Vol.233

FOOD

11 MAY 2021

プラントベースフードとは何か。おいしさと健康を両立する「食」の考え方

近年、世界で存在感を強めている「プラントベース」という考え方をご存知だろうか。ベジタリアンやヴィーガンの生活に関心がある人なら、その言葉を聞いたことがあるかもしれない。 「プランドベース」という言葉は本来「植物由来」という意味だが、現在では「植物由来のものを積極的に生活に取り入れること」という新たな意味を持ちはじめている。この現代におけるプラントベースの考え方は厳密にはベジタリアンやヴィーガンとは異なっており、知らず知らずのうちにプラントベースの食事をしている人もいるだろう。 プラントベースとは何か、ベジタリアンやヴィーガンとはどう違うのか。ここでは特に「食事」にフォーカスして、プラントベースの取り入れ方やメリット、さらには食材をあつかう際に意識したい「ホールフード」の考え方を紹介する。

プラントベースとは?ちょっとした置き換えからはじめる生活改善

プラントベースは野菜や豆などの「植物」が中心、色とりどりでヘルシー

プラントベースとは「植物由来」を選び取る生活のこと

プラントベースとは英語で“植物”を意味する「plant」と“由来”を意味する「based」を組み合わせた言葉であり、直訳すると“植物由来”という意味になる。

ライフスタイルを指す言葉としては、かつては植物由来の食事法だけではなく、衣食住のすべてで植物由来のものを選択することを意味していた。しかし、時代を追うごとに「プラントベース」は植物由来の食べ物を中心とした食事法を指す言葉として使用されることが多くなり、2010年代にはアメリカで「野菜、果物、全粉穀物、ナッツ、種子、豆類などの植物由来の食べ物から作られるもの」と、より詳しく定義された。
近年では健康志向の高まりから、プラントベースの食事法を取り入れる人が増えている。

プラントベース=「ダイエット」や「食事改善」という考え方も

プラントベースは、1940年にイギリスではじまった動物性製品・食品に対するボイコット運動である「ヴィーガニズム」から派生した概念だといわれている。しかし、その後プラントベースはヴィーガニズムとは大きく違う、独立した意味を持つ言葉として普及することになる。

1980年代には、プラントベースはアメリカの栄養学の観点から「低脂肪であり繊維質を多く含む植物由来の健康的な食事」と定義された。また近年では、「植物由来の食品を選ぶダイエット法」のイメージが定着し、健康志向の人に支持されている。

こうした背景から、現在プラントベースを取り入れる人の中には「健康的な体型になりたい」「ヘルシーな食生活を目指したい」など、精神面ではなくカラダにやさしい食生活を第一に考えている人も多いのだ。

プラントベースとは起点が違う「ベジタリアン」「ヴィーガン」とは

ヴィーガンは動物性由来のものを一切摂らない

ベジタリアンの定義

ベジタリアンの語源は「健全、新鮮、元気」を表すラテン語の“vegetus”だといわれている。ベジタリアンといえば、現在では「菜食主義者」の総称として知られており、一般的には「肉や魚介類、それらの含有食品を食べない人」を指している。日本でも比較的なじみのある言葉なので、知っている人も多いだろう。
ベジタリアンと一言でいっても、卵や乳製品も食べる人、魚介類も食べる人など、食材を選ぶ基準はさまざまだ。「植物性食品に加えて何を食するか」によって、ベジタリアンは複数に分類されている。

ヴィーガンの定義

ヴィーガンという言葉は、1944年に英国で「ヴィーガン協会」が創設されたときに生まれたといわれている。実はヴィーガンは、ベジタリアンの分類の一つだ。

ヴィーガンはベジタリアンの中でも食材を選ぶ基準が最も厳しく、動物由来の食品を一切摂らない。動物“由来”の食品には、卵・乳製品・はちみつといった「動物によってもたらされる食品」も含まれる。さらに、食品以外の毛皮や革製品などの使用も避けるという。これは、ヴィーガンのなかには完全な「人間のエゴイズムによる動物性食品・製品の使用の排除」を掲げている人が多いからだ。「脱動物搾取」という精神的目標の達成に重きを置くのが、ヴィーガンの考え方といえるだろう。

これらの言葉に定着してしまった「イメージ」とは

ヴィーガンをはじめとしたベジタリアンになろうとする人のなかには、個人的な健康促進のためというよりも、宗教上の理由や環境保護、食料問題の解決などといった大きなスケールの目的を持つ人も少なくない。そのため、植物由来の暮らしに興味があっても、「ヴィーガンになるためには厳しいルールを守らなければならない」といったイメージが先行してしまい、日常的に取り入れるにはハードルが高いと感じる人が増えてしまったのも事実だ。

また、宗教や健康、環境問題のための取り組みという側面を持つ一方で、一部の人が主張する強圧的な動物愛護などの精神的側面が特に注目を集めたことにより、マイナスのイメージだけが一人歩きして誤解を生んでいるという実情もある。

プラントベースとは健康的な食事を目的とした「日々の心がけ」

プラントベースの食事では、肉や魚介類も取り入れられる

プラントベースフードは、完璧な菜食主義ではない

プラントベースの食事もまた、植物由来の食品を中心にしたものだ。しかし、ベジタリアンやヴィーガンのように食生活に厳格なルールを敷くものではないため、誰でも気軽に取り入れやすい。ベジタリアンに類似する点もあるが、プラントベースの食事法にはこれといった禁止事項がなく、「植物由来のものを多く摂るよう心掛ける」というカジュアルかつポジティブな発想が求められる。「食べてはいけないもの」ではなく、「意識して食べるもの」に着目するだけなら、この記事を読み終えた次の食事からでもはじめられるだろう。

植物性食品への置き換えで、健康とおいしい食事を両立する

豆乳は最も有名な置き換え食品だといえる
プラントベースの食生活は、食事改善による健康や美容を意識するなど、カラダを整える目的を持ってはじめられることが多い。厳密なルールがない分、気軽にていねいな食生活をはじめやすいのが魅力だ。

プラントベースを実践するために必要なのは、食事内容をがらりと変えることではなく、まずは食品の一部を植物由来のものに置き換えること。個人のペースで実践できるため、これまで当たり前に口にしてきた食品が今後一切摂れなくなるといった心配もない。

プラントベースの考え方が食品を選ぶ基準の一つに

一部の人が与えたマイナスイメージによって、「ヴィーガン」と聞くと動物由来の食事を強く否定されるイメージがある。そのため、楽しい食事の機会を奪われると身構えてしまう人もいるそうだ。しかし、「プラントベース」と呼び方を変えてみれば、植物由来に比重を置いた暮らしは案外身近に感じられるのではないだろうか。

プラントベースの考え方は日々のちょっとした心がけや、食品を選ぶ際の着眼点の一つだ。すでにアメリカではスーパーマーケットにプラントベース食品が多く並んでおり、取り入れやすい環境が整っている。

そしてその風潮は、海外発祥の外食チェーン店などを中心に日本でも広まりつつある。例えば人気のコーヒーショップでは、牛乳を豆乳やアーモンドミルクに置き換えるカスタムメニューが取り入れられているのに加え、オーツ麦由来のオーツミルクが期間限定で使われたこともあるという。「カラダによさそうだから」「新しいメニューが気になるから」とチョイスしたことがある人もいるのではないだろうか。それこそが、プラントベースの発想の起点なのだ。

プラントベース食にひと工夫。ホールフードのすすめ

ヘタや皮つきの食材をまるごと使った料理。色鮮やかで食欲をかき立てる

プラントベースと一緒に取り入れたい「ホールフード」とは?

ホールフードとは、英語で“まるごと”を意味する「whole」と“食べ物”を意味する「food」を組み合わせた言葉で、直訳すれば「加工していない自然食品」という意味になる。日本では主に、「食品の加工や精製をせずに、素材の持っているものをすべて食すこと」を指す用法が浸透しており、通常は料理の過程で捨ててしまう野菜や穀物のヘタや皮、殻などを「まるごと食べる」という考え方として定着しつつある。

食品ロスをなくして身体にいい。地球の健康にも配慮した食生活

ホールフードの考え方に基づいて料理をすると、野菜の一部を「生ごみ」と感じなくなる。ごみを減らすことでエコロジーに貢献できるのはもちろん、野菜に含まれる栄養素をまるごと摂れるという利点もあり、まさに一石二鳥だ。
プラントベースの食事法を取り入れて体調を整えるだけではなく、植物性食品への置き換えと同時に環境への配慮まで行えるのは、なんとうれしいことだろう。

原点は「もったいない」。栄養素を無駄なくまるごと食べる

捨てる前に料理に使えないか考えてみる
野菜のヘタや皮の部分には、ビタミンや植物繊維、抗酸化作用によって老化予防が期待されるフィトケミカルなど、多くの栄養素が含まれている。それを捨ててしまうのは、なんともったいないことか。

日本には「もったいない」文化が浸透している。ホールフードという言葉自体は新しいが、日本人は古くから食べ物を無駄にしないよう工夫してきた。たとえば漬物や切り干し大根など、食材の皮を剥かずそのまま調理したものもホールフードといえるだろう。

プラントベースを取り入れて菜食中心の暮らしをはじめるなら、ホールフードの考えを意識して効果的に新しい食生活を楽しみたい。

プラントベースミートに植物性ミルク。広がりを見せる植物由来の暮らし

アーモンドミルクなど、身近なものから取り入れたい
プラントベースという言葉自体を知らずとも、プラントベースの取り組みはすでにはじまっており、身近になりつつある。現在では大豆パティを用いたハンバーガーショップや、ドリンクに植物性ミルクを使用するコーヒーチェーンなども増えている。

プラントベースは自分主体ではじめられる食生活であり、取り組む理由も方法も人それぞれ自由だ。ていねいな食生活を手軽にはじめたい人や、エコロジーに貢献したい人、健康第一と考える人など、さまざまな考えの人がいるだろう。

どんな目的でも構わない。プラントベースの暮らしに興味がある人は、まずは身の回りのちょっとしたことを植物由来のものに置き換えることからはじめてみてほしい。