夜空に浮かぶ星を見つけると、人は何故だか足を止めたくなる。それは何か大きなものに包まれていることを思い出すような瞬間。「ZODIAC candles」は、そんな星の力を、日常の灯火としてそっと手渡してくれるようなキャンドルだ。ただのインテリアや癒しのアイテムにとどまらない、自分自身を知る旅の入り口にもなり得るキャンドルの魅力に迫る。
星の力を日常に灯すキャンドル
「ZODIAC candles(以下ZODIAC)」は、天体にインスピレーションを受けて作られたキャンドルだ。誕生日星座として馴染み深い12星座が、太陽シリーズ、月シリーズと、全24種類のキャンドルとして展開されている。
この珍しいコンセプトを持つキャンドルが生まれたのは、2021年1月。制作者であるThe Soulful UNIVERSE代表・小田中さんは、幼い頃から星空を見上げるのが好きだったという。
「孤独を感じたときも、星を見上げると、ふるさとを思い出すような気持ちになるんです」
その後占星術を学び始めたことで星の存在がさらに身近になった小田中さんだが、しかし星を紙の上で解釈する「システマチックな占星術」では、占星術に馴染みのない層へ届けるのには限界を感じていた。もっと体感的に、もっと日常に寄り添う形で、星の力を伝える方法はないだろうか。そう考えた末に、星と火の要素を掛け合わせたキャンドルというアイデアが生まれたのだそうだ。
「キャンドルは、その時その場で揺れるものです。灯りがつかないときもある。この便利な世の中において、まったく効率的ではないところが魅力的に思いました」
星を、ただの象徴ではなく生きた体験として届ける──その情熱が、「ZODIAC」が生まれた背景だ。
24種類の星座と、その性質
「ZODIAC」の24種類のキャンドルは、全て異なる香りとメッセージを持つ。12星座が太陽と月でそれぞれ展開されているのは、太陽星座と月星座で星座の意味合いが異なるから。太陽星座は、外側へと向けた性質。月星座は、潜在的な性質。どちらの自分を意識したいかによって、その時々の選び方が変わる。
「太陽と月という二元性は、光と影であり、表と裏であり、活動と静寂です。人間は多面的な存在ですから、この2つの選択肢を作ることによって、自分の性質がひとつではないということを意識してもらえたらと考えています」
たとえば、山羊座の太陽が「社会に城を築き上げる力」を象徴する一方、山羊座の月は「繊細さや、城の内側で感じる孤独」を映し出す。このように同じ星座でも異なるストーリーが紡がれることが面白い。
24種類それぞれの星座に合わせたキャンドルに仕上げるため小田中さんが考え出したのが、天然石を散りばめたデザイン。天然石を効果的に使うことにより、星、火という要素に新しく地が加わり、占星術的にもより説得力のあるアイテムになった。
また、天然石とキャンドルに使用される精油は、全て小田中さんオリジナルの調合だ。その星座をどう休めるか、どう活性化するかを考え、古代から伝えられる効能などを基準に選んでいる。
「星座を表現するだけなら天然石を載せるだけでも良いと思いますが、星座の性質にアプローチするキャンドルにしたかったので、天然石の持つ力や精油がもたらす効果にはこだわって選びました」
さらにキャンドルには全てメッセージカードが付き、生活を見直すきっかけを与えてくれる。自分の中のどの要素を、調整するか。これまで香りやデザインの好みで選んできたキャンドルというアイテムだが、「ZODIAC」はそのインテリア的役割を超え、自分自身に問いかけるきっかけを与えてくれそうだ。
キャンドルを「体験」に
インテリアや単なるリラックスのためではなく、自分自身に向き合うという体験を与えてくれるようなキャンドル……そういう意味では「ZODIAC」の体験は、選ぶところから始まっている。選び方から、自分へのアプローチが始まっているのだ。
たとえば、自分の星座や、贈る相手の誕生星座で選ぶことはもちろん、この機会にもう一歩自分の性質に踏み込んでみるのも面白いかもしれない。
筆者は小田中さんに話を聞くまで知らなかったのだが、一般的な星座占いに用いられる誕生日を元とした星座を太陽星座と呼び、月星座は全く異なる星座になる場合も多いのだそう。ちなみに私の太陽星座は山羊座だが、ホロスコープを元に調べると、月星座は牡牛座だった。
馴染み深い山羊座だけでなく、自分の一面として新しく知った牡牛座も、私自身を見つめる入り口の一つとして愛着の湧くキャンドルになりそうだ。
あるいは、タロットカードのようにインスピレーションで選び、その時の自分に必要なメッセージを受け取ることもできるだろう。全く関係のない星座に見えつつも、もしかしたら、今の自分に必要な香りや色なのかもしれない。それに「ZODIAC」のデザインは、思わずインスピレーションで選びたくなるようなカラフルなデザインが多い。
このように「ZODIAC」の24種類のキャンドルは、星座という普遍的なテーマを持ちながらも、選ぶ人の感覚によって無限の物語を生み出す。
「まずは自分を知ること。そして、自分が本来持つリズムを取り戻すこと。それが『ZODIAC』の願いです」
「ZODIAC」で始める1日
実際に使ってみて興味深く感じたのは、キャンドル=夜というイメージを「ZODIAC」が覆してくれたことだ。
大きな瓶に入った木芯のキャンドルは、夜リラックスする時というより、不思議と朝一番に灯したくなる。これも小田中さんのこだわりだが、芯糸ではなく木芯を用いているので、最初のパチパチという音に耳を傾けながら、ゆっくりと1日を始めることができる。コーヒーを淹れるのに合わせて、火を灯す。音を聴く。香りを感じる。今日の自分は、それらをどう受け取る?「ZODIAC」を通じて、自分自身と対話できるような気にもなるのだった。
また、仕事のお供にも最適。オリジナルに調合された精油の香りは、適度に存在を主張し、不思議と仕事に集中させてくれる。
たとえば、山羊座太陽の調合精油は4つ。不安をやわらげる「シダーウッド」、浄化作用のある「ジュニパーベリー」、気分を刺激し活気づける「ライム」、そして歩き出す力を沸き起こすという「ミルラ」。1日の始まりに精油の力を少し借りて、自分のポジティブな一面も、ネガティブな一面も、いつもよりちょっと意識してみる。そして、そういった要素を持つ自分自身を受け入れることで、より心地よく、自分らしく1日を重ねていけるのだ。
キャンドルに宿るエシカルな想い
また「ZODIAC」は、環境にも配慮したエシカルなアイテムでもある。オーガニックな原料を使用し、キャンドルの瓶はリユースが可能だ。昨年からは詰め替えセットの販売も始めている。
「意識している方は、こうしたサステナブルな要素で選んでくださいますね。社会貢献にもなるし、罪悪感を持たずにキャンドルを楽しんでいただけると思います」
また天然石も、宝石のように高価なものではなく、自然のままの姿を尊重している。手に取った人の暮らしに、無理なく溶け込む。そんな優しさが「ZODIAC」にはある。
その石は火が消えたあともお守りのように手元に残り、自分だけの物語のかけらとして寄り添うだろう。小田中さんは、観葉植物の土の部分に還してあげることをおすすめしている。
「天然石は、宝石のように美しく飾られるものではなく、もっとナチュラルなままがいいと思っています。火が消えたあとも、日常の中に溶け込んでいく存在でありたいんです」
そうした循環の中で、人と自然がつながっていく感覚をもたらすのも、「ZODIAC」の隠れた魅力だと感じた。
自分の内側に灯りをともして
「ZODIAC」は、その体験を通じて、自分の内側に灯りをともしてくれるようなプロダクトだと思う。ゆらめく炎の刹那に、天然石の静かな輝きに、身体の深くまで届くような香りに、私たちは何を重ねるだろう?それはきっと人により全く異なり、しかしだからこそ、自分という存在をいっそう面白がることができる気がする。
星は、ただ見上げるだけの存在ではない。自分の中にある星座との関わりを、その要素を、「ZODIAC」を通じて少し知ってみる。すると私たちは、星を通じて自分に出会い、引いては自らの生活を見直すきっかけさえ得られるのかもしれない。
星を灯す、自分を知る。「ZODIAC」は、それぞれの旅の道しるべとなるだろう。
ZODIAC
CURATION BY
取材が好きなフリーランスライター。毎日をちょっと豊かにしてくれるものや考え方をいつも探している。画家の夫と一匹の猫と暮らす。