Vol.356

MONO

15 JUL 2022

天然石のように、美しく表情豊か。100%リサイクルプラスチックのヘアコーム「RE=COMB」

近年、環境負荷を抑えサステナビリティを追求する取り組みが、ビューティ業界でも進んできている。その取り組みは、「商品の容器を詰め替え式にしてゴミを減らす」「環境負荷の小さいバイオマス原料のプラスチックを導入する」「カーボンフリーの実現を目指し、流通システムを変える」といった内容。サービスや商品によって多様なアプローチがされている。そんな中、サステナブルなヘアスタイリングアイテムシリーズがイギリスで2020年に誕生した。その名は「RE=COMB(リコーム)」。どのような考え方で生み出されたアイテムなのか、早速見てみよう。

これからの時代に求められる、サステナブルなプロダクト

暮らしの中であたりまえに使っている容器。使い終わって捨てるのではなく、リサイクルに回すことで資源になるが、日本では回収されたプラスチックの大半が、マテリアルリサイクルではなく、サーマルリサイクル(焼却処理の際の熱をエネルギーとして利用すること)されている。
サステナブルという言葉があたり前のように使われている今日この頃。人々の地球環境に対する意識も高まり、私たちがものを消費するとき「環境に配慮したサステナブルな商品か?」という観点も、購入を決める上で重要な要素となってきている。特にファッション業界においては世界第2位の汚染産業(国連貿易開発会議 UNCTADより)とされ、業界全体で環境汚染産業脱却に向けた取り組みが活発だ。

そしてファッションとの関連性が高い美容業界においても、環境意識の高い消費者が増えたことにより、サステナブルな取り組みを行う美容サロンやコスメブランドが注目されるようになり、サステナブルの観点を取り入れた商品も続々と誕生。我々消費者にとっても、選択肢が広がりつつある。

とはいえ、リサイクル素材を使ったビューティアイテムはまだまだ一般的ではない。それは「リサイクル素材のプロダクトは、見た目や使い勝手が魅力的ではない」と思われがちだからだ。しかし近年、「その商品自体が魅力的である」と思えるような、アップサイクル的な価値を携えたアイテムが増えてきている。

ヘアスタイリングアイテム「RE=COMB」が日本初上陸

RE=COMB 3,960円(税込)
RE=COMBは、イギリスでトップヘアスタイリストとして活躍するSarah Jo PalmerとChristopher Deagleの2人が、2020年に立ち上げたヘアスタイリングブランドだ。「BEAUTY FROM WASTE」というコンセプトを掲げ、日常生活はもちろん、美容業界においても多く出るプラスチック廃棄物を価値ある製品に生まれ変わらせたいという思いから生まれた。

色合いがきれいなマーブル模様のコームは、天然石などの自然物を元にデザインされ、さまざまな色の組み合わせによって、ひとつとして同じ模様のない“世界にひとつだけのコーム”としてシリーズ展開されている。そのどれもが固有の美しさを持ちながら、素材は100%リサイクルプラスチック。廃棄プラスチックが輝ける新たなフィールドを生み出したと言えるだろう。

ヘアコーム自体にもPP(ポリプロピレン)と原料素材を印字。サステナビリティへの強い意識を表現している
日本では、ヨーロッパのライフスタイルアイテムを中心に取り扱う、外苑前のセレクトショップdoinel(ドワネル)が正規輸入を行い、6月から販売がスタート。実際に店頭へ足を運ぶと、色とりどりのコームが並び、ブランドを知らなくてもその美しさに引き寄せられる。

doinel(ドワネル)に並ぶRE=COMBシリーズ。パッケージにはボール紙を使用している
doinelでは、華美ではなく上質なもの、素材に魅力があるもの、生産背景や作り手の意思が見えるもの、という観点で普段からセレクトしているそうだ。RE=COMBをセレクトした理由も、「シンプルに見た目が美しいので、ものの魅力に惹かれて手に取ることができ、そこからリサイクル素材という付加価値にたどり着ける」と、最初に感性が刺激される点が決め手だったという。店内に置かれている他のアイテムは天然素材でつくられているものが多いが、リサイクルプラスチック素材でつくられたRE=COMBも、不思議と違和感なく馴染んでいる。

まるで天然石。1点ものの美しいコーム

天然石のようなRE=COMBのコーム
RE=COMBの美しいコームの模様は、手に取ると決してプリントされたものではないことがわかる。

一般的にリサイクルに回された廃プラスチックは、粉砕され、溶解、冷却といった処理を経て、再生ペレットという粒状の素材に生まれ変わる。このペレット自体に不純物が多く混ざっていると、色が濁り品質の悪いものとなってしまう。色の純度を上げるためにも、しっかりと不純物を取り除く必要があり、特にホワイトや透明など色の薄いものは、より不純物を取り除く手間が必要なのだという。

RE=COMBで使われているポリプロピレンのペレット
そして違う色同士のペレットを混ぜ、成形機に流し込むことで、この世でひとつしかない模様が生まれる。見た目にも天然石のような美しさがあるが、そのプロセスを考えると、プラスチックという素材は自然物と変わりなく尊いもののように思えてくる。

doinelが取り扱うカラーは8種類。左上から:「citrine」「marbled cool」「fluorite」「pony – white & brown teeth」、左下から:「purplehaze」「Jasper」「salt」「fish yellow」
現在doinelでは8つのカラーバリエーションを展開。種類ごとに色味は決められているが、配分や色が置かれる位置によって個体の色は異なる。店頭で好きな模様を選ぶのもいいだろう。

身だしなみの相棒に

出かける前に髪を整える
再生プラスチックでできているRE=COMBは、コーム自体は大きめだが非常に軽量で扱いやすくつくられている。粗目のコームなので、髪をざっくりとかしたい時や、スタイリングで毛流れをつくりたい時など、ヘアスタイルを整えるのにピッタリだ。現場で活躍するスタイリストが開発しただけあって、機能性も申し分ない。

形状がシンプルで、男女問わず日常で気軽に使える
もちろん、再生プラスチック素材なので、整髪料がついている髪に使っても、洗って清潔に保つことができる。美しく、使い勝手がよく、地球環境にも意識が向く。このようにさまざまな角度から魅力が重なるアイテムは、暮らしに欠かせない長く使いたくなるものとなるはずだ。

身だしなみのお供に、ポケットに忍ばせて
家に置いて使うだけでなく、外出先で身だしなみを整える時に使うにもいいだろう。今まで日常的にコームを使っていなかった人も、今まで以上にコームを使いたくなるはず。

多用途であることが、想像力を広げる

自然物のような美しさがあるRE=COMBは、インテリアとしても活躍してくれる
リサイクルプラスチックという、素材が持つイメージ以上の美しさをコームという形で提案するRE=COMB。このようなアップサイクル的な、ときめきが先に立つアイテムこそ、これからの時代に求められるサステナブルなアイテムだと言える。また、質の高いリサイクル製品を生み出すためには、相応の労力を要するものだ。魅力的なリサイクルアイテムを購入することは意思表示にもなるし、愛着をもって使うことで環境意識も高まり、今後もよりよい循環が生まれてくるだろう。

RE=COMB