Vol.214

MONO

05 MAR 2021

美濃焼とは?特徴や種類を知って良さを楽しむ、進化する陶磁器

ふだん食卓に並ぶ器が、どこの焼き物か知っているだろうか。何気なく手にしている器の多くは、実は美濃焼かもしれない。なぜなら、日本で生産されている器の半数以上が美濃焼だからだ。 美濃焼とは、古くから”美濃国”と呼ばれる地域で生産されてきた陶磁器の総称である。起源は奈良時代の須恵器(すえき)からとされており、安土桃山時代に全盛期を迎えた。奈良時代から現代まで技術の進化をし続け、現在では日本の食卓には欠かせない存在となった。
日常生活のなかで気軽に使用されるようになった現在でも、美濃焼の特徴は変わらず受け継がれている。釉薬(うわぐすり)を使う流れや、いびつな形を楽しむところなどは美濃焼の特徴であり、美濃焼らしさは今もなお愛されている。そして、時代に合わせて進化するために、現在も職人の間では模索が続いているという。人々を魅了し続ける美濃焼の特徴や種類について紹介しよう。

美濃焼は「特徴がない」のが特徴

特徴を感じさせない身近な陶磁器

「特徴がない」とは?美濃焼ほど身近な陶磁器は他にない

人がものを知ろうとするとき、たいていは特徴について考えるのではないだろうか。しかし美濃焼は「特徴がない」焼き物といわれている。

美濃焼の作り手は、その時代の人々の好みに合わせて釉薬を開発し、多彩な技術を用いてきた。そのため、美濃焼の見た目や質感は多種多様。時代に合った質感やデザインで生産される傾向にあるため、際立った特徴を感じさせることなく、生活に溶け込みやすい焼き物だ。

明治時代以降に技術革新が起こり、美濃焼は安価に大量生産できるようになった。食器生産における全国シェアの50%以上を占めており、現代の食卓にもよくなじむことから、「特徴がない」といわれるようになったのだろう。

カレー皿にも、スープカップにも。和洋問わない美濃焼の良さ

スープを注いでも違和感なくなじむ美濃焼のどんぶり
「特徴がない」といわれる美濃焼だが、それゆえ使い勝手が良いともいえる。「特徴がない」ため、新しい変化を取り入れることをいとわない。

今や美濃焼は、和食器にとどまらず、洋食器として幅広く用いられている。楕円形のプレートはカレーにもパスタにも使用でき、軽量で電子レンジ利用可能なものも。スープカップやカップ&ソーサーのように、最初から洋食器を想定しているものもある。

昔からの和食器にはない、菊形になったデザイン性重視の皿は、ふわりと華やかな雰囲気で人気がある。また、カラフルで北欧を思わせる柄の食器は、テーブルセッティングのシーンなどでよく選ばれている。

美濃焼に「特徴がない」というのは、生活における実用性と、時代に即したデザイン性に優れている証なのだ。

代表的な美濃焼の種類は四様式。歴史文化とともに発展した特徴を探る

職人の手作業で焼き上げられる伝統工芸品
美濃焼はおよそ1,300年前から作られてきており、時代背景に影響を受けながら発展してきた。起源は朝鮮から伝わった焼き物の祖である須恵器とされており、安土桃山時代の茶の湯文化とともに黄金期を迎える。安土桃山時代のわずか30年ほどの間に、美濃焼の代表格である「瀬戸黒、黄瀬戸、織部、志野」の四様式が存在感を増し、優れた焼き物が生み出された。ここでは、四様式のそれぞれの特徴に注目する。

瀬戸黒 (せとぐろ)

現代では瀬戸黒の技術を用いた扱いやすい平皿も人気がある
瀬戸黒は、鉄釉(てつぐすり)がかけられ1,200度前後で焼成する途中、窯から取り出して水に浸けられる。急速に冷却された器は表面に貫入(かんにゅう)と呼ばれるひび模様を生じ、瀬戸黒が作られる前までの器にはない特徴として、深い黒色と艶を帯びる。この「引き出し黒」と呼ばれる漆黒の茶碗が登場すると、茶人たちは夢中になったという。本来の「瀬戸黒」とは装飾が施されず、底が平たく半筒になったもので、高台(器の安定のために底につけられる基台)の低い茶碗に限定されている。

古くから人々は瀬戸黒のもつ漆黒の美しさに魅了されてきた。くわえて、黒いのに心地良い柔らかみを持っているところが選ばれてきた理由なのだろう。

黄瀬戸(きせと)

やさしい黄色が食卓を華やかに彩る
室町時代末期から安土桃山時代に作られてきた黄瀬戸は、灰釉(はいぐすり)が改良された鉄釉による淡黄色が特徴的だ。薄作りの器にさまざまな文様を描いた「あやめ手」や、ほとんど文様のない「ぐいのみ手」がある。光沢のある小瀬戸系黄瀬戸と、「油揚げ肌」と呼ばれる黄瀬戸があり、「油揚げ肌」の色合いにはしとやかさと気品が感じられる。

織部(おりべ)

艶やかな緑色のものは織部の代表格「青織部」
織部は、安土桃山時代の武将であり茶人である古田織部が作らせたものにルーツがある。市松模様や幾何学模様などの文様を施し、歪みを個性とした斬新なスタイルが特徴。まさに時代に合わせて革新を続ける美濃焼の象徴といえる。デザイン性だけでなく、味わい深い緑色の美しさが、和食器として現在も人気を博している。

志野(しの)

思わず触りたくなる愛らしいフォルム
長らく日本人は「白い焼き物」に憧れてきた。志野はやさしい乳白色をしており、白磁や青磁のような美しさと、やさしい温かさを持ち合わせている。志野が誕生した当時、型押しや彫りではなく、直接絵を描ける器であることに人々は驚嘆したそうだ。そして全盛期の室町時代には多くの改良が考案されたという。

ぽってりと厚めに白釉(しろぐすり)をかけることで、貫入(かんにゅう)や小さな孔が出ることがあり、素朴な雰囲気を持っているのが特徴。使うたびに癒されるのが魅力だ。

「美濃焼ゴー!MINOYAKIGO」で発見、お気に入りの一品

時代とともに進化する美濃焼は色も形もさまざま

美濃焼ゴー(GO)!は多治見市で開催されたキャンペーン

新型コロナウイルスの影響を受けた美濃焼産業の販売不振を救うべく、多治見市が行ったキャンペーンが「美濃焼ゴー(GO)!」だ。美濃焼を扱う多くの店がWebサイト上で紹介されており、実際に店舗で器を購入すると割引を受けられるものだ。 購入してもらうだけでなく、美濃焼を生活のなかに取り入れ、より身近に感じられるようにという目的もある。

SNSによる拡散で注目を集め、予想の2ヶ月前に支援額が予算に達して終了。カラフルな色合いや日常での使いやすさから「美濃焼のイメージが変わった」との声が多く、美濃焼に触れてこなかった世代を魅了することができたそうだ。

通販対応の美濃焼専門店が多数

「美濃焼ゴー(GO)!」には通販対応をしている専門店が多数出店している。キャンペーンが終了した現在も閲覧できる「美濃焼ゴー(GO)!」のWebサイトには、参加店舗の写真や情報が掲載されているので、見ているとあれもこれもほしくなる。

皿やカップ、丼などはもちろんのこと、タイルやアクセサリー、照明まで販売されている充実ぶり。シンプルな美濃焼以外にも、色彩豊かな商品が豊富にラインナップされており、インテリアの一部として食器を選びたくなるほど。豊富な焼き物を見ているだけで心が躍る。ぜひWebサイトを訪れてみることをおすすめしたい。

美濃焼の陶器市なら「土岐美濃焼まつり」は必見

作家自慢の逸品や掘り出し物に出会えるチャンス

「土岐美濃焼まつり」は日本三大陶器祭りの一つ

「土岐美濃焼まつり」は土岐美濃焼卸商業団地内で毎年開催されており、毎年20万人以上の人で賑わう。5月のゴールデンウィークごろに行われ、2021年の開催は5月3日〜5月5日が予定されている。陶磁器生産日本一ともいわれる土岐市で開催されるだけあって、美濃焼の代表格である志野や織部など品数や種類も豊富。通常よりリーズナブルな価格帯のものが多いが、品質は一級品だ。垂涎の逸品を手にする機会となることにも期待が持てる。

美濃焼作家のテントがずらり。窯元と話してわかる美濃焼の良さ

「土岐美濃焼まつり」は「お気に入りが見つかる陶器の倉庫街」といわれており、毎回会場は多くのテントで埋め尽くされる。出店者数は300を超えるので、要領よく見てまわることをおすすめする。

企業ブースの廉売市から個人作家によるハンドメイド作品の展示まで、さまざまな焼き物を見て購入ができる。買い物目的ではなくイベントとしても楽しむことができ、作家との会話ができるのも魅力の一つだ。料理教室やパン教室を行っている企業もあるので、料理に合う食器を選ぶヒントも得られるだろう。新たな様式の器や、掘り出し物と出会えるかもしれない。

特徴にとらわれない美濃焼の食器は、現代の食卓にもよくなじむ

長い歴史のなかで日本の食卓を彩ってきた美濃焼
「特徴がない」といわれてきた美濃焼。それは「特徴にとらわれない」ともいい換えられる。特徴にとらわれない美濃焼は料理を選ぶことなく、いろいろな場面で活躍できるはずだ。

和食器が好きな人、洋食器が好きな人、シンプルな食器が好きな人、味のある食器が好きな人など、人の好みはそれぞれ異なる。そのすべてに当てはまり、現代の食卓によくなじむのが美濃焼である。

美濃焼にとって「特徴がない」のはむしろ褒め言葉。「特徴がない」ことが、人々に愛され続けている強みといえるだろう。