Vol.566

FOOD

19 JUL 2024

刺激的な香り。スパイスカレーで暑い夏をアクティブに楽しもう

酷暑が続く夏、本能が欲するのは刺激的なもの。そのスパイシーさと独創的な香りが食欲をそそるカレーは、まさに暑い夏にぴったりの料理だ。よりスパイシー、より刺激的な味を求めて、スパイスから作る本格的なカレーを作ってみよう。

人々を惹きつける魅惑的な香り

「あ、この家、夕飯カレーだな」

鼻をくすぐる香りで分かる。誰しもが経験したことがあるだろう。家までの帰り道、換気扇から漏れ出る美味しい匂いに気づいたら、「うちも今夜はカレーにしようかな」と内心嬉しくなる。レストランで隣の客が美味しそうにカレーを食べていたら、思わず自分も注文したくなる。玉ねぎの甘い香り、肉の脂の香ばしい香り、何種類ものスパイスの香り…複雑な香りが絶妙に混じり合い食欲を刺激する。カレーの香りには、人々を惹きつけるカリスマ性があるのだ。

パイスの香りはいつだって食欲を刺激する
子供から大人までみんなに愛されるカレー。年中食べているものだが、とりわけ食べたくなるのが、今まさに、夏である。海水浴で立ち寄る海の家、山の中のキャンプ場、屋外イベントの露店、夏の定番イベントのそばにあるのはいつだってカレーだ。食欲減退しがちな夏は、スパイスが効いた辛い料理を本能的に体が欲するのだろう。スパイスの刺激と清涼感が夏と絶妙にマッチする。

カレーは誰でも作りやすいお手軽料理であるが、夏はルウではなくあえてスパイスから作りたい。構えているよりも簡単に作れる上、スパイスから作るカレーはルウとはまた違った美味しさがある。よりスパイシーで本格的な味を自宅で楽しもう。今夜はカレーの香りをお届けする側になってみようじゃないか。

一から作ることでスパイスの香りと刺激をより濃く感じられる

スパイスチキンカレーのレシピ

カレー発祥の国であるインドにはカレー粉というものは無く、様々なスパイスを組み合わせて作られる。また、日本のカレーとの大きな違いは小麦粉。日本のカレーは小麦粉でとろみをつけるのが一般的だが、インドでは小麦粉は使わない。そのためとろみは無くさらっとしたカレーなのが特徴だ。本場インドに倣って、小麦粉を使わず複数のスパイスを使ったカレーを作ってみよう。

基本的なスパイスだけでも本格的なカレーが作れる
ポピュラーなチキンカレーのレシピを紹介しよう。2人分の材料として、鶏もも肉1枚、玉ねぎ1個、トマト1個、ニンニク2かけ、生姜1かけ。今回のスパイスは、スーパーや100円ショップでも手に入りやすい5種類、コリアンダー、ターメリック、クミン、チリペッパー、ブラックペッパーとした。もちろんこれらのスパイスの代わりにカレー粉を使っても作れる。パウダー状に加工されたものが便利だが、シードを毎回すりつぶして使うとより香りが強く感じられる。
使用するのは深めの大きなフライパン。一口大に切った鶏もも肉を塩胡椒で下味をつけ、裏表しっかり焼き目がつくまで焼く。鶏肉を一度取り出し、流れ出た鶏の油でみじん切りにした玉ねぎを炒めていく。玉ねぎは形が残らないくらいのみじん切りにすると後々程よいとろみがつく。ここで玉ねぎを真っ黒になるまでひたすら焼き付ける。

黒焦げ一歩手前を目指して辛抱強く待つ。この焦げが旨みになる
十分に炒めたら、すりおろしたニンニクと生姜を加え水分を飛ばす。みじん切りにしたトマトを入れて潰しながらさらに炒める。

水分が飛んだらスパイスと塩を加える。コリアンダー大さじ1、ターメリック小さじ1、チリペッパーふたつまみ、塩小さじ1/2、ブラックペッパー適量。スパイスは好みに合わせて調整してみよう。辛いのが好きな人はチリペッパーを増やす。スパイスを入れて炒めたら水3カップ、焼き目をつけた鶏肉を入れて煮込む。

水分が足りなくなったら適宜水を足しながら20〜30分ほど煮込んでいく
煮込み終わったら蜂蜜を少々加える。別の小さめのフライパンに油、クミン小さじ1を熱し、煮込んでいる鍋に投入。最後に塩で味を整えたら完成だ。

スパイスの香りと清涼感が鼻に抜ける。食べていくとじわじわ辛さが増していく。手が止まらない

夏野菜のドライカレーのレシピ

夏野菜には体を冷やしてくれる効果がある。食欲を刺激するカレーと組み合わせればさらに夏にぴったりな料理になるに違いない。物価高な世の中だが、旬の野菜は比較的安く手に入るのも嬉しい。カレーは煮込み時間がかかるものだが、ドライカレーは水分を飛ばすため短時間で出来る。ただでさえ暑いのに、火を使うキッチンは文字通り地獄のような暑さだ。体力的な点でもドライカレーは夏の強い味方になってくれるだろう。

2人分の材料として、合い挽き肉250g、玉ねぎ1個、トマト2個、ピーマン2個、ニンニク2かけ、生姜1かけ。スパイスは手軽さ重視でカレー粉をベースに、クミン、ガラムマサラ、ブラックペッパー、カイエンペッパーを使う。

夏野菜とニンニクで夏らしいスタミナカレーに
深めのフライパンに、クミン大さじ1、みじん切りにしたニンニクと生姜、油を入れ弱火でじっくり香りを引き出す。あらみじん切りにした玉ねぎを入れて焦げ目を焼き付けながら炒める。合い挽き肉を入れてさらに炒める。酒大さじ2を加えて水分を飛ばす。

トマトは大きめに切ってごろっと感を出すとフレッシュさが残る
塩胡椒、カレー粉大さじ1、ガラムマサラ・ブラックペッパー・カイエンペッパー各適量、ローレル1枚を加えて炒める。一口大にカットしたトマト、みじん切りにしたピーマンも入れてさらに炒める。オイスターソース・ケチャップ・ウスターソース各大さじ1、コンソメ・醤油各小さじ2を加えて煮詰める。程よく水分を残し、塩胡椒で味を整えて完成だ。

目玉焼きをのせるのがおすすめ

カレーで味わう夏

ルウで簡単に済ませられるカレーをスパイスから作るのは少々難儀に思えるかもしれない。暑い中、火を使って汗をかきながら地道にひたすら炒める。これでもかというほどフライパンからの熱を浴び続け、煮込む間も熱気が部屋を覆う。出来上がった時は大仕事を終えたかのように汗だくになる。そこにカレーを頬張れば、スパイスの辛さと刺激がさらに体は熱くさせ汗が吹き出す。作って暑く、食べてなお熱い。

そこまでしてなぜやるのか、と他人は問うかもしれない。だが、暑さと熱さ、辛さ、旨さが共存した先には、清々しいほどの達成感とニッチな快感がある。わざわざ暑い夏に、暑い部屋で火を使って、ひたすら熱気を浴び続けて、汗だくになりながら食べる。一種のマッチポンプのような愉悦。そう、暑いからこそ、熱くなるからこそいいのだ。全ての要素があるべくして存在している、この味を創っている、そんな感覚。”暑い日のカレー”は夏をまるごと味わえるファクターなのかもしれない。

暑さも熱さも美味しさを引き立てるスパイスなのだ
ここまでスパイスカレーを語ってきたが、筆者は決して辛いものが得意というわけではない。辛すぎるものは料理の味そのものよりも辛さだけをダイレクトに感じてしまい、何を食べてるのか分からなくなるからだ。辛い料理に対して同じように感じている人は少なくない。

そういう場合はスパイスの割合を調整してみよう。辛さを出すものは控えめに、代わりに清涼感があるものや香りが強いものを増やすとバランスが取れる。スパイスの香りと刺激はそのままに、辛さを抑えることができるだろう。

また、カレーを食べる際のドリンクもひと工夫するのも楽しい。辛さを強く感じるカレーにトロピカルフルーツのドリンクを合わせれば、甘味と爽快感が辛味をうまく中和してくれる。水にレモンを絞るだけでも、フレッシュな香りと酸味がスパイシーなカレーにマッチする。春にレモン酒を漬け込んでおけば、自家製のレモンサワーと共にカレーを味わえる。夏らしさをさらに引き立たせてくれる。

夏と共存して全力で楽しもう

猛暑が続く今夏。日中は強烈な日差しが照り付けて体力を消耗させる。夜は気温が下がらず寝苦しい熱帯夜が続く、過酷な毎日。そんな日が続くと心身共に夏バテしてしまう人も多いだろう。料理を食べる気力も作る気力も削がれていく。だが、スパイスが効いたカレーなら減退した食欲を刺激してくれる。食べる喜び、作る悦びを私たちに思い出させてくれるだろう。

重たくなくさらっと食べられるスパイスカレーは暑い夏にぴったり
夏は大型連休もあり、まさにイベントの宝庫。夏を全力で楽しむためには、暑さに負けてなどいられない。スパイスたっぷりのカレーの熱さで夏の暑さを吹き飛ばそう。