Vol.397

MONO

06 DEC 2022

食卓に自分の世界観を創る。100色の美濃焼「MINOIRO」

自分好みの色の器を揃えているという方はどのくらいいるだろうか。食器の色にはそれなりにこだわって揃えてきたが、ふと器を使っているときに「もっとこんな色の器が使いたいのに」と何度も思うことがあった。自分好みの色の器をオーダーできる「MINOIRO(ミノイロ)」は、その夢を叶えてくれる。創業100年の美濃焼老舗製陶所「カネコ小兵」伊藤祐輝氏と、グラフィックデザイナー星山知佳氏、コピーライターの永野広志氏が始めた「100色から自身の理想の1色が選べる美濃焼食器・MINOIRO」を紹介したい。

MINOIROの開発秘話

「料理がおいしそうに見える100色」を選んで作成されたMINOIRO
販売前から人気を獲得しているMINOIROは、もともとクラウドファンディングで198%という高い数値で達成したプロジェクトだ。岐阜県土岐市の窯元として陶磁器を製造し、創業から神仏具、徳利、生活食器と変遷を重ね、美濃焼を代表する食器を作るカネコ小兵製陶所。四代目である伊藤祐輝氏は、クラウドファンディングを進めるときにはこう考えていたと話す。

「クラウドファンディングを進めるにあたり、美濃焼の特徴や強みを話し合いました。よく言われることは、美濃焼は『特徴がないのが特徴』というくらい種類が豊富で多様な技術に溢れています。さまざまな色や質感、形状があり、それによって日本一の生産量を誇る焼き物の産地になっています。言い換えれば、どんなものでも実現できる懐の深さがあると考えました。特に釉薬に関しては、微妙な色合いを再現して世に送り出している釉薬職人さんが多数おり、私たちの取引している釉薬屋さんは、今まで10万色ほど釉薬を作っています。これは我々が作る美濃焼の強みの一つだと考え、多様な色を手に取っていただける器の提供を考えました」

ちょうどカネコ小兵製陶所が100周年を迎えることもあり、100色から選べる器「MINOIRO」をスタートさせた。100色を揃えることは困難な道を予想していたと言うが、釉薬職人の方々からは「やっちゃおう」という気前の良い二つ返事で、このプロジェクトを進められたという。

ピンク、黄色、緑とさまざまなカラーを展開
「パントーン(プロダクトデザインや紙、WEB、ファッションなど幅広い業界で基準とされている色見本)を使って、表現したい色を釉薬職人の方々に依頼し、少しずつ100種類の色を再現していきました。もちろん思い通りにいかない色もあり、試作を重ねた部分もありますが、今までの経験値から職人の方々と一緒に100色揃えるまでのスピードはとてつもなく早かったと思います。まずは手触りや質感を統一し、その上で色決めをしていきました。『選ぶ楽しさを色の豊富さから始めてほしい』という想いと、美濃焼に携わる職人の方々の懐の深さによって実現できたプロジェクトです」

美しい色の器が揃う
美濃焼は分業制でそれぞれの工程をそれぞれの職人が専門を持ち、一つ一つ丁寧に製作される。設計と素焼き、施釉(釉薬を施す工程)、焼きはカネコ小兵製陶所で行い、型作り、成形、釉薬の調合は別会社の職人の方々にお願いしていると言う。さまざまなプロの知識と技術、アイデア、こだわりが集結し、一つのMINOIROが完成する。

MINOIROが手元に届くまで

MINOIROは100色の中から、好みの色を5色指定し、手元に届く5枚の「色見本タイル」で色と質感を確認し、1色に決定してオーダーする。実際に自宅に届く色見本タイルを見て、触ってから、理想の1色を決めることができるため、既製品を買うときよりも少し時間がかかってしまうが、イメージ通りの1色を手に入れるためのこだわりを楽しめる。

色見本タイルのセット

開封すると、事前に選んだ5色の色見本タイルが入っている
器を買うときにオンラインショップで見た色と実際に届いたものの色が異なることが多々あるが、色見本タイルで色味をしっかり確認できるため、MINOIROではそのようなことは起きず、自分のイメージ通りの器を購入することが可能となる。

「ブルー」といっても微妙な色の差異がある

実際に選んだ色見本と同じ器は、自分のこだわりを体現してくれる
既製品にはない色合いのものばかりで、見ているだけで飽きず、高揚感があふれ出す。しかしこの微妙なニュアンス色を出すには、さまざまな苦労もあったという。

「焼き物の色は釉薬の調合だけでなく、焼く時の窯の温度や焼き方によっても変化します。釉薬職人の方々がこの色だと思っていても、焼いてみたら違うこともありうまく色がでなかったことが何回もありました。美濃焼の焼き物づくりは分業制を取っているところが多く、このリレーがうまくつながらないと思い通りの製品が作れないのだと実感しました。今、世に出ている器の色は、そんな苦労をたくさん重ねて実現できているものだと思うと感慨深いものがあります」と伊藤氏は話している。

お皿、小鉢、マグのセットは、釉薬の質感や色味をしっかりと感じてほしいため、形状はシンプルなものにしたという伊藤氏。お皿は230×210×20(mm)、小鉢は147Φ×63(mm)、マグ 100×70×85(mm)という使いやすいサイズ感。器の色味によって料理の内容や、雰囲気がどう変化するのかを紹介していく。

食洗機、電子レンジに対応。重くなく、扱いやすいのも魅力

既製品にはない、繊細で珍しい色味

今回ZOOM LIFEが紹介するのは、まろやかなくすみ感があり大人が使いやすいピンク色、シックで高級感のある緑色、そしてなかなか見ることのないモードな黄緑色のMINOIRO。

ピンクの器

彩りを考えながら盛り付けるのも楽しいピンク色の器
柔らかな色味の器には、淡い色味の料理がおすすめ。柔らかい色味のパンケーキやワッフル、卵料理、ヨーグルト、バナナなどの淡い色のフルーツなどを盛り付けると、エレガントな世界が完成。もちろんカラフルな色味でも料理が映える。ピンクの器は優しく穏やかな気持ちにさせてくれるため、一日を気持ちよく始めるための朝食用にぴったり。パーティーやお祝いのシーンなどにも、食卓を明るく盛り立ててくれる。

黄色の器

フレッシュなグリーンと赤いパスタがよく映える
グリーンとイエローの中間のようなスタイリッシュな黄色の器は、食卓を華やかに、おしゃれにしてくれる。黄色の器は万能で、サラダなどの緑色、トマトソースを使ったアラビアータやペスカトーレなどの赤色、肉料理などといった茶色の料理をさらに美しくさせ、どことなくエスニックな雰囲気にもさせてくれる。気分も明るくなり、晴れやかな気持ちに。

緑色の器

あまりなじみのない緑色の器だが、さまざまな食材とマッチする
落ち着きのある深みのある緑色の器は、煮物やカレーライスなどのいつもの料理も引き立ててくれ、大人な雰囲気に。野菜の色味が緑の器と相まって自然のパワーを感じ、エネルギッシュな気持ちに。白米や緑黄色野菜など明るい色味を感じられる素材を使った料理と好相性。

何色か揃えて季節や気分によって使い分けたい

好みの色を選ぶということ

カーテンやソファー、部屋の壁紙などを選ぶように、食器選びも自分のこだわりの色やインテリアに合わせたいという人は多いと思うが、カーテンやソファーなどのインテリア品はカラーオーダーしていても、食器やカトラリーは既製品を使うことが多かったのではないだろうか。

できれば他のものと同じように、テーブル周りもこだわりの色で揃えたい。器もカラーオーダーの仕組みができることで、自分好みの色を選ぶことの楽しさや、朝・昼・夜など時間やシチュエーションでお皿の色を変えたりできる面白さを改めて感じ、日々の食事の時間を豊かにするだけでなく、インテリア全体を通して日常をより楽しむことができると考える。

カーテンなどと違い、手軽に雰囲気を変えられる器
「こういうニュアンスの色が欲しかった、というこだわりの強い方にこそ手に取って選んでもらいたいです。今まで叶わなかったことが、このMINOIROで叶うという体験をしてほしい。MINOIROを通して自分にぴったりの器の色が見つかった、今まで出会えなかった器の色に出会えたという方を増やしたいです」と伊藤氏は話している。

シンプルな食卓も、お気に入りの色の器があるだけで思わず笑顔になれる。自分好みの色の器を使うだけで、三食ある食事の時間をさらに豊かに心地よく過ごすことができ、今までの食事の時間が特別な時間に変わっていくだろう。

日常生活に馴染み、生活に寄り添い続けるMINOIRO

料理を盛り付けなくても美しいMINOIRO
古くから人々の生活に密着し、現代ではワンコインショップで買えるものから芸術品である高級器まで、多様性に満ちた美濃焼。「ひとつのことにこだわることなく、さまざまな挑戦ができる素地があり、伝統と新しさを内包していることも、美濃焼の素晴らしさです」とも伊藤氏は話す。
その美濃焼から100色のカラーという新しい器のスタイルを確立させ、もっと自由に器にも好きな色やこだわりを取り入れるというカルチャーが今後出来上がるのではないだろうか。

100色から自分好みの色を見つけ、日本の食卓を支える存在である美濃焼の魅力を味わえるMINOIROは、今後一般販売を考えているという。是非手にとって色と質感を味わってみてはいかがだろうか。

カネコ小兵製陶所

1セット(マグ+小鉢+お皿) 15,000円(税込)

https://www.ko-hyo.com/
https://www.instagram.com/kanekokohyo