Vol.392

MONO

18 NOV 2022

壁を飾り、育てるインテリアプランツ。ビカクシダとのワイルドな生活

今、ムーヴメントになっているビザールプランツ人気を牽引している植物の一つがビカクシダ だ。ビカクシダ はその名の通りシダ植物の一種。「コウモリラン」という名前で今でも流通しているが、現在はビカクシダ が主流となっている。18種類の原種とそれに伴う園芸品種とともに、秀でた特徴を持つ選抜品種が次々に登場し、その市場価値を高め多くの人を魅了している。ビカクシダの魅力は市場価値の高さだけでなく、仕立てのおもしろさにある。自然下では大木に着生して雨や落ち葉から栄養を摂取しているビカクシダ。その生態を利用して、コルクや木の板などに水苔とともに括り付け着生させ、壁に吊るして生育させることができる。シダ植物なので耐陰性があり、室内での育成もしやすい。人工的なインテリアではなし得ない、自然が作り出すワイルドなインテリアをビカクシダとともに味わってみるのはいかがだろう。

ビカクシダにおけるスタンダードな原種を知る

ビカクシダの原種は全18種類(20種に分類する場合もある)。オセアニア、東南アジア、アフリカ、南アメリカといった比較的温かい地域に分布している。そのため、寒さにはあまり強くなく、また木に着生していたりするので強い日差しへの耐性も強いわけではない。日本の気候であれば屋外管理でも概ね問題ないが、室内であればビカクシダに合わせた環境を整えやすく、安定して形の良い姿を作りやすい。

オセアニアグループ

「ビフルカツム」「ヒリー」「ヴィーチー」「スパーバム」の4種が存在する。

オセアニアの気候は日本に近いため、これらのビカクシダは比較的育てやすい。特にビフルカツムは定番品種として昔から愛されており、今はその園芸品種であるネザーランドがメインで流通。ビギナー向けとして安価に販売されているが、育て上げるととても迫力があり美しい。

胞子葉(前方に飛び出ている葉)の先端の分岐が大ぶりでダイナミックな姿となるビフルカツム

胞子葉と貯水葉(放射状に広がっている葉)の上部が鋭く立ち上がってシャープな見た目が人気のヴィーチー。こちらもホームセンターなどで買える定番品種

東南アジアグループ

「ウィリンキー」「コロナリウム」「グランデ」「ホルタミー」「ワンダエ」「ワリチー」「リドレイ」の7種が存在する。

高温多湿な地域のビカクシダではあるが、寒さに気をつければ比較的問題なく育てられる。ただ、大きくなる品種が多いので、置き場の確保が重要となる。生息地で特徴が異なるウィリンキーや、一線を画すフォルムのリドレイは非常に人気。

ティアドロップ型で可愛らしくも大きくなるコロナリウムはすこし曲者の品種

キャベツのような貯水葉と鹿の角を彷彿とさせる胞子葉で人気のリドレイ

ワリチーはサイズこそ中型で管理しやすいビカクシダだが、休眠するのでそのケアにコツがいる。特徴的な葉を出す魅力的な種

アフリカグループ

「アルシコルネ」「マダガスカリエンセ」「クアドリディコトマム」「ステマリア」「エリシー」「アンゴレンセ」の6種が存在。

特徴的な形で魅力的な品種揃いのアフリカグループのビカクシダ。その分、一癖も二癖もあって育てるのが難しいとされている。一部を除いてサイズはそこまで大きくならず、子株をたくさん出して群生を楽しむこともできる。

シワシワの貯水葉を展開し異彩を放つマダガスカリエンセ。人気だが生育が難しい品種として知られる。うまく育ってくれれば子株をたくさん出して群生した姿が楽しめる

南アフリカグループ

南アフリカには「アンディナム」という品種のみ。ペルーなどの高山に生息するビカクシダなので、暑さと寒さに敏感。適した環境を作るのが難しい。うまく育つととても大きくなるので、こだわり派にオススメの品種。

市場価値が高くて人気の選抜品種

ビザールプランツ人気を盛り上げる要素の一つに、希少性とそれに伴う市場価値がある。園芸品種や選抜品種と呼ばれるものがそれにあたり、高額なものだと100万円以上するものもある。それが子株を出す植物であった場合には増やせる楽しみもあるので、よりのめり込みやすい。

ビカクシダは一部を除いて子株を出すので、そういった楽しみ方もできる。増えた子株は親株のクローン。生育環境にもよるが基本的には同じ姿になっていく。増えた子株を育てたり、植物仲間と交換したり、ショップサイトで販売するのも良いだろう。

ウィリンキーとダイバーシフォリウムとの交配種であるペガサスは定番の人気種

ウィリンキーの選抜種であるペドロは希少で、発展途上の状態でも10万円はくだらない

基本的に植物は小さいものに人気が集まりやすく、ビカクシダにおいても選抜された矮小種への人気は高い。写真は昨今のトレンド品種であるジェイドガール

ある程度成長すると写真のように子株が出てくる。すぐには分けずにしばらく親株と一緒にしておいたほうが生長は早い

ある程度成長した子株は取り分けて、胞子葉や貯水葉をある程度展開するまで鉢管理しておく。鉢管理にしたあとに胞子葉を展開し始めたのでとりあえずひと安心

ビカクシダを板付する

ではビカクシダを板付する方法をお届けしていこう。基本的には水苔とともに着生させたいものに括りつけるだけ。水苔の形や、水苔の中に入れるものなどは好みがあるので、本やウェブサイトなどを参照してほしい。ここで紹介するのは私が普段行っている一例となる。

今回はこのビカクシダを板付していく。普及種のビフルカツムの園芸品種であるマジュス。生長すると胞子葉が立ち上がって先端が細かく分岐する華やかな品種

生長点が上、その下に胞子葉の付け根が来るようにして板付する。貯水葉と胞子葉がしっかり生えていると生長点の向きがわかりやすくて板付しやすい。

今回はコルク板に付ける。コルク板との組み合わせは自然下での姿を彷彿とさせる姿に仕立てられる。単なる木の板や通風パネルに括り付けたりするのも一般的

水苔はチリ産が安くて使いやすいが、質がいいのはニュージーランド。なるべくニュージーランド産を使いたい。ビカクシダ人気の影響もあって見かけにくくなっている

水苔の中にはベラボンを入れておく。水はけが良くなって根腐れを起こしにくくなる

水苔とビカクシダを括りつけるのにテグスを使うが、不用意に切れたりしなければなんでもいい。しっかり固定しておくのに針金や結束バンドを使ったりもする

出来上がりがこちら。水苔が崩れないようにテグスや糸でギュッと固めておく。キレイに丸くしておくと見た目が良く、貯水葉もキレイに展開してくれる

ビカクシダの購入は専門店やイベントがおすすめ

イベントやウェブサイトで原種や希少種を数多く販売している専門店vandaka plants。京都と東京にショールームを構えており、美麗なビカクシダの実物を見ることができ、実際に購入も可能
人気にあやかってグリーンコーナーが拡大しているホームセンターでもビフルカツムやヴィーチーといった普及種の購入は可能。高額な選抜種を購入するとなるとやはりネットオークションが探しやすいが、安い買い物ではないし生き物なので実物を見られたほうが安心する。

購入するなら専門店がオススメ。大都市を中心にいくつかビカクシダをメインで扱っているお店があり、そこでは多様な購入品種が見られるだけでなく、大きくなった姿も見られるので、部屋に置いたときの想像もつきやすい。

近くに取扱店舗がなければ、植物販売イベントに足を運ぶというのも手だ。植物のイベントは日本各地で毎週のように催されており、ビカクシダが販売されていることも多い。お得に買えたり、生育に関する質問もできたりもするので、ビギナーほど一度イベントに訪れてその熱量を感じてみてほしい。

植物イベントで所狭しと壁にかけられているビカクシダ。植物関連イベントでは必ずと行っていいほど販売しているお店が出店しているので、近隣のイベントに足を運んでみよう

ビカクシダで身近に自然を感じるライフスタイルを

植物を壁掛けにできるメリットは、植物をインテリアテイストで楽しめたり、壁を有効活用できたりすることに加えて、常に植物を自分と同じ目線かそれより上にもってくることができるのもポイント。地面や棚に鉢が置かれて、目線を下げて世話をするいわゆる“園芸”ではなくて、散歩をしながら目線に入る木々を眺めるようにビカクシダを愛でることができる。

自宅のワークスペースに飾れば、ひと息つく時の癒しにもなってくれる
こうして常に視界に入れていれば植物の変化にも気付きやすくなって、枯らしてしまうリスクは格段に減る。植物を育てるにあたって水の量や土の配合を気にする人が多いが、うまくいく一番のコツは日々しっかり観察すること。ビカクシダは生長とともに大きく変化する植物なので、生長の過程を目の当たりにすることができ、愛着のある植物になってくれるはずだ。

ビカクシダ 販売専門店 |vandaka plants

GALLERY TOKYO

住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-4-1 BAKUROCACTUS 4F
https://www.vandaka-plants.com/