Vol.681

MONO

26 AUG 2025

日常に変化をもたらす八角形の器。寿山 JYUZAN アングル

家で作るいつもの定番料理が特別な器に盛り付けると、印象がガラリと変化するのを誰もが実感したことがあるだろう。それほど器は重要な役目を担っているが、普段使いの食器はつい同じ形状、カラーのものを選びがち。食卓の風景を変えたい時におすすめしたいのが、寿山(JYUZAN)の器だ。長い歴史で培った技術、すべての工程において人の手をかけて生まれた器が、テーブルを彩る楽しみを教えてくれるだろう。

あえて難しい形状の器を選んで

日々欠かさず使うものであり、かつ暮らしを豊かにしてくれるもののひとつが器だろう。好みの皿やカップは眺めているだけで幸福な気分にさせてくれ、料理をよそえば食卓の雰囲気をぐっと盛り上げてくれる。

器には色、素材、形状と様々なタイプがあり、その中からお気に入りを選ぶことも楽しみのひとつだが、ふと気が付くといつも同じような色彩や大きさのものを選んではいないだろうか。

日々使うものだからと、器はシンプルなカラーやフォルムのものを選びがち
例えば食器の定番である白いカラーや丸いお皿は扱いやすく、料理を盛り付けても失敗は少ない。けれど時には敢えて難しいフォルムのものを使い、いつもとは異なる風景をテーブルに描いてみたい。

今回ひと目見てその美しい様に心惹かれたのは、寿山のアングルと名付けられた器たち。個性豊かな八角形の形状と、土の柔らかな質感を感じられる優しい色合いが特徴だ。これに自分らしいセンスで食材を盛り付ければ、テーブルの風景がドレスアップするに違いない。

いつものテーブルシーンがスタイリッシュに変化する、寿山のアングルシリーズ。好みのサイズとカラーを見つけたい

寿山の歴史とその工程

寿山は伝統ある美濃焼きの地で陶器とタイルを古くから作り続けている
寿山は明治31年(1898年)、岐阜県土岐市に初代水野仙九郎氏によって陶器専門店として設立された。昭和10年(1935年)にタイル生産がスタートし、現代では陶器とタイルという異なるジャンルを手掛ける他に類を見ないブランドだ。

空間を彩りアクセントとなるタイル、日常に新たな光を与える器。ふたつの技術を活かし合い、寿山の個性が育まれている
寿山の特徴は土、釉薬、焼成をすべて自社で行う一貫生産にあると言えよう。美濃地方の粘土を中心に、遠いところでは岡山の陶石を使い、粉砕、混合、混水をし、自社で作られた土を使用しているからこそ「土味」が活き、柔らかな雰囲気を醸し出す作品が完成している。

寿山のこだわりのひとつ、土。陶器に柔らかな質感と豊かな表情を与えている
そして寿山の特徴のもうひとつは、あらゆる製造工程に人の手が加わっているという点だ。手作業でカットする、手作業で折り曲げる、手作業でたたむ。製作、乾燥して釉薬を塗り、焼成・焼き方まで管理しており、だからこそ器のひとつひとつが少しずつ異なる表情、色合いを持っている。

人の手が加わることで、どの器にも個性と暖かみが感じられる
ふたつの異なるプロダクト「タイル」と「陶器」を長年作り続ける寿山は、タイルの技術を使いながら陶器を作り、陶器の技術を活かしてタイルを作る。それぞれの技法を活かすことによって、寿山ならではのプロダクトを生み出し続けている。

個性豊かな器、アングルを使いこなすために

寿山のタイルは『寿山LIFE』として、器は『寿山FOOD』として展開しているが、今回は『寿山FOOD』の中から八角形の形状を持つ”アングル”シリーズにフォーカスを当てて、寿山の代表取締役である水野寿昭さんにお話を伺った。

アングルは使い込むほどに存在感のあるひと皿を食卓に描くことが出来る器
”アングル”は皿の形状としては珍しい八角形をしているが、これはどのように生まれたものなのだろうか。水野さんがその開発について語ってくれた。「八角形という、一見すると工業的な直線的デザインに見えますが、実際は手作業で角の丸み、直線部分の縁を調整しています。

八角形の正確さと、手作業ならではの柔らかさの両立は非常に難しく、試作を何度も繰り返しました。結果として、無機質になりすぎず、温かみのある印象に仕上げることができました」

何度も繰り返した試作の末に完成したというアングルの器。土のぬくもりを感じられる雰囲気となっている
「また、収納時に“重ねたときの姿が美しい器”であることも目指したポイントのひとつです。スタッキングした状態も、日常の景色として楽しんでいただけると思います」器として使う時はもちろん、収納する際の姿まで考えられた”アングル”。一枚だけではなく、異なるサイズや色合いを集めてみたくなる器と言えるだろう。

だが八角形という独特な形状は、普段は丸い皿ばかりを使う人には少しハードルが高く感じられるかもしれない。この器のおすすめの使い方、そして盛り付けについてのアドバイスを水野さんに尋ねてみた。

アングルで展開している3色(ホワイト、ブラウン、グリーン)はどれも食材を活かしてくれるカラー。テーブルで映えるよう、バランス良く盛り付けたい
「中央に主菜を配置するワンプレートスタイルや、放射状に食材を盛り付けることで器のかたちが際立ち、視覚的にも美しい仕上がりになります。和洋問わず使える釉薬の色合いで、朝食からディナーまで幅広くお使いいただける点も魅力のひとつです」とのお言葉を頂いた。

自身の感性を活かして盛り付ければ、いつもの手料理の印象が大きく変化するアングルの器。日常の食卓に、あるいは大切な人を招いた時など様々なシーンで活躍してくれるに違いない。

またアングルシリーズのひとつ、ロングプレートは前菜やおつまみなどを盛れば雰囲気がアップする。持っているととても重宝する器で、普段のメニューもこちらの器に載せるだけでぐっと華やかな印象に変化する。

食卓のアクセントとなるロングプレートは自由な発想で盛り付けを。S・M・Lの3種類のサイズ、カラーは3色が展開中
「ロングプレートは、前菜や副菜をすっきりと並べたい場面にぴったりの器です。食材をシンプルに横並びに配置したり、彩りの異なる素材をリズミカルに並べることで、余白の美しさや直線的なラインが引き立ちます」と水野さん。

シンプルな食材でもロングプレートに並べると、美味しさが増す印象に。和洋中、どの食材も似合う万能な器だ
なお、器を購入した際に気になるのが電子レンジでの使用が可能かどうかなどの注意点。その辺を水野さんに伺うと、「電子レンジ(温めのみ)・食洗機(家庭用のみ)ともに基本的にはご使用いただけます。オーブンは不可になります」とのこと。丁寧な手作業で作られた寿山の器が長く食卓で輝ける様に、大切に取り扱っていきたい。

手をかけて生み出した器へのこだわり

あらゆる製造工程に人の手が加わっている寿山のプロダクト。多くのメーカーが大量生産へと移り変わった現代で、器という日常生活で使うものにこの工程で取り組まれていることへのこだわりについて、水野さんに伺った。

「『寿山』の器づくりは、成形・釉掛け・焼成前の仕上げ・検品まで、すべての工程を職人の手作業で行っております。昔ながらの“タタラ成形”と呼ばれる技法を用い、一枚ずつ丁寧に形を作り上げています」

寿山では長年培ってきた技法を現代に合わせて取り入れながら、オリジナルの製品を作り続けている
「機械による大量生産とは異なり、私たちが大切にしているのは『土の表情』と『焼き物の風合い』です。原料段階では、土の角が取れるようにすり潰しながら粉砕し、そのやわらかさが焼成後に温かみをもたらします。

そこに手作業ならではの微細な揺らぎや、焼成時に生まれる自然なムラが加わることで、一つとして同じもののない、味わい深い器が完成します」

作り手の思いと技術が伝わる器は、使うほどに愛着が増していく
「器は、毎日の暮らしの中で最も身近に使われる道具のひとつです。だからこそ、私たちはそこに手間をかけ、『心地よさ』や『温もり』を持った器を届けたいと考えています。それは、ただ食事を支える道具ではなく、“丁寧な暮らし”の一部であってほしいという想いからです。

一点一点異なる色合いや形の違いを、『個性』としてお楽しみいただき、その中から“ご自身のお気に入りの一枚”を見つけて、大切に使っていただけたらと願っております」

寿山ではアングル以外にもオリジナリティあふれる器が数多く展開中だ。どれもテーブルを美しく彩ってくれるものばかり
「手作業による製造のため、器ごとに歪みや釉薬のムラが見られることがあります。器の個性としてお楽しみいただけましたら幸いです」と水野さん。寿山の器から醸し出される味わい深い印象は、手作業だからこそ生まれるのだろう。

ぬくもりと趣のある器が、毎日の食事にときめきをもたらしてくれる
最後にご購入された方々に、水野さんからお言葉を頂いた。「数ある器の中から”アングル”をお選びいただき、心よりありがとうございます。この器が、日々の食卓にちょっとした楽しさや彩りを添える存在になれたら嬉しく思います」

自分のために、ともに食事をする大切な人のために。アングルで日々の食卓を美しく彩りたい
「どの角度から見ても絵になる器ですので、ぜひ自由な発想でお料理を盛り付けてみてください」と語る水野さんの言葉のように、”アングル”が持つオリジナルな個性を活かし、自分なりのセンスで美しくテーブルシーンを描いてみよう。

八角形の小宇宙に食材を載せて

寿山で展開しているアングルシリーズはどれも魅力的なものばかりで、サイズやカラーの選択肢も豊富だ。今回は悩んだ末に形状M、縦・横が各19.5cmのもので色はブラウンを選んでみた。ブラウンカラーは古くから親しまれている飴釉を使用しており、華やかな色彩の食材を引き立てる力を持っている。

ブラウンカラーは光が当たると釉薬が滑らかなつやを放ち、シックな雰囲気が魅力的
形状Mの20cm弱という大きさはデザートや前菜、サイドディッシュに適しているが、一人〜二人暮らしならばメインの皿としても使用でき、非常に使い勝手が良いサイズ。盛り方や食材を変えてみれば、カジュアルなシーンからフォーマルな食卓でも対応可能なのも嬉しい。日常のひとコマを、あるいは特別なひと時をこの器で彩ってみたい。

ランチでもディナーにも、多くのシーンで活用できるMサイズ
また長方形のフォルムを持つロングプレートでは形状long M、縦250mm X 横72mmのサイズで、カラーはホワイトをチョイスしてみた。縁には弁柄(べんがら)が加えられて優しいアクセントとなっており、バニラクリームのような白い釉薬がたっぷりかけられている。

ニュアンスのあるホワイトカラーで、載せる食材を選ばないのが嬉しい
前菜を載せたり、異なるおつまみを数種載せてみたり、あるいは小さめのデザートを幾つか並べたりと、アイデア次第で様々な使い方ができそうだ。

アングルの器で、いつもの食卓の景色を変えて

お気に入りの器に手作りの料理を盛り付ける。それは毎日の暮らしの中で当たり前のように過ぎていく風景のひとつ。だが慌ただしい日々を送っていると、どうせすぐに食べ終えてしまうのだから、誰が見ているわけでもないのだからと、いつも同じ皿に深く考えることもなく料理をよそってしまうことがある。

自身の食卓の風景が見慣れたものになってしまったと感じた時は、器を変えてみてはどうだろう。これまで使ってきたものとは少し違う、器自身が個性を放つものを選んでみたい。

食の風景が変われば暮らしはもっと豊かになるはず。器で日々の食卓に変化をもたらそう
柔らかな土の風合いと味わい深い釉薬の質感を感じることができる寿山の器。八角形というかたちに息づく、熟練した職人の技術を堪能できるアングルの器の中で、自身が描いた食材たちが美しく花開く瞬間を味わおう。

寿山|アングル

形状:M 6,355円(税込)
形状:long M 3,909円(税込)

https://www.jyuzan.co.jp/food/581.html