Vol.702

FOOD

07 NOV 2025

ありそうでなかったスコーンやビスケットに出会える。THE CITY BAKERY

幼い頃、よく母とスコーンやビスケットを作っていた。作るのが意外と簡単な上、バターの濃厚な味わいを感じられるこれらのおやつはいつの間にか大好物となり、今でも月に一度は買って食べている。そんな思い出の味を更新し、新鮮さをくれたのが、NY発のベーカリー「THE CITY BAKERY」だ。今回は、ありそうでなかった数々のフレーバーで日常にフレッシュな喜びを届けてくれる、このお店を紹介したい。

ニューヨーク発!THE CITY BAKERYの魅力

渋谷道玄坂通
THE CITY BAKERYは、1990年に米国ニューヨーク・マンハッタンのユニオンスクエアでモーリー・ルービン氏によって創業された。

彼はもともとテレビ制作に携わっていた経歴を持ち、エミー賞を2度も受賞したことがある敏腕プロデューサーだったそうだ。その後、食文化への興味からフランスのオーベルニュ地方のイッサンジョーという小さな町のペイストリー教室に参加。すっかりパン作りの面白さに目覚め、アメリカに戻ってからも数々のベーカリーで修行を積んだ。しかし当時のニューヨークには理想にかなうベーカリーがなかったそうだ。

プレッツェルクロワッサンの「クロワッサンサンド ツナ」
そこで1990年、マンハッタンのユニオンスクエアに自らTHE CITY BAKERYを開業した。

朝ごはんにもぴったり
中でも人気を博したのが、クロワッサンとプレッツェルを融合させた「プレッツェルクロワッサン」だ。プレッツェルのような形をしているがクロワッサンというこの斬新なパンは、従来のクロワッサンよりもサクサクとした歯応えが小気味よく、一つ食べただけで満足感をくれる。またプレッツェルのような塩味が効いていて、ついクセになる味なのだ。

形はプレッツェルのよう
THE CITY BAKERYは、創業当初から「地元農家の食材を使う」という姿勢を打ち出し、近隣のユニオンスクエア・グリーンマーケット(朝市)などから有機・地産の材料を調達するスタイルを採用。また、パン・ペイストリー部門だけでなく、サラダ・サンドイッチ・スープなど軽食メニューを昼食用途として提供することで、従来のベーカリーと言えば朝にパンだけを販売する、というイメージを刷新した。

中之島フェスティバルプラザ。ニューヨーク発らしい都会的な外観
そんなTHE CITY BAKERYの世界初出店の地は、なんと日本。2013年大阪梅田に一号店をオープンさせた。

山ほど積み上げられたパンやビスケットが作る光景は、まるで夢のよう
ここでもTHE CITY BAKERYは長蛇の列ができる人気店となり、現在東京では銀座、中目黒、赤坂、品川などに店舗を構えている。

大好きなスコーンやビスケット

ボリューミーなスコーンやビスケットたち
THE CITY BAKERYを訪れるたびに、棚やショーケースを前につい目移りしてしまう。ニューヨーク発らしいごろっと大きなサイズのマフィンや惣菜のパンの数々、そしてビスケットやスコーンは、眺めているだけで私を幸福な気持ちにさせてくれる。

種類は、ミックスベリースコーンにハニーレーズンスコーン、バターミルクビスケット、メープルベーコンビスケット、紅茶とチョコのビスケットなどが取り揃えられている。

どのスコーンやビスケットも、見た目こそシンプルだが、バターの香りと口に入れた瞬間のほろっと崩れる食感は、一度食べると忘れられない。コーヒーにも紅茶にも合い、朝食にもおやつにもぴったりの一品だ。

ビスケットやスコーンはどの店舗でも人気のアイテムだが、季節ごとに限定フレーバーも登場する。秋には栗やホワイトチョコ、冬にはベリー系など、旬の素材を使ったスコーンが並ぶそうだ。思わず通いたくなる理由は、こうした小さなサプライズがあるからだと思う。

ほのかな塩味がクセになるメープルベーコンビスケット

仕事の合間のおやつに、メープルベーコンビスケット
そんな魅力的なスコーンやビスケットの中でも大好きなのが、メープルベーコンビスケットだ。この組み合わせを初めて聞いたときは「甘いの?しょっぱいの?」と少し戸惑ったが、一口食べた瞬間、その絶妙なバランスに驚かされた。

バターが香る生地の中に、カリカリに焼かれたベーコンの旨み。そこにメープルシロップのやさしい甘みが絡み合い、まるで“朝ごはんとデザートの間”のような新感覚の味わいになる。噛むほどに甘じょっぱさが広がり、シンプルなのにクセになるのだ。

アメリカンなボリュームがありながら、どこか繊細で、日本人の味覚にもぴったり寄り添ってくれる。焼き立てを買って帰ると、紙袋の中から香ばしさと甘さが相まった匂いに、つい待ちきれずひとかじりしてしまうこともしばしば。そういう「幸せな誘惑」をくれるビスケットだ。

ランチにも最適

公園でのランチタイム
ついついあれもこれもと買ってしまった日は、ランチにしたりピクニック用のおやつにしたりしても良いかもしれない。テイクアウトしたコーヒーと一緒に味わう時間は、慌ただしい日常の中でふと立ち止まる、小さなご褒美のようだ。

紅茶とチョコのビスケット
ちなみに、THE CITY BAKERYの魅力はスイーツやパンだけにとどまらない。店内ではスープやサラダ、サンドイッチといった軽食も提供されており、ビスケットやスコーンを添えたランチプレートも人気だ。

ニューヨークスタイルのおやつで休憩

大きめサイズがうれしいWチョコレートクッキーホワイト
THE CITY BAKERYには、クッキーやケーキといった焼き菓子も用意されている。こちらも例えばフランスのお菓子類のようにデコラティブではなく、ニューヨークを思わせるパイ類やキャロットケーキなど、素材の味を生かした焼き菓子が中心だ。

しっとりと口の中でほどける食感
今回購入してみたのはWチョコレートクッキーホワイトとレモンパイ。Wチョコレートクッキーホワイトは、ココアを混ぜ込んだビターな生地にミルキーでまろやかな甘さのホワイトチョコレートを入れた濃厚な味わいのクッキーだ。

レモンパイを映画鑑賞のお供に
そしてレモンパイは、気持ちの良い酸味が効いた生地の上に、ふわふわのメレンゲが載ったパイ。三層とも違う食感を楽しめ、酸味とやさしい甘さのバランスが絶妙。パイながら軽やかな味わいが魅力のスイーツだ。

スコーンやビスケットは家でも作れるけれど……THE CITY BAKERYだからこその味を求めて、店舗の近くまで出かけるとつい寄り道してしまう。どのメニューも、どこか懐かしく、けれど確実に新しい。素朴さと洗練さを感じさせるものばかりなのだ。

焼きたての香り、バターの余韻、そして甘じょっぱい誘惑。「ありそうでなかった」スコーンやビスケットを探している人にはぜひ一度、THE CITY BAKERYに立ち寄ってみてほしい。

THE CITY BAKERY