Googleのカレンダーやタスク管理アプリなどを多数使っているが、紙に書きたいという気持ちが抑えられない。1日のタスクを書き出して、おわったら一本線を引く。左から右に気持ち良く走る直線。体に刻まれる達成感は、デジタルでは決して得られないのだ。さらに、仕事なのだから効率を重視したいと思いつつ、そればかりでは味気ないとも思ってしまう。紙だからこそ得られるあたたかみや繊細さも感じたい。そんな私のわがままな気持ちに寄り添ってくれるのが、Season Paper(シーズン・ペーパー)のノートである。今回は一目見たら虜になってしまう、このブランドのノートをご紹介したい。
思わず集めたくなるSeason Paperの文房具
Season Paper は、2人のフランス人によって設立されたブランドだ。パリの国立テキスタイル工房で共に学んだJulieとMélissaは在学中にすっかり意気投合し、卒業後デザイナーとして共同のブランドを立ち上げるべく、パリ郊外東部に小さなスタジオを構えた。元はテキスタイルデザイナーだが、現在はノートやスケジュール帳、壁紙や包装紙など、多くの紙もののデザインを手がけている。
彼女たちが得意とするのは、なんといっても遊び心溢れる愛らしいイラストたちだ。鉛筆、パステル、絵の具、インク、iPad、マーカーなど、さまざまな画材を用いてはいるが、一貫してこだわっているのは手で描くこと。彼女たちの手から生み出される花や動物たちのイラストは人肌が宿ったあたたかみに溢れ、眺めているだけで思わずほほ笑ましい気持ちになってしまう。
シーズン毎に新しいコレクションが発表されるため、思わずどれにしようか迷ってしまうほど種類も豊富だ。私が先日訪れたパリのデパートLe Bon Marché(ル・ボン・マルシェ)では、丁度犬のアイテムを揃えたフェアが開催されており、Season Paper の犬柄のノートたちが会場に華を添えていた。
デジタル機器に溢れたデスクを、花やかにする表紙
まるで絵本の挿絵のようなデザインの数々だが、絶妙にユーモアのセンスがあったり、伸び伸びと描かれた花は可憐さを感じさせたり、少し幾何学的でモダンだったりと、幼い印象になりすぎていないため、大人でもたいへん持ちやすい見た目をしている。
今私が使っているのは、紫の地にマーガレットのような花が描かれたノートだ。まだ冬の名残がある肌寒い日に購入したこのノートは、表紙を眺めているだけでまるで花を飾ったかのような明るい気持ちにさせてくれた。
デスクの上に置いておいても、このノートのおかげで仕事の環境が華やかになったと感じている。パソコンにiPad、スマートフォンなど、デジタル系のガジェットを揃えた仕事机は、どうしても無機質になりがちだ。
仕事の効率を追い求めるのであれば徹底的に無駄を削ぐという考え方もあるのだろうけれど、私の場合はふとした瞬間に目に入り、心をときめかせたり潤いをもたらしたりしてくれるものがある方が、気持ちが元気になって仕事の質が上がると感じている。
本物の花を飾っても良いけれど、デジタル機器や書類を置いたデスクに、水物は最小限に控えたい。そんな私の状況に、このSeason Paper のノートは寄り添ってくれるのだ。
大きさも種類も豊富で、自分の好みを見つけられる
柄だけではなく、ノートの種類もバリエーションに満ちている。サイズはB5程度のものが一番大きく、小さいものだと手のひらにおさまるほどの可愛らしいものもある。
中身は、シンプルな罫線のみのものから、ウィークリーやマンスリーのスケジュールやタスクを書き込めるもの、日記用などが揃えられており、使い手のさまざまなニーズに応えてくれている。
余白が多いデザインは、使う人次第
表紙は色彩豊かだが、中身がとてもシンプルなのも、私が気に入っている点だ。私が現在使用しているスケジュール用のノートは、ウィークリーやマンスリー用の枠線はついているものの、日付までは書かれていない。そのため、自分の好きなタイミングから使い出すことができるのだ。
さらに縦240mm×横165mmのノートは普通の手帳よりも大きいため、余白が多く取られており、予定だけではなく細かなタスクを分けて書き込める。たとえば、私のように編集やライターの仕事をしていると、取材と一言で言っても以下のような工程が発生するから、作業を細分化して書き込めるノートがあると1日の予定が立てやすく、とても便利だ。
・企画書作成
・取材対象者リストアップ
・取材対象者アポ取りのためのメール作成
・取材
・文字起こしや構成書作成
・執筆
例えば「取材準備」なんていう書き方をしてしまうと、朝「取材準備」のために何をすれば良いのか考える時間が発生し、それこそ効率が悪くなってしまう。けれど「今日何をすれば良いのか」を細かに書き込むことで、確認後すぐさま作業に取り組める。これをやっておくだけで、朝の時間の使い方がまったく変わると感じている。
1週間、1ヶ月の達成感を、ノートを見返して味わう
現在は多くのタスク管理アプリが開発され、デジタルで調整を行うととても便利だ。私も実際MTGを忘れないように、リマインダー設定のあるオンラインでのスケジュール管理も活用している。けれども紙にタスクを書きこむことは、デジタルでは得られない仕事の達成感を生み出してくれる。
特に長期スパンでスケジュールを引く仕事だと、間延びしたように業務が少しずつ進み、そしていつの間にかおわり、区切りがどこなのかイマイチ判然としないまま次の仕事に取り掛かることも少なくない。けれども細かに分けられたTO DOを設定し、日々その一つひとつをこなし、そして終ったら線を引くと、今日のベストを尽くせたという気持ちが芽生え、とても充実するのだ。さらにノートの良い点は、過去を視覚的に見返しやすいこと。デジタルのTO DOリストも使っていたことがあるが、デジタルの場合は終了した作業にチェックを入れると、そのTO DOがもう見られなくなるものが多いのではないだろうか。
けれどもノートは違う。形が残る。1週間、1ヶ月と続けて見返してみると、これまでのがんばりの軌跡が見え、自分を労う気持ちが芽生えるのだ。
薄型だから、持ち運んで日々のパートナーに
仕事で使うものを持ち運ぶとき、他にも気になるのが重さだ。以前は1年分収録された分厚い紙製のスケジュール帳を使っていたけれど、パソコンや資料、財布などと一緒に持ち運ぶと、重くてなかなかにしんどい。
けれどもSeason Paperのものは大学ノートのような厚みと重みで、かさばらない。仕事はもちろん旅行などにも持って行きやすく、毎日のパートナーとしてとても頼もしいのだ。
「仕事」というと、つい余計なものを省こうとしてしまいがちだ。デジタル機器も文房具もモノクロのものやシンプルなデザインを求め、いつしか遊び心の一切ない、無機質なデスクが出来上がる。けれども仕事はほとんど毎日のこと。それだけではどうも味気ない。心の余裕や遊び心だって必要だと思うのだ。
Season Paperのノートがあると、仕事を上手にこなしつつ、美しいものを見てワクワクする気持ちや、紙の質感に触れて揺れるささやかな感性を忘れないでいられる。みなさんも使い心地も妥協がなく、さらに詩的で美しいノートを使って、日々に彩りを加えてはいかがだろうか。
Season Paper
CURATION BY
東京都出身。フリーの編集・ライター。フランスと日本を行ったり来たりの生活をしている。