Vol.591

FOOD

15 OCT 2024

世界中から高評価!星5も納得の美味。ヴィーガン寿司専門店「VEGAN SUSHI TOKYO」

動物性の食品を一切使用せず、植物由来の食材のみで作られるヴィーガンフードが日本にも徐々に浸透してきている。しかし、料理に魚出汁を使うことが多い日本食において、ヴィーガン対応メニューの開発はなかなか難しいらしい。そんな中、2024年6月、東京・渋谷道玄坂に、日本初のヴィーガン寿司専門店「Vegan Sushi Tokyo」がオープン。ヴィーガンの寿司が誕生した背景や、気になるその美味しさについてレポートする。

BARの間借り店に世界のトレンドセッターが注目

レトロな飲食店ビルの2階にある店舗
「Vegan Sushi Tokyo」があるのは渋谷駅から徒歩8分ほどのレトロビル2階。営業時間は午前11時から午後4時(ラストオーダー午後3時半)で夜はクローズしてしまう。その理由は、元々はBARとして営業している店を日中だけ間借りしている店だから。

店はこの階段を上がってすぐ。ところどころに時代性が感じられるレトロビル
間借りといえども侮るなかれ。

開店後、わずか1ヶ月で400名以上の来店者を迎え、その多くが海外からのヴィーガンやベジタリアンの観光客。さらに、Google Mapsレビュー200件以上・星5.0を誇る評価は、単なるブームではなく、クオリティの高さが本物であることを証明している。レビューの中には「今まで食べた寿司の中でNo.1だ!」といった声もあり、世界中のヴィーガンから羨望の眼差しを集めている。

昼と夜とで店が変わる営業スタイル
ベジタリアン等の世界人口は2023年には約5.3億人(*1)に達し、毎年増加傾向にあるが、旅行や仕事で東京を訪れる外国人が心置きなく日本食を楽しめる店がないことが問題視されている。「観光地にヴィーガン対応の店がなく、コンビニのおにぎりを食べていた」という悲しい声も。

そんな中で「Vegan Sushi Tokyo」は東京の新しい名所となりつつあるが、この店に注目するのは訪日外国人だけではない。

日本在住の20〜60代消費者のうち、ヴィーガンは1.4%、フレキシタリアンとベジタリアンを含めると、ヴィーガン・ベジタリアン消費者は5.4%と年々増加傾向(*2)にある。そのボリュームゾーンである都心の若年富裕層が関心を高めている健康志向やエシカル消費といったキーワードにぴたっとはまったのが、ベジタリアンやヴィーガンといった食文化なのだ。ゆえに、ヴィーガン寿司のような新しい日本食が、これからの外食・中食産業を支える企業や飲食店から注目されるのは必至といえる。

DJブースを眺めながら新種の寿司を体験

夜はBARを営業する店内に日本らしいエッセンスをちりばめて
バーカウンターに赤提灯。店内に施された祭りのようなデコレーションに気分が高揚する。元々のBAR空間にほどよくハマるジャパンテイスト。まるで日本好きの海外の友人宅へ遊びにきたような個性的な面白さがある。説明されなければ夜はBARであることに気づかない人が多いかもしれない。

普段はレコードを飾っている場所に、寿司モチーフのイラスト

DJブースの前にも箸が並ぶ
夜は音楽と酒を楽しむBARなのだろう。和と洋のカルチャーがミックスされた空間に、さも当たり前のような顔をして馴染んでいる赤い箸。ふつうの寿司店にはありえないDJブース。ここでこれから寿司が提供されることを想像すると、最高にエキサイティング。

寿司にウルサイ日本人も大満足のクオリティ

ヴィーガン寿司プレート(10貫)
これまで寿司といえば新鮮な魚介が主役だったが「Vegan Sushi Tokyo」は、茗荷やアボカド、しいたけといった野菜に加え、植物性の卵やいくらまでがメニューに並ぶ。

まず、寿司のルックスがとても美しい。植物性ということで野菜の鮮やかな色が楽しめることもあるが、それ以前に、寿司としての完成度が高く、見ただけでも技術力の高さが窺える。

オーダーしたのは「ヴィーガン寿司プレート」。野菜や植物卵・いくらなど日本独自の植物食材を使ってヴィーガナイズされたメニューで、内容は、いくら・植物卵&マヨ・トロなす・アボカド・天ぷら(エビフライ)・エリンギ(柚子胡椒)・やきにく・みょうが・しいたけ・豆腐と湯葉の蒲焼。

色とりどりの具材がのった寿司
我々が取材するすぐ後ろで、海外のYOUたちも歓声を上げながら入念に撮影に勤しんでいた。スタッフが流暢な英語でメニューを説明する。ガリの説明を英語で聞いたのは初めて。PICKLED GINGER。なるほど。

キラキラとかがやく植物性のいくら
植物性の寿司。果たして味はどうだろうか。野菜のネタだけだと満足感は期待できないのでは……。いただく前までそう思っていたのだが、それは大きな間違いだった。

キラキラと輝くこちらの寿司から。海藻由来の成分等で作られる植物性いくらだという。口の中でプチンと弾け、トロッと程よい塩味と酢飯、海苔のハーモニーが、まさにいくらの寿司だ。この完成度の高さに、一気に期待値が上がった。

左:湯葉と豆腐の蒲焼。右:みょうが
左は湯葉と豆腐の蒲焼。ヴィーガン料理初心者の筆者は初めていただくメニューだが、何個でもイケそうな馴染み深い味わいだ。その次にいただいた甘酢漬けのみょうがもさっぱりとして美味。このような歯応えのある野菜を酢飯とともに口へ運ぶのに、ほんのり抵抗感があったのだが、シャリとのバランスが良い。

ヴィーガン寿司は魚の寿司よりも調理工程に手間暇がかかる上に、シャリとの一体感を出すのも容易ではないといわれているが、この味は巷の回る寿司屋レベルとは一線を画する。それもそのはず「Vegan Sushi Tokyo」のメニューは、野菜寿司のパイオニアとして業界で知られる谷水晃氏が監修した本格野菜寿司なのだ。

さっぱりしたものと、旨みやコクが感じられるものがバランス良く入っており、味のバリエーションも豊富で、非常に高い満足感が得られた。食材そのものにこだわりぬき、見た目、味、そして食べた後の満足感まで、すべてが洗練されている。

魚介だけの寿司より、ヴィーガン寿司の方が好きになりそう。こんなことを書くと読者のみなさんに疑われそうだが、これは本音で。

寿司だけでなく酒やスイーツもオールヴィーガン

伝統を守りながらも、現代のヴィーガン需要に応えた南部美人
ヴィーガンへの配慮は細部まで行き届いている。たとえば日本酒。こちらは日本酒では世界で初めてヴィーガン認証を取得した南部美人だ。私たちは、日本酒とは当たり前に米と水のみから作られていると思いがちだが、ノンジャパニーズにとってそれは当たり前ではない。酒を作る工程には、動物性のものが使用されることも珍しくないため、海外の人にとって酒のヴィーガン認定の証は安心につながるのだという。

午前中から寿司をつまみながら一杯やっているYOUたちは、とてもリラックスして日本食を楽しんでいる様子だ。自分の国の文化が海外から認められること、喜んでもらえることは、自分が褒められているのと同じように嬉しくなる。

ミルクを使わないヴィーガンアイスも和テイストに
食後には、京都の宇治抹茶ときな粉をふんだんに使った「ヴィーガンアイス」を。有機豆乳とメープルシロップで作られたクリーミーな食感は、甘さ控えめながらもリッチな味わい。

と、ここまで来るまでの1時間で「ヴィーガンって物足りないかも?」から「ヴィーガン、美味しいじゃん!」、さらに「むしろヴィーガンの方が美味しいかもしれない!?」となっていたことに、筆者自身が驚いている。

ヴィーガン寿司が導く未来の食文化

楽しくヘルシーにヴィーガン料理を楽しもう
「ベジタリアン」「ヴィーガン」といったさまざまな食の価値観が入ってくるようになったが、何となくとっつきづらさや物足りなさを感じている人はまだ多いかもしれない。たしかに、肉や魚に慣れ親しんだ身として、野菜や豆のみの食事は少し淋しい気持ちになるのも当然。実際にベジタリアンやヴィーガンのレストランで食べてみたことがあっても、味気なさを感じた人もいるだろう。

そんなみなさんに、新しい日本食としてこのヴィーガン寿司を試してもらいたい。騙されたと思って、一度ぜひ。美味しい寿司屋は珍しくないが、これほど美味しいヴィーガン寿司の店はなかなかないと思う。

「Vegan Sushi Tokyo」は、日本の伝統的な寿司文化と世界のヴィーガンムーブメントが出会う場所。その恩恵を受けるのは海外からの旅行者だけでなく、私たち日本人でもある。訪れる人々が、ここでしか味わえない特別な体験を通じて、未来に向けた食文化の新たな可能性を感じ取ることができるのだ。
渋谷という都市が世界に向けて常に新しい価値を生み出し続けるように、こうして新たに生み出される新日本食も、未来の食文化を牽引していくに違いない。
出典
*1:観光庁「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001740444.pdf

*2:日本のヴィーガン人口調査2023 by VEGAN'S LIFE」
https://vegans-life.jp/article/epb0u3bt8

Vegan Sushi Tokyo

東京都渋谷区道玄坂1-17-2 第2野々ビル 2F
https://www.instagram.com/vegansushitokyo_jp/