Vol.147

KOTO

14 JUL 2020

生き方を変える奇妙な魅力。 「BOTANIZE」に聞く、塊根植物のある暮らし

大人になるほど自分のライフサイクルが確立され、生活に変化がなくなる。毎日のルーティンがあることは、安定していて心地よいものだ。しかし、その一方でマンネリに繋がり、仕事やプライベートで停滞感を生み出してしまうこともある。そんなときは、塊根植物を一人暮らしの部屋に取り入れてみるのはいかがだろうか。どこか奇妙でユニークな姿をしたそれらは、私たちの生活に新しい風を吹き込み、充実をもたらしてくれる。今回は、エキゾチックプランツショップ「BOTANIZE shirokane(ボタナイズ 白金)」で、塊根植物とともに暮らすことの魅力を伺った。

「BOTANIZE」で、塊根植物の奇妙な魅力に触れる

ひとたび塊根植物を眺めると、なぜか目が離せなくなる。英語で「コーデックス」とも呼ばれる塊根植物は、マダガスカルやアフリカなど乾燥地帯に生息する多肉植物の一種だ。「塊の根っこ」と書く名前の通り根や茎が太く、内部には乾燥した環境でも育つようにたっぷりと水分が蓄えられている。その奇妙で独特なフォルムは不思議な魅力で溢れ、見る人に愛着を湧きあがらせるのだ。

東京都港区白金にあるエキゾチックプランツショップ「BOTANIZE shirokane」
ここ数年で、塊根植物は独特な見た目と希少性の高さから注目されるようになり、愛好家が急増した。そのブームの火付け役と言われているのが、東京都内にあるエキゾチックプランツショップ「BOTANIZE」を手掛ける横町健さん。2016年に代官山店、2018年に白金店をオープンさせた。今回は、原産国から輸入した株を自家栽培できるよう屋上に温室を整備した「BOTANIZE shirokane」を訪れ、塊根植物の魅力に迫ることにした。

「BOTANIZE」の代表・横町健さん。屋上の温室にて
「BOTANIZE shirokane」で出迎えてくれたのは、代表の横町さん。塊根植物について語りだせば、あっという間にその場が熱気に包まれる。それほどまでに横町さんが塊根植物に熱くなる理由は、一体どこにあるのだろうか?

横町さんは子どもの頃、お小遣いをすべてサボテンにつぎ込む“サボテン少年”だった。塊根植物に出会ったのは大人になってから。たまたま知り合いに譲ってもらったのをきっかけに、どんどん魅了されていったという。

「塊根植物の醍醐味は、樹形を愛でるところにあります。マダガスカルやアフリカなど原産国から輸入した株を現地球というのですが、現地球は乾燥地帯の自然の中で長年かけて形作られたものなんです。中には動物にかじられた傷が残っているものもあり、そんな傷跡さえも味わい深い。時間をかけて完成された樹形は、見れば見るほど奥深く、愛おしくなるんですよね」

ビル3階にずらりと並ぶ「パキポディウム」
例えるなら、塊根植物は盆栽に近い。ゆっくりとした成長スピードで10~20年かけて少しずつ育っていく塊根植物は、もちろん育てる楽しさもあるが、日々愛でる喜びが大きいのだ。

ただ、愛でる。それが塊根植物への入り口

茎や根がぽってりとしていて、どこか無骨。そんな樹形を愛でる楽しさを知ると、一気に塊根植物へとのめり込むという。そこで横町さんに店内を案内してもらい、おすすめの塊根植物の特徴を教えてもらうことにした。

「オペルクリカリア・パキプス」
ボコボコとした幹が特徴の「オペルクリカリア・パキプス」は、現地球を店内で発根させたもの。「BOTANIZE shirokane」には温室など設備が整っているが、現地球を発根させるのはかなり難しく、写真のように育つまでに手間暇がかかるという。

「パキポディウム・ロスラーツム・グラキリス」
丸みを帯びた幹が印象的で、上部が枝分かれしている「パキポディウム・ロスラーツム・グラキリス」。幹の肌の質感が味わい深く、いつまでも愛でて楽しめそう。

「ドルステニアラブラニー」
チリチリとした緑の葉っぱが個性的な「ドルステニアラブラニー」。小さいひまわりのような形をした緑色の花が咲くのも特徴的で面白い。

塊根植物とひとことで言っても、種類が異なれば形や肌の質感なども変化に富み、どれをとっても個性あふれる。じっくりと選び、心惹かれたものを連れて帰りたい。

愛でた先にある、「育てたい」という衝動

塊根植物を愛でて楽しんだら、その次の段階として「自分の手でいちから育てたい」という気持ちが芽生えるという。塊根植物にハマると、誰もが「愛でる」から「育てる」というステップを踏んでいくのだとか。

化粧砂をかぶせる様子
「BOTANIZE shirokane」では、原産国からの輸入もの以外に、国内産の種から発芽させた国内実生を取り扱っている。国内実生は、輸入ものの塊根植物とは違って若い段階で販売されるため、育てるのにぴったりだ。

店内では土も販売されている
育てるとなれば、土もこだわりを持って選びたい。

「BOTANIZE」オリジナルの器
塊根植物の質感や、部屋のインテリアの雰囲気に合わせて、器を選ぶのもまたひとつの楽しみになる。

暮らしが変わり、自分を見つめ直すきっかけに。

実際に塊根植物を部屋に飾ると、日常生活や心境の面でどのような変化があるのだろうか。横町さんに聞いてみると、こう答えてくれた。

「大人になると、何かによって自分の生活リズムを変えられることってなかなかありません。けれど、塊根植物を暮らしに取り入れると、生活のサイクルが塊根植物を中心に回り始めるんです。そうして暮らしにメリハリが生まれていくのが、塊根植物を取り入れることの魅力ですね」

「パキボディウム・カクチぺス」を家で育てることにした
横町さんの言う、「生活のサイクルが塊根植物を中心に回り始める」とは、どういうことだろうか。「BOTANIZE shirokane」で、比較的手軽な価格帯と育てやすさから初心者におすすめだという「パキボディウム・カクチぺス」を購入し、自宅へ持って帰ってきた。

「パキボディウム・カクチぺス」は国内実生で、トゲがあるのはまだ子どもの段階だから。5年~10年かけて成長し大人になると、トゲがなくなりツルっとした表情になる。そういった成長の過程を楽しめるのが特徴だ。

毎朝、塊根植物が元気かどうかを確認することから一日が始まる
朝起きるとまず塊根植物を眺め、根や茎、葉っぱの様子をチェックする。「乾燥地帯の植物だから、放っておいても大丈夫なのでは?」と思われるかもしれないが、塊根植物には自然の光・風・水が必要で、ずっと室内に置いておくと元気がなくなってしまう。太陽の光をたっぷりと浴び、自然の風に吹かれ、雨に打たれることで、強くしなやかに育つのだ。

だからこそ毎朝欠かさず様子をチェックし、必要なら水をやり、晴れの日ならベランダへ出してから出掛けたい。そして、外出先で雨が降ってきたときに塊根植物の様子が気になったら、もうすでに塊根植物に魅了されている証拠だ。帰宅すると真っ先に塊根植物をベランダから部屋へと取り込み、愛でながら一杯飲むのが至福のひとときになるだろう。

晴れの日はベランダに塊根植物を出して、太陽の光と自然の風を浴びせると、生き生きと成長してくれる
塊根植物を暮らしに取り入れることで、確実にライフサイクルが変わった。休日の朝でも、ダラダラと寝続けることはない。なぜならその日が晴れだとしたら、塊根植物に太陽の光をめいっぱい浴びさせてあげたいから。そして、雨の日もちょっぴり楽しみになった。程よく雨に打たれた塊根植物は、緑が深みを増し、たくましい表情を見せるから。天候や季節感を気にかけていると生活にメリハリが生まれ、いかに自分がこれまで慌ただしい生活を送ってきたかを振り返るきっかけとなった。

大人になると、すでに出来上がったライフサイクルを変えようと意気込むことはあまりない。それを塊根植物が一瞬にして変えてくれ、ふと気づく。「何歳になっても、自分は変われる」のだと。ポジティブな変化は自信につながり、仕事やプライベートでの停滞感を払拭し、新たな挑戦ができるきっかけになるのではないだろうか。

BOTANIZE shirokane(ボタナイズ 白金)

住所:東京都港区白金5-13-6 ANEA BLD.3F・4F
電話:03-6277-2033
営業時間:12:00~19:00
定休日:水・木曜

公式サイト:https://botanize.jp/

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