連戦の中で感じたコンディションと腸の関連性
しかし自身の飛躍に伴い出場試合数も大幅に増加。選手として充実の時を迎えていたが、その一方で鈴木氏が痛感したのが「回復の重要性」だ。土曜日にJリーグを戦い、長距離移動を挟んで水曜日に海外アウェイでのACLに臨み、帰国後中2日でJリーグ、すぐに日本代表に合流…。そんな想像を絶するハードスケジュールの中で、コンディションを保つのは容易ではなかった。
「タイトなスケジュールの中でも一定以上のパフォーマンスを保つには、疲労を回復させることがとても重要でした。バランスの良い食事と睡眠はもちろん大前提でしたが、少しでも疲れを取るために他にもあらゆる手を尽くしました。その中で、お腹の調子と体全体のコンディションがリンクしていることに気付いたんです。お腹の調子が悪い時はコンディションも悪いし、逆にお腹の調子が良ければ、多少連戦が続いていてもよく走れました」
免疫力向上に直結する、腸内細菌の“多様性”
「腸内細菌の中で指標となるのは“多様性”です。色んな種類の菌がいることが大事なのですが、コンディションの良い健康なアスリートたちの腸内細菌は多様性が特に高かったんです。一般の方のサンプルを見てみても、病気や疾患をお持ちの方と健康な方では、健康な人の方がより多くの腸内細菌を持っている傾向にあります。また、コロナで重篤化してしまった患者さんの腸内環境を調べている研究チームがあるのですが、その研究結果によると、やはり腸内細菌の種類が少ない傾向にあったそうです」
こうしたエビデンスからも、多様な腸内細菌を持つことが免疫力向上に繋がるという傾向がうかがい知れる。
「他にも、腸内細菌にはアナフィラキシーショックやアレルギーを抑える可能性も論文などで発表されています。腸内環境を整えると、例えば花粉症の症状が軽減されたり、食物アレルギーにも腸内細菌が関わっているという発表も出てきています。腸内細菌の多様性を高めることは、免疫力向上を含め、健康面であらゆる効果が期待できるんです」
腸活のカギを握る2つの食品とは?
では、今から腸内細菌の種類を増やすにはどのような「腸活」を行えば良いのだろうか。
「基本的にはプロバイオティクス(主に発酵性食品)とプレバイオティクス(水溶性食物繊維やオリゴ糖など)の2つを摂るのが有効です。プロバイオティクスは味噌、漬物、納豆、乳酸菌飲料やヨーグルトといった発酵性食品に、プレバイオティクスはキノコ類や野菜、海藻、こんにゃくなどに多く含まれています。古くから日本は味噌、漬物、醤油、納豆など発酵食や食物繊維を多く食べる食文化だったので、これらを摂る習慣が自然と身に付いていたんです。それが食の欧米化とともに菌を摂りづらい時代となり、病気やアレルギーも増えてきました。現代の日本人は、食事の中でこれらを意識的に摂る必要があると思います」
腸活は1日1食からでも始められる
「栄養面に気を配るといっても、気を遣いすぎてしまうとそれがストレスになってしまう場合もあると思います。だからまずは1日3食のうちのどこか1回だけでも、プロバイオティクス(主に発酵性食品)とプレバイオティクス(水溶性食物繊維)を含む食品を摂るようにしてみてください。それだけでかなり変わるはずです。食べたいときはジャンクフードやラーメンを食べても良いと思うんです。“じゃあその分、次の食事は気を遣おう”とか、少し気を配るだけでも全然違いますよ」
1日1食からの腸活を始めるにあたり、鈴木氏自身も実践する食習慣を聞いた。
「我が家では、朝のスープですね。野菜やキノコなど様々な食材が摂れますし、朝はあまり食べられないという人も、汁ものなら入っていきやすいのではないでしょうか。夜のうちに作り置きしておけば、翌朝は温めるだけで食べられるので、手軽でおすすめです。朝食に野菜スープとヨーグルトを食べるだけでも、立派な腸活ですよ。ヨーグルトはより多くの菌を取り込むためにも、色々な種類のものを食べるといいです。一般の方もアスリートと同様にコンディション管理は重要だと思います。日々のハイパフォーマンスを維持するためにも、無理のないところから始めてみてください」