Vol.514

FOOD

19 JAN 2024

旬の果物で季節の手仕事を。贈っても喜ばれる、手作りジャムのある生活

こんがりと焼けたトーストと、つやつやの甘いジャム。こんな朝食から一日がスタートするだけでしあわせな1日が保証されているような気分になるはず。しあわせ要素の一つのジャムが、いま訪れている季節のものを使った、丁寧に手作りされているものなら喜びもひとしおだ。トーストはもちろん、簡単なおやつにも、自家製のジャムがあればもっと世界が広がる。プレゼントや、おすそ分けにもぴったり。贈った相手も、そして自分をうれしくさせてくれる、そんな幸せな季節の手仕事はいかがだろうか。

果物の水分を砂糖の力で引き出し。自然なおいしさに。

果物の自然な甘さがじんわり染みわたる
子供のころ、絵本に出てくるクマのお母さんの作ってくれたジャムにあこがれを抱いていた。なんておいしそうなんだろう!自然の中で生きているみたいで素敵!と、妙にわくわくした思い出がある。大人になってしまえばジャムはお金で買う時代に。でもやっぱり季節の果物を使って、丁寧に作ると喜びはひとしおだ。

実はジャム作りには必要な3つの要素がある。まずは「ペクチン」。これは植物に含まれる成分による現象だ。お菓子つくりを日ごろしている人なら聞いたことがあるかもしれない。これは、「酸」と「糖」が結びつくことによってジャム特有のトロっとした食感が生まれる。 

自然な甘さを引き出すなら精製されていない砂糖を
次に必要なのは「砂糖」。砂糖の浸透圧によって出てきた果物の水分はジャム作りでとても重要だ。砂糖にもいろいろな種類があるが、自然な甘さを引き出すならば、精製されていない、茶色いものがおすすめ。今回はきび砂糖または甜菜糖を使用したジャムレシピを紹介する。

砂糖を大量に使用することに抵抗が合う人も多いだろう。しかし砂糖には高濃度の砂糖によって、腐敗を防ぐという効果がある。もともと保存食であるジャムは、やはりクラシカルにたっぷりの砂糖を、潔く使用することがおすすめだ。 

最後に必要なのは、「酸」柑橘類のジャムを作る際は無くても良いが、その他のジャムはある程度酸を補う必要がある。果物400gほどに大さじ1ほどが目安だ。もちろん生のレモンをしぼるに越したことはないが、市販のレモン汁でも充分おいしく仕上がる。

王道のいちごジャムを作ってみる

スプーンにひとさじ贅沢な甘さを
ジャムの王道といえば、いちごジャムではないだろうか。12月になるとクリスマスに合わせたように、いちごが果物売り場に並んでくる。赤くて甘い香りのするいちごを見るとわくわくしてしまう。そのまま食べても間違いなくおいしいが、さらに贅沢にいちごジャムに仕上げてみては。

前述したとおり、砂糖をたっぷりと使用したクラシカルなジャムのレシピで仕上げてみよう。

使用する砂糖は、甜菜糖、またはきび砂糖。どちらも精製しておらず、天然のミネラルがたっぷりと入っているのが特徴だ。特にてんさい糖は腸内環境を改善してくれる効果もある。糖類(砂糖)の中で甜菜糖だけが、唯一オリゴ糖を含んでいる。その他にも、血糖値の上昇をゆるやかにする、原料のほとんどが国産である…などの大きなメリットがある。

きび糖も同じく、ミネラルが豊富な砂糖。グラニュー糖などの白砂糖に比べるとコクが出やすいのが特徴。どちらも普段のお料理にも使用しやすいので、気軽に取り入れてみるのをおすすめする。

材料はシンプル。旬の果物と、ミネラルたっぷりの精製していない砂糖、レモンのみ

いちごジャムのレシピ

いちご…250g
てんさい糖またはきび糖…100g
レモン汁…大さじ1

作り方

1、いちごはよく洗ってへたを取り、適宜カットする。小粒の場合はそのままでも
2,甜菜糖をまぶし、1時間ほどおく
3,水気が出てきたら、小鍋に移しレモン汁を加えて煮る
4、焦がさないように混ぜながら弱火で加熱する。泡に粘り気が出てきたら完成

果物にまとった砂糖がおいしさの秘密。砂糖の浸透圧を利用する
出来上がったジャムは煮沸消毒等でよく消毒した瓶に熱いうちに入れて、蓋をして逆さにする。こうすることで、カビができにくく長く楽しむことができる。

どのくらいにつめたから良いのかわからない…そんな時は、透明のグラスに水を入れて、出来上がったジャムを1滴入れる。ジャムがそのまま下まで落ちれば完成となる。砂糖の量は基本的に果物の重さの40パーセントを目安とする。用意した果物に合わせて砂糖を計量すればよい。

季節の果物で楽しめるのが醍醐味。様々な果物のジャムレシピ

左からリンゴジャム、いちごジャム、ミカンジャム。色とりどりのジャムが美しい
スーパーやオーガニック食品のお店をのぞいてみると季節によってていると、季節によってさまざまな果物が並び、楽しませてくれる。春にはいちごや杏、夏には桃やスイカ、秋には梨やぶどう、そして冬にはリンゴやみかん。ジャム作りは基本的には同じ。素材となる果物にジャム作りに向き不向きがあるとしても、これだけ季節を通して旬を味わえるのは、日本の特権だ。

日本には四季があり、季節のものをその時期に楽しむことができる。日本料理では、はしり(食材の初物)、さかり(食べごろの食材)、なごり(旬が過ぎ終わりを迎えようとしている食材)と四季を反映する食材選びをしてコースを組み立ている。自分の暮らしにも、やはり季節の食材を生活に取り入れるのは、季節の雰囲気と味わいを感じることができる、程よい刺激になる。

季節の果物を使ったジャムを常備しておくのも楽しい
冬の代表的な果物、リンゴとミカンでもジャムを作ってみる。

リンゴジャムのレシピ

りんご…2個(300g)
てんさい糖またはきび糖…120g
レモン汁…大さじ3

作り方

1,りんごは皮をむいて、5㎜角の角きりにする
2、カットしたりんごにてんさい糖をまぶし、1時間ほどおく
3、小鍋に移しレモン汁を加えて、煮る
4,くつくつと気泡が粘り気が出てきたら完成。消毒した瓶に入れて保存する

りんごは皮付きのまま調理してもよい。ほんのりとピンク色になりかわいらしい色に仕上がる。好みでシナモンやスターアニスなどのスパイスを入れてもおいしい。

スパイスを入れるとアクセントに

ミカンジャムのレシピ

みかん…小6個(260g)
てんさい糖またはきび糖…100g
レモン汁…大さじ1

作り方

1、みかんは皮をむき、筋をざっと取る。
2,人房ごとに分けて、それぞれ半分に切る
3,カットしたみかんにてんさい糖をまぶし、1時間ほどおく
4,小鍋に移しレモン汁を加えて、弱火で煮る
5,くつくつ気泡がと粘りが出てきたら完成。消毒した瓶に入れて保存する

みかんは小さめのものがおすすめだ。薄皮が柔らかく口当たり良く仕上がる。また、皮付きのまま調理してもよい。少し苦みが出て、大人の味に仕上がる。

りんごもみかんも、冬になるとお手頃に手に入る。ぜひちょっと手間をかけて手作りジャムを試してほしい。甘酸っぱいコク深い味は、寒い季節によく体に染み渡るおいしさだ。
日常にジャムを取り入れて。簡単なレシピでもっとジャム生活を取り入れる。

手作りジャムを使ったアレンジも、また世界が広がる
手作りジャムのある食卓は、普段よりもわくわくさせてくれる。パンに添えていただいてももちろん良いが簡単アレンジでもっと食卓の世界が広がる。

例えばいちごジャム。水切りヨーグルトにトロっとかけて、グラノーラなどを添えて。簡単パフェ風に仕上げてみても、とてもおいしい。いちごジャムの甘酸っぱさと、ヨーグルトの酸味がよく合うお手軽デザートに変身する。透明のグラスに盛り付けたら、見栄えもよく来客時にもピッタリな一品だ。

りんごジャムは、程よい大きさに切った冷凍パイシートにスプーンでトロっとのせて、200℃のオーブンで焼けばお手軽アップルパイの完成。焼きたてはサクサクトロトロでとにかくおいしい。お子様から大人まで、楽しくいただける。甘酒とミカンジャムを合わせて、レンジで温めれば、即席ホットドリンクの完成。寒い季節に染み渡る体ぽかぽかドリンクの完成だ。

風邪のひき始めには生姜を少し加えたらさらにぽかぽかする

サクサクのパイ生地と、あまいリンゴジャムのコンビがたまらない
果物は意外とお肉とも相性が良いため、ソースに加えたり、煮る際に少し足してもおいしい。普段の料理が一味違ったおしゃれな一品に早変わりする。

アレンジ自在なジャムが食卓を豊かにする。レパートリーが増えておすすめしたくなる、また来年も作ろうと1年後が楽しみになる。少しの手間で、季節の果物を楽しみ切ったという、豊かな達成感が生まれるはず。

次の季節は何を作ろう、季節を感じるのが楽しみになるジャム作り

日常に手作りジャムのある生活で季節を感じられる
季節の果物を使ったジャムを作る。ちょっとかわいい瓶につめる。リボンをつけてプレゼントしても良いし、いつもお世話になっている方に、おすそ分けをしてもよい。送られた相手も、送った自分もほっこり優しい気分になれるはず。

普段の献立のレパートリーにちょっと加えて、おしゃれな料理を作ってみるのも素敵だ。いつもの生姜焼きにオレンジジャムを入れたり、ドレッシングにいちごジャムとバルサミコ酢を加えてもおいしい。

作ったジャムは、リボンをしてかわいい紙袋に入れてプレゼントしたくなる
自分で手作りしたジャムが生活に浸透していると、とてもわくわくする。いろいろなアレンジがどんどん思いついてくる。

今年上手に作れたから、来年もまた作ろうと1年の季節の移り変わり楽しむのもとても素敵だ。旬の果物をジャムにするという手仕事で、1年間の季節をそれぞれ楽しんでいけたら、とても幸せだ。