシュルームナイフ
器コレクターの筆者にとって、雑貨店めぐりはこの上なく楽しい休日の過ごし方だ。

この取材をしながら、ちゃっかり仕入れにも精を出し、いくつかの器と暮らしの道具をお迎えした。この日の収穫はマッシュルーム専用ナイフ。なぜ、マッシュルーム限定のナイフが存在するのだろうか。そこにはきっと独自のストーリーがあるに違いない。

知らない土地。知らない時代。知らない作り手。好奇心を刺激してくれる実用品たちとの出逢いは一期一会。その佇まいが自分の日常の景色の一部になり、好きなモノに囲まれる多幸感に繋がっていく。

さあ、ここまで書いておいて、私は少し後悔している。本当は人に知られたくないくらい大好きな店ばかりだから。