欲しいノートに出会えた時、ちょっといいノートを使い始める時、心はときめき、これを使えば今よりももっと自分が成長しそうな気さえする。たとえデジタルが進化しても、紙のノートを手放すことはないだろう。一方で悩ましいのが、「これだ」と思えるノートになかなか出会えないことだ。ならば自分好みの特別なノートを作ってはどうだろう? そこで注目したのが、代々木上原にある「HININE NOTE(ハイナインノート)」。数万通り以上の組み合わせからノートをカスタムオーダーできると聞きつけ、期待を胸に足を運んだ。
小さくても洗練された店が並ぶ、代々木上原〜代々木公園エリア
小田急線と東京メトロ千代田線が走る、代々木上原駅から代々木八幡駅・代々木公園駅周辺。住宅が多く落ち着いた街並みには、フランス料理の名店や人気のベーカリーなどセンスのいい店が立ち並ぶ。都会の大人たちが散策するのにちょうど良く、日常を特別にさせてくれる街だ。
休日やリモートワークの合間に、少し足を伸ばして代々木公園の緑を眺めたり、ぶらりと立ち寄ったカフェでコーヒーを飲んだり、小さな雑貨屋をのぞいてみたり。ゆったりとした時間が流れるこの街にいると心地よく、スローダウンすることの大切さを思い出させてくれる。
そんなことを考えながらそぞろ歩きを楽しんでいると、白い外壁に横長の窓が目印のHININE NOTEにたどり着いた。
世界に1冊だけのノートを作れるHININE NOTE
ここHININE NOTEは、カタログやDMなどの制作を手がける印刷会社「HININE」が、「一般のお客様にも紙の良さを知ってもらいたい」という思いから、2016年にオープンした店だ。ノートを作るための工房スペースが外から見え、さっそく心が踊り出す。
店内に入ると、壁にはノートの作例がずらり。「こんなにバリエーション豊かなノートが作れるのか」と驚く。
人によって、ノートの好みは異なる。表紙の手触りや硬さ、色やサイズ、ノートが開く向き、紙の書き心地、罫線の有無など、こだわりどころはさまざまである。
ここでは大きく分けて5つのカテゴリー(Size、Cover、Ring、Paper、Option)から、細かい仕様を自分で決めていくことができるそうだ。スタッフからオーダーシートが渡され、ノートの選び方を案内してくれた。
ノートをカスタマイズしていく
ノート作りの手順は、まずベースとなるサイズと縦横の向きを決めるところから始まる。サイズはB5とB6サイズの2種類から選ぶことができる。
スタッフ曰く、「スタンダードなノートとして使うなら、小さい方のB6サイズを縦向きにするのがいいと思います。裁断加工もできるので、オプションで細長くしたり、正方形に近い形にしたりすることもできますよ」とのこと。
「初めて作るのだし」と考えて、今回はB6サイズにすることにした。
続いては、ノートの顔となる表紙の素材と色から決め、そこからリングの色、オプションとなるバンドや丸タックの色などを決めていく…のだが、そんなにスムーズにはいかない。どのサンプルも魅力的で、様々なバリエーションが浮かぶのだ。
5ステップとはいっても、表紙もレザーと紙がそれぞれ何十種類とあるし、リングの色と付け方もいろいろ。オプションでバンドをつけるにしても、3種類の付け方があり、カラーはそれ以上。ノートの角を丸くするのか、四角くするのかなど、判断すべきポイントがたくさんある。「あの組み合わせもいいし、この組み合わせもいい。ああ、ディテールはどうしよう!」と、ついつい嬉しい悲鳴を上げてしまいそうになる。
数十分ほど迷いぬいた結果、表紙はシルバーのレザー、裏表紙はチャコールグレーのボード紙、リングはシルバーで上下留めにし、オプションで丸タックと箔押しの文字をつけることにした。
ある程度外見が決まったので、中紙を選ぶ。HININE NOTEでは、pacと呼ばれる紙の束を4セット選ぶことで構成を作り、選ぶ素材によってはノートだけでなくダイアリーとしての機能を持たせることもできる。ダイアリーはマンスリーとウィークリーの2種類。ノート用の紙も、様々な質感や色から好きなものを選ぶことができる。こちらも多様な組み合わせを考えることができるので、悩むのが楽しい。
今回はノートとして使いたかったので、モンテルキアというスッキリとした白さで書きやすそうな質感の紙を中心に、無地、罫線、方眼を1pacずつチョイス。最後のpacはスクラップブックとして使うことを考え、無地のクラフト紙にした。
15分で完成。職人技を間近に見る
オーダーシートに記入したら、抜け漏れがないかスタッフがチェックし、制作に取り掛かる。はじめは「本当に15分で作れるのか?」と思っていたが、その手際の良さを見て、取るに足らない心配だったとすぐに気づいた。
見ていて気持ちがいいほどの鮮やかな手仕事。簡単そうにも見えるが、位置決めや力加減などはかなり気を遣う必要があり、すばやく調整するためには経験を積むことが必要だという。
至高のノートが完成
それぞれのパーツを加工し、組み立てて、あっという間にノートが完成。気づいたら1時間を過ぎていたが、体感としては一瞬だ。こんなにも自分自身に何が好きか問いかけ、ノートを使う未来の自分を想像したことはない。そして出来栄えに感動し、嬉しくてついうっとりと見つめてしまう。
紙のノートは、なぜこんなに“いい”のだろう? そう呟くと、「紙に触れた時に、心地よさを感じるからじゃないでしょうか」とスタッフが答えてくれた。今やスマホのアプリケーションを使えばスケジュールやメモなどを際限なく記録できる時代。それでも紙のノートを求めてしまうのは、フィジカルの安心感を得られるからだろう。そしてその安心感は愛着につながり、嬉しさや充実感をもたらすのだと気付く。
今回は自分好みにカスタマイズして理想のノートを作ったが、次は誰かを思ってノートを作ってみたいものだ。その時はどのようなノートが出来上がるのだろうか。日常の幸せを想像し、暮らしにときめきをもたらす「ハイナインノート」。店を出た後の街も、一層魅力的に見えた。
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HININE NOTE
住所:東京都渋谷区上原1-3-5 SK 代々木ビル 1F HININE Inc. 内
最寄:代々木上原駅から徒歩8分、代々木公園駅から徒歩4分
電話番号:03-6407-0819
営業時間:13:00-20:00(ラストオーダー19:00)
定休日:火曜日
https://hininenote.jp/
CURATION BY
フリーライター・エディター。専門はコミュニケーションデザインとサウンドアート。ものづくりとその周辺で起こる出来事に興味あり。ピンときたらまずは体験。そのための旅が好き。