Vol.574

FOOD

16 AUG 2024

新しい発想は日常をもっと面白くする。サンバルで見つける発見のある生活

インドネシアの家庭調味料「サンバル」。甘辛味噌のような食感と味がおいしい調味料だ。近年のアジアングルメブームのおかげか、輸入食材店で取り扱われていたり、業務スーパーでも見かけたりするようになってきた。とはいえ、使い道がよくわからないという理由で手に取ったことがない方も多いのではないか。日本ではなかなか無い味なのに、意外と日本の食卓に馴染むのが面白い「サンバル」。今回は、市販のものを食べたり、自分でも作ってみたりして「サンバル」の楽しみ方をご紹介する。

まずはサンバルについて知る

バリの雰囲気を感じられる店内でサンバルについて取材した
今回は、筆者がサンバルを知ったきっかけである京都のバリ料理店「ワヤンバリ」の店主カデさんに現地でのサンバルの位置付けや親しまれ方を聞いてみた。まず特徴的なのは、インドネシアでは当たり前に各家庭でサンバルが作られているということ。

おおまかなレシピは同じでも配分や調理法が少しずつ違うため、家庭ごとに違う味になるそうだ。そして、サンバルは毎日どんなメニューでもお皿にのっているそう。ご飯とおかず、サンバルを混ぜて食べるのが日常なんだとか。調味料ではないが、日本だとどんな献立でもお漬物が食卓に並んでいる感じだろうか。

ワヤンバリのオーナー「カデさん」
そんなサンバルには、たくさんのレシピがある。インドネシアのガジャマダ大学の研究チームによると、インドネシア全土では322種類ものサンバルがあることがわかっている。事前に調べていったたくさんのレシピの中から、一番ポピュラーなものは?と質問したところ「サンバル・トゥラシ」という名前が挙がった。こちらのサンバルの特徴はエビを発酵させたペーストが入っていることで、それが味のポイントだそうだ。

ほかにも有名なサンバルには、「サンバル・ダブダブ」「サンバル・アンダリマン」「サンバル・マンガ」などがある。いつか現地で食べ比べをしてみたいものだ。

手軽に入手できるサンバルを食べてみる

カルディで入手したサンバル。サンバル・バジャックという種類らしい。また新しい名前が……。
冒頭でも述べた通り、最近ではサンバルを売っているお店が日本でも増えてきた。輸入食材を多く扱うカルディでは、数年前からサンバルを見かけている。せっかくなのでそのサンバルを購入してみた。家族を誘っての試食会だ。まずは何にもつけずにそのままいただくとする。「知っているサンバルじゃない……」ワヤンバリのサンバルに慣れた筆者と家族はそう思った。

なるほど、さすが各家庭で味が違うサンバル。こんなにも味が違うのかと驚きだ。このサンバルは甘みが少ないのと、レモングラスの爽やかさが特徴。とにかく辛い方が好きという方におすすめだ。

自家製のサンバルを作ってみる

自家製サンバル。トマトと唐辛子の風味が強かった。でもこれが筆者の家の味
カルディのサンバルはおいしいものの、筆者の好きな味とは少し違った。それならば、自分好みのサンバルを作ろうじゃないか!ということで、カデさんに聞いたレシピで自家製サンバルを作ることに。

今回使った材料

・トマト:1/2(湯むきは無しで問題ない)
・玉ねぎ:1/2
・生唐辛子:5本(乾燥唐辛子の場合は倍量)
・にんにく:ひとかけ
・塩胡椒:少々
・鶏ガラだし:小さじ1
・砂糖:小さじ1

生唐辛子の方が乾燥唐辛子より辛味が強い

作り方

全ての材料を細かく切り、ミキサーにかける。その後水気が飛ぶまで煮詰める。今回の分量だと30分程度で煮詰まった。冷蔵庫保存で一週間ほどが賞味期限。

味の感想

正直なところ、「これはサンバルなのか?」となった。なんというか、トマトと唐辛子が合わさったことで、アラビアータのような味に感じる。サンバルと違うように感じる大きな要因は、えびのペーストを入れなかったことだろう。

ワヤンバリやカルディのサンバルに比べて深みが足りない。もし、自家製サンバルを作ろうという方は、えびのペーストをお忘れなく!ただ、カデさんに相談したところ、「それが筆者の家の味なんだよ」と言われた。この味がサンバルだ、と身構えずに作るのが大切なのかもしれない。

現地の食材と楽しんでみる

こちらはワヤンバリのテンペフリット。少し甘い味付けにサンバルが合う
では、ここからはサンバルの美味しい食べ方をご紹介する。まずは、現地の食材から。先述の通り、現地ではどんなおかずの時でもサンバルが出てくるので、とくに合わせにくい食材はない。インドネシア料理として有名なミーゴレンやナシゴレンにはもちろん合う。ちょこっとつけるだけで辛さとうまみがプラスされる。もう一つ、おすすめなのが「テンペ」という食材。大豆を発酵させて固めた食材で、炒めたり、揚げたりとさまざまな食べ方ができる。このテンペにもサンバルがぴったり。テンペが少し淡白な味なのでサンバルの味がしっかりと際立つのだ。

テンペは業務スーパーの冷凍コーナーで販売されているので、よければ試してほしい。素揚げにしてサンバルをつけるだけでとってもおいしい。

実は日本でも「阿刺吉酒」として江戸時代から知られていたそう
また、サンバルを楽しむのならお酒にもこだわってみてはどうだろうか。バリ島の伝統的な蒸留酒「アラック」は、ほのかな甘味が特徴的なお酒。バリ島では、儀式の際に神々に捧げるスピリッツとして、また健康促進によいお酒として古くから親しまれている。ストレート、ロック、カクテル等さまざまな楽しみ方があるが、ご飯と楽しむならソーダ割りがおすすめ。レモンを加えることで爽やかさが増し、食欲を刺激する。

日本の食卓に合わせてみる

こちらはお店で食べた唐揚げ。唐揚げに辛味を加えることが最初は不思議だったが、今では無いと困る
インドネシア料理にサンバルが合うのはいたって普通のこと。日本の食材にも合ってこそ、冷蔵庫に常備できる。そこで今回は、15種類以上の日本の食材とサンバルを合わせてみた。その中でもとくに美味しかったものを3つに絞ってご紹介する。

卵かけご飯にティースプーン一杯ほどのサンバルを
まずは、冷やしうどん。めんつゆにサンバルを溶かすと美味しく食べられた。味的にそうめんにも合いそうだ。夏場、めんつゆの味に飽きてきた時にちょうど良い味変だと思う。次は、たまごかけご飯。サンバルの辛さと、たまごのまろやかさが絶妙にマッチ。たまごかけご飯は、食事の準備が面倒な時によく食べるのでレパートリーが増えたのは嬉しい。

そして、最後は天ぷら。一番意外かもしれない。サンバルは、揚げ物全般と相性がよかったのだが、その中でも特に天ぷらが美味しかった。
また、食材とは少し違うがソースにもとても合った。お好み焼きやたこ焼きの際に、ソースに混ぜて楽しんでみてほしい。辛さよりうまみが強くなる。

発見という楽しみを教えてくれるサンバル

テンペの素揚げとサンバル
インドネシア料理にはもちろん、日本の料理にも意外と良い相性を見せてくれたサンバル。異国の調味料だからと身構えず、感性の赴くまま、自由な発想でいろいろな食べ物と組み合わせてみてほしい。そうすれば、「こんな組み合わせもアリなのか」と新鮮な驚きが得られることだろう。

日常に少しのスパイスが加わるだけで、毎日がもっと面白くなる。そんなことを感じさせてくれたサンバル。ぜひ、みなさんにも試してほしいと思う。

Wayang Bali|ワヤンバリ

京都府京都市中京区河原町三条上ル下丸屋町406 グリントランド7F
電話番号:075−213−2507
営業時間:17時30分−0時
休業日:火曜

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