Vol.461

MONO

18 JUL 2023

長年愛される曲げわっぱの魅力とは。正しいお手入れで長く使おう

曲げわっぱはヒノキやスギなどの薄い木の板を曲げて作られる器で、青森や静岡など全国各地の伝統工芸品。特にお弁当箱が人気で、木目の美しさが食事を演出してくれるだけでなく、吸湿性によりご飯の美味しさを保つことができる。一方で、天然素材であるためお手入れは欠かせない。お手入れと聞くと面倒に思えるかもしれないが、その方法はいたってシンプル。ここでは曲げわっぱの魅力ともに、長く使うためのお手入れの方法を紹介していく。

日本の伝統的な木製品、曲げわっぱ

曲げわっぱは木目の美しさや手触りを身近に感じられる
曲げわっぱとは、スギやヒノキなど生の木の板を特殊な技法で曲線に曲げ、山桜の皮で継ぎ目を綴じ、底をつけた器のこと。強度があり、密封性に優れているため、お弁当箱や保存容器などに使用されている。

全国各地で職人によってひとつずつ手仕事で作られているが、秋田県では秋田杉、長野県では木曽ヒノキなど、地域で木材の種類が違う。また、仕上げの塗装方法も選ぶ際のポイントのひとつで、無塗装の白木のほか、漆塗り、ウレタン樹脂塗装の3種類が主流だ。

曲げわっぱが長年愛される魅力とは

見た目だけではない、機能性も魅力の曲げわっぱ
曲げわっぱの歴史は古く、奈良時代までさかのぼるといわれている。なぜこんなにも長く愛され続けているのか、曲げわっぱの魅力を見ていこう。

ご飯が冷めても美味しい

曲げわっぱの大きな魅力のひとつが木材の吸湿性。曲げわっぱに使用されている木は水分をコントロールする作用があり、多湿な夏は水分を吸い込み、乾燥する冬は水分を出すことで内側の湿度を調整している。水分を吸ったり、吐いたりしているため、「木が呼吸している」と表現されることが多い。

曲げわっぱの吸湿性は、お米の水分を調節してくれる。プラスチック製のお弁当箱に入れたご飯は水分が出てしまうが、曲げわっぱに入れると冷めてもふっくらと柔らかいままで美味しく食べられる。しかし、ウレタン樹脂塗装されているモノだと調湿作用はないので注意。

軽くて丈夫

曲げわっぱは木を薄く挽いているため、一般的なお弁当と比較するとかなり軽い。弁当箱自体に重みがなく持ち運びに便利なうえに、耐久性が強いことも特徴。四角い木材の入れ物は角が傷つきやすいが、長い板を丸く曲げていることで強度がアップしているのだ。

見た目が美しい

ぬくもりを感じるシンプルな木目調は、どんなおかずも美味しそうに見せてくれる。残り物のおかずを詰めただけでも上品な雰囲気に大変身。日々のお弁当作りや食事がさらに楽しくなること間違いなしだ。

曲げわっぱのお手入れ方法はシンプル

長く使い続けるために日々のお手入れは忘れずに
曲げわっぱのお手入れ方法は「すぐ洗い、よく乾かす」と、いたってシンプル。洗わない時間が長くなるとカビや黒ずみが発生するため、なるべく早く、最低でもその日のうちに洗うことも徹底しよう。

白木の場合

白木は木に塗装がされていない状態。洗剤は成分を吸ってしまうため使わずに、お湯とスポンジで洗おう。

白木の場合は、80~90度のお湯を入れて5~10分放置してふやかした後、何もつけていないスポンジで木目に沿って内側、外側を擦り洗いする。内側のぬめりが取れたら、再び80~90度のお湯をかけて木が温かいうちに布巾で拭おう。拭わないと乾かなくなり、黒くなってしまう。

水分をなるべく早く飛ばすために、乾かし方も意識したい。熱いお湯をかけた後に、布巾で拭いて上向きで干しておくと気化熱で水分が飛んでよく乾く。下向きに置くと底の部分に湿気が溜まり、カビや黒ずみに繋がってしまう。

また、完全に乾かすためにも1日以上干すことが理想。曲げわっぱを1日おきに使ったり、2つ用意して交互に使ったりするのがおすすめだ。

漆塗り、ウレタン樹脂塗装の場合

漆塗り、ウレタン樹脂塗装は水をはじくため洗剤を使っても問題なく、洗い方も一般的なお弁当箱と同じ。ただし、木を傷めないように洗剤は中性洗剤、スポンジは柔らかいモノを選ぼう。

白木の曲げわっぱと同様に、洗い流したらすぐに布巾で拭き、上向きでしっかり乾かすことを忘れずに。

手入れで使ってはいけないモノ

曲げわっぱは柔らかいスポンジで優しく洗おう
曲げわっぱは天然素材だからこそ、お手入れ時に使ってはいけないモノがある。

漂白剤や重曹

漂白剤や重曹は、木材を痛めてしまうため使えない。黒ずみができたとしても漂白剤で落とすことは絶対にNG。塗装されていない白木の場合は、洗剤自体の使用もできない。

金属製のたわし

金属製のたわしは汚れを擦り取ることができるが、木材を傷めるため控えたい。天然素材のたわしで、木材を傷つけない先が柔らかいモノであればOK。

食洗器

ウレタン樹脂塗装がされていない曲げわっぱは、食洗器を使えない。しかし、最近では塗装が施されて食洗器の使用が可能なタイプもある。塗装されると湿調作用はなくなってしまうため、自分の使い方に合わせて選ぶとよいだろう。

使い続けると気になる黒ずみ、カビについて

曲げわっぱは使っているうちに自然に黒ずみができてしまうが、カラダに害はない
見た目が似ている黒ずみとカビだが、実際は全く別物。対応方法も違うのでそれぞれポイントを押さえておこう。

黒ずみ

黒ずみは、木に含まれる「タンニン」という成分と、野菜などアルカリ性の食材による化学反応で害はない。

黒ずみができてしまったら、酢と水を1:1で混ぜた酢水に30分漬けておくと薄くすることができる。黒ずみは長く使うとどうしても起こってしまうが、きちんと手入れすれば黒ずみが起きるスピードを緩やかにできる。

カビ

曲げわっぱに黒い斑点が点在していたらカビの可能性が高い。表面についている程度の軽いカビであれば、薄めた中性洗剤で洗い、湯で流せば落とすことができる。

しかし、白木の曲げわっぱや、塗装されていても木の内側までカビが入ってしまった場合は家庭で落とすのは難しい。この場合、費用・時間はかかってしまうが漆の塗り直しといった修理を依頼できる。

黒ずみ・カビが起こらないようにするには

黒ずみ、カビは、使用前に内側の表面をさっと水で濡らし、乾いた布巾で軽く拭いてから食材を詰めることで予防できる。先に水で濡らすと、汚れや臭いの浸透を抑えられるのだ。

また、油や調味料が多いおかずは、直接木肌に触れないようにカップに入れたり、クッキングペーパーやワックスペーパーを敷いたりして詰めよう。そして使用後はすぐ洗い、よく乾かすことがポイント。

木のぬくもりを感じられる曲げわっぱ。手入れして大切に使い続けよう。

曲げわっぱで日々の弁当作りを楽しもう
天然素材でできた曲げわっぱは、まるで生きている器。木の呼吸による吸湿性でご飯を美味しく保ち、美しい見た目が食事を豊かにしてくれる。手入れが必要だが、その方法は「すぐ洗う、よく乾かす」と非常にシンプル。木のぬくもりを感じる曲げわっぱを何年も、何十年も愛着を持って使っていきたい。