Vol.241

KOTO

08 JUN 2021

意味を知ってはじめたい、サステナブルな生活とエシカル消費のすすめ

「サステナブル(サスティナブル)」(以下、サステナブル)という言葉に関心を寄せる人は多いだろう。しかし、興味はあってもその意味を深く知っている人は、まだあまりいないかもしれない。 近年のSDGs(エスディージーズ)の注目によって、「サステナブル」という言葉は多くのメディアで取り上げられるようになってきた。ここでは「サステナブル」の意味や、それに深く関係する社会問題について解説し、一人ひとりが実践できることを紹介する。

近年話題になっている「サステナブル」とは

持続可能な社会の実現には、自然環境との共存が不可欠

サステナブルという言葉の意味

「サステナブル」は、英語では「sustainable」と書く。sustain(持続する)とable(~できる)で成り立つ単語であり、「持続可能な」という意味をもつ形容詞である。近年耳にする「サステナブルな社会」とは、資源を使いすぎずに地球環境を守り、美しい地球環境と平和な暮らしを維持する社会のことを示している。

サステナブルの名詞形は「サステナビリティ(sustainability)」であるが、本記事ではよりなじみ深い「サステナブル」という言葉に統一して説明を進めていくこととする。

サステナブルな社会を目指すには、解決すべき問題が山積み

サステナブルな社会を目指すためには、地球環境の破壊を食い止めて限りある資源を守る必要がある。しかし大量生産・大量消費の経済活動に頼る仕組みの現代社会において、サステナブルな社会を目指すのは容易ではないだろう。

たとえば、地球温暖化の一因といわれている二酸化炭素の濃度問題も理由の1つだ。産業革命以降の経済活動で化石燃料を多く消費した結果、二酸化炭素の排出量が急増し、大気中の二酸化炭素濃度が急上昇した。それとともに地球の平均気温が上昇するなどの気候変動が、現在進行形で続いている。

このような環境負荷による地球温暖化が、世界各国で異常気象や自然災害を招き、サステナブルな社会の実現を遠ざけている。サステナブルな社会を目指すには、解決しなければならない地球規模の問題が山積みなのである。

サステナブルにいち早く目をつけたのはアパレル業界

洋服を選ぶときは素材から吟味したい。新しい1着に天然素材やリサイクル素材の服はどうだろうか
「サステナブルファッション」という言葉をご存知だろうか。サステナブルファッションとは、直訳すると「持続可能なファッション」のこと。アパレル業界の生産・流通にかかわる自然環境に配慮した取り組みをさす。

衣類や雑貨などを生産する過程では、どうしても環境に悪い廃水が大量に発生してしまう。また、不要になった在庫を大量廃棄したり、動物の毛皮を際限なく使用したりすることも、地球環境に配慮しているとはいいがたい。

こうしたアパレル業界の問題を解決しようとする動きは世界に広がっている。2019年にフランスで開かれた主要7カ国首脳会議では、アパレル業界における環境破壊の減少を目的とした「ファッション協定」が発表された。この協定に世界中の有名ファッションブランドが署名したことが、「サステナブルファッション」が万人に広まるきっかけとなった。

サステナブルファッションは、海外ブランドはもちろん、国内ブランドにも浸透しつつある。たとえば、不要になった服を回収するボックスが店内に設置されているのを目にしたことはないだろうか。大手のファッションブランドは、すでに行動に移しているのだ。

また、「動物の毛皮を素材に使用しない」「過剰生産し廃棄することを避けるため、受注生産を実施する」「再生利用ができる素材を使用する」など、アパレル業界では環境に配慮した取り組みが進められている。

今だからこそサステナブルに生きることに意味がある

「SDGs(エスディージーズ)」は地球上の誰ひとりとして取り残さない

きっかけは「SDGs(エスディージーズ)」

サステナブルという言葉を知る際に、あわせて「SDGs」というアルファベットを目にした方も多いのではないだろうか。SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った略語であり、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されている。

SDGsは2015年に国連サミットで採択され、未来に向けた取り組みとして世界中で注目を集めた。17のゴール・169のターゲットから構成されており、「地球上の誰ひとりとして取り残さない」と宣言している。SDGsを実現するためには、企業や個人レベルでサステナブルとは何かを考えて取り組む必要があるだろう。

日本では2016年から政府による「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合」が開催されており、日本におけるSDGsについて施策を取りまとめている。世界でSDGsが採択され、日本政府もSDGsについての議論を執りおこなったことが、日本でサステナブルが広まるきっかけになったといえるだろう。

自然環境が失われつつある今だからこそ実践したい

サステナブルという考え方が提唱されてから約30年がたった今、地球環境に対する人々の関心は格段に上がっている。しかし、環境の悪化については以前からも問題視されていたはずだが、いまだに改善のきざしは見えていない。地球の平均気温の上昇は止まらず、それによる自然災害が多発して、多くの人々が被害を受けているのが現実だ。

最近では、日本でも記録的な豪雨や豪雪などの異常気象が頻発しており、気候変動を身近に感じるようになった。美しい地球と平和な暮らしを未来に残し、環境を守るために積極的に行動を起こしたい。そうした考えをもって取り組むのが、サステナブルな社会づくりなのだ。

SDGsは政府主導の取り組みで、身近なものではないと感じる人も少なくない。しかし実践していくのは、政府、企業のみならず、地球に暮らす一人ひとりだという認識をもちたい。

サステナブル社会の実現のため「エシカル消費」を取り入れたい

ethicalは「倫理的な」という意味

エシカル消費とは何か。当たり前のことに今一度気を配って

エシカルとは英語で「ethical」と表記し、日本語では「倫理的な」という意味をもつ。つまり、エシカル消費とは「倫理的な消費」をさしている。ここでいう倫理的とは、法律の縛りにかかわらず、環境や社会に対して良識のある行動をすること。エシカル消費は、生活に欠かせない「食べる・飲む・着る・使う」などの何気ない行動を、地球環境に配慮しておこなうことだ。

生活のなかで当たり前になっている行動について、深く考えることはあまりない。しかしふと立ち止まって意識してみると、自分がエシカル消費と真逆な生活を送っていることに気づくかもしれない。

エシカル消費はサステナブル社会のために個人ができること

サステナブル社会のために、個人がエシカル消費をおこなうのは難しいことではない。まずは毎日の暮らしのなかで、行動のどれか1つでも、環境への思いやりを意識した行動に変えてみよう。一人ひとりが取り組みやすいエシカル消費が、サステナブル社会の実現に大きく貢献することになる。

日本のGDP(国内総生産)の内訳は、個人消費が約6割を占める。もし個人が一斉にエシカル消費を実践すれば、環境や社会に大きな影響を与えることがわかるだろう。

エシカル消費としてできること。サステナブルな暮らしをはじめよう

マイバッグを使うことはエシカルな選択だといえる

暮らしの必需品を「繰り返し」「長持ち」に置き換えてみる

一人ひとりのエシカル消費が、環境によい影響を与えるのは想像にかたくない。では、エシカル消費を実践するためには何をすればいいのだろうか。人が生きていくには生活必需品の使用が不可欠であり、何も消費せずに生きていくことはできない。しかし、生活に必要なものを持続可能なものや長く使えるもの、ごみを多く出さないものに置き換えることはできるかもしれない。

たとえばマイバッグやマイボトルを利用するようになれば、使い捨てのプラスチック製品やペットボトル容器の消費量が減り、ゆくゆくは生産の減少や削減につながるだろう。また家の電球を寿命の長いLED電球に交換すれば、電球を取り替えて廃棄する頻度をぐっと抑えられる。

地産地消・フェアトレード商品であることを、購入する基準の1つに

地産地消は生産者・消費者ともにメリットがたくさん
さらにエシカル消費の実践として、地産地消とフェアトレード商品をおすすめしたい。「地産地消」とは、地元で生産されたものを地元で消費すること。地産地消を取り入れると、長時間保存するための設備の使用や輸送にともなう二酸化炭素の排出など環境負荷の軽減が期待できる。また生産者からの直接販売によって不揃い品や規格外品の販売が可能になれば、食材をはじめとした資源を廃棄する量も減るだろう。

一方、「フェアトレード」は「公平・公正な貿易」を意味している。「フェアトレード商品」とは、「開発途上国で生産された製品や原料について、適正な価格かつ対等な関係で継続的に取引されている」ということを保証する「国際フェアトレード基準」を満たした製品のことである。フェアトレード商品を購入することで、開発途上国で貧困に苦しむ労働者や生産者の生活の向上と自立を促し、現地の環境問題の改善が期待できる。つまり、これもまたエシカル消費の1つなのだ。

意味を知って取り組むサステナブルが、今あるものを未来へつなぐ

地球の環境を守るために、今できることを考える
サステナブルという言葉を聞くと、その難しい印象に身構えてしまう。しかしサステナブルの知識を深めれば、実は身近で簡単に取り組めるものがたくさんあることに気がつくだろう。

政府や企業にしかできないサステナブルの取り組みもあるが、個人にもできることはたくさんある。たとえば食品ロスを減らしたり、電気やガス、水の使用量を減らしたりすること。日常生活に取り入れられそうなことを自ら調べ、少しずつ意識して実践していく。そうすることが、地球環境を守る第1歩となるに違いない。