Vol.556

KOTO

14 JUN 2024

観葉植物は、“緑色のインテリア”。私たちにもたらす効果とは?

部屋に観葉植物を迎える人が増えている。自宅で過ごす時間が長くなっている今、「身近な場所に緑を置いておきたい」と考える人が多いのだという。私もそんな一人である。人々は、なぜこんなにも植物に惹かれてしまうのだろうか。緑が人々にもたらす効果や、生活の中に植物を取り入れる魅力を探った。

観葉植物は、“緑色のインテリア”。

さまざまなインテリアの中でも、ひときわ存在感を放つ観葉植物
部屋を自分好みにコーディネートしようとするとき、まず手に入れたいのは机やソファ、本棚といった家具だろう。しかしデザイン性が高く上質な家具は、やはり値段が張ってしまいがち。場所もとるため、いくつも購入することはできない。その点、観葉植物はどうだろう。数千円、場合によっては数百円で購入ができ、形や大きさはさまざまな種類から選ぶことが可能。それでいて、緑を置くと部屋の雰囲気を全く別のものにしてくれる。そういう意味で、観葉植物は画期的な“緑色のインテリア”と言えるかもしれない。

小さな植物は、オブジェや雑貨と並べて飾るのもおすすめ
存在感のある大きな植物を一つ買うもよし、小さな植物をたくさん買って部屋全体に点在させるもよし。「どのような植物を選ぶか」「どのように配置するか」によって、部屋はいかようにも変化する。置いている家具との組み合わせによっても、その人らしい個性が表現できるのだ。

手軽に購入できる観葉植物は、部屋のポテンシャルをいくらでも引き上げる可能性を秘めている。「良い家具は高くて買えないから」「部屋が狭いから」とインテリアにこだわるのを諦めている方は、まず観葉植物から始めてみてはいかがだろうか。

部屋の印象を大きく変えてくれる観葉植物

「緑」色が、私たちにもたらしてくれるもの

植物には、空気清浄効果や眼精疲労の緩和効果もあると言われている
部屋に観葉植物を置くのは、身体的・心理的にもメリットがある。

昔から「緑色は目に優しい」とよく言われるが、これは人間の目にとって最も見やすいのが緑色だからである。人は光によってモノを見ており、光にはさまざまな波長がある。その波長の長短によって、人は特定の色を知覚している。たとえば紫や青は波長が短く、赤やオレンジは波長が長い。その中で緑は、人間が見ることのできる波長の範囲の中で、ちょうど真ん中に位置している色なのだ。目に大きな負担をかけず見ることができるため、目に優しいと言われている。

さらに緑色は、色彩心理学においても「ストレスを緩和させる」「気持ちを安定させる」「心の緊張をゆるめ、鎮静させる」といった効果があるとされている。たしかに、会社のオフィスや病院などに観葉植物があると、緊張感が和らぐような気がする。

そして何より、植物は生き物としての成長を楽しむことができる唯一のインテリアである。日に日に枝葉を伸ばし、花をつけたりする様子を見守ることは、まるで我が子を愛でることに似ているかもしれない。そんな尊い時間が、私たちに癒しを与えてくれるのだと思う。

世話をする必要がある分、成長を楽しめるのも植物の大きな魅力

観葉植物のいい選び方とは?

部屋の雰囲気や置きたい場所を踏まえて選ぶのがおすすめ
前述のとおり、観葉植物は「何を選ぶか」によって部屋の印象を大きく変える。緑を活用して理想の部屋を作るには、どのような基準で選べば良いのだろうか。

まず大切なのは、置き場所。せっかくいい植物を買えたとしても、置くスペースが確保できなかったら意味がない。購入する際は、先に配置を決めておくことをおすすめする。そして、忘れてはいけないのは「観葉植物は生き物である」ということ。植物は、種類によって「直射日光を好むもの」「窓辺など、日当たりのいい室内を好むもの」「半日は明るい場所、半日はやや暗めの場所を好むもの」の大きく3つに分かれる。このような特性も踏まえた上で、最適な植物を選んでほしい。

枝や葉の付き方、幹の曲がり具合なども、愛おしい
樹形(全体的な外観)を意識するのも、重要なポイント。植物は1つとして同じ形のものがないため、たとえ同種類の植物であってもその個性はさまざまだ。天井の高さや広さ、手持ちの家具とのバランスを見ながら、しっくりくる形のものを選びたい。

ストライプ柄の葉が個性的な「ペペロミア・プテオラータ」
また葉の形や大きさも、どれを選ぶかで部屋の印象を大きく変える。丸っこい葉は部屋全体を柔らかい印象に、先が尖っている葉はスタイリッシュな印象にすることが多い。まずは「部屋をどう見せたいか」というコンセプトを立ててみると、自ずと選ぶべき観葉植物の方向性が見えてくるかもしれない。

周辺アイテムにこだわると、グリーンライフがより豊かに

さまざまなデザインの一輪挿し。家族の好みや個性がそこに出る
植物を手に入れる際、セットで考えるべきなのが鉢や花瓶といった入れ物のこと。さまざまな色、形、大きさ、素材のものが流通しているため、植物との自由なマッチングを楽しみたい。

アーティストの作品。植物のインテリアとしての美しさを引き立ててくれる
こちらの鉢は、竹村良訓 氏の作品。絵の具が滴っているようなデザインが魅力的だ。縦長の形も独特で、いいアクセントとなっている。

シンプルなデザインの鉢は、複雑な形をしている植物とのコントラストが映える
こちらはスチール製のプラントカバー。縁が非常に薄いため、植物をスタイリッシュに飾ることができる。シンプルな形や色合いのため、どんな植物にも合うのが嬉しいポイントだ。

花瓶も鉢と同様、多種多様な種類が販売されている。花瓶を選ぶ際に見落としがちなのが「口の広さ」。大きい花瓶であっても、口が狭いと複数の花を入れることができない。花束も飾れるよう、1つは口の広い花瓶を持っておくことをおすすめする。

入れ物だけでなく、ジョウロや霧吹きといった水やり道具も観葉植物には欠かせない。日常的に使用することになるため、自分の手に馴染むもの、使っていて気分があがる色やデザインのものを選んでみよう。

口の広い花瓶は、花束を飾るときに重宝する

観葉植物で、現代生活にひとときの寛ぎを

少しずつ葉の色が異なり、いつ見ても飽きない「エバーフレッシュ」
最後に、絵本作家であり園芸家でもある故ターシャ・テューダーの言葉を紹介したい。

「家事をしている時、あるいは納屋で仕事をしている時、これまでの失敗や過ちを思い出すことがあります。そんな時は考えるのを急いでやめて、スイレンの花を思い浮かべるの。スイレンはいつも、沈んだ気持ちを明るくしてくれます。」

これは、ターシャ・テューダーが自著である『思うとおりに歩めばいいのよ』に残した言葉。植物は、慌ただしい毎日にフッと安らぎの時間を与えてくれる。そう考えると、植物を愛でることは、自分を愛でることにもつながるのかもしれない。

ひとたび部屋に緑を迎えたら、世話をする手間暇すら愛おしく思えるはず。ぜひ、各々のグリーンライフを楽しんでいただきたい。