Vol.590

KOTO

11 OCT 2024

コーヒーグラウンズを利用して、飲んだ後も美しい生活を

料理をした後のキッチンが美しく清潔な人や、魚を食べた後のお皿がきれいな人に、憧れを抱いたことがある。その様子から、思わず丁寧で誠実そうな人となりを、想像してしまうからかもしれない。盛り付けやテーブルコーディネートだけではなく、食事の時間を楽しんだ後も “美意識” を持つことで、より充実した気持ちが芽生えるのではないだろうか。こんな想いを抱きながら、ふと身の回りを見渡した時に、気になったのが毎日飲むコーヒーの粉だった。コーヒーを淹れおわった後にフィルターに残った粉は、すぐさま袋に入れて捨ててしまっていたけれど、毎日ともなれば結構な量であり、もっと有効に使えないものなのだろうかと、なんだかやるせない気分にさせられる。コーヒーについて調べてみると、淹れた後の粉は、実はとても使えるアイテムだということがわかった。そこで今回は、飲み終わったコーヒーの粉の再利用方法についてご紹介したい。

コーヒーが持つ、生活に役立つ消臭効果

コーヒーを飲みながら過ごす休日の午後
ところで、使い終わった後のコーヒーの粉は、昨今日本でも「コーヒーグラウンズ(coffee grounds)」と呼ばれているらしい。「コーヒーを淹れた後の粉」を指すこの言葉。英語圏の人にとったらそのままの意味でしかないため「捨てるもの」という認識だろうが、今まで「コーヒーのかす」と呼んでいたものを新しい言葉を通して改めて見てみると、なんだか既に「ゴミ」として捉えていない、新しい自分が生まれている気がした。そこで今回は先入観から抜け出すためにも、あえてコーヒーグラウンズ、と呼んでみたいと思う。

コーヒーを淹れる

集めたコーヒーグラウンズ
さて、このコーヒーグラウンズ、一番注目されている効果は消臭で、ニオイの成分であるアンモニアを吸収してくれるのだそうだ。消臭効果で有名なもののひとつに活性炭があるが、コーヒーグラウンズも同様に多孔質の構造を有している。実はこの穴こそが、匂いを吸着し、消臭してくれるらしいのである。

そして消臭効果の他にも、観葉植物の肥料として使えたり洗剤の代わりになったり、フローリングの艶出しやスクラブとして美容にも使えるという、本当に素晴らしい素材なのだそうだ。こんなにすごいものを今まで無知ゆえに捨てていたなんて、もったいないことをしていたと、つい思わずにはいられなかった。

朝食とともに、薄めに淹れたコーヒーを一杯

よく乾燥させて、使う前の準備をする

さて、知ってしまったからには試さずにはいられない。私には毎朝一杯のコーヒーを飲む習慣があるため、朝ご飯を食べ終わった後、さっそくコーヒーグラウンズを皿に広げて乾燥させ始めた。このまま2〜3日、水気が抜けるまで放置する。時間をかけたくない場合は、フライパンや鍋を使って炒ったり、電子レンジを使ったりして乾燥もさせられるが、私は特段急いでいなかったので、陽の力に任せることにした。

皿の上にコーヒーグラウンズを広げて乾燥させる
ちなみに、電子レンジで乾燥させる場合は、加熱した後そのまましばらくの間置いておくことで、レンジ内の消臭も叶うらしい。カレーなど、匂いの強いものを加熱した後に、試してみると良いかもしれない。

好みのコップに入れる

洗面台に置いてみた

トイレや冷蔵庫、靴箱などの消臭に役立てる

さて、3日ほど放っておいたら、コーヒーグラウンズはさらさらとした粉に戻っていた。さわってみるととても柔らかで、指の腹が気持ち良い。これをコップに移し替え、家の中の匂いが気になるところに置いてゆく。

乾燥したコーヒーグラウンズは、柔らかでとても気持ちが良い
私は在宅で仕事をしているので、家にいる時間が長く、ちょっとした生活の匂いが気になることが多い。気になった時はルームスプレーなどを利用していたが、すぐに匂いは消えてしまうので、そもそもの匂いの元をなくせるのであれば、これほど幸いなことはない。消臭剤を買う、という手もあるけれど、本来捨てるもので代用できるのであればこれまた嬉しい話である。

今回は、乾燥させたコーヒーグラウンズをユニットバスの洗面台と、冷蔵庫の中に置いてみることにした。ちなみに湿気も吸収してくれるそうなので、私のように匂いと湿気が気になるユニットバスを使っている人には、もってこいのアイテムなのではないだろうか。

アロマオイルを垂らしてみる
数日間置いてみると、たまにある下水の匂いが、あまり気にならなくなっていることに気がついた。これはすごい、ということで、さらに近所で手頃なサイズの巾着が売っていたので購入し、コーヒーグラウンズを入れ、一つはスッキリとしたシトロネラのアロマオイルを垂らして、さらに洗面台に追加。そして残りの巾着は、靴の中に入れて使ってみることにした。

巾着に入れて靴の消臭に

表面がカリカリのじゃがいものガレット。油を多めに使って作る

油をシンクに流さない。フライパンの油取りにも

消臭効果の他にも、前述した通り洗い物にも使えるとのことだったので、こちらも試してみた。洗い物で厄介なのが、油汚れである。皿洗いを終えたと思ってよくよく食器を見てみたら、落ち切っていない油を見つけ、もう一度蛇口をひねった経験が私には何度もある。コーヒーグラウンズは、この落としきれない油汚れにも強いのだそうだ。

普段あまり家では揚げ物などはしないため、今回は私の大好物である「じゃがいものガレット」を作った後のフライパンで試してみた。「じゃがいものガレット」とは、フランスの家庭料理で、千切りしたじゃがいもに軽く塩を振り、水気を絞って油を引いたフライパンで焼く、というとてもシンプルな料理だ。作り方は単純だが表面がカリカリっと香ばしく、癖になる美味しさなのである。そしてこの魅力的な表面を作るためには、私は多めの油が欠かせないと思っている。

使ったフライパンにコーヒーグラウンズを引く
じゃがいものガレットの説明が長くなってしまったけれど、その他炒めものでもなんでも、多めの油を使ったあとは、フライパンに残った油をどう捨てるのか、処理に困ることも多い。そんな油も、コーヒーグラウンズが吸収してくれるという。なんて便利なのだろう。

さっそく、乾燥させたコーヒーグラウンズをフライパンの中へ。しばらく油と馴染ませたら、1箇所に集めて除ける。その後はお湯で軽くフライパンを流すのみである。ちなみに、ちょっと焦げがついてしまった場合は、コーヒーグラウンズが研磨剤の役割を果たしてくれるという。

洗剤を使っていないが、フライパンは見事につるつるになった。油を落とすために多めの洗剤を使ってしまったり、スポンジまで油で汚れてしまったりと、厄介な油汚れの解決法が見事に見つかった瞬間だった。今後はキッチンに瓶を用意してコーヒーグラウンズを入れ、洗い物にも使用していこうと思う。


多めにコーヒーグラウンズを盛り、煙が出るまで火を当てる

蚊にも効果が。虫除けにも使えるらしい

私が最後に試してみたのが、虫除けである。コーヒーグラウンズの煙に含まれる匂いは、虫避けにもなるらしいのだ。蚊の他にも、アリやナメクジにも効果があり、畑やガーデニングをやっている方にもおすすめの使い方のようだ。

私の家には時に植物はないが、蚊には悩まされている。そこで乾燥させたコーヒーグラウンズを窓際に置き、ライターで火をつけた。燃えることはなく、しばらくすると粉からゆるりと煙が上がる。強い匂いはなく、少し香ばしい香りがする程度なため、家でも問題なく使えそうである。

毎朝淹れるコーヒー。今後もコーヒーグラウンズを集めようと思う
味わいや香りにこだわって豆を選ぶ時間や、お気に入りの道具で淹れる時間はもちろん豊かだが、せっかくなら飲んだ後も美しく過ごしたい。

捨てるのではなく、美味しく飲んだコーヒーを最後まで使い切ることで、飲んだ後も気持ちの良い生活になるのではないだろうか。みなさんも、コーヒーという素材を余すところなく楽しんでみてほしい。