Vol.682

MONO

29 AUG 2025

プロの現場にも、日常にも。ビクトリノックスと“備える”暮らし

私はパティシエとして日々厨房に立ち、多くの時間を包丁とともに過ごしている。だから「刃物」には自然とこだわりが生まれる。厨房の中でも外でも、手になじむ道具があることで、日々の作業は驚くほどスムーズになる。スイス発祥のブランド「ビクトリノックス」は、そんな“使える道具”を体現する存在だ。プロユースとしてはもちろん、アウトドアや家庭の相棒としても、世界中で信頼されている。実際、私が働いた洋菓子店には、必ずこのブランドのナイフがあった。精密なカットや細やかな仕上げが求められるパティシエにとって、その切れ味や扱いやすさは欠かせないものである。

ブランドの哲学について

ブランドカラーの鮮やかなレッド
「一生モノのツール」を掲げるビクトリノックス。日々の暮らしの中で長く愛される道具を生み出すうえで、特に大切にされている価値観や開発理念について、ビクトリノックスジャパン株式会社の野尻さんにお話をお伺いした。

ーーブランドの哲学について教えてください

”Being Prepared Makes life better 「備えがあれば人生はもっとよくなる」”

”「備える」ことで日常の問題を解決してくれる製品であることをモットーとし、「小さな工具箱」として世界中から親しまれているマルチツールをはじめ、ビジネス&トラベルギア、ウォッチ、カトラリーなどを展開しています。

141年の歴史が培ったクラフトマンシップ、モノづくりへのこだわり、高品質。ビクトリノックスのプロダクトは、すべてが機能ありきで華美にならないミニマルなデザインです。”


スイスカードは財布に収納できる名刺サイズほどの大きさ。

どのツールも日常で役に立つものばかり
ビクトリノックスのどの製品にも共通するのは、「本当に必要な機能だけを、信頼できる品質で作り上げている」という姿勢だ。無駄を削ぎ落としたデザインの中には、使い手の動きや環境を見据えた緻密な工夫が詰まっている。

アウトドアから日常、ビジネスシーン、また料理のプロから家庭のキッチンに至るまで、あらゆる場面で頼れる存在であること。

それこそが、ビクトリノックスが141年にわたり世界中で支持され続けている理由であるのだ。

キッチンツールとしての魅力

ちょっとした作業に、すぐ取り出せる
パティシエの現場ではビクトリノックスのナイフは欠かせないものである。

意識して揃えたわけではないのに、数えてみれば自然と手元に集まっていて、どれもこれもが日々の仕事に欠かせない道具となっていた。

気がつけばたくさん手元にあった
野菜やフルーツの繊維をつぶさずにスッと引けるナイフは、細かなチョコレートの飾りまで作れてしまうしなやかな刃先。そして道具にありがちな「疲れ」を感じさせない軽さとグリップのフィット感。

どれもが“手の一部”として機能し、何種類もある物の中から、気が付けばいつもビクトリノックスのナイフに手が伸びている。

師匠がパンに使うナイフもビクトリノックスのクープナイフだった

爪やすりが内蔵されたクラシックSD。爪の手入れは料理人としてマスト
特別な見た目ではないのに、なぜか毎日使いたくなる。それはプロの目線で見ても、細部にわたって考え抜かれた設計と、高い信頼性があるからだ。装飾性よりも、確かな実用性。ビクトリノックスのナイフは、“使うため”に生まれた道具であるのだと実感する。

ーープロの料理人やパティシエからも信頼されているビクトリノックスのナイフ。その魅力とはどこにあるとお考えですか?

”ビクトリノックスのキッチンナイフおよびキッチンツールは、ほとんどの製品をスイス本社工場で一貫生産しています。原材料の選定から製品化までを自社で完結することで、高い品質管理を実現しています。これらの製品は、130以上の国や地域で販売されており、世界中のプロフェッショナルから高い信頼を得ています。”

調理や製菓に携わる者として、刃物とは「たくさん使って、丁寧にメンテナンスすること」が当たり前だった。要は、しっかり使い込み、きちんと研ぐこと。

その常識を覆すのがパーリングナイフだ。



そのシャープさで、クリームまで直角に切れてしまう
「そろそろ研がなくては」という意識を生み出させない、買ったままの鋭さを保ち続けるこのナイフは、購入者が「10年経ってようやく切れが鈍くなったので、10年ぶりに買い替えることに」と語るほど、持続する切れ味が魅力だ。

もしもの時に備える道具として

日本限定品のエマージェンシーツール
「無人島にひとつだけ持っていけるものがあるとしたら、何を持っていく?」ーー子どもの頃、そんな質問をしたことがある人もいるだろう。「もしも」があった時、現代人は何を持っていたら生き抜けるのだろうか。

私はパティシエでありながら母親でもあり、厨房でナイフを握っているときも、子どもと過ごす休日も、頭のどこかで「もしも」の場面を想像している。

地震、停電、断水ーー自分ひとりならなんとかなるかもしれないが、子どもを守らねばと思ったとき、頼れるものが手元にあるかどうかで心の余裕は大きく変わる。

料理人として道具の性能には敏感だけれど、それ以上に「手にしてすぐ使える」「いざというときに迷わない」ことの大切さを、母親になってから強く実感している。

すぐに持って行ける場所に頼れる相棒を
ビクトリノックスのエマージェンシーツールは、見た目はシンプルでかさばらないのに、いざというときに必要な23種類もの機能がきちんと揃っている。

停電時に役立つLEDライトをはじめ防災に特化した機能が搭載され、緊急時に居場所を知らせるホイッスルも付属。火口(ほくち)とファイヤースティックが内蔵されているので、電気やガスがない状態でも簡単に火を起こし、暖の確保や調理ができるようになっている。

もちろん日常でも力を発揮してくれる

部屋の照明や日中の自然光で蓄光し、ハンドル本体も暗闇で光る。写真提供:ビクトリノックスジャパン株式会社
見た目の派手さはない。でも“備える”ことは、日常を丁寧に生きることでもある気がして、私はこのツールを非常袋ではなくすぐ手に届く場所に置いている。あれもこれもと、ひとうひとつを揃えるのは大変。平和な日常を過ごしていると、もしもの時のための備えについては、意識が薄れがちである。

使わずに済むのが一番。でも、いざというときに自分を、そして子どもを守れる手ごたえが、この小さな道具にはちゃんとある。

これひとつだけあればいい。その安心感と信頼感は、エマージェンシーツールならではである。

不安を和らげるのは、手の中の小さな安心

ビクトリノックス:クラシックSD
日本に暮らしていると、自然災害はどこか遠くの話ではなく、いつ自分の身に起こってもおかしくない現実だと感じる。

日々起こる災害をニュースで見るたびに心がざわつくのは、家族の顔がすぐに浮かぶからだろう。母になってからは特に、守るべき存在がいるということが、日々の備えへの意識につながっている。

備えることは、不安を完全に消すことではない。でも、「これがあれば何とかなるかもしれない」と思えるだけで、心のどこかに安心という余白が生まれる。たとえ災害が起きなくても、備えているという事実そのものが、自分を少しだけ落ち着かせてくれるのだ。

赤と黄色は「危険、注意」、または「情熱、希望」を表す色
災害用のツールと聞くと、どこか特別なもののように感じてしまうけれど、日常に自然となじむかたちで持っていられるのなら、それが一番いい。

「使うために持つ」のではなく、「持っていることに意味がある」。そんな視点が、今の時代には必要なのかもしれない。

技術と暮らしを支える存在として

上:ハントマン 下:クラシックSD
パティシエの仕事は、繊細で、緻密で、時に厳しい。道具ひとつで仕上がりが変わるからこそ、私は信頼できる一本を選びたいと思ってきた。

それは家庭でも同じで、母として、もしもの場面に備える道具にも、やはり“本物”を選びたくなる。

ビクトリノックスのツールは、現場の緊張感にも、日常の小さな不安にも、静かに寄り添ってくれる。手の中にある安心。それは、職人としての感覚と、親としての想い、そのどちらにも応えてくれる存在だ。

ビクトリノックス