Vol.237

MONO

25 MAY 2021

毎日の暮らしが広がる。和晒ロール「さささ」

じっくりと、時間をかけて丁寧に作られる和晒(わざらし)。天然繊維であることから、通気性・吸湿性に優れ、熱にも強く、肌あたりがいい。機能性に富んだ素材なので、古くから日本で使われてきた布だ。和晒は、かつては暮らしに欠かせないアイテムだったが、今やティッシュやキッチンペーパーなどに取って代わられている。日常で和晒を使ったことがないという人も多いことだろう。しかしソーシャルグッドを求められるようになってきた昨今、繰り返し使える和晒は、日々の暮らしで使えるアイテムとして最適なアイテムだと言えるだろう。そこで今回は、和晒ロール「さささ」に注目。実際に多用途に使用しながら、和晒の魅力を探っていこう。

暮らしの視点が少し変わるプロダクトに出会う。和晒ロール「さささ」

キッチンペーパーよりも少し背の高い、「さささ」の和晒ロール Standが我が家に届いた
毎日のように切り取られ、使い捨てられていくキッチンペーパー。手軽に使えるため、キッチンに置くことが当たり前のようになっているが、一度料理をしただけでもそれなりにゴミを出してしまうし、保管する際に収納スペースをかなり取ってしまうのが考えものだ。ソーシャルグッドなアイテムが浸透しつつある今、繰り返し使えるようなアイテムを日常に取り入れつつ、より暮らしが自由で便利になるものに移行した方がいいのかもしれない。そう考えはじめた頃に出会ったのが、武田晒工場がつくる和晒ロール「さささ」だった。

使うほどに手に馴染む。古くて新しい「和晒」という素材

和晒ロールは綿100%。細めの糸を使い密度を高くして織った、岡生地(おかきじ)と呼ばれるなめらかで上質な晒だ
料理や掃除など、古くから日本の家事仕事に欠かせなかった和晒。晒にも様々な種類があり、大きくは織密度の低い「文生地」と織密度の高い「岡生地」に分けられる。文生地はガーゼやおむつなどに、岡生地は手拭いや腹帯、寝具、ゆかたなどに使われることが多いという。

和晒のはじまりは、室町時代からだと言われている。綿を栽培し、木綿を織り上げ、大きな和晒釜に入れて熱を加え、水を流す作業を繰り返すことで、不純物が取り除かれ、やさしい白さの晒が完成する。

江戸時代に入ると、木綿は大阪の摂津や河内、和泉、大和エリアで盛んに生産されるようになり、国内屈指の棉業(めんぎょう)地帯として急速な発展を遂げていった。「さささ」をつくる武田晒工場も「和泉和晒」で有名な堺にあり、100年以上にわたって伝統技法を守りながら上質な和晒を製造している。

シンプルかつ気の利いたプロダクト

和晒ロール Stand ¥4,950(税込) ※和晒ロールCut付
今回購入したのは、縦型のスタンドに和晒ロールCutが付いた「さささ」の和晒ロール Standだ。LABORATORIAN Inc.プロデュースのもと開発され、公益財団法⼈⽇本デザイン振興会が主催する「2020年度グッドデザイン賞」では「グッドデザイン・ベスト100」を受賞した。「毎⽇のくらしで さささっと 使える」をコンセプトにしたこのプロダクトは、非常にシンプル。それでいて、これまでにないロールタイプに落とし込み、日常にフィットする使いやすいアイテムに仕上げられている。

さらに「洗って繰り返し使える」という、環境にやさしくサステナブルな面も兼ね備え、使い捨ての道具であふれた暮らしを見直すきっかけにもなる。伝統技術を用いた昔ながらの晒産業が著しく衰退する中、このように和晒を現代の暮らしにフィットするプロダクトを打ち出したことで、家事仕事に欠かせない新たなアイテムとして、和晒が再び注目されるようになったのだ。

ステンレスの金具を指で押さえることで、簡単に晒を切り取れる。切れ目のほつれた糸に、どこか愛着がわく
無垢のオーク材を使用した縦型の専用スタンドは、無駄のないすっきりとしたシルエットで、作業スペースに置いても邪魔にならない。スタンドの上部に開けられている穴にステンレスの金具を差し込むだけで、それがカットする際の補助として機能する。必要な時に「さっ」と使えるように設計されていて、使い勝手のいいデザインだ。

日常にフィットする多用途な和晒ロール

実際に「さささ」を使ってみよう。

公式サイトでは、ふく、しぼる、こす、むす、みがく、しく、つつむ、みずをきるといった様々な用途が提案されている。数日の間に、どれだけの用途が適用できるのだろうか? 実際に使用してみることにした。

まずはサラダをつくる時。野菜についた水を「きる」ために使った

晩ご飯にゴーヤチャンプルーをつくることにした日は、和晒で豆腐を包んでぎゅっと「しぼる」。しっかり水気が取れた

来客に備えて、洗ったままにしていたグラスをきれいに「みがく」

シンクの横に和晒を「しく」。使ったグラスを洗って置いておけば、自然と水気が切れる。和晒だけでキッチン周りの仕事のほとんどをこなせてしまった

週に1度は「ふく」掃除をしっかりしたいところ。何度か使ってくたびれてきたものを掃除用にして、埃が溜まりやすいテーブルや窓、観葉植物のお手入れに使った

「さささ」の和晒はパリッとして張りがありながら、肌あたりはやわらかい。小さく切って、マスクの インナーとして使ってみることに

化学繊維で肌荒れしてしまった肌にもやさしい
たった数日使っただけでも、6種類の使い方で和晒を活用することができた。使うたびに、暮らしの所作が洗練されていく気さえする。今回はできなかったが、「蒸す」「こす」といった調理にも使えるらしい。料理の幅も広がりそうだ。

多用途であることが、想像力を広げる

繰り返して使うことで、様々な応用方法が発見できるはず。これから新生活を始める人へのプレゼントにもおすすめだ
長年日本の暮らしに欠かせなかったアイテムにも関わらず、現代は縁遠くなってしまった和晒。実際に使って、洗って、乾かしてまた使って…と繰り返してみると、最初は食品や食器などのステレオタイプな使い方からはじまり、ちょっとくたびれてきたから台拭きに、そのあとは掃除用、捨てる前に靴磨きに使うといったように、「こう使ったらいいかも」というアイデアが数珠つなぎのように思いつく。ティッシュやキッチンペーパーなど、使い捨てのアイテムでは考え付かなかった発想になるから不思議だ。

繰り返し使えば使うほどに、手放せなくなるような愛着を感じる和晒ロール。この手軽なアイテムが繰り返し長く使えることに気づいた時、私たちの暮らしの創造力も少し広がっているかもしれない。

さささ