いつもの料理に少しだけ変化を加えて、食卓を華やかなものにしたい。そんな思いを抱く人におすすめなのが、「自家製フレーバーオイル」だ。難しそうに見えても基本のルールさえ押さえれば、身近なハーブやスパイスで楽しむことができる。芳醇な香りに満ちたフレーバーオイルを使って料理をすれば、普段のレパートリーも味わい深い濃厚なテイストに。すぐに始められる自家製フレーバーオイルで料理を楽しく、食卓の風景をさらに豊かに描いてみよう。
手軽にいつもの味をレベルアップ。自家製フレーバーオイルのすすめ
肉や魚、野菜を炒めたり、パスタを絡めたり。そんな日々の調理で欠かせないのが、オイルという存在だ。オイルの種類は数多く、サラダ油やごま油、オリーブオイルなど、メニューによって油を変えるのは誰もが既に行っていることだろう。
その中に、香りや風味を閉じ込めた「フレーバーオイル」というものがある。レストランやバル、海外の輸入食材を取り扱うショップでハーブやスパイスなどを漬け込んだオイルを見かけた方も多いのではないだろうか。
しかしフレーバーオイルにはどこか「料理上級者がこだわる特別な調味料」といった印象があり、さらに自家製と聞くと「自分で作るのは大変そう」「ハーブの扱いが難しいのでは」と敬遠されがちかもしれない。
だが自家製フレーバーオイルの作り方はとてもシンプルで、基本的なポイントさえ押さえれば、誰もが気軽にトライできる。何種類もの調味料を揃えなくても、ほんの少しの手間をかけるだけで、まるでレストランのような贅沢な香りを自宅のキッチンで再現できるのだ。
フレーバーオイルは、普段のオイルにちょっと変化をつけたい時や、余ってしまったハーブやスパイスを活かしたい時におすすめの活用法。定番のオイルを温めて焼くだけだった肉や魚料理、味にパンチが欲しいパスタやサラダなどにひと回しかけるだけで、立ち上るかぐわしい香りが一瞬にして食卓を包み込む。「自分で作ったオイルで、こんなに料理が変わるんだ」という体験は、毎日の料理を作る楽しみと食べる喜びを、改めて教えてくれるに違いない。
安全に美味しく楽しむために。押さえておきたいふたつのルール
自家製フレーバーオイルを自宅で安心・安全に、そして最高に美味しく楽しむために、覚えておきたい「基本のルール」がある。それはオイルと素材の組み合わせによって、アプローチを変えることだ。自分でフレーバーオイルを作る際は、次のふたつのルールを頭に入れておいてほしい。
ひとつめは、オイルを保存したい場合は「完全に乾燥したハーブやスパイス」を使うこと。乾燥した素材はオイルとともにボトルに入れて風味付けしたり、一緒にじっくりと加熱することで、その中に秘められた香りと旨味がじわじわとオイル全体に溶け出していく。なお、自分で乾燥させたハーブは水分が残ってしまう可能性があるため、市販の乾燥ハーブを使うようにしたい。
ふたつめは、「生の食材」を使う際の決まりごとだ。みずみずしいニンニクやチリ、芳醇なローズマリーや爽やかなレモンの皮といったフレッシュな素材は、その瑞々しい香りをオイルに移すのが一番の魅力である。
ただし、生の食材は水分を含んでいるため、美味しさと安全のためにも「作ったその日のうちに使い切る」ことを基本にしたい。その日限りの贅沢なフレッシュオイルとして楽しむスタイルで、多くの料理をワンランク上に引き上げてくれるだろう。
「保存したい場合は乾燥した食材を使う」、「生の食材はその日限りのフレッシュ感を楽しむ」という基本を押さえることで、自家製フレーバーオイルをより安心して楽しめる。特別な道具も必要なく、素材の魅力を最大限に活かした一滴が、毎日の食卓をさらに豊かなものにしてくれるはずだ。
香りをじっくり閉じ込める。ドライ素材で作る万能オイル
それではさっそく自家製のフレーバーオイルを作っていこう。まず最初におすすめするのが、ドライのミックスハーブをオリーブオイルに風味付けするレシピだ。作り方は非常にシンプルで、ミックスハーブを大さじ1杯、オリーブオイル150mlをボトルに入れ、涼しく陽や電球の当たらない場所に1〜2週間置いておく。1日1回ほど、ボトルを優しく揺すると抽出が早まるだろう。オイルに香りが浸透したら完成だ。
保存する際に使用する瓶は完全密封ができるものを、そしてオリーブオイルを使用する時はボトルの色が緑や茶色、黒など、光を通さないものを選ぼう。この方法で作ったオイルは清潔な容器に入れ、直射日光やライトの明かりが当たらない、またコンロから離れた場所で保存し、できるだけ早く使い切りたい。
ミックスハーブを使用したフレーバーオイルは、チキンソテーや白身魚のムニエルなどを調理する際や、焼き野菜やサラダにさっとひと回しかけるだけで、何種類もの調味料を調合したかのような複雑で贅沢な味わいを堪能できるはずだ。
次にご紹介するのは、ドライチリと白胡麻油を一緒に加熱したものだ。ドライチリはできるだけ種を取り除き、輪切りにする。白胡麻油は150ml、ドライチリは5〜10本ほど、辛さの好みに合わせて調節してみよう。
小鍋やフライパンに白胡麻油とドライチリを入れ、弱火でじっくり、5分ほど煮る。ドライチリは焦げやすいので加熱している間は目を離さず、チリの香りがふわっと漂う瞬間を逃さないように注意しておこう。
オイルが完全に冷めたら煮沸した瓶に入れておく。クセのない白胡麻油にチリの風味を移したオイルは、炒め物や餃子のタレ、冷奴やスープの仕上げに真価を発揮する。市販のラー油とは一線を画す豊かな香りが広がり、シンプルな料理を一瞬で引き締めてくれるに違いない。
その日限りの贅沢。生の食材で引き出すフレッシュな味わい
保存が利くドライタイプに対し、生の食材を使うフレーバーオイルは「作ったその日のうちに使い切る」のが鉄則だが、それが最大の醍醐味でもある。その日食べる料理のためだけに直前で香りを引き出すスタイルは、食卓に一気に特別感をもたらしてくれる。
ひとつめにおすすめしたいのが、芳醇なフレッシュハーブを楽しむ「ローズマリー×オリーブオイル」だ。ローズマリーを洗ったら、キッチンペーパーなどでしっかり水気を拭き取っておく。フレッシュなハーブを使うため、作ったフレーバーオイルはその日のうちに使い切ることを覚えておこう。
小鍋にオリーブオイルを50ml、ローズマリーを一株入れ、ごく弱火で温めていく。フツフツと小さな泡が立ち、ローズマリーの爽やかな香味が立ち上ったら火を止める。このオイルをそのまま利用し、パスタを絡めたり肉を焼いたりすれば、深いコクと芳香に満ちた一品が完成するはずだ。
ふたつめは、食欲をそそる香りで一気に満足度を高めてくれる「ニンニク×米油」だ。米油は20〜30mlほど、ニンニクを2〜5片ほど用意し、薄切りやみじん切りにしておく。ニンニクを米油と一緒に弱火にかけ、ニンニクがキツネ色に色づき始めたところで火から下ろす。
カリッと揚がったニンニクを一旦取り除いておき、ガーリックの風味がついたオイルを調理の際に利用する。茹でたてのパスタに絡めたり、炒飯を炒めるオイルとして使用したりと、幅広い活用法があるのがガーリックオイルの魅力だ。
料理の仕上げとして先に取り除いておいたニンニクを上にぱらりとまぶせば、全体を引き締めるアクセントとなる。素材そのものの強い旨味とフレッシュな香りが口いっぱいに広がるのを体験できるだろう。
香り高い一滴のオイルがもたらす、日々の暮らしの小さな変化
フレーバーオイルは馴染みがないと、少しハードルが高く感じられる調味料かもしれない。普通のオイルで充分役目は果たしているのだし、自分で作るのは難しいと感じる方も多いだろう。だが材料も作り方もとてもシンプルなのが自家製フレーバーオイル。そして料理に使えば、これまでの味が格段にレベルアップしていることに気付くはずだ。
慌ただしく料理をこなすだけでなく、時には時間をかけてオイルを静かに温め、ふわりと香りが立ち上るのを待つ数分間。その穏やかな待ち時間こそが、一日の忙しさをリセットしてくれる豊かなリラックスタイムとなるだろう。
これまでは何となく通り過ぎるだけだった、ハーブやスパイスのコーナーをじっくりと眺めてみよう。「これに合うオイルはどれだろう」と考える時間はことのほか楽しく、それにふさわしいメニューを思い浮かべるのは心浮き立つ時間となる。ひとすじのオイルがもたらすこの心地よい体験は、毎日の「食べる」という営みを、今よりもずっと愛おしく味わい深いものにしてくれるに違いない。
※)自家製フレーバーオイルは、使用する素材や保存環境によって品質が変わりやすいので、清潔な器具と容器を使い、生のニンニクやハーブを使ったものは保存せず、その日のうちに使い切るようにしてください。異臭や濁りなど、少しでも違和感がある場合は使用を避けてください
CURATION BY
31年間暮らした英国から日本へ。海と山と川に囲まれた、小さな村での暮らしが始まりました。